By Kazuya Hirabayashi
ベスト8にデルバーただ一人。
そう、『タルキール覇王譚』発売以降話題を浚った《宝船の巡航》を使ったデッキはただ一人しか残らなかった。
その他のデッキはジャンド、ANT、ミラクル、オムニテル、スニークショウ、エルフ……と実に多彩。
とりわけコンボデッキが多い。これが今回の第2期レガシー神挑戦者決定戦の所感になる。
だがその中でもとりわけ異彩を放つのが坂本の使用デッキ。
一見ゾンバードメント(Sam Black制作の《ゴブリンの砲撃》を駆使したゾンビデッキ)に見えるものの、要となる《ゴブリンの砲撃》が入っておらず、脇を固めるのが《剣を鍬に》《盲信的迫害》などなど。
モダンの白黒トークン風でありつつも、《死儀礼のシャーマン》《闇の腹心》とジャンクのような戦略をも併せ持つ。
便宜上白黒ゾンビと評させてもらったが、一言では説明しがたい大変個性的なデッキだ。
そうそう、『統率者2014』から《悪意の苦悶》が入っていることもポイントかもしれない。
そんな坂本のゾンビ軍団、今日の成績はスイスラウンド1位抜け。見事なスコアである。
さていつも使っているという坂本の白黒ゾンビと対決するのは、わずかなオポーネントマッチパーセンテージを潜り抜けて8位通過した村瀬のスニークショウ。
白がタッチされていたり、サイドボードに《ゴブリンの熟練扇動者》が入っていたりという特徴はあるものの、メインは基本に忠実な構成だ。
アーキタイプ的にもど真ん中とも言えるスニークショウに、坂本の白黒ゾンビが立ち向かえるのかどうか。
Game 1
スイスラウンドの順位と変わり、ダイスロールにてスニークショウの村瀬が先手を取る。
だがここで先手を取れたと喜んだのいけなかったか、村瀬はダブルマリガンを喫してしまう。一方の坂本も7枚では満足いかず、6枚でのキープとなった。
村瀬は土地をセットの前にペイ2ライフ。
この構えは……お約束の《ギタクシア派の調査》。
1 《屍肉喰らい》
2 《闇の腹心》
1 《暗黒破》
1 《未練ある魂》
1 《Scrubland》
坂本の手札が公開され、見慣れぬ《屍肉喰らい》のテキストを確認すると、《古えの墳墓》《水蓮の花びら》と展開してターンを返す。
「ショーテル系かぁ」とうめく坂本。
それもそのはず、坂本のゾンビ軍団は盤面でのゲームプランに滅法強いものの、コンボ耐性はほとんど無いからだ。
坂本が手札そのままに《墓所這い》でスタートを切ると、村瀬は《古えの墳墓》を追加しての小考。
若干の逡巡は手札のドローに《水蓮の花びら》を費やすかどうかか。
だが一度確認した坂本の手札に明確な脅威は無い。ここは待つ猶予があると判断したのだろう、そのままターンを終了する。
メインボードでコンボ対策がほとんど取られていない坂本、《陰謀団式療法》を引かない限りはゾンビ軍団で愚直に攻め続けるのみ。
《墓所這い》でアタックすると、引いた《悪臭の荒野》《闇の腹心》を追加。
村瀬の手札が弱いことを、ただただ祈ることしか出来ない。
ここで村瀬は《溢れかえる岸辺》をトップデッキ。
《Volcanic Island》をサーチすると、待ち兼ねていた《思案》をプレイ。
ここではじっくり考えた上で並べ替えてトップに戻す。
一方の坂本は《闇の腹心》が《Scrubland》を手札に加え、2枚目の《闇の腹心》《屍肉喰らい》とただ並べターンを返すことしか出来ない。
村瀬の第4ターン。
2枚の《古えの墳墓》がタップされる。《Volcanic Island》から赤マナ。《騙し討ち》。
《水蓮の花びら》から赤マナ。《騙し討ち》が起動される。
《引き裂かれし永劫、エムラクール》一閃。
坂本の場が《屍肉喰らい》を残し、《引き裂かれし永劫、エムラクール》に食い尽くされてしまう。
ライフが減っていなかった坂本は《引き裂かれし永劫、エムラクール》に抉られつつも僅かな可能性を残すのだが、ここでは土地を置けず……ターンエンド。
ターンが返ってきた村瀬がすぐさま《Volcanic Island》をタップすると、坂本が思わず「まじかぁ」と零す。
ダブルマリガンからの4ターン目エムラシュート、はたして村瀬は二の矢を持っていた。
忌まわしい《グリセルブランド》が戦場に降り立ち、坂本に死を宣告する。
村瀬 貴弘 |
坂本 0-1 村瀬
Game 2
さてサイド後となる2ゲーム目。
手札を激しくシャカシャカさせる村瀬と、手札を持ったままキープを考える坂本、実に対照的である。
悩んだ後に坂本がキープの決断を下すと、村瀬は即座にマリガンを宣言。一本目を取り勢いづいているのか、手に力が入るのを隠せない様子だ。
いや、初手でかなりの部分が決まってしまうコンボゆえか。
坂本 「ダブマリこい(苦笑)」
偽らざる本心だろう、だが「ダブマリに負けてるからなぁ……」と弱気な発言も。
だが実際そうなのだから仕方ないか。
さて坂本は第1ゲーム目同様、このデッキの基本行動ともいえる《Scrubland》から《墓所這い》から。
一方の村瀬は《島》を置くと《思案》。
カードをトップに戻してドローを経た後、《水蓮の花びら》を置いてターンを返す。
続く坂本のターン《墓所這い》で攻撃を仕掛けると、これがサイド後の強みとばかり《陰謀団式療法》を。
坂本 「《渦まく知識》を宣言します」
1 《渦まく知識》
1 《Force of Will》
1 《島》
1 《沸騰する小湖》
これが見事に刺さり、続けてのフラッシュバックで《Force of Will》をも奪い去ると、《師範の占い独楽》をプレイしてターンを終了する。
村瀬は《沸騰する小湖》から《Tundra》を調達すると、秘密兵器《安らかなる眠り》をプレイ。坂本の《墓所這い》をゲームから追放する。
見た目上はただそれだけの出来事だが、坂本のデッキは《屍肉喰らい》《陰謀団式療法》など、《墓所這い》前提で構築されているし、他にも《死儀礼のシャーマン》が墓地のリソースを必要としているため潜在的な影響は大きい。
だがダブルマリガン後の戦略としてはやや弱いか、坂本が《師範の占い独楽》から《屍肉喰らい》《死儀礼のシャーマン》と呼ぶと村瀬は何も出来ない。
各種シナジーが無くともクリーチャーは確実なクロックを刻み続ける。
押せ押せの坂本は《師範の占い独楽》起動から《陰謀団式療法》を調達すると、指定《実物提示教育》。
1 《グリセルブランド》
1 《安らかなる眠り》
だが今回は指定を外し、指定は外れて《陰謀団式療法》は《安らかなる眠り》の手によりフラッシュバックの間を与えられずゲームから追放されてしまう。
地味ながら《安らかなる眠り》が機能している展開になっている。
坂本は《真髄の針》を続け、見えた《グリセルブランド》を指定して安全を確保。
パワー1軍団でもライフを削れ切れる時間を確保しようとする構えだ。
ここで村瀬がトップデッキした《渦まく知識》をプレイすると、その中に《実物提示教育》があったため坂本の危惧する展開そのままに《グリセルブランド》が盤面に登場。
ドロー能力自体は《真髄の針》で封じ込めているものの、「7/7飛行、絆魂」のプレッシャーは坂本にはあまりに大きい。
動けなくなった坂本。
こうなるとただダメージレースを敢行するだけで良くなった村瀬、フェッチの恩恵により再び《渦まく知識》から《騙し討ち》をプレイすると、《グリセルブランド》でダメージレースを逆転させてしまう。
ライブラリーをリフレッシュさせる必要の出てきた坂本はここで《悟りの教示者》。
《真髄の針》(指定《騙し討ち》)から《闇の腹心》を追加し、わずかな可能性にかける。
そしてライブラリー、いや《師範の占い独楽》と《闇の腹心》は坂本の願いを叶えた。
《剣を鍬に》。
坂本がギリギリライフ5で踏み止まり、《グリセルブランド》は村瀬のライフへと変換されてしまう。
耐えきった坂本、残されたのは《師範の占い独楽》《闇の腹心》にバックアップされた余裕の盤面。
着々とリソースを補給し続けると、《安らかなる眠り》の妨害にも構わずフラッシュバック出来ない《未練ある魂》、二体目の《闇の腹心》を追加するとただひたすらに攻撃を続ける。
虎の子の《グリセルブランド》を失った村瀬、一時は27もあったライフだが、無抵抗では守り切れない。
数ターンの後、闇の軍勢に飲み込まれてしまう。
坂本 1-1 村瀬
Game 3
二度もダブルマリガンに陥った村瀬、思わず祈りながら初手の7枚を確認するも、この第3ゲームもマリガンを選択することになってしまった。
全くもってついてない。だがマリガンのリスクあってのデッキである。
第3ゲームにしてようやく6枚の手札でゲームをスタート出来た村瀬、《溢れかえる岸辺》から《Volcanic Island》を用意すると、不気味なターン終了。
《思案》か《ギタクシア派の調査》?と思っていただけに不思議な行動である。
坂本はファーストアクションとして《湿地の干潟》から《Scrubland》をサーチすると、そのまま《陰謀団式療法》を。
ここで村瀬が何もしなかった理由が明かされた。
対応しての《渦まく知識》。
手札整頓だけでは無く手札破壊への緩和策としても有効。普段は出番が少ないが、《渦まく知識》の強さを担う一面だ。
これに応じて坂本は《引き裂かれし永劫、エムラクール》を指定。
1 《騙し討ち》
1 《摩耗+損耗》
1 《思案》
1 《渦まく知識》
1 《裏切り者の都》
……ハズレ。
続く村瀬の第2ターン、《裏切り者の都》を置いただけでターンを渡してきたため、坂本はリトライとばかりに再び《陰謀団式療法》!
《渦まく知識》。
またお前か。
だが一度見られている手札、ここはじっくり考え坂本の指定を待つ。
坂本 「指定は《摩耗+損耗》で」
1 《摩耗+損耗》
1 《思案》
1 《実物提示教育》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《騙し討ち》
負け筋を封じたい坂本はプランを構築。
続けて《真髄の針》で《騙し討ち》を指定する。
坂本 博之 |
ここで村瀬のターンに入ったところで、何と試合時間が切れてしまう。
シングルエリミネーションゆえ、延長の5ターンが切れるとライフ差勝負。
こうなるとさすがにスニークショウの村瀬が有利、と言いたいところだがこのゲームは坂本の妨害が厳しい。
村瀬、勝ちの目を残すことが出来るか。
■延長ターン0
村瀬が《思案》。ライブラリーを調整してターン終了。
■延長ターン1
坂本が《墓所這い》を呼び《陰謀団式療法》をフラッシュバック。
指定は《実物提示教育》。
1 《渦まく知識》
1 《実物提示教育》
2 《騙し討ち》
1 《溢れかえる岸辺》
手札が公開され、《実物提示教育》がディスカードされる。
■延長ターン2
村瀬が《渦まく知識》から《溢れかえる岸辺》をセット(《裏切り者の都》が生贄に捧げられる)、渾身の《実物提示教育》!
……出たのは《騙し討ち》(坂本が《屍肉喰らい》)。
■延長ターン3
坂本が《墓所這い》を墓地から戻し、《屍肉喰らい》で攻撃。
■延長ターン4
《思案》からシャッフル。
《山》を追加してターン終了。
■延長ターン5
坂本が攻撃すると……村瀬成す術も無く投了。
坂本 2-1 村瀬
度重なるマリガン、そして時間切れによる幕切れ。悪い相性差を覆す、坂本が幸運を掴み取った。
だがいずれにせよシングルエリミネーションのサドンデスは不毛である。
皆さん、時間の管理には気を付けましょう。
坂本 博之が村瀬 貴弘を下し、準決勝に進出!