By Kazuya Hirabayashi
先手の小堺が力強く《樹木茂る山麓》から《山》をフェッチしてくる。
これを受け、挑戦者の砂田は「フム」と一言。
この「フム」は深い。
はたして想定通りということか、それともその逆か。その心境は砂田本人しか分からない。
否、この場でマッチアップの構図を知らないのは“モダン神”たる小堺だけだ。
ジャッジとして場を守るレベル2ジャッジの大角はデッキチェックを行っているし、他スタッフも進行の都合上既にデッキの情報を“知っている”。
「誰が何と言おうと、僕にはこれしかないんですよ」と小堺。
《山》がタップされる動きを見据え、「これはトップ捲れる?」と声を出す砂田。心持ちテンションが高い。
そうして“予想されていた未来”として《ゴブリンの先達》が戦場を駆け抜けると、砂田のライブラリートップが公開される。
小堺 「《平地》?」
砂田の心中や如何に。
もしその中を見ることが出来たのなら、おそらくドヤゲージがこれ以上に無く振り切っていたのでは無いか。
砂田 「《魂の管理人》をプレイしてエンドです!!」
第1ターンのプレイ、それがこのマッチアップの明暗を分けた。
今回の神決定戦は特殊な形式である。
何しろたった一回のマッチ、そのためだけに一日を費やすのだ。
さらに事前に対戦相手が分かっているという通常では有り得ない状況。
その結果がこれである。
「その頃からバーンは殺そうと思っていました。」
「バーン。好きだから殺す。そういう愛情表現です。」
「バーンだったら殺します。バーン殺しなので。」
第2期モダン神挑戦者決定戦、中村 肇(神奈川)とのバーンミラー」を制し挑戦者となった砂田 翔吾。人呼んで“バーン殺し”。
このキャラを作ってきたのが挑戦者の砂田だ。
仲良く互いにマリガン、ダイスロールから小堺の先手が決まり。
ある意味小堺のお約束となる、腕相撲的な握手から一転。
第1ターンにして小堺の命運が半ば定まった。
Game 1
バーンというデッキにとって、第1ターン《ゴブリンの先達》というのはベストムーブの一つである。
まして先手プレイヤーの第1手としては、文句のつけようが無い。
だが何事にも例外はある。
ソウルシスターズ。ダメージ先攻デッキに対する明確な有利が付く恐るべきメタデッキ。
そして《魂の管理人》を有するデッキは他には無い。
小堺にとってのベストムーブ、その未来予想図は覆される。
《魂の管理人》が小堺にマッチアップの有利を宣告する。
早くも追い詰められた感のある小堺だが、ゲームはまだ互いに第1ターンを終えたところ。
小堺の《ゴブリンの先達》が構わず攻めかかり(第1ターンと同じく砂田に《平地》を供給する)、《聖なる鋳造所》アンタップインから《稲妻のらせん》を《魂の管理人》に。
ある意味教科書通りではあるが、《ゴブリンの先達》のクロックを中心に盤面を組み立てる。
バーンの基本に忠実な動きだ。
プレイ《砂の殉教者》。即起動。
《幽体の行列》
《アジャニの群れ仲間》
《魂の管理人》
3枚の白いカードが公開され9点ゲイン。第2ターン、突如として小堺のハードルが上昇してしまう。
それでも攻撃を止める選択肢が無い小堺の《ゴブリンの先達》。
これがまた砂田に《平地》を供給と……小堺何とも言えない表情。
小堺 「今回のこいつはユダの可能性があるな」
攻撃するたび砂田の手札が増えていく、その姿はまさしく背信者。
おまけにこの時点で砂田のライフは原点である20点を超えているのだ。思わずぼやきたくもなる。
砂田の第3ターン、砂田が公開された手札そのままに《魂の管理人》《アジャニの群れ仲間》と展開すると、小堺はライフ回復にスタックしての《頭蓋割り》。
これが小堺にとっての精一杯。砂田のライフは再び原点へと。
四度《ゴブリンの先達》が攻撃して、ようやく砂田のライフが18へ。
初ターンから継続的に《ゴブリンの先達》が攻撃を続けているにも関わらずの高水準だ。
小堺も《セラの高位僧》のプレイにスタックして《頭蓋割り》二枚目と、アクションが出来ていないわけではない。
だがここで砂田が《清浄の名誉》を置き、《魂の管理人》《アジャニの群れ仲間》が反撃の狼煙を上げると、ゲームの趨勢は誰の目にも明らかだ。
互いに継続的なアクションを取っているとはいえ、小堺のそれは本体火力であり、砂田のそれはクリーチャー。
残されるリソース量、そして《砂の殉教者》のライフ回復が小堺に重くのしかかる。
苦しい小堺はここで《宝船の巡航》を。
3枚ドロー。かつてのバーンには無い新しい力。
小堺が手札を確認する。
手札には続く《宝船の巡航》がある。墓地が無い。
引いてきた一枚が《溶岩の撃ち込み》。ゲームの性質が違う。
《裂け目の稲妻》は?遅すぎる。
ここで小堺がジャッジの大角に確認を求める。
小堺 「《幽体の行列》で《魂の管理人》は何回誘発しますか?」
大角 「3回誘発します」
小堺 「この場合《アジャニの群れ仲間》の誘発は?」
大角 「同様に3回です」
「次!」小堺は盤面を片付けた。
砂田 1-0 小堺
小堺はモダン神決定戦でバーンを使い、モダン神に就任した。
火力が手札に吸い付いてくる、当時の小堺はまさしくバーンというデッキに愛されていた。
続いて第2期スタンダード神挑戦者決定戦で小堺が使用したのもラブルバーン。
ここでも赤いデッキ。
小堺のイメージは間違いなく定着したと言ってもいいだろう。
だから砂田はソウルシスターズを選択した。
だが砂田が挑戦者の権利を獲得したのもまたバーンであった。
ならここで起こるのは当然の疑問である。
小堺がソウルシスターズを使う可能性もあったのではなかったのか。
事実砂田はこう言っている。
お互いソウルシスターズという寒い展開は避けられましたね、と。
正直まだ1本目を終えたばかりという状況を考えれば軽率な発言だったかもしれない。
ここまで情報を隠し続ける必要があり、無事1本目を取ることの出来た砂田から思わず零れたこの言葉。
これを受けて小堺の回答がこれだ。
「これが神なんですよ。今言うことじゃないけど、バーンで負けたなら矜持が残るが、ソウルシスターズを使ってよしんばスケープシフトにでも負けたら何も残らないよ」
神としての立場を考えたデッキ選択。
これが“バーン神”小堺 透雄の生き様である。
小堺 「でもマンモス(石井 泰介)さんに、「お前は必ずビート系と読まれてる」って言われましたけどね(笑)」
Game 2
ここからがサイドボード後のゲーム。
この1on1マッチ、最大の焦点が互いのデッキ選択なら、もう一つのポイントがこのサイドボーディング後。
一つ目の理由が通常とは異なる3本先取というところ。
メインボードで戦う時間より、サイド後が長い。
そしてもう一つは、予想しなくてはならないデッキの母数が圧倒的に少ないことである。
つまり普段以上にサイドボードの自由度が高いのだ。
極端な話、変形サイドボードの可能性も普段以上であるし、自身が不利なマッチへの対策を厚く取るリスクも低い。
小堺がすぐキープを決めたのとは対照的に、砂田は悩む。
何しろバーンを使うと決めた小堺、ソウルシスターズ対策が弱いとも思えない。
リスクを考え、ここは慎重に。
ゲーム1同様、6枚からのスタートを選択する。
小堺 「第1ターンに入ってもよろしいですか?」
これは?
ざわざわざわ。
小堺 「では土地を置きますwww」
砂田 「聞いてる時点であれですからね、ゲーム開始時点をパスしてますからね(笑)」
どうやらゲームは通常通り始まったようだ。
小堺は《樹木茂る山麓》を置いてターン終了。
いつものイメージとは違い、今回子飼いの《ゴブリンの先達》は一時休暇をいただいていたらしい。
対して砂田が第1ターンの《魂の管理人》に続けて第2ターン《セラの高位僧》を続けると、直ちに小堺は《セラの高位僧》へと《稲妻のらせん》を。
そして……土地を置けず。
思わず「《ゴブリンの先達》来ないかなー」と呟く。
「居ないのが功を奏したな(笑)」とトラッシュトークを返す小堺が、第3ターンを動かない砂田を見つつ《血染めのぬかるみ》から《蒸気孔》をフェッチ。
そして渾身の《処罰の力線》を叩き付ける!
《処罰の力線》。
プレイヤーはライフを得られない。
ダメージは軽減できない。
このエンチャントを横目に砂田は自身の《魂の管理人》へと《流刑への道》を。
ライフ回復とプロテクションが封じられてしまった今、砂田に土地1枚で待てる猶予は無い。
ここで攻防が入れ替わる。
小堺が遅刻してきた《ゴブリンの先達》で攻め始め、最悪のマッチへの保険となった《処罰の力線》が負けの目を潰す。
さすがはバーン神、欠点を克服している!
……とはならなかった。
《流刑への道》により2マナを捻出した砂田、真っ先にプレイしたのは《隔離する成長》。
砂田のサイドボードカードが、小堺のサイドプランを叩き割る。
そして現れる悪魔の如き《オーリオックのチャンピオン》。
小堺は3マナで《宝船の巡航》を使い未来を求めるが、能動的に動けるスペルが無い。
何より《オーリオックのチャンピオン》の防御を崩すことが出来ない。
対して砂田は《魂の従者》を呼び、じわりじわりと小堺の盤面を侵食していく。
何とかしたい小堺はプレイ《僧院の速槍》から《魂の従者》への《焼尽の猛火》と繋げ、《ゴブリンの先達》と共にアタック宣言。
だがこの攻防でも砂田のライフは3点しか減っていない。
《オーリオックのチャンピオン》のライフ回復能力、そしてプロテクション。
小堺の前に大きくそびえ立つ。
砂田が再びとなる《魂の従者》を呼び出し、《風立ての高地》により秘匿が宣言されるとついに小堺の足が止まる。
長いゲームになっている。
小堺としては《処罰の力線》の後続を引きたいところだ。
能動的に動けない小堺を尻目に、砂田は値千金の《戦隊の鷹》を。
《オーリオックのチャンピオン》と《魂の従者》が砂田に2点のライフを与え、砂田の手札は7枚へ。
動けない、だが動かないと状況が打開出来ない。
ジレンマに嵌り込んだ小堺。
だがこれがマッチ相性というもの。
砂田ワールドに囚われている。
これ以上待てないと判断した小堺は《ゴブリンの先達》《僧院の速槍》で再びのアタック宣言。
砂田が《オーリオックのチャンピオン》で《僧院の速槍》をブロックすると、小堺は《頭蓋割り》を。
《処罰の力線》のように恒常的な効果は見込めないが、これでも《オーリオックのチャンピオン》の防御は崩し得る……が、ここに砂田の《流刑への道》。
盤面の有利を手放さない。
ゲームの決まりかかったこの一手だが、小堺はここで《火山の流弾》。
《頭蓋割り》の恩恵を受け、《オーリオックのチャンピオン》毎盤面を一掃することに成功する。
ここで砂田はライフ回復が出来ないものの、《幽体の行列》《セラの高位僧》で盤面を復旧。
対して小堺は《ゴブリンの先達》を呼んで時間を稼ぐプラン。
この時点でゲームの趨勢は決まった。
砂田がスピリットトークンで攻めかかると、小堺のライフは9。
つまり残り3ターン。
依然として砂田のライフは15という水準が保たれている。
《風立ての高地》から呼び出された《砂の殉教者》には《頭蓋割り》という回答を持つものの、砂田のライフを削り切る算段が無い。
小堺はターンを返すより他なく、砂田は2枚目の《風立ての高地》でさらに秘匿を重ねると、再度の《幽体の行列》。
これで残っていたはずの1ターンが消失する。
砂田の続くターンの突撃を受け、ゲームは3本目へと。
砂田 2-0 小堺
思えば対照的なようで似ている二人である。
“バーン神”と“バーン殺し”。
その二つ名に始まり、あえてバーンを選択した小堺、これまたあえてソウルシスターズを持ち込んだ砂田。
神としての矜持が小堺にバーンを選択させたなら、砂田のそれはエンターテイメント。
結果として勝つも良し、大きく滑って負けても話題性になる。
単純なメタ読みだけでは無い、砂田には砂田らしいデッキ選択理由があった。
また、どちらもキャラ立てを大事にしたと考えることも出来る。
“バーン神”となった小堺が《ゴブリンの先達》との心中を選んだように、“バーン殺し”という二つ名を獲得したからこそ、砂田はソウルシスターズを選択したのかもしれない。
単に自身の名前と《砂の殉教者》を掛けたかっただけかもしれない。
結果としてバーン対ソウルシスターズという構図となり、ゲームは一方的なものになってしまった。
だが、これは神と挑戦者の二人の意志が決定するもの。
他の何人たりとも運命に関与することは出来ない。
“If”の世界が存在しえない、二人が選択した未来なのだから。
■小堺 サイドボーディング
No Change
No Change
Game 3
追い詰められる形となった小堺、その第1手は《蒸気孔》タップイン。
正直0ターン目《処罰の力線》といきたいところだっただろうが、バーンというデッキの性質上マリガンはなかなか選択出来ないだろう。
第3ゲームにしてようやく7枚キープが出来た砂田は、第1ターン《魂の従者》。
ある程度安定した動きが出来るのも、クリーチャーベースデッキの魅力である。
第2ターン、小堺は《魂の従者》と砂田本体に《二股の稲妻》を投げ付けつつ遅れてきた《ゴブリンの先達》を走らせると、砂田のライブラリートップから《平地》がペロリ。
たしかに砂田のデッキに一番入っているのは《平地》だが……
小堺 「打率10割じゃないの?」
砂田 「捲ってきますねー」
小堺 「これは良くない先達ですね(苦笑)」
思わぬ茶番。
全く乗れていない小堺とは対照的に、砂田は1ゲーム目を彷彿とさせる《砂の殉教者》。
《幽体の行列》
《アジャニの群れ仲間》
《戦隊の鷹》
即起動で9点ゲインと、《ゴブリンの先達》が砂田にアドバンテージを運んでしまっている小堺、「さすがにこれはきついなぁー」と思わず弱音が出てしまう。
なーのーにー《ゴブリンの先達》がアタックすると捲れるのはしつこいばかりに《平地》だけ。
あの先達挑戦者の回し者wwwというコメント、この場に居た誰もが同じ感想だっただろう。
3ターン目砂田が《幽体の行列》をプレイすると、小堺の4ターン目《ゴブリンの先達》アタックはまたも砂田に《平地》を供給……
あまりの状況にさすがに神妙な空気に。
尋常じゃないな、と二人の間に謎の同意が。
このアタックはスピリットトークン2体と交換となり、小堺はしきりと胃が痛いと漏らしている。
無理もない、3枚のアドバンテージを与えた挙句の不利な交換。
ましてやそれが0-2という局面ともなれば、誰だって嘆きたくなるというものだ。
砂田は《戦隊の鷹》を2体並べ、戦線を復旧。
さらに《戦隊の鷹》の能力により溢れる手札から《平地》をディスカードしようとすると、ここで小堺の《火山の流弾》が飛び、一度盤面がリセットされる。
ここで小堺は動けない。
リセットしたとはいえ、そもそも対応した頭数が《戦隊の鷹》。
効率良くアドバンテージを獲得したとはいえない状況であるし、《ゴブリンの先達》があれだけリソースを与えてしまってはもはやアドバンテージ(笑)になってしまっているのではないか。
そして一度更地になった場にセットされたのは見慣れないカードだった。
《霧覆いの平地》。
小堺は思わずテキストを確認。
タップ:あなたのマナ・プールに(白)を加える。
霧覆いの平地はタップ状態で戦場に出る。
(白),タップ:あなたの墓地にあるカード1枚を対象とし、それをあなたのライブラリーの一番下に置く。この能力は、あなたが白のパーマネントを2つ以上コントロールしている場合にのみ起動できる。
霧覆いの平地はタップ状態で戦場に出る。
(白),タップ:あなたの墓地にあるカード1枚を対象とし、それをあなたのライブラリーの一番下に置く。この能力は、あなたが白のパーマネントを2つ以上コントロールしている場合にのみ起動できる。
カードタイプ:平地を持っているため、通常フェッチランドと共に運用される。
砂田のソウルシスターズにはフェッチランドが入っていないため偶発的に引いた1枚であるが。
ネタバレしてしまえば、このゲームにおける《霧覆いの平地》の価値は見ていた誰もが思っていたより重いものだった。
それは何故か。攻められない小堺にとって間接的なクロックとなっていたからだ。
《霧覆いの平地》を置いた砂田が《アジャニの群れ仲間》《戦隊の鷹》と展開してターンを返すと、攻めることの出来ない小堺はディフェンシブに。
《アジャニの群れ仲間》を《焼尽の猛火》して自身へのクロックを抑える。
砂田は《風立ての高地》を置くと第2メインで再び《アジャニの群れ仲間》。
《ゴブリンの先達》の恩恵で手札は多いものの、土地を多く引いているのか、ややもすると野暮ったいビートダウンになってしまっている。
ここで小堺は《宝船の巡航》。
今回のゲームならアドバンテージに意味がありそうにも見えるが、そもそも勝つプランの構築が難しい。
小堺が《宝船の巡航》にマナを費やしたため、ついに《霧覆いの平地》の起動条件が満たされる。
手札に4枚目の《戦隊の鷹》を残し、《霧覆いの平地》で墓地の《戦隊の鷹》を回収。
《清浄の名誉》こそ《破壊的な享楽》で待ったがかかったものの、《霧覆いの平地》が2枚目の《戦隊の鷹》をライブラリーに戻すと、本来は4枚目の《戦隊の鷹》がライブラリーの底から2体の《戦隊の鷹》を回収。
守りに入った小堺の防御を強引にこじ開ける、《霧覆いの平地》と《戦隊の鷹》の摩訶不思議コラボが始まってしまう。
こうなると小堺は待てない。もはや守勢に回る意味が無い。
アドバンテージを無視して《焼尽の猛火》を《戦隊の鷹》に叩き付け、《ゴブリンの先達》が反撃を。
砂田が追加した《魂の管理人》には《稲妻》をぶつけて必死の抵抗。
だが都合3度目となる《霧覆いの平地》が起動され、《戦隊の鷹》が巡る。
ここでのライフは砂田7に対して小堺12。
今までのゲームと比べればまだ可能性がありそうとも言える。
場のクリーチャーは1対4。
やはり《戦隊の鷹》が……
小堺が《ゴブリンの先達》で攻撃すると、《戦隊の鷹》が身を挺してチャンプブロック。
砂田の攻撃宣言に合わせて小堺が《稲妻のらせん》を《アジャニの群れ仲間》に撃ち込み、《風立ての高地》を起動させないようにはするのだが。
4度目となる《霧覆いの平地》起動。
《戦隊の鷹》の能力が誘発し、もはや小堺に《風立ての高地》の起動を阻止する術が無くなってしまい。
総攻撃からの《風立ての高地》「秘匿」解除→《清浄の名誉》設置こそ《稲妻》でターンを稼ぐのだが、小堺に残されたのは絶望的な盤面。
回答は……無かった。いや、デッキに入っていなかった。
砂田 3-0 小堺
“バーン殺し”砂田 翔吾のソウルシスターズが、“バーン神”小堺 透雄のバーンにストレートで勝利した。
端的に言えば砂田の決め打ちが成功して、小堺に抵抗する術は無かった。
そう無かった。
ライフ回復という不利な要素を除いても、《霧覆いの平地》《戦隊の鷹》による粘り強い攻勢を留める手段が無い。
小堺の《ゴブリンの先達》が砂田に買収されていたのような動きを見せていたとはいえ、3ゲーム続けてプレイした《宝船の巡航》が何も出来なかったという事実は鑑みるべきだろう。
短期プランはライフ回復要素で阻止される。
中長期プランは《風立ての高地》や《戦隊の鷹》によって不利になる。
この神決定戦に、「もし」や「だったら」の世界は無い。
それでも小堺に可能性があったとしたら、《渋面の溶岩使い》や《硫黄の精霊》のようなパーマネントによる対策手段か、《槌のコス》《殴打頭蓋》に代表されるタフな勝利手段が必要だった。
だがそれも全てが後の祭り。
“元”モダン神の小堺 透雄は新たな戦場-新潟で開催されるプロツアー「運命再編」予選に旅立つ。
モダン神としてのタイトル、そして第2期スタンダード神挑戦者決定戦で決勝まで残った実力。
競技プレイが好きな小堺が、再び挑戦者として神決定戦に戻ってくる未来は恐らくあるだろう。
そして新たな“モダン神”に就いた砂田 翔吾。
いい意味でも手段を選ばないキャラクターが定着した彼だからこそ、次なる挑戦者にとってはこの上なく厄介な相手となるだろう。
そのポリシー、そして徹底さは、おそらく神になっても変わらないに違いない。
いずれにせよ次のモダン神決定戦も楽しみである。
今はひとまず新たな神に祝福を。
砂田 翔吾がモダン神の称号を奪取!