Translated by Yoshihiko Ikawa
(掲載日 2018/08/20)
はじめに
僕の名前はブランコ・ネランク。ついこの間、同じベルギーのチームメイトであるトーマス・ヴァン・ダ・ペルト/Thomas Van Der Paeltとクリストファー・グリゴール/Christophe Gregoirの2人とともに、マジック25周年記念プロツアーでトップ4に残ったんだ!これにより、ゴールドレベルに到達したよ。この1年とても頑張ったから、本当に嬉しいね。
左から: 僕、クリストファー、トーマス
RPTQを突破した後、僕たちは誰がどのフォーマットを担当するかについて討論を重ねた。最終的に、トーマスがスタンダードを、クリストファーがレガシーを、そして僕がモダンを担当することになった。僕はモダンをプレイするのが好きだし、ここ最近で最も成績が良い構築フォーマットはモダンだったからね。
スタンダード担当のトーマスは、かなり早い段階で青白《王神の贈り物》をプレイすることを決めていた。トーマスと僕はこのデッキが大好きで、これまでにもプロツアーやグランプリで何度もプレイしていたんだ。赤黒系が最も人気があるデッキであろうと予想していて、青白《王神の贈り物》はその赤黒系に相性が良い。Magic Onlineでの成績も裏付けてくれたね。4回のリーグで3回も5-0できたんだから!ただ今後の話をすると、今このデッキを使うのはオススメしないかな。コントロール、ターボ・フォグ、そして青単アーティファクトはどれも相性が良くないし、勢力を伸ばしてきているからね。
レガシーに禁止改定が出たので、僕たちは担当であるクリストファーにすべてを任せることにした。彼はレガシーを1人でやりこみ、そしてエルフを使う予定だった。だけどプロツアー調整初期に比べてエルフの勝率が明らかに下がってきていたので、プロツアーの4日前にエルドラージにデッキを乗り換えたんだ。
モダンの話に移ろう。昨年、僕はチーム総合構築のグランプリで初めて5色人間をプレイした。当時は退屈であまり妨害のできないこのデッキに対して肯定的な意見ではなかったんだけど、プレイすればプレイするほど、このデッキが好きになってきたんだ。ほとんどクリーチャーしか入っていないにも関わらず、カードのプレイや戦闘においてとても多くの選択肢がある。Magic Onlineで数リーグプレイした後に、このデッキをプロツアーで使うことを決めたよ。
5色人間の調整について
Magic Onlineで調整をして気がついた、いくつかの面白い点について共有しよう。
1) 僕の調整中の成績
僕のラスト15リーグの成績は、2-3が1回、3-2が11回、4-1が2回、そして5-0が1回というものだった。これは最高の成績という訳では決してないけど、とても安定しているといえる。そして、チーム戦においてこの「安定している」というのが重要なんだ。トップ4に進出するには自身が12-2しなければならないのではなく、チームで12-2する必要がある。もし個人の成績が10-4だったならば、統計的にはチームとしての成績は10-4よりも良い成績になるだろう。
2)《民兵のラッパ手》について
《民兵のラッパ手》は素晴らしいカードだ。常に複数枚の中から選べるわけではないけど、重要なカードを探しにいけるんだ。メインボードでは、クリーチャーデッキ相手に《サリアの副官》や《反射魔道士》を探せるだけでなく、コンボデッキ相手にヘイトカードを探すこともできる。サイドボード後は不要牌がサイドアウトされているので、《民兵のラッパ手》はメインボードよりも確実にインパクトがあるカードを探すことができるとほぼ保証されているようなもんだ。1ターン目に《霊気の薬瓶》からスタートできたゲームでは、《民兵のラッパ手》は比類なき力を発揮するだろう。これは、従来に比べて《霊気の薬瓶》をサイドアウトしなくなったということも意味するよ。
3) 青白/ジェスカイ・コントロールとのマッチアップ
青白コントロールは勢力を増してきているし、特にジェスカイ・コントロールとはマッチアップしたくない。ジェスカイは大量の単体除去を擁しているので、《帆凧の掠め盗り》や《翻弄する魔道士》といったカードが活躍しづらいんだ。青白コントロールはジェスカイより単体除去が少なくなっていて、重いカードが多めに採用されていて、さらに大抵の場合《終末》が3~4枚採用されている。ただし、これらのカードは先に述べた《帆凧の掠め盗り》や《翻弄する魔道士》があれば対応するのはたやすいね。
4) 《クラーク族の鉄工所》デッキ(KCI)とのマッチアップ
30回前後リーグをプレイしたけれど、たった1回しかKCIと対戦しなかったので、このマッチアップに備えるのはとても難しかった。プロツアーではトップメタの一角であることが分かっていたので、リアルのトーナメントの動画を探し出してマッチアップのノウハウを掴むことにした。
5) ミラーマッチについて
Magic Onlineで最も多く対戦したのがミラーマッチだった。僕の最初のデッキリストでは4マナ域は1枚も採用していなかったけれど、多くのゲームがタイミングのよい《修復の天使》や《人質取り》、《ガヴォニーの騎手》で決着していたので、自分がその機会を逃しているのだと感じたんだ。最終的に、僕の調整チームでは《ガヴォニーの騎手》を1枚サイドボードに採用することに決めた。特定のマッチアップでしか使えない、限定的なカードではあるけど、これをプレイするターンが即ちゲームに勝つターンとなることが多い。このカードなしでは、この記事が書けるような好成績を残すことはできなかったさ。
6) 相性がかなり悪いマッチアップ
調整の最終週では、《復讐蔦》デッキと《硬化した鱗》親和とかなりの回数対戦した。どちらのマッチアップもとても相性が悪かったけど、すでにデッキを変える時間はなかったので、本戦で当たらないよう祈るのみだった。
最終的に、僕がプロツアーで使ったデッキリストは以下の通り。
1 《島》
4 《古代の聖塔》
4 《魂の洞窟》
4 《手付かずの領土》
4 《地平線の梢》
1 《金属海の沿岸》
-土地 (19)- 4 《教区の勇者》
4 《貴族の教主》
4 《サリアの副官》
4 《帆凧の掠め盗り》
4 《翻弄する魔道士》
3 《スレイベンの守護者、サリア》
3 《幻影の像》
4 《カマキリの乗り手》
4 《反射魔道士》
3 《民兵のラッパ手》
-クリーチャー (37)-
2 《戦争の報い、禍汰奇》
2 《イゼットの静電術師》
2 《四肢切断》
2 《減衰球》
1 《オーリオックのチャンピオン》
1 《再利用の賢者》
1 《ガヴォニーの騎手》
1 《はらわた撃ち》
-サイドボード (15)-
サイドボード・ガイド
僕のサイドボードプラント、それぞれのマッチアップに関するTIPSはこちら。
5色人間
vs. 5色人間
ミラーマッチでは《帆凧の掠め盗り》はよくスカるけど、それでも《翻弄する魔道士》や《スレイベンの守護者、サリア》よりはマシなんだ。お互いのプレイヤーが《教区の勇者》や《サリアの副官》を複数枚ずつコントロールしていて、盤面が完全に固まってしまった際に、飛行クリーチャーは均衡を破ってくれる。相手は《幻影の像》でこちらの《ガヴォニーの騎手》をコピーできる、というのは念頭に置いておくように。
トロン
vs. トロン
トロンは5色人間にとって脅威となるカードを多く採用している。特に《忘却石》、《精霊龍、ウギン》そして《歩行バリスタ》がそれだ。これらは《翻弄する魔道士》で指定したり、《帆凧の掠め盗り》で追放したいカードととなる。
青白コントロール
vs. 青白コントロール (先攻)
vs. 青白コントロール (後攻)
このマッチアップは対戦していてとても楽しいマッチで、5色人間側にとてもスキルが要求される。《天界の列柱》を《反射魔道士》しなければならない状況でない限り、《霊気の薬瓶》のカウンターを「3」に増やしてはならない。《霊気の薬瓶》を「2」で置いておけば、《瞬唱の魔道士》に対応して《スレイベンの守護者、サリア》や《翻弄する魔道士》を出したり、《帆凧の掠め盗り》をドロー・ステップに出したり、相手が《終末》を公開したタイミングで《翻弄する魔道士》や《帆凧の掠め盗り》で止めたりといったことがインスタント・タイミングで行えるようになるからね。
大抵のリストはサイドボードに《悪斬の天使》を採用しているし、《天界の列柱》を構えられると攻撃するのが難しいので、僕は《四肢切断》をサイドインすることにしている。《再利用の賢者》は《拘留の宝球》と《アズカンタの探索》用だ。
赤黒《虚ろな者》
vs. 赤黒《虚ろな者》
《反射魔道士》がこのマッチのMVPだ。サイドボード後は《渋面の溶岩使い》と《仕組まれた爆薬》という、対応が難しいカードたちが相手からサイドインされることとなる。
《翻弄する魔道士》より《帆凧の掠め盗り》を優先しているのは、サイドボード後はよく《炎跡のフェニックス》でこちらを倒そうとしてくるんだけど、《サリアの副官》で+1/+1カウンターを置けばその《炎跡のフェニックス》を一方的に止めてくれるからだ。
バーン
vs. バーン
《霊気の薬瓶》をコントロールしていれば、《大歓楽の幻霊》はこちらよりも相手の首を絞めることになる。《再利用の賢者》は《大歓楽の幻霊》を倒せるだけでなく、対戦相手が《罠の橋》をサイドボードに採用していたときの解答として重要になるんだ。
マルドゥ・パイロマンサー
vs. マルドゥ・パイロマンサー
これもプレイしていて楽しいマッチアップだけど、青白コントロールと異なりこちらはとても厳しい戦いになる。メインボードでは《若き紅蓮術士》を対処できるのは《反射魔道士》しかない。サイドボード後はよりよい解答を用意できる反面、対戦相手も《神々の憤怒》のようなカードで対抗してくる。もし2ゲーム目で《血染めの月》を見たなら、3ゲーム目では《霊気の薬瓶》をすべてメインボードに戻すように。
KCI
vs. KCI
KCIにはこちらのヘイトカードたちを一掃できる《仕組まれた爆薬》がメインに3~4枚搭載されている。5色人間側が目指すべきゴールは、盤面にヘイトカードを維持し続けることだ。
サイドボード後は、《黄鉄の呪文爆弾》・《稲妻》・《感電破》など、こちらの2マナ域のクリーチャーを倒す手段が多数用意されている。「《仕組まれた爆薬》・《稲妻》」と2体の《翻弄する魔道士》でそれぞれ指定するよりも、「2体とも《仕組まれた爆薬》を指定する」のが正解なこともよくあるんだ。
ストーム
vs. ストーム
このマッチでは《翻弄する魔道士》で《けちな贈り物》を指定することが鍵となる。あまりにもギャンブルすぎるから、《ぶどう弾》を指定するのは僕は好きじゃない。《ぶどう弾》を止めても、相手が動くのを止められるわけではないので、もし相手のメインボードに《翻弄する魔道士》を対処するカードが入っていれば、即敗北となってしまうんだ。サイド後はよく《巣穴からの総出》で勝とうとしてくるので、《イゼットの静電術師》だけで勝利できることもあるよ。
ブリッジヴァイン
vs. ブリッジヴァイン
記事の前半に書いた通り、このマッチアップはなかなか厳しいな。相手の《復讐蔦》を《貴族の教主》経由の《反射魔道士》で対処しつつ、相手が《黄泉からの橋》を墓地に落とせないことを祈ろう。
相手のゾンビ・トークンに対して、巨大な《教区の勇者》や《サリアの副官》をアンブロッカブルにして殴ることができるので、僕は《ガヴォニーの騎手》を入れることにしている。今のところはサイドインしていないけど、《イゼットの静電術師》を(《幻影の像》も合わせて)2枚盤面に並べて、相手のゾンビトークンを封殺するプランも1つの手だろう。《はらわた撃ち》は《臓物の予見者》を対処できるだけでなく、自分の《貴族の教主》を倒して《黄泉からの橋》を追放する役割もあるんだ。
まとめ
今回初めて記事を書かせてもらったけど、楽しんでもらえたなら嬉しい。もし何か気づいた点や疑問があったら、遠慮なく僕のTwitterやFacebookに連絡してね!
ブランコ・ネランク
この記事内で掲載されたカード
2017年の公募でHareruya Hopesに加入したプレイヤー。
2015年、ヨーロッパのグランプリでトップ8に3回進出。同年のワールド・マジック・カップ ベルギー代表のキャプテンを掴み取った。
自身11回目となるマジック25周年記念プロツアーでは、RPTQを突破した同郷の友人たちとともに4位入賞。その素晴らしい成績と1年間の努力の甲斐あってゴールド・レベル・プロに到達した。