準決勝: 宮下 翔太(埼玉) vs. 市川 典和(愛知)

晴れる屋



By Daisuke Kawasaki


 The Last Sun特設ページ内の開催に寄せてを見ていただければ顕著ではあるが、そもそもこのThe Last Sunというイベントは、過去にあった年末の大型イベント、The Finalsを強く意識したものだ。

 昨年の開催に寄せてのコメントでもそうであるし、そもそも、この大会の主催者である齋藤 友晴が1999年のThe Finalsで優勝し、その後ブレイクしたプレイヤーなのだ。

 2011年を最後に開催されなくなった、The Finalsに代わって、いや、代わりになれるイベントに育てよう、と立ち上げられたのがThe Last Sunなのだ。

 そんなThe Last Sunの準決勝に過去のThe Finals優勝者が登場している。

 それが愛知の市川 典和だ。

 2008年のThe Finalsにおいて優勝した市川が、今、まさに準決勝を戦おうとしている。

 対するは、マジック歴2年弱にして、この大舞台に駆け上がってきた期待の若手、宮下 翔太。スイスラウンドで上位だった宮下が、このマッチはスタンダードで行うことを決定し、ゲームがスタートする。




Game 1

 ダイスロールで先攻の宮下が《疾病の神殿》で占術してゲームがスタート。

 1ターン目に《エルフの神秘家》をプレイした市川に対して、宮下は《思考囲い》をプレイし、《クルフィックスの狩猟者》《破滅喚起の巨人》《神々との融和》に土地が3枚という手札から《神々との融和》をディスカードさせる。

 続くターンに市川は《クルフィックスの狩猟者》をプレイし、続くターンにはこれでアタックする。そのターンエンドに宮下は《アブザンの魔除け》でカードをドロー、自身のターンに《包囲サイ》をプレイする。これは《残忍な切断》で除去する市川。そして、自身のターンに《破滅喚起の巨人》をプレイする。

 宮下は《クルフィックスの狩猟者》をプレイするのだが、山札のトップは《英雄の破滅》。ターンを返すと、市川は2体目の《破滅喚起の巨人》をプレイ。-2/-2されたことでブロックできなくなった《クルフィックスの狩猟者》の横を《破滅喚起の巨人》《クルフィックスの狩猟者》がすり抜けていく。

 宮下がマナをオープンしてターンを返したので、市川は《エレボスの鞭》をプレイすると、再び《破滅喚起の巨人》2体が-2/-2をばら撒き、全軍進撃。宮下は《完全なる終わり》《破滅喚起の巨人》のうちの1体を破壊する。

 なんとか《破滅喚起の巨人》をプレイして盤面を固めようと画策する宮下だったが、そこに市川が《残忍な切断》を打ち込むと、自身を守りきれるだけのライフは残らないのだった。


宮下 0-1 市川


 アブザンプレインズウォーカーを使用する宮下に対して、市川が使用するのは、黒緑星座だ。

 年末の大型トーナメントで、市川が黒緑のデッキを使用しているとなると、こちらとしては勝手にテンションがあがってしまう。ましてや、そこで《思考囲い》が撃っているとなればなおさらだ。

 なぜなら、市川が2008年にThe Finalsを優勝した時に使用していたデッキは、黒緑エルフなのだ。

 あの八十岡の「黒緑エルフは終わってる」発言に対して、優勝インタビューで「黒緑エルフは終わってない」と言い返した姿が強く印象に残っている。


Game 2

 続いて先攻の宮下。今度は後手の市川がマリガンする。

 今度は《疾病の神殿》を置いた宮下相手に市川が《思考囲い》。ここで公開された《包囲サイ》《対立の終結》《完全なる終わり》に土地が3枚という手札を見て、市川は《疾病の神殿》の占術でトップに置いたことを確認した上で、《完全なる終わり》をディスカードさせる。

 2ターン後に《思考囲い》を引き当てた宮下が今度は《思考囲い》《骨読み》を捨てさせると、市川は《森の女人像》をプレイ。無事4枚めの土地を引き当てた宮下は《包囲サイ》をプレイする。

 市川は《サテュロスの道探し》をプレイした上で、残した3マナで《英雄の破滅》《包囲サイ》にプレイ。だが、宮下は占術で上においておいた2枚目の《包囲サイ》をプレイする。

 そして、宮下は市川が《開花の幻霊》をプレイした所で《悲哀まみれ》でまとめて流し、《思考囲い》をプレイ。ここで、《女王スズメバチ》をディスカードさせられた市川は軽い悲鳴を上げる。



市川 典和 



 だが、続くターンに《クルフィックスの狩猟者》をプレイした市川がめくった山札の上は、《エレボスの鞭》。これによって《女王スズメバチ》を釣り上げ、蜂トークンを4体戦場に残す。

 宮下は《骨読み》をプレイした後に、《包囲サイ》でアタックする。これを3体の蜂トークンでブロックする市川。続くターンには《開花の幻霊》を戦場に送り出す。

 ここで、《対立の終結》《クルフィックスの狩猟者》で悩んだ宮下は、市川に手札が無いこともあり、《クルフィックスの狩猟者》をプレイするのだが、ここで市川はトップデックで《思考囲い》をプレイし、《対立の終結》をディスカードさせる。

 《クルフィックスの狩猟者》で見えている《英雄の破滅》《開花の幻霊》を除去はするのだが、すでに《エレボスの鞭》も利用して手札を回復させている市川。

 市川も中々決定打となるクロックを用意できないのだが、手札がなく、《クルフィックスの狩猟者》の助けがあるもののトップデック状態の宮下相手に少しずつライフ差を増やしていく。

 宮下が《太陽の勇者、エルズペス》にたどり着くその前のターンに墓地の《苦悶の神、ファリカ》《エレボスの鞭》で釣り上げ、3体の1/1トークンを生み出す。そして、続くターンに2枚目の《苦悶の神、ファリカ》をトップデックし、トークンを大量に生み出す体制を作り上げる。

 そして《太陽の勇者、エルズペス》《英雄の破滅》が打ち込まれると、宮下に逆転の目はほとんどないのであった。


宮下 0-2 市川


 宮下が、復帰してマジックをはじめた友人を見てマジックをはじめたのが『ドラゴンの迷路』の頃ということなので、彼はThe Finalsの存在そのものを知らないプレイヤーだということになる。

 The Finalsの後継を目指すThe Last Sunの決勝ラウンドで、優勝経験者と、そもそもThe Finals以降の世代が戦うというのもなんとも面白い話ではないか。これも、今、マジックの新規プレイヤーが増えてきているということだろうし、そんなプレイヤーが遊ぶ場所として、晴れる屋トーナメントセンターが機能しているということだろう。

 The Last Sunが、The Finalsを目指して企画されたものならば、晴れる屋トーナメントセンターも、渋谷のDCIトーナメントセンターを目指して作られた施設であり、できてから1年たって、理想に着実に近づいていっている。


Game 3

 三度先攻の宮下だが、ここで土地が少ない初手が来てしまい、マリガンを選択する。そして、続く6枚にも土地は1枚。

宮下 「ダブルマリガンは《アブザンの魔除け》ちゃんと引けないと捲れないでしょ……」

 だが、神は宮下を見放していなかったのか、最後の5枚は、土地が3枚に《思考囲い》《アブザンの魔除け》というもの。

 宮下が《思考囲い》をプレイすると、市川の手札は《死者の神、エレボス》《開花の幻霊》《サテュロスの道探し》《森の女人像》に土地が3枚というもの。ここから《死者の神、エレボス》をディスカードさせる。



宮下 翔太 



 市川は《森の女人像》《開花の幻霊》と順調に展開し、一方の宮下も《アブザンの魔除け》を2枚ドローのモードで使用し、自身のターンは何もせずにエンド。一方の市川は《エレボスの鞭》をプレイする。

 ここで宮下は長考した後に《世界を目覚めさせる者、ニッサ》をプレイ。市川が《サテュロスの道探し》をプレイすると、ここで墓地に《女王スズメバチ》が落ち、ちょうど《エレボスの鞭》を起動するマナも残っているという状況になる。ここで《エレボスの鞭》《女王スズメバチ》を釣り上げ、《開花の幻霊》と共にアタックし、《世界を目覚めさせる者、ニッサ》を撃沈させる。

 ここで産み出された蜂トークンこそは《悲哀まみれ》で対処した宮下だったが、市川は続いて、今度は手出しで《女王スズメバチ》を戦場に呼び出す。

女王スズメバチ



 宮下は《骨読み》をプレイし、ここで手に入れた《完全なる終わり》《エレボスの鞭》に打ち込む。

 だが、この時点でライフが10の宮下は続くターンの蜂一家のアタックでライフが4となってしまい、トークンに対処する事はできないのだった。


宮下 0-3 市川



 市川が優勝したThe Finalsは、渋谷のトーナメントセンター閉鎖後のものなので、そこに類似性を求めすぎてしまうのもおかしな話ではある。

 だが、年末の構築イベントが盛り上がってほしいと思う身としては、市川にThe Finals・The Last Sunの両タイトル制覇をぜひとも実現してほしいと思う。