はじめに
みなさん、こんにちは。
各地の『Eternal Weekend』が終了しましたが、日本国内では『エターナルパーティー』と『THE LAST SUN 2023』が開催されるなど、今月もレガシーのイベントが充実しています。
さて、今回の連載では『Eternal Weekend Asia』と『Eternal Weekend North America』の入賞デッキの見ていきたいと思います。
Eternal Weekend Asia
多色コントロールがアジアの頂点に立つ
2023年11月25日
- 1位 Beans Control
- 2位 Boros Initiative
- 3位 Beans Control
- 4位 Beans Control
- 5位 Oops All Spells
- 6位 Boros Initiative
- 7位 Doomsday
- 8位 4C Tempo
先月末に日本国内でレガシーの大規模イベント『Eternal Weekend Asia』が愛知県で開催されました。参加者658名と大盛況で日本国外からの参加者も見られ、レガシーが人気のあるフォーマットであることが分かります。
イベントのアーカイブも動画にて公開されているので、興味のある方は観てみてください。
今大会で最も人気があったデッキは、直前にヨーロッパで開催されたEternal Weekendでも優勝していたTemur Delverで、その次点でSneak and Showでした。しかし、最も高い勝率だったデッキはBeans ControlとBoros Initiativeでした。今大会の決勝戦も、この2つのデッキのマッチアップとなっています。
デッキ紹介
Beans Control
『エルドレインの森』から登場した強力なアドバンテージ源、《豆の木をのぼれ》によってさらに強化された多色コントロール。
優勝したIsogaya氏のリストは、メインは一般的なリストとそこまで変わりませんが、サイドには《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》や《敵対工作員》など特定の戦略に刺さるクリーチャーが複数忍ばせてあります。
除去が多く、アドバンテージを稼ぐ手段も豊富なのでデルバーなどのテンポデッキに強く、Doomsdayといったコンボデッキは苦手なマッチとなります。構成上、Initiativeも相性が悪いマッチアップになりますが、《オークの弓使い》や《進め、エオルの家の子よ!》を得たことで「イニシアチブ」を奪い返しやすくなったため若干緩和されています。
☆注目ポイント
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は《表現の反復》退場後のレガシーの代表的なカードアドバンテージ源として地位を確立しています。同じくアドバンテージ源である《豆の木をのぼれ》は、《力線の束縛》や《意志の力》などと相性が良く、2マナなのでデルバーとのマッチアップでも比較的通しやすいスペルになります。
サイドには《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》や《敵対工作員》といった、特定の戦略に効果のあるクリーチャーが採用されています。《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》は、特に最近増えているTemur Cascadeとのマッチアップで有効です。
《敵対工作員》はフェッチランドを多用するレガシーではさまざまなマッチアップで高い効果が期待できますが、特に《緑の太陽の頂点》《輪作》などを使うSelesnya DepthsやLands、Cradle Control、《鏡に願いを》入りのStormなどで強さを発揮します。
青デッキ対策といえば《紅蓮破》が代表的ですが、Isogaya氏のリストには《夏の帳》が採用されています。《夏の帳》は数の多い《オークの弓使い》やハンデスを対策することができ、青いデッキ相手には《進め、エオルの家の子よ!》などのエンドカードを通りやすくしてくれます。
Oops All Spells
レガシーでも屈指のオールインコンボで、最速1ターン目から《地底街の密告人》や《欄干のスパイ》をプレイしてゲームを決めにいきます。
動きとしては、デッキ内に土地カードが1枚もないため《欄干のスパイ》を出すと能力でデッキがすべて墓地に落ちます。その過程でライブラリーから場に出た《ナルコメーバ》をコストに《戦慄の復活》をフラッシュバックして、《タッサの神託者》をリアニメイトすることでゲームに勝利します。
オールインコンボでありながら意外とデッキの動きが安定しており、《否定の契約》などコンボを無理やり通す手段も用意されています。
ほかのコンボデッキとのマッチアップでは速度で勝り、《否定の契約》のほかにも《陰謀団式療法》《思考囲い》《夏の帳》といった妨害スペルも搭載されているため、主な妨害手段が《意志の力》である多色コントロールとのマッチアップにも強いデッキになります。
☆注目ポイント
『ゼンディカーの夜明け』から登場した《アガディームの覚醒》や《変わり樹の共生》などの両面カードは、このデッキに革命をもたらしました。これらにより安定性が向上し、大きなイベントの上位でも頻繁に見かけるようになりました。
サイド後は《墓掘りの檻》《虚空の杯》《虚空の力線》といった対策カードが投入されるため、置物を処理できる《活性の力》は欠かせません。また、追加の勝ち手段として《ゴブリンの放火砲》がサイドに忍ばせてあります。墓地対策に引っかからないため、相手の対策カードをかわしてゲームを決めることができます。
カウンターやハンデスを使うデッキに対して有効なのが《再活性》です。打ち消されたり、ハンデスされた《地底街の密告人》と《欄干のスパイ》をリアニメイトし、コンボに移行することが可能です。
4C Tempo
4色デッキですが《探索するドルイド》は主に「出来事」で唱えるため、実質Grixis Tempoとそれほど変わらない構成になっています。
マナ基盤を犠牲にする代わりに、《オークの弓使い》と《探索するドルイド》という強力なカードをフルで使うことができ、TemurやGrixisバージョンよりもデッキパワーが上がっているためBeans Controlとの相性が緩和されています。
☆注目ポイント
テンポデッキですが、《オークの弓使い》に弱い《秘密を掘り下げる者》の採用が見送られています。《秘密を掘り下げる者》の枠に採用されている《探索するドルイド》はマナはかかりますが、《オークの弓使い》に引っかからない強力なアドバンテージ源で、Dimir Scamの《悲嘆》+《再活性》のようなハンデスにも耐性ができました。
しかし、《秘密を掘り下げる者》を削ったことによってクロックのスピードが落ち、《探索するドルイド》が脅威として機能するには時間を要するため、コンボデッキに若干弱くなっています。そういった理由から、《夏の帳》《否定の力》《呪文貫き》といった妨害カードがサイドに多くとられています。
4色になったことで《不毛の大地》にも弱くなっていますが、サイドの《花の絨毯》によって、デルバーやBeans Controlといった青いデッキ相手に安定して必要なマナを確保することができます。
Eternal Weekend North America
MOで未実装のあのカードが大活躍
2023年12月10日
- 1位 Beans Control
- 2位 Grixis Delver
- 3位 Boros Painter
- 4位 Cradle Control
- 5位 Cephalid Breakfast
- 6位 TES
- 7位 Boros Painter
- 8位 4C Tempo
先週末にアメリカで開催されたEternal Weekendは参加者996名と大盛況でした。
今大会で最も高い勝率だったのはGrixis DelverとPainterで、Grixis Delverは決勝戦にまで勝ち残り、Painterもプレイオフに2名送り込むという活躍を見せました。
最終的に優勝したのは『統率者デッキ:Warhammer 40,000』の《聖カトリーヌの凱旋》を搭載したBeans Controlでした。
デッキ紹介
Beans Control
Eternal Weekend Asiaと同様にアメリカのEternal Weekendを制したのもBeans Controlでした。
『統率者デッキ:Warhammer 40,000』のカードで、MO未実装ながら強力なカードとして話題になっていた《聖カトリーヌの凱旋》をメインから搭載したバージョンで、Grixis Delverにも強いデッキになります。
《オークの弓使い》など青いデッキに強いカードをとっているため、《紅蓮破》は不採用で赤を切って4色にまとまっています。
☆注目ポイント
「奇跡」を内蔵した《聖カトリーヌの凱旋》は、MO実装前はそれほど大きな注目されていませんでしたが、一部のプレイヤーのあいだでは高い評価をされていたカードです。今大会の決勝戦でも、Grixis Delver相手に2ターン目から「奇跡」で場に出て勝利に大きく貢献していました。
5マナなので《豆の木をのぼれ》とも相性が良く、最速で2ターン目から出てくる5/5絆魂はレガシーでも処理するのは困難でダメージレースにおいても大きな有利が付きます。多色コントロールでは必ずと言っていいほど採用されている《自然の怒りのタイタン、ウーロ》よりも優先して採用されていることから、このクリーチャーのポテンシャルの高さが分かります。
ほかのリストよりも《豆の木をのぼれ》とのシナジーを重視した構成で、フィニッシャーとして《濁浪の執政》が採用されています。サイドの《破滅的な行為》は、このバージョンの《溶融》的な存在で特に8 Castとのマッチアップで活躍します。
Boros Painter
Boros Painterは今大会で高い勝率を出していたデッキで、プレイオフにも2名送り込む活躍を見せました。
《絵描きの召使い》+《丸砥石》のコンボは長い間レガシーで活躍しており、メインから《紅蓮破》がとられているため青いデッキに強く、《絵描きの召使い》で青を指定することによってコンボを守りやすくなります。
☆注目ポイント
ボロスにすることでサーチスペルである《悟りの教示者》が使えるようになり、デッキの安定性が向上しています。《悟りの教示者》はコンボパーツである《絵描きの召使い》か《丸砥石》のどちらかをサーチするだけでなく、相手の行動を制限させる《血染めの月》や《罠の橋》《エーテル宣誓会の法学者》といったカードもサーチできるため戦略の幅が広がります。
《絵描きの召使い》+《丸砥石》コンボの天敵になるのが《引き裂かれし永劫、エムラクール》です。そのため、《魂標ランタン》や《トーモッドの墓所》といった墓地対策カードも重要になります。
《大いなる創造者、カーン》はキーカードである《丸砥石》や、クリーチャーデッキ対策の《罠の橋》、墓地対策の《トーモッドの墓所》などを状況に応じてサーチでき、必要ならアーティファクトを脅威に変換することでコンボ以外の勝ち手段としても機能します。
総括
禁止改定については公式の見解を見ても、現在のレガシーが健全な状態であることが示されており、コミュニティも満足しているようです。
《豆の木をのぼれ》や《溶鉄の崩壊》といった新カードも活躍しており、《聖カトリーヌの凱旋》をフィーチャーしたデッキが参加者1000名近いイベントで結果を残すなど、まだまだ研究の余地があります。
USA Legacy Express vol.227は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!