サイドボード。
およそマジックのあらゆるフォーマットにおいて、実は何よりも重要なのがサイドボードだ。
「何を何枚とるか」という構築段階での判断もさることながら、「どのマッチで何を何枚入れるか」という実戦段階での正確な判断こそが求められる。もし判断を誤れば、唱える機会のない呪文が手札に腐ったまま鎮座することになるからだ。
そして特にモダンにおいては、そういったサイドボードチェンジの判断ミスが勝敗を分けることになりやすい。
しかし、にも関わらず。
これまでモダンのサイドボードチェンジについては、あまり焦点が当てられてこなかったように思われる。
とはいえ、それも仕方のない話ではある。
モダンというフォーマットは洗練に洗練を重ねてコンセプトに特化したいくつものアーキタイプが覇を競っており、したがってプレイヤーは簡単にデッキを乗り換えることができず、自らが使用するアーキタイプのみのいわば専門家になりやすいという傾向があるからだ。
そうなると1つのアーキタイプのサイドボードチェンジの話などは、共有するメリットがある「そのアーキタイプの使い手」のプレイヤーが少ない結果、そもそもフォーカスする意味が薄いとして軽視されるのもやむをえない、という結論になりがちだ。
だが。
よくよく考えるとサイドボードチェンジをするにあたっては、「相手のサイドボードを予想する」ことにも大きな意味があるものだ。
つまり専門化された様々なアーキタイプの標準的なサイドボーディングを知ることで、いざそのデッキと対戦したときのサイドボードチェンジに役立てることができるのだ。
敵を知り己を知れば百戦して危うからず、というわけである。
そういうわけで前置きが長くなってしまったが、モダンの主要なアーキタイプのサイドボードチェンジを専門家(マスター)に聞く、というのがこの記事「サイドボードテク」のコンセプトだ。
さて、今回のテーマは「親和」となる。
親和はプレイング・サイドボーディングともにモダンでもかなり難しい部類のデッキで、それ故にプロでも正しいサイドボードができるか怪しいほどだ。
だが、この男ならば。
モダンシーズンのPTQを親和で突破し、それ以後も親和を使い続けているチーム豚小屋のリーダー、親和マスター河浜 貴和ならば。
親和のサイドボーディングの秘訣を、きっと余すところなく我々に教えてくれることだろう。
「2-6~☆」
親和の標準的なサイドボード
河浜 「まずこちらが僕が今日使用したリストになります」
1 《島》 3 《空僻地》 4 《墨蛾の生息地》 4 《ちらつき蛾の生息地》 4 《ダークスティールの城塞》 -土地(16)- 4 《羽ばたき飛行機械》 2 《メムナイト》 4 《信号の邪魔者》 4 《大霊堂のスカージ》 4 《電結の荒廃者》 3 《鋼の監視者》 4 《刻まれた勇者》 -クリーチャー(25)- |
4 《感電破》 2 《アーティファクトの魂込め》 4 《オパールのモックス》 3 《バネ葉の太鼓》 2 《幽霊火の刃》 4 《頭蓋囲い》 -呪文(19)- |
2 《はらわた撃ち》 2 《思考囲い》 2 《呪文貫き》 2 《古えの遺恨》 2 《血染めの月》 1 《呪文滑り》 1 《無効》 1 《摩耗+損耗》 1 《墓掘りの檻》 1 《倦怠の宝珠》 -サイドボード(15)- |
--「基本的にはオーソドックスな親和といった感じですが、《幽霊火の刃》が目新しいですね」
河浜 「お試しで入れてみましたが、引いたときはなかなか活躍してくれていますね」
--「さて、親和というデッキは普通サイドボード後は何を抜くものなんでしょうか?」
河浜 「メインのデッキリストによるとは思いますが、基本的には《メムナイト》と、色の付いたカードを抜く感じになります。あとは単体除去が多い相手には、除去られてテンポが取られやすい《鋼の監視者》もよく抜きますね。他は次点で《信号の邪魔者》といったところでしょうか」
対親和同型
河浜 「同型は当たり前ですがアーティファクト対策と、単体除去や《電結の荒廃者》の『接合』を防げる《呪文滑り》を入れます。《刻まれた勇者》はプロテクションの意味がないので全抜きで、《信号の邪魔者》も《大霊堂のスカージ》や2種の蛾土地でビタ止まりしてしまうので減らします」
対欠片の双子
河浜 「《電解》に弱いカードを抜いて、コンボに対する妨害を全力で入れます。サイドボードカードのいずれかでコンボを防いで、《刻まれた勇者》で差しきる戦いになると思います」
対BGジャンク
河浜 「《刻まれた勇者》を生かしたいマッチですね」
--「先手後手でサイドが変わったりはしないんでしょうか?」
河浜 「そうですね、僕はあまり変えてません」
対出産の殻
in 2 《はらわた撃ち》 1 《墓掘りの檻》 1 《倦怠の宝珠》 |
out 2 《メムナイト》 2 《アーティファクトの魂込め》 |
河浜 「地上は固まりやすいので、《アーティファクトの魂込め》は抜きます。《はらわた撃ち》が最強のマッチアップですね」
対バーン
--「《思考囲い》もサイドインするんですね」
河浜 「このへんは人によるとは思いますが、僕は『2点分よりは絶対得する』と考えているので入れるようにしています」
対風景の変容
河浜 「《撤廃》や《謎めいた命令》があるので《アーティファクトの魂込め》は抜いて、あとはやはり《電解》をケアする感じですね」
対トリコロール
河浜 「《摩耗+損耗》は《殴打頭蓋》をケアしつつ《石のような静寂》をワンチャン割れるのでサイドインします。《流刑への道》があるので《アーティファクトの魂込め》は残せませんね」
--「最後に、これから親和を使おうと思っている方にアドバイスなどあれば」
河浜 「親和をうまく使うコツはとにかく一人回しをすることですね。対人戦ももちろん大事ですが、親和ならではの独自テクみたいなのが多くて、慣れないとミスっちゃったりすることが多いです」
河浜 「あとは《電結の荒廃者》の計算に慣れることですね。何を生け贄に捧げるべきか、『接合』の先はどこか、あとは2体いたらできれば2体とも残すようにプレイするべきですし、展開の順番もなるべく遅らせたり、とにかく色々なことができる強力なカードなので、うまく使えるとぐっと勝率が上がると思います」
--「ありがとうございました」