準々決勝: 内川 智晶(千葉) vs. 中村 肇(神奈川)

晴れる屋

By Atsushi Ito


 やはり、というべきか。

 【冒頭の記事】でも述べたとおり、今モダンで一番強いデッキであるバーンが勝ち上がってきた。


僧院の速槍宝船の巡航


 それも、《僧院の速槍》《宝船の巡航》が入った最新型のバーンだ。

 『タルキール覇王譚』のインパクトがいかに凄まじかったかがわかるというものだろう。

 現に、トップ8プロフィールでも「『タルキール覇王譚』で一番モダンに影響を与えたカードは?」という質問に対し、半数以上が《宝船の巡航》を挙げている。

 しかもここで、使い手は菊名合宿の主、プロツアートップ16入賞経験もあるバトルワームの申し子中村 肇なのだ。

 最強のデッキに乗り手も強豪とくれば、これはもう鉄板と言いたくもなる。

 しかし、その中村に唯一スイスラウンドで土をつけた(Round6)のが、マーフォークを駆る内川なのだ。

 元々レガシー勢だという内川のデッキは何と気合満点のフルFoil。まさしく魚への愛がなせる技だろう。

 モダンといえばやり込みがモノを言う環境。そしてカードを全て光らせるまでに至った内川は、さぞかしやり込んでいるに違いない。

 はたして。

 内川の魚たちは身を焦がす炎すらも潜り抜け、中村の喉笛に食らいつくことができるか。





Game 1

 先手は内川。中村の《裂け目の稲妻》待機に対して《広がりゆく海》《蒸気孔》を完全な《島》にすると、2枚目の《裂け目の稲妻》待機に対しても《広がりゆく海》。展開すらも犠牲にして執拗に中村のマナベースを攻撃していく。

 この展開にはさすがに苦笑いを隠さない中村、それでも何とか3枚目の土地=《山》をセットして、内川が《銀エラの達人》2体展開したところでエンド前に《頭蓋割り》を本体に当てると、続けてメインで《溶岩の撃ち込み》、さらに「探査」で2マナとなった《宝船の巡航》をプレイ!

 この動きを見るだけでも《宝船の巡航》の強さが窺い知れるというものだ。

 しかし中村の期待とは裏腹に、3枚のドローを経ても手札に《大歓楽の幻霊》《僧院の速槍》が溜まり、一応他に《稲妻》《頭蓋割り》と6点分の火力はあるものの、赤マナが少なくプランを立てるのが難しい。

 それでも結局ターンエンドで選択を保留した中村だったが、内川に《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》からの《真珠三叉矛の達人》と展開されるとエンド前に本体《稲妻》以外の選択肢がなくなってしまう。

 手札には《頭蓋割り》。内川のライフは5点。

 覚悟を決めてドロー。



中村 肇 


 ……《聖なる鋳造所》

 中村に次のドローは、回ってこなかった。


内川 1-0 中村



Game 2

 1ターン目に《ゴブリンの先達》が走る。マナカーブが歪なマーフォークでは、これを止めるのは至難の業だ。さらに《溶岩の撃ち込み》からの《裂け目の稲妻》と、最大速度で内川のライフが削れていく。

 しかしここで内川は《潮縛りの魔道士》をプレイ。焼いても《ゴブリンの先達》が機能するのは1ターン先になる好手だ。

 クロックの展開をなるべく先送りにしたい中村はこれを「待機」が明けた《裂け目の稲妻》で焼かざるをえず、さらにドローが芳しくないのか、3マナフルタップで《宝船の巡航》を撃ってターンを返すことになってしまう。

 だが続くターンに中村が《僧院の速槍》を走らせると、内川もせっかく展開した《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》《ゴブリンの先達》のブロッカーにまわす羽目に。そこで《欠片の飛来》が「果敢」を誘発しつつ本体に飛び、内川の残りライフは既にわずか8。

 《銀エラの達人》の返しで「上陸」した《焼尽の猛火》を一挙に2枚叩き込むと、内川がぽつりと呟いた。

内川 「……死にますね」


内川 1-1 中村



Game 3

 内田の手札が《霊気の薬瓶》含みの好ハンドなのに対し、中村は土地が4枚に《摩耗/Wear》とあってさすがにマリガン。

 それでも《霊気の薬瓶》に対し《僧院の速槍》を走らせ、続くターンのアタックこそ《蒸気の絡みつき》で防がれるものの、代わりに《摩耗/Wear》で《霊気の薬瓶》を割って必死に食らいつく。

 さらに内川が《銀エラの達人》をプレイしつつも3枚目の土地が置けないというところで、返しに《僧院の速槍》からの《灼熱の血》を当てる!

 ダメージレースで先行した上に一方的にクロックをコントロールする展開になり、逆転の目が見えてきた中村。

 対し、内川はまだ土地が引けない。2枚目の《霊気の薬瓶》を置きつつの《蒸気の絡みつき》で1ターンお茶を濁すが、中村は《溶岩の撃ち込み》《稲妻》《稲妻》と激しく攻め立てる。《否認》で1枚は打ち消すものの、残りライフはわずかに5点。

 それでも、《呪い捕らえ》《真珠三叉矛の達人》と並べ、《霊気の薬瓶》のカウンターが2個というところまで持ってきた内川。



内川 智晶 


 あとは中村が火力を引くかどうか。

 静かにカードを引いた中村はエンドを宣言。内川は《霊気の薬瓶》を起動するが、起動に対応して《灼熱の血》が飛ぶ。残り2点。

 出てきた《幻影の像》はやむなく《呪い捕らえ》になるが、それでも3個のカウンターが乗った《霊気の薬瓶》からようやく《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》が着地。無事回ってきた次のターンには2点アタックに向かわせる。

 このまま……このまま……

 内川の祈る声が聞こえてくるよう。

 そしてそのときは訪れた。

 中村のエンドオブターン。

 カウンターが4個乗った《霊気の薬瓶》を起動!

波使い頭蓋割り


 ……スタック、トップした《頭蓋割り》

中村 「間に合ったー!!」

内川 「くぅ、あと1ターン……!!」


内川 1-2 中村