レガシーで一番強いカードといえば、何を思い浮かべるだろうか。
《Force of Will》、《不毛の大地》、《秘密を掘り下げる者》、《精神を刻む者、ジェイス》……人によって、あるいは時期によっても、答えは異なることだろう。
だが、あえて1つに絞るならば。
やはり《渦まく知識》だろう、とそう思うのだ。
フェッチランドと組み合わせればたった1マナで手札を自在にリフレッシュできるこのカードは、レガシーを象徴するカードといっても過言ではない。
現にレガシーの大会のトップ8に16枚以上の《渦まく知識》が含まれることなど日常茶飯事だ。
しかし。
そんな最強カードである《渦まく知識》をあえて使わないことを選択するプレイヤーもまた、一定数存在するのだ。
そうなると当然、そこには1つの疑問が生じることになる。
彼らはどうして《渦まく知識》を使わないのだろうか?
最強のカードなら「使い得」ではないのだろうか。
そんな素朴な疑問に答えてもらうため、会場に来ていたプレイヤーにインタビューしてみた。
高野 成樹
最強のエルフマスターとして知られる。
高野 「そりゃあ《渦まく知識》が緑だったら使ってましたけどね(笑) エルフで使うにはちょっと色の制約が厳しいかな」
高野 「それにエルフには《垣間見る自然》っていう上位互換がありますから。こっちは1マナ10枚超ドローですよ!」
瀧村 和幸
プロツアー「ニクスへの旅」に出場し、今期のプロツアー「運命再編」予選も突破済という強豪。レガシー神決定戦でもドレッジを駆りトップ8に入賞している。
瀧村 「あえて使わない、というわけでもないんですけどね。どちらかといえばドレッジが使いたいから《渦まく知識》を使ってないってだけで。あと単純に昔いっぱい撃ったから飽きてるというのもあります」
瀧村 「それにみんながみんな《渦まく知識》撃ってたら面白くないでしょ。最近の『奇跡使い得』みたいな風潮、良くないと思います!みんなもっと青いデッキ以外も使いましょうよ!」
菊池 啓太
独創的なカード選択が話題になった。
菊池 「身も蓋もない話ですが、青いデッキよりこういうデッキの方が好きなんですよね。もともと『Deadguay Ale』という白黒のデッキを使っていて、段々緑が濃くなって今の形になったんですが、最近《宝船の巡航》のせいで手札破壊が相対的に弱くなってしまって、どうしたものかというところで《迷宮の霊魂》に思い至って。コンボやデルバー系の《渦まく知識》も合わせて封じられるので、これだ!という話になりました」
菊池 「《ミリーの悪知恵》のところは最初は《森の知恵》だったんですが、マナカーブ的に2マナは渋滞していて厳しいのと、どうせ《迷宮の霊魂》で引けなくなっちゃうので《ミリーの悪知恵》でいいだろう、と。初手にあれば2ターン目のドローからすぐに操作できるのでなかなか重宝しています」
菊池 「確かに緑黒白だと《渦まく知識》は撃てませんが、このデッキの《ミリーの悪知恵》のようにレガシーは《渦まく知識》がなくても色々とやりようはあるので、今のデッキに満足しています」
レガシーで《渦まく知識》を使わないなんてバカなの?死ぬの?と思っていたが。
どうやら「《渦まく知識》を使わないことを選んだ」というよりは、まず先に自分がレガシーで使いたいデッキがあり、それにはたまたま《渦まく知識》が入っていなかったという方が正しいようだ。
彼らは決して《渦まく知識》を使う他のプレイヤーを僻んだりしないし、《渦まく知識》なんてなくても自分のデッキが最強だと思っている。
そして何より、《渦まく知識》がない自分のデッキに、誇りと愛着を持っている。
だからこそ、《渦まく知識》を使わなくても勝てるのだろう。
《渦まく知識》は確かにレガシーで最強のカードかもしれない。
だが、レガシーで最強のデッキに《渦まく知識》が入っているとは限らない。
4月のグランプリ京都でもきっとたくさんの知識が渦をまくことだろう。
しかし、覚えておいて欲しい。
レガシーにおいては、そもそも「渦まかない」という選択も十分ありえるのだ、ということを。