いよいよモダン神挑戦者決定戦、そのベスト8が出揃った。
まず《ジェスカイの隆盛》コンボ不在。
使用者数自体が元々予想された人数より少なかったとはいえ、やはり戦前の話題性から対策されてしまったということか、はたまた安定性に欠けていたということなのか。
また目に付くのがそのデッキの多様性である。
グランプリ神戸を制したバーンが2名いる他は、全てが異なるデッキ。
その中でも特にカテゴリーが特殊なものがこのマッチアップだ。
無色ベースの独創的なウルザトロン。
当時は禍々しいこのレシピもいつしか環境の基本となり、世界に認知されている。
それが”うんぽぴん”こと遠藤 健司。
トロン界の開祖であり、またイラストレーターという一面も。
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一方メリーラポッドの山本 康平。
第一回BMOスタンダード優勝という大規模イベントを優勝した経験もあり、この半年間の話題を牽引してきたチーム豚小屋の一員でもある。
デッキ的には《吹きさらしの荒野》以外に目立った追加も無く、《包囲サイ》を検討したもののやはり《強情なベイロス》を優先したという。
《ジェスカイの隆盛》というトピックから外れたデッキ同士の対決となったわけだが、山本には残念ながらこのマッチアップはメリーラポッドに絶望的なものである。
はたして番狂わせは起こるのだろうか。
Game 1
先手を取った遠藤が《ウルザの魔力炉》から《ミシュラのガラクタ》、《彩色の星》と軽快に動き始める。
対する山本は6枚に減った手札より《剃刀境の茂み》セット、《貴族の教主》と呼び出し、続くターンに《剃刀境の茂み》から《台所の嫌がらせ屋》と。
だがビッグターンは早くも第3ターンに。
セット《ウルザの塔》。
前ターン《ウルザの鉱山》を設置した遠藤が事も無げにウルザ地形を揃えると、思わず山本も苦笑い。
それもそうだろう、《彩色の星》を出しているのに遠藤が動いていないことを考えるとこの展開も予想出来た。
だが予想されたウルザ土地の集合に対して、メインボードのメリーラポッドに何が出来ようか。
場にある《彩色の星》を手札に変えると、続けて《彩色の宝球》《彩色の星》とプレイを繋げ、立て続けにサクリファイス。
遠藤の手札が次々に刷新されていき、《森の占術》から10マナ到達予告となる《ウルザの塔》をサーチ。
そして《宝船の巡航》という新たな兵器がプレイされ、溢れる手札から《幽霊街》をディスカードしてここに来てようやく遠藤の第3ターンが終了する。
しかして山本には取り得る選択肢が無い。
賛美された《台所の嫌がらせ屋》が攻撃し、フルタップになりながらの《出産の殻》を。
ここで遠藤が10マナを揃えた理由を明かす。
悪魔の如き《精神隷属器》が山本へ。
《修復の天使》
《突然の衰微》
《呪文滑り》
《召喚の調べ》
《新緑の地下墓地》
ドローを加えた山本の手札が公開されると、遠藤から「サイドボードを確認してもいいですか?」の一言が。
今のルールではサイドボードの確認が認められているため、ターンをコントロールすると対戦相手のサイドボードも見ることが出来るのだ。
そしてこの台詞はこういう意味をも込められている。
「何なら投了してもいいんだぞ」と。
遠藤 健司 |
山本はゲームを続けることを選び、ならばと遠藤は後のことを考えサイドボードを入念に確認。
確認が済むと《新緑の地下墓地》を起動して「見つかりませんでした」、《台所の嫌がらせ屋》も《出産の殻》でサクるとこれまた「見つかりませんでした」、続けて《呪文滑り》をプレイ。
この時点でもリソースの大半を奪われた山本だが、遠藤が2枚目の《精神隷属器》をプレイすると、さすがに耐えかねて次のゲームへと移ることになった。
遠藤 1-0 山本
Game 2
続く第2ゲームは二人仲良くマリガンするところから。
先手に変わった山本が《吹きさらしの荒野》フェッチから《森》を調達し、《貴族の教主》を呼び出す。
対する遠藤は《ウルザの塔》から《彩色の宝球》を。
山本は土地が無く《貴族の教主》《極楽鳥》と並べるに留まり、遠藤は《ミシュラのガラクタ》で自身のライブラリーを確認するとセット《魂の洞窟》(指定はゴーレム)。
《彩色の宝球》を経由した《古きものの活性》で《彩色の星》を手札に入れる、と第1ゲームに比べると精彩を欠いた展開だ。
だが山本に出来ることは少ない。
《台所の嫌がらせ屋》を追加し、1枚のまま止まった土地ゆえ都合4枚目のマナクリーチャーとなる《極楽鳥》をプレイ。
地道に歩みを進めていくのだが、そうこうしているうちに遠藤は《ウルザの鉱山》を置き、さらには《探検の地図》を。
第4ターンのウルザ地形集合を予告してしまう。
《台所の嫌がらせ屋》で攻撃するのみでターンを返した山本の前に、遠藤が出したのは《忘却石》だった。
《召喚の調べ》を持つ山本はここで小考。
アップキープに起動されることを回避する術は・・・・無い。
せめてもの、と《復活の声》をサーチして戦列復旧を図ることに。
こうしてぎりぎりまで攻める姿勢を見せる山本だが、遠藤は事も無げに2枚目の《忘却石》をプレイ。
さらには《森の占術》から《ウギンの目》を調達、《精神隷属器》を置かれてしまうと。
そもそもこの時点で土地が《森》《ガヴォニーの居住区》しかない山本。
《引き裂かれし永劫、エムラクール》すら呼び出せる遠藤。
定められたまま《精神隷属器》により安全確認が行われ、《引き裂かれし永劫、エムラクール》が山本の運命を引き裂いた。
山本 康平 |
遠藤 2-0 山本
実のところ遠藤は最初の《精神隷属器》起動時点で勝利していた。
《突然の衰微》を使うマナ、そして《呪文滑り》をプレイするマナがあったからだ。
《呪文滑り》をプレイしてから《突然の衰微》を使い、スタック上の《突然の衰微》にありったけファイレクシアマナ(=ライフ支払い)で《呪文滑り》の能力を使うだけの簡単なお仕事。
本人もプレイの途中で気付いたようだが、既に後の祭り。
だがそれ以上に悪いのがこのマッチの相性差。
おそらくモダン環境で最も悪いものではないだろうか?
その下馬評通り、遠藤が危なげなく山本を下している。
しかし明日は我が身、それが競技世界の常。
楽勝な準々決勝を抜けた遠藤を待っているのは、トロンが最も苦手とするバーンである。
遠藤 健司が2-0で準決勝へ進出!