アメリカでは今週末にエターナルの祭典であるEternal Weekend 2014が開催されます。残念ながらTCG Max Point Series Championshipと重なってしまったので筆者は参加できませんが、Eternal Weekend 2014ではレガシーの最強プレイヤーを決定するLegacy Championshipも開催されるので、どのようなデッキが勝ち上がるのか楽しみです。
さて今回の記事ではStarCityGames.com Open(SCGO) Worcesterの結果を見ていきたいと思います。
SCGO Worcester トップ8 ~優勝は《宝船の巡航》を採用したDeathblade~
2014年10月19日
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1位 Deathblade/デスブレード
2位 Elves/エルフ
3位 UR Delver/青赤デルバー
4位 Temur Delver/秘密を掘り下げる者
5位 Grixis Delver/青黒赤ジャンク
6位 Elves/エルフ
7位 UR Delver/青赤デルバー
8位 Miracles/白青奇跡
2週間振りに開催されたSCGO Worcesterは、SCGO Edisonでも優勝していたUR Delverを初め、多数の入賞デッキに採用されていた『タルキール覇王譚』の新カード《宝船の巡航》入りのDeathbladeの優勝で幕を閉じました。カードの強さは本物で今大会トップ8入りしたデッキの半数が《宝船の巡航》入りのデッキでした。また、SCGO Indianapolisでの凄まじいパフォーマンスも記憶に新しいElvesは今大会でも安定した成績を残しています。
SCGO Worcester デッキ解説
「Deathblade」「Elves」「RUG Delver」「UBR Junk」「Miracles」
3 《Underground Sea》 2 《Tundra》 1 《Scrubland》 1 《Tropical Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 3 《湿地の干潟》 1 《Karakas》 2 《不毛の大地》 -土地(21)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《石鍛冶の神秘家》 2 《真の名の宿敵》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(11)- |
4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《剣を鍬に》 3 《呪文貫き》 3 《思考囲い》 4 《Force of Will》 3 《宝船の巡航》 1 《梅澤の十手》 1 《殴打頭蓋》 1 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(28)- |
2 《翻弄する魔道士》 2 《盲信的迫害》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《外科的摘出》 1 《思考囲い》 1 《狼狽の嵐》 1 《真髄の針》 1 《墓掘りの檻》 1 《大祖始の遺産》 1 《饗宴と飢餓の剣》 1 《至高の評決》 1 《ヴェールのリリアナ》 1 《精神を刻む者、ジェイス》 -サイドボード(15)- |
《宝船の巡航》を搭載した新たな形のDeathblade。UR Delverなど軽いスペルの連打によって墓地を肥やし《宝船の巡航》を最大限に活かすデッキが流行する環境で、相手の「探査」を妨害しつつ、マナ加速によって手数を増やし「探査」をしやすくする《死儀礼のシャーマン》を使ったデッキが活躍するのは自然な流れです。《宝船の巡航》の強さは この手のデッキの定番であった 《精神を刻む者、ジェイス》がサイドに降格させられるほどのようです。相手の墓地を肥やしてしまうため以前よりも使いにくくなった《ヴェールのリリアナ》も減量されています。
今までのDeathbladeと比べるとメインのクリーチャーの数が減らされ「探査」をスムーズに行えるように《呪文貫き》や《思案》、《思考囲い》といった軽いドロースペルや妨害スペルが多数採られており土地も少なめになるなどテンポ寄りの構成となっています。
2 《森》 2 《ドライアドの東屋》 2 《Bayou》 1 《Savannah》 2 《霧深い雨林》 2 《新緑の地下墓地》 2 《吹きさらしの荒野》 2 《樹木茂る山麓》 4 《ガイアの揺籃の地》 -土地(19)- 4 《遺産のドルイド》 4 《クウィリーオン・レインジャー》 4 《ワイアウッドの共生虫》 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《イラクサの歩哨》 3 《樺の知識のレインジャー》 4 《エルフの幻想家》 1 《再利用の賢者》 2 《孔蹄のビヒモス》 -クリーチャー(30)- |
4 《垣間見る自然》 4 《緑の太陽の頂点》 3 《自然の秩序》 -呪文(11)- |
4 《陰謀団式療法》 2 《突然の衰微》 1 《シルヴォクののけ者、メリーラ》 1 《ガドック・ティーグ》 1 《漁る軟泥》 1 《再利用の賢者》 1 《大祖始》 1 《外科的摘出》 1 《思考囲い》 1 《自然の秩序》 -サイドボード(14)- |
今大会でも準優勝者が1名とトップ8入賞者が1名と安定した成績を残し続けているElves。《緑の太陽の頂点》や《自然の秩序》のサーチ対象として 《ガドック・ティーグ》や《シルヴォクののけ者、メリーラ》なども採用されています。《ガドック・ティーグ》はコンボ対策は勿論のこと、「探査」によって本来よりも安いコストでキャストされるため忘れられがちですが8マナスペルである《宝船の巡航》も封じることが可能です。
《シルヴォクののけ者、メリーラ》はInfect対策です。最近はDelver系の隆盛により以前よりも数を減らしているものの万が一踏んでしまった時の保険として採用されているようです。
3 《Volcanic Island》 3 《Tropical Island》 2 《沸騰する小湖》 2 《霧深い雨林》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《汚染された三角州》 4 《不毛の大地》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 3 《若き紅蓮術士》 3 《タルモゴイフ》 -クリーチャー(10)- |
4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 3 《もみ消し》 3 《呪文貫き》 2 《二股の稲妻》 4 《目くらまし》 1 《森の知恵》 4 《Force of Will》 3 《宝船の巡航》 -呪文(32)- |
3 《外科的摘出》 3 《狼狽の嵐》 3 《クローサの掌握》 2 《紅蓮破》 2 《梅澤の十手》 1 《赤霊破》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -サイドボード(15)- |
長い間環境に存在し続けていたTemur Delverも《宝船の巡航》の登場によりデッキの構成に大幅な変化が見られます。
まず目にするのが長らくレギュラーを務めていた<敏捷なマングース>の不在です。「探査」はその性質上スレッショルドとの相性が悪いためTemurで《宝船の巡航》を活用する場合はスレッショルドは諦めざるを得ないのが現状です。結果を出している所を見る限り《宝船の巡航》のために《敏捷なマングース》を手放した価値は十分にあったようです。
Joan Anton Mateoのリストは《敏捷なマングース》の枠に《若き紅蓮術士》を採用しています。《森の知恵》もメインから採用しているため《宝船の巡航》と合わせて持久戦に強くなり、従来のTemur Delverよりも中盤以降のゲームに強くなっているのが特徴です。革新的なリストですが今大会でも安定した成績を出していたElves対策が少なかったため惜しくも準々決勝でElvesに敗れてしまいました。《梅澤の十手》はElvesに対して強いカードですが相手の展開によっては間に合わないこともあるので全体除去になる《Rough》も数枚欲しい所です。
3 《Volcanic Island》 2 《Tropical Island》 2 《Underground Sea》 4 《溢れかえる岸辺》 2 《霧深い雨林》 1 《沸騰する小湖》 4 《不毛の大地》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《死儀礼のシャーマン》 3 《若き紅蓮術士》 2 《真の名の宿敵》 -クリーチャー(13)- |
4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 4 《もみ消し》 3 《ギタクシア派の調査》 1 《呪文貫き》 1 《二股の稲妻》 4 《目くらまし》 4 《Force of Will》 -呪文(29)- |
3 《渋面の溶岩使い》 3 《紅蓮破》 2 《呪文貫き》 2 《陰謀団式療法》 2 《墓掘りの檻》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《古えの遺恨》 1 《四肢切断》 -サイドボード(15)- |
UR Delverに《死儀礼のシャーマン》、 《陰謀団式療法》、《四肢切断》、《古えの遺恨》のために黒と緑を足した型。《死儀礼のシャーマン》のマナ加速能力の恩恵を受けて《真の名の宿敵》や《ヴェンディリオン三人衆》といった3マナ域のクリーチャーも無理なく運用可能になり、《不毛の大地》や《目くらまし》などマナ否定戦略も取りやすくなっています。
軽いスペルが多く採用されているにも拘らずDelver系のデッキを中心に青いデッキがこぞって採用している 《宝船の巡航》は不採用と流行に流されず我が道を行く構成です。
2 《島》 1 《山》 4 《Volcanic Island》 4 《沸騰する小湖》 4 《霧深い雨林》 1 《汚染された三角州》 1 《樹木茂る山麓》 -土地(17)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《僧院の速槍》 4 《若き紅蓮術士》 -クリーチャー(12)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 2 《二股の稲妻》 1 《Chain Lightning》 4 《目くらまし》 4 《Force of Will》 4 《宝船の巡航》 -呪文(31)- |
3 《紅蓮破》 3 《発展の代価》 2 《渋面の溶岩使い》 2 《墓掘りの檻》 2 《血染めの月》 1 《真髄の針》 1 《粉々》 1 《硫黄の渦》 -サイドボード(15)- |
SCGO Edisonで優勝を収めていたUR Delver。以前からも存在したDelver系の型の一つである青赤クロックパーミッションですが、《宝船の巡航》の登場で息切れすることが少なくなり中盤以降も攻め続けることが可能になっているのが特徴です。
《血染めの月》の他にも《発展の代価》も採用しているためSultaiなど基本地形を採用していないデッキに対して強い構成です。特にSCGO Edisonで優勝していたBob Huangのリストには《発展の代価》が採用されていなかったので大会中は警戒しているプレイヤーも少なかったことが予想されます。
今大会でも2人の入賞者を出し、SCGO Edisonでの活躍がフロックではなかったことが証明されました。
5 《島》 2 《平地》 1 《山》 3 《Tundra》 1 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 1 《乾燥台地》 2 《Karakas》 -土地(23)- 1 《瞬唱の魔道士》 3 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《造物の学者、ヴェンセール》 -クリーチャー(5)- |
4 《師範の占い独楽》 4 《渦まく知識》 3 《剣を鍬に》 2 《赤霊破》 3 《相殺》 2 《対抗呪文》 2 《天使への願い》 1 《議会の採決》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 4 《Force of Will》 4 《終末》 -呪文(32)- |
2 《石鍛冶の神秘家》 2 《紅蓮破》 2 《狼狽の嵐》 2 《安らかなる眠り》 1 《剣を鍬に》 1 《紅蓮地獄》 1 《議会の採決》 1 《天使への願い》 1 《至高の評決》 1 《誤った指図》 1 《殴打頭蓋》 -サイドボード(15)- |
最近は《宝船の巡航》を使ったデッキに押され気味でしたが、元々のデッキパワーの高さもあり今大会入賞を果たしました。
《造物の学者、ヴェンセール》+《Karakas》のコンボは同系や中速デッキよりもDelver系が多くなってきた現環境では少し遅い印象ですが、ソーサリースピードで「探査」を満たすために墓地を肥やす必要のある《宝船の巡航》に対してはほぼ確定カウンターのように機能します。《赤霊破》はこれだけ《宝船の巡航》が使われている環境ではメイン採用も頷けます。
《安らかなる眠り》は「探査」のために墓地を肥やすデッキが多いこの環境では最も効果的な墓地対策で、今後のメタ次第ではメインに昇格することも予想できます。
ボーナストピック
惜しくもトップ8は逃しましたが、今大会トップ16に入賞していたデッキもそれぞれ興味深いアプローチを施しています。
いくつか見ていきましょう。
1 《島》 1 《沼》 4 《Underground Sea》 4 《汚染された三角州》 1 《溢れかえる岸辺》 1 《沸騰する小湖》 1 《血染めのぬかるみ》 1 《湿地の干潟》 -土地(14)- 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 4 《グリセルブランド》 1 《潮吹きの暴君》 1 《灰燼の乗り手》 1 《エメリアの盾、イオナ》 -クリーチャー(8)- |
4 《水蓮の花びら》 4 《納墓》 4 《入念な研究》 4 《渦まく知識》 4 《再活性》 3 《思考囲い》 2 《思案》 3 《目くらまし》 4 《死体発掘》 4 《Force of Will》 2 《時を越えた探索》 -呪文(38)- |
3 《実物提示教育》 2 《真髄の針》 2 《呪文貫き》 2 《残響する真実》 2 《虐殺》 1 《墓所のタイタン》 1 《墨溜まりのリバイアサン》 1 《方向転換》 1 《棺の追放》 -サイドボード(15)- |
高速で大型クリーチャーを墓地から釣り上げるReanimator。今大会トップ8には一歩及ばなかったものの、コンボ対策が減少傾向にあったメタゲームを上手く読み切り見事トップ16に3人輩出しました。
デッキの構成上墓地を肥やすことに長けるので《時を越えた探索》の「探査」コストを支払うのも容易です。特定のカードを探す必要のあるコンボデッキではカードを7枚見ることの出来る《時を越えた探索》の方が《宝船の巡航》よりも優れています。墓地に大きく依存するデッキなため多くのデッキが「探査」対策として採用している墓地対策に引っかかってしまうのが難点ですが、墓地を利用せずファッテイを場に出す手段として《実物提示教育》もしっかりサイドに採られています。
3 《Tropical Island》 3 《Underground Sea》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 1 《新緑の地下墓地》 4 《不毛の大地》 -土地(19)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《タルモゴイフ》 -クリーチャー(12)- |
4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《もみ消し》 4 《目くらまし》 4 《突然の衰微》 1 《ディミーアの魔除け》 4 《Force of Will》 4 《宝船の巡航》 -呪文(29)- |
3 《見栄え損ない》 2 《墓掘りの檻》 2 《呪文貫き》 2 《寒け》 2 《ゴルガリの魔除け》 1 《忍び寄るタール坑》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《暗黒破》 1 《無のロッド》 -サイドボード(15)- |
SCGO EdisonではUR Delverを使って見事に優勝を収めたBob Huang。惜しくもトップ8は逃したものの、今大会は《宝船の巡航》入りのSultai Delverでトップ16に入賞していました。
ハンデスはメイン、サイド共に不採用なのが特徴です。「探査」をしやすくするためにフェッチランドを多めに採っているデッキが多いので、それらのデッキに対してメインから4枚採用されている《もみ消し》が活躍したことが予想されます。《ヴェールのリリアナ》も不採用なので、ハンデスは完全に切ってマナ否定戦略に切り替えたようです。
メインに1枚だけ採用されている《ディミーアの魔除け》は「探査」のために墓地を肥やすことが可能で、《被覆》のモードも《実物提示教育》や 《天使への願い》、《終末》、《冥府の教示者》などゲームを決定付けるソーサリーをカウンターできるので地味ながら活躍が期待できます。《寒け》は赤いスペルの多いUR Delverに対しても強さを発揮しそうです。
総括
《宝船の巡航》はDelver系など軽いキャントリップスペルを多用する青いデッキを中心に採用され、Temur Delverはスレッショルドを諦めるなど《宝船の巡航》を活用するためにデッキの構成を大きく変化させるに至りました。
他のデッキも優勝したDeathbladeは《精神を刻む者、ジェイス》よりも優先して《宝船の巡航》を採用し中速デッキからテンポ寄りの戦略にシフトし、Sultani Delverも黒を足す理由の一つであったハンデスや《ヴェールのリリアナ》を解雇し黒は除去の《突然の衰微》やマナ加速兼墓地対策の《死儀礼のシャーマン》のためだけに絞るなど、環境に存在する多くのデッキの構成を変えるほどの影響力です。
前回インタビューに協力してくれたStephen Mannが予想していたように、現在のレガシーは如何に《宝船の巡航》を活用していくかが勝利のカギとなるようです。
以上で今回の解説を終わります。
次回の記事ではSCGO MinneapolisとSCGO Oakland、Legacy Championshipの解説を予定しています。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーを!
※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『SCGO Worcester event coverage』
http://www.starcitygames.com/events/181014_worcester.html