タルキール導入後のモダン~アグロ編

晴れる屋

By Kazuya Hirabayashi

グランプリ神戸後、初の国内モダン大規模大会となった第2期モダン神挑戦者決定戦。

《ジェスカイの隆盛》コンボという一つのトピックを経て、『タルキール覇王譚』導入後のモダン環境は変容していった。

ジェスカイの隆盛


あるデッキは『タルキール覇王譚』から新たな戦力を加え、またあるデッキは《ジェスカイの隆盛》コンボのためデッキの構成を変え、新たな環境に対応しようとしている。

ここでは主要なアーキタイプの変遷について見ていこう。


■黒緑

かつての覇王。

グランプリ神戸においてはベスト8入りを逃すものの、そのコントロール力は環境速度を定義してきた。

つまるところ黒緑にコントロールされるようでは勝てない、それこそがバーンを一大勢力にした理由でもある。

ヴェールのリリアナタルモゴイフ



それから一度は凋落した黒緑だが、ここに来て取り巻く環境が変わってきた。

そう、《ジェスカイの隆盛》の台頭だ。

コンボに対する抑止力としての手札破壊、そしてマナクリーチャーを屠る軽除去。

《ジェスカイの隆盛》そのものを処理できる《突然の衰微》と、総じて《ジェスカイの隆盛》コンボに耐性があるのだ。

ましてサイドボードに万能な《ゴルガリの魔除け》があるとなれば、対《ジェスカイの隆盛》戦に憂いは無い。

突然の衰微ゴルガリの魔除け



だからこそ黒緑を使うプレイヤーが懸念したのは、タルキール以前の環境である。

モダン神決定戦、そしてグランプリ神戸、いずれもバーンが制したことは記憶に新しい。

デッキとメタゲームは巡るもの。

だからこそ《台所の嫌がらせ屋》を良く見るようになったし、パワー不足を指摘された《クルフィックスの狩猟者》にも再び出番が来たのかもしれない。

台所の嫌がらせ屋クルフィックスの狩猟者



また、特筆すべきは『タルキール覇王譚』で追加されたカードだろう。

一見黒緑に使えそうなカードは少なそうだったのだが、実のところ《真面目な訪問者、ソリン》が黒緑のウィークポイントを補完するある種のマスターピースだった。

真面目な訪問者、ソリン

黒緑の隠された切り札


盤面のコントロールを掌握して《タルモゴイフ》で殴り返す。

その過程でギリギリライフを削られてしまうことも多かった黒緑において、大きなライフ回復を達成する《真面目な訪問者、ソリン》の何と脅威なことか。

ましてやこの絆魂、忠誠度プラス能力なのである。


はたして黒緑はモダン環境の覇を取り戻すことが出来るのだろうか。

要注目である。


■親和

前モダン環境において《アーティファクトの魂込め》というインパクトをもたらし、そのままシーズンを駆け抜けたのが親和。

もはや親和要素がほとんど残っていないものの、それでも往年の壊れ性能を彷彿とさせる爆発力は依然として健在である。

電結の荒廃者アーティファクトの魂込め



さてそんな親和だが、《アーティファクトの魂込め》に続けとばかり『タルキール覇王譚』から期待の新戦力が投入された。

それが《幽霊火の刃》

幽霊火の刃

このカードの性能たるや、まさに期待通りの活躍を見せた


絆魂を持つ《大霊堂のスカージ》と組み合わせることこそ難しいものの、《頭蓋囲い》とは違った迅速なクロックを用意するものだ。

さて《幽霊火の刃》の強靭さ、このことを一言では語ることは出来ない。


まず《頭蓋囲い》との比較として、1マナと2マナの違いは果てしなく大きい。

《電結の荒廃者》《頭蓋囲い》《鋼の監視者》といずれも2マナをキーにする親和にとって、《呪文嵌め》という天敵が居た。

それを掻い潜ることが出来るばかりか、カードの軽さこそが《オパールのモックス》の運用、そして《頭蓋囲い》《感電破》《頑固な否認》など各種対策カードを構えることを容易にする。

呪文嵌め稲妻


そしてさらにはメタゲームによる副次効果もある。

《ジェスカイの隆盛》コンボの登場により、モダン環境に大きな軽除去需要が発生したため、以前より《稲妻》を見る機会が増している昨今。

ダメージ除去を乗り越えられる《幽霊火の刃》、思った以上に厄介な存在である。


■バーン

アグロ戦略のラストを飾るのはバーンだ。

ここまで再三紹介しているが、前環境で二度の優勝を成し遂げているのがバーンである。

ゴブリンの先達溶岩の撃ち込み



アグロ戦略と言えば《野生のナカティル》という時代を経て、レガシーにおいても一勢力となったこの状況。

さらに黒緑と同様にして、《ジェスカイの隆盛》コンボという存在がまたバーンにとって追い風となっているのだから恐ろしい。

そう生ける《紅蓮光電の柱》

大歓楽の幻霊


メインボードからの対策が難しいコンボに対し、無理なく投入できる《大歓楽の幻霊》の存在は《ジェスカイの隆盛》コンボを使おうとするプレイヤーにとって頭の痛いところだろう。


さて件のバーン。

レガシー環境においても結果を残していたことは、翻ってモダン環境へと影響を及ぼした。

つまり『タルキール覇王譚』最大のトピックである、二大探査スペル”《宝船の巡航》“”《時を越えた探索》“の躍進。

疑似《Ancestral Recall》たる《宝船の巡航》、無論本家同様の活躍が見込めるとするなら使えるデッキの幅は大きく広くなる。

宝船の巡航

現出した”Ancestral Recall”


そしてそれはバーンも例外ではなかった。

《コジレックの審問》で落とせず、時により《呪文貫き》にも引っかかりにくいアドバンテージソース。

バーン特有の息切れを防ぎ、敵たる《タルモゴイフ》のサイズを縮めることの出来るとあっては、もはや《宝船の巡航》の無いバーンを考えることは出来ない。

これから対バーンを考えるのなら、《宝船の巡航》ありきで対策を講じる必要があるだろう。


テンポデッキとコンボ編は【こちら】