what we need -KTKドラフト環境分析 part1-

金 民守



■環境定義

いつもどおりまずは環境定義から。


一度でも『タルキール覇王譚』でドラフトをしたことがある人ならわかるはずだが、この環境の全ては「変異」というシステムを中心に構築されている。


クルーマの盟族氷河の忍び寄り雪角の乗り手


「変異」システムの最大の特徴はその独特のゲームテンポである。

現環境は今までになくデザイン側がゲームスピードをコントロールしようという意図が見える環境で、「3ターン目に2/2を出して5マナでフェイスアップする」という動きが多くのアーキタイプの基本速度となっている。

この一連の動きの中でタイムラグとも言える空白の4ターン目に各アーキタイプがどのような動きをするか、そして3ターン目の生物の基本サイズが2/2であることに対してどのようなアプローチをとるか、などがこの環境を考える上でのひとつの軸になる。



次にマナベース

コモンに豪華10種類用意された2色土地はデザイン側からのこれ以上なく明白なメッセージだ。


花咲く砂地ジャングルのうろ穴急流の崖


これに無色の3マナ2/2の供給が事実上無制限であることもあいまって、従来の環境に比べて3色以上の組み合わせが安定して回るように環境が整備されていると言っていいだろう。その上で3色の組み合わせは各氏族のコモン「変異」が強力なので基本的に氏族のどれかを選ぶことになるが、氏族によって土地の重要度が異なる点は意識しよう。

また、「変異」はフェイスアップする前と後で場に与えるインパクトが果てしなく差があるので、片方が4マナでストップしてしまうと簡単にワンサイドゲームになるという点もとても重要だ。通常であれば4マナあってデッキが回らないのは構築のミスとなるが、現環境ではそうではない。「変異」を主戦力に据える限り、とにかく5ターン目まで土地を止まらずに置くことが重要になってくるため、多くのアーキタイプで土地18枚が推奨されることは覚えておこう。



最後に除去とコンバットトリックについて。


絞首大蛇の儀式龍鱗の加護


前言の通り片方だけがフェイスアップをしてしまう展開がワンサイドゲームを助長する反面、押し切れなかった際に双方が6マナ揃えて強力なカードを「変異」を経由せずにどんどん場に並べる展開になると、途端にロングゲームになる。ロングゲームにおいて除去の厚さはそのまま勝利につながるが、それ以前の「変異」を経由するゲーム展開ではジャイグロ系のスペルがより有用になる。

自分のデッキがどういうゲームプランを目指すのかをしっかり認識した上でスペル枠の配分を決めよう。この環境の除去は重いものが多く、ドラフト中盤以降でも十分確保が期待できるので、いつもと違ってある程度自分の意思に沿った枚数の除去を確保することが可能だ。



■アーキタイプについて

次にアーキタイプごとの解説に移ろう。

人気の高さからくる需要と供給の問題を抜きにしてシンプルに環境最強を決めるのなら、それは白黒タッチ赤でまず間違いない。


マルドゥの軍族長子馬乗り部隊戦場での猛進


1マナから展開して序盤を掌握する、この環境では異例の前のめりな構成は”重くて強い”という「変異」プランに対して単純に速度で有利であり、1体の生物に2度コストを払うことで必然的に点で攻める形になる「変異」戦略に対するトークン系のカードを全体強化して押し込む面でのアプローチの有効度と合わせて、その相性差は無視できない。


2番手は同じく白黒ベースの白黒緑だ。横の展開力で白黒赤に劣るもののアンコモン以上の高得点カードの質と量は環境随一。


3番手は黒緑青と、赤白+黒or青がほぼ同率で並ぶ。黒緑青は優秀なドロースペルと緑のファッティ、飛行、除去、序盤の壁役と、ひと通りミッドレンジ戦略が欲する駒が揃っているが、トークンなどで横に並べての全体強化に対する回答に困ることが多い。白赤は黒の「長久」パーツが無くなることでロングゲームに弱くなる点がやはり大きく、色的には丸々かぶる白黒+赤とは別アーキタイプと考えたほうがいい。


残る二つのアーキタイプ、白青+赤青緑赤は不人気アーキタイプと言っていいだろう。単体のカードパワーの問題もあるが、それ以上にこれらのアーキタイプは動きがあまりにも標準的過ぎる点が問題だ。あまりにも直球な「変異」戦略では非「変異」系のビートにテンポで負け、ロングゲームではボードコントロール力に優れた黒緑青の後塵を拝むことになる。しかしアンコモン以上のカードでそれらの欠点を覆すことは可能であり、不人気だからこそのカード供給の潤沢さを加味して考えると、決して単純に切り捨ててよい選択肢ではない。


次に各アーキタイプごとの具体的なカード優先度について言及する。まずは白黒系ビートの二つについて。



■白黒+赤or緑

▲コモン優先度

アイノクの盟族

1位 《アイノクの盟族》

単体で序盤から終盤まで安定した働きを見せる上に、色々なカードと簡単に噛み合う2マナのエース
《抵抗の妙技》との組み合わせは強烈。
アンコモン以上とのシナジーは「接死」+「先制」や「飛行」+「先制」など、勝利に直結するものばかり。


2位 《消耗する負傷》

貴重な2マナ除去。除去の弱体化を推し進める昨今のバランス調整の結果、競合する除去が軒並み4~6マナとハイコストに設定されていてこのカードの代えの利かなさが際立つ。《アイノクの盟族》とどちらを優先するかは意見が分かれるかもしれないが、黒緑と違い白黒では捌くよりも攻めることを優先するためにこちらを2位に。


抵抗の妙技

3位 《抵抗の妙技》

ただただ強い。五分な場で相手の除去に合わせることができれば大体それでゲームが決まる。
除去の的になるようなインパクトのある生物が除去を弾いた上に一回り大きくなって殴ってくるんだから相手はたまらないだろう。
「長久」との噛み合いは言わずもがな。


4位 《マルドゥの軍族長》

3ターン目のベストアクション
デザイナーの意図した環境スピードを白黒が一人でぶっちぎっているのは、このカードと《戦場での猛進》との組み合わせによるところが多い。


同率5位 《雪花石の麒麟》《縁切られた先祖》《マルドゥの頭蓋狩り》
縁切られた先祖


1枚目の優先度は《縁切られた先祖》だが、枚数があってうれしいのは《マルドゥの頭蓋狩り》なため柔軟に取捨選択する必要がある。

一方《雪花石の麒麟》はいわゆる“ただツヨ”パーツなのでこの3枚を並列に並べるのに違和感を覚える人もいるだろうが、白黒では4マナ域をこのカードの代わりに中盤以降に補充できる《不撓のクルーマ》で代替えしても勝利貢献度がそこまで下がらないために他のアーキタイプに比べて優先度が若干落ち、対する後者2枚は2マナ以下のアタッカーを5~7枚程度確保することを目指した白黒での需要の高さを加味してこの位置で評価した。

もちろん《雪花石の麒麟》が白黒に合わないということはない。白黒は相手の「変異」がフェイスアップする直前に相手にチャンプブロックを強いる形で《戦場での猛進》を使う展開が珍しくないので、そうなった場合の残りのライフを詰める手段としてこのカードは優秀であり、《雪花石の麒麟》が取れなかった場合に他の飛行クリーチャーや除去、もしくは二の矢としての《戦場での猛進》など、最後の数点を押し込むパーツがデッキ内に必要になってくることは意識しておこう。


8位 《子馬乗り部隊》

2マナ圏が十分に埋まる見込みが立ったなら《雪花石の麒麟》の次点に上方修正していい。
ドラフト中盤以降でマナベースに不安がある場合は多色土地を優先して取ろう。


花咲く砂地

同率9位 《花咲く砂地》《ジャングルのうろ穴》《風に削られた岩山》《磨かれたやせ地》《血溜まりの洞窟》

土地の扱いはデッキの構成によって大幅に変わる。

白黒+赤の場合は比較的3色目をタッチにとどめやすいが、白黒緑の場合は均等3色に近づく傾向にあるので意識して土地を取る必要がある。

緑が均等3色になりやすい要因としては、タッチ赤のパーツはチャームなどの除去やアンコモン以上のフィニッシャーなどある程度キャストが遅れることが許容されるパーツになりがちであることに対して、タッチ緑のパーツはジャイグロなど、より「いつ打つかによって強さが変わるパーツ」を担うことが多いことが第一に挙げられる。

その他にも白赤、赤黒の土地に対して黒緑、白緑の土地が若干高いことも理由の一つになる。黒緑と白赤の比較は単純に青黒緑と白青赤のギルドの人気差による部分だ。赤黒と白緑の対比に関しては、3番人気のギルドである黒緑青のタッチ需要で決まる。《アブザンの先達》に代表される後からまくるタイプのカードや《大物潰し》などの除去などはタッチ白を検討する理由になるが、赤の強いカードは総じて黒緑青のゲームプランとかみ合わないものが多い。


同率14位 《スゥルタイのゴミあさり》《長毛ロクソドン》

白黒2色でドラフトが進んでいる場合は《スゥルタイのゴミあさり》を優先し、すでにタッチ緑が決まっている場合は《長毛ロクソドン》を優先する。
《スゥルタイのゴミあさり》は「探査」という能力から黒緑青のパーツというイメージが強いが、何気に種族が「戦士」なので白黒で5マナ3/3飛行として運用しても雑に強い。


16位 《アブザンの先達》

3ターン目に「変異」で出して4ターン目に殴って相手の「変異」とぶつかったところで《龍鱗の加護》で強化すれば、その後3色5マナそろえるだけでそのままゲームに勝てる。


戦場での猛進

17位 《戦場での猛進》

重要パーツではあるが他のアーキタイプにつままれないので需要は低く、優先度はこの程度だろう。
既に言及したがこのカードはフィニッシュ専用というわけでなく、5ターン目に3~4体並んだ状態で殴ってフェイスアップ前の「変異」に1/1トークンとの相打ちを強要するような使い捨ての打ち方も有用なので、複数枚の投入が肯定される

特にタッチ赤の場合には良い働きをする。対して均等気味の白黒緑では《龍鱗の加護》よりも優先度が下がるが、《長毛ロクソドン》などが「戦士」なため、1枚入っていても《龍鱗の加護》とは違う働きをして邪魔にはならない。


18位 《不撓のクルーマ》

とても良い動きをするが完全に白黒専用なため優先度はこの程度で十分確保できるだろう。


同率19位 《マルドゥの悪刃》《絞首》《大物潰し》《龍鱗の加護》《マルドゥの戦叫び》

白黒の理想の除去の枚数2枚だ。《消耗する負傷》は別格として、それ以外の除去の選定基準は「1.ブロッカーを除去できるか、2.《アブザンの先達》を除去できるか」の2点になる。
《マルドゥの戦叫び》は均等3色気味の「変異」が多めに入った構成での評価だ。理想とする形ではないがアンコモン以上のパワーカードが偏って出た場合などはそのような構成になることも珍しくない。


同率23位 《クルーマの盟族》《苦々しい天啓》《必殺の一射》《熊の覚醒》

《苦々しい天啓》は必須パーツではないのでデッキの完成度が高い場合は入らないが、《死の投下》が取れた際には意識して確保するようにしよう。
《必殺の一射》はタッチ赤ではそうそう入るパーツではないが、白黒緑でテンポよりもサイズで押すプランの場合は検討に値する。
《熊の覚醒》《強大化》と組み合わせて鋭角にゲームを決めるので、ドラフトの位置取りが苦しい場合などは上ブレ狙いで意識するのもアリ。


同率27位 《打ち倒し》《大蛇の儀式》《賢者眼の侵略者》《塩路の巡回兵》

ここまでがプレイアブル
《打ち倒し》は見た目よりもずっと弱いので均等3色気味なときにのみ採用を検討する。
《賢者眼の侵略者》《略奪者の戦利品》が取れた場合に意識して1枚確保してあげても良い。


軍用ビヒモス

同率31位 《軍用ビヒモス》《峡谷に潜むもの》《アイノクの足跡追い》《殻脱ぎ》

18枚目の土地と比べて状況次第でプレイアブルに格上げされるライン。
《峡谷に潜むもの》は基本的に赤白で《石弾の弾幕》とかみ合わせるためのカードで、白黒ではカードが足りないときのギリギリ23枚目のカードだが、こちらが後手で相手の5ターン目の「変異」アタックをブロックする時には珍しく輝くので投入した際には意識して「変異」を出す順番に気をつけよう。
《軍用ビヒモス》はこの中では一番穴埋め感が薄いカード。タッチ緑で《族樹の発動》が取れたときは少し検討してあげよう。
《殻脱ぎ》はデッキが弱いときには意識して確保しよう。雑だが展開次第で無理やり2勝できたりする。




▲<アイノクの盟族>よりも優先するアンコモン

アブザンの鷹匠

1位 《アブザンの鷹匠》

強いことしか書いていない。


同率2位 《マルドゥの心臓貫き》《軍備部隊》

コスト以外全部強い。


同率4位 《残忍な切断》《アブザンの戦僧侶》《刃の隊長》

《アブザンの戦僧侶》はマナカーブ次第で《アイノクの盟族》を優先しても良い。
3パック目で2マナ以下が薄い状態での《残忍な切断》《アイノクの盟族》の二択は微妙な問題だが《残忍な切断》を優先するケースのほうが多い。低マナが薄いということは必然的にパワーカードが多く取れているはずなので、《ジェスカイの学徒》をプレイアブルに格上げして2マナ域を埋め、テンポよりもカードパワーで押す形にドラフトの舵を切ろう。



▲<アイノクの盟族>よりも優先するレア
風番いのロック真面目な訪問者、ソリン


《風番いのロック》
《真面目な訪問者、ソリン》
《アブザンの隆盛》
《アナフェンザの伝令》
《包囲サイ》
《幽霊火の刃》
《先頭に立つもの、アナフェンザ》
《砂塵破》
《アラシンの上級歩哨》
《火口の爪》
《血に染まりし勇者》
マルドゥの隆盛対立の終結

《軍族の解体者》
《マルドゥの隆盛》
《兜砕きのズルゴ》
《足首裂き》
《対立の終結》
《完全なる終わり》
《象牙牙の城塞》


以上。白の強いカードたちでした。

《象牙牙の城塞》に関しては3パック目で低マナが足りてない且つ「長久」などの+1/+1カウンターが乗るカードが2枚以下なら《アイノクの盟族》を優先しても良い。



▲2パック目で白黒から白赤にシフトする価値のあるカード

《龍語りのサルカン》
《灰雲のフェニックス》


3色で無理やり使うより大胆に赤に切り込もう
白赤メインのデッキについては解説を次回に譲る。


▲サンプルデッキ


「サンプルデッキ:白黒+赤」

7 《平地》
6 《沼》
2 《血溜まりの洞窟》
1 《風に削られた岩山》
1 《磨かれたやせ地》

-土地(17)-

2 《縁切られた先祖》
2 《マルドゥの頭蓋狩り》
2 《アイノクの盟族》
1 《刃の隊長》
2 《マルドゥの軍族長》
1 《アブザンの鷹匠》
1 《マー=エクの夜刃》
1 《不撓のクルーマ》
1 《クルーマの盟族》
1 《子馬乗り部隊》
1 《スゥルタイのゴミあさり》

-クリーチャー(15)-
1 《抵抗の妙技》
3 《戦場での猛進》
1 《武器を手に》
1 《停止の場》
1 《マルドゥの隆盛》
1 《略奪者の戦利品》

-呪文(8)-
hareruya





※ポイント
・「変異」への依存度を下げることで土地17枚で運用できる。
・気をつけないと4マナが太って動きがもっさりするのでマナカーブデザインに気をつけよう。
・基本的な勝ちパターンは横に並べてからの《戦場での猛進》だが、致死量まで生物を貯めるだけでなくつなぎで打つ選択肢も考えてプレイすると勝率が上がる。





「サンプルデッキ:白黒+緑」

5 《沼》
4 《平地》
4 《森》
2 《花咲く砂地》
1 《砂草原の城塞》
1 《磨かれたやせ地》
1 《ジャングルのうろ穴》

-土地(18)-

2 《縁切られた先祖》
1 《マルドゥの悪刃》
1 《道の探求者》
1 《アイノクの盟族》
1 《マルドゥの頭蓋狩り》
1 《マルドゥの軍族長》
1 《雪花石の麒麟》
1 《不撓のクルーマ》
1 《軍備部隊》
1 《象牙牙の城塞》
1 《アブザンの先達》
2 《長毛ロクソドン》

-クリーチャー(14)-
1 《抵抗の妙技》
1 《族樹の発動》
1 《必殺の一射》
2 《龍鱗の加護》
1 《戦場での猛進》
1 《大蛇の儀式》
1 《消耗する負傷》

-呪文(8)-
hareruya





※ポイント
・均等3色気味になる前提で土地を確保する。
・タッチ赤に比べて「戦士」シナジーの依存度は下がることから《縁切られた先祖》の優先度を下げる人もいるだろうが、序盤の壁として全幅の信頼が置け、1ターン目《縁切られた先祖》からの《族樹の発動》のイージーウィンがあるため、タッチ赤と違う意味合いで重要。





以上、まずは環境の大本命である白黒ビートについて解説したがいかがだっただろうか。
次回は黒緑青と赤白+黒or青の解説を予定している。

最後に今更であるがドラフトの基本的なコツについて言及しよう。


まずは環境の強いデッキというのを具体的にイメージできるようにする。

そしてドラフト中は1ピックごとにその青写真との差分を埋めていく。



という方法だ。

とても単純で自然に身についてる人も多いかと思うが、だからこそあまり言及されることもないので、ドラフト中にピックが右往左往しがちな人はこれを意識するとよいかもしれない。

ここでイメージする成功例は、そのバリエーションが多ければ多いほど状況ごとに柔軟な、もしくは大胆な対応が可能になる。そして引き出しが多くなって場合分けの細分化が進めば、確実に勝率はついてくる。この記事を読んであなたの引き出しがひとつでも増えたのなら幸いだ。

締めが冗長になるのは悪い癖だ。そろそろ筆をおこう。最後まで読んでくれてありがとう。

全てのPTQプレイヤーに幸運を。あなたのファーストピックが《風番いのロック》であることを祈る。