準々決勝:長田 匡弘(千葉) vs. 三角 恭兵(神奈川)

晴れる屋

レガシーという広大なカードプールを擁するフォーマットで、数多くのプレイヤーが使用する、オーソドックスなデッキに対して強烈なアンチテーゼを突きつけたプレイヤーが2人、Top8へと駒を進めた。あえて既存のデッキ構成というかアーキタイプに当てはめるとすれば、”ドラゴンストンピー+スニークアタック”といった感じのデッキを操る長田。長くこのデッキを愛用しているという。
対する三角は”時間カウンターコントロール”という、仮に対戦前にアーキタイプを教えてもらっても、何の事だかわからない、完全オリジナルなデッキを操って、Top8までやってきた。
更に駒を進めるのは、果たしてどちらか?

Game1

先手は三角。お互いにマリガンは無し。ファーストアクションは、後手長田の《金属モックス》からの《虚空の杯》X=1。数多くのデッキを機能不全に陥らせてきたであろうこのアクションは、ピッチによる《目くらまし》で退ける。いくら特殊なデッキだからと言って、1マナのスペルを唱えられないと言われてしまってはデッキが動かない。
長田のファーストアクションを弾いた後は、お互いにドローゴーが続く。
数ターンの後、再び長田が動く。繰り出すパンチ全てがフィニッシュブローの長田。次なるパンチは《騙し討ち》。だが、メインフェイズに動いていては、まったく騙せない。これも《対抗呪文》で弾かれてしまう。

そうこうしているうちに、長田の場には《大いなるガルガドン》《祖先の幻視》《裂け目の精霊》と並び、時間カウンターコントロールとはこのことか!というスペルを展開していく。長田に残された時間は少ない。
何とかこの状況を打開しようと《煮えたぎる歌》からプレイされたのは《鉤爪のジィーリィーラン》。筆者は、一応カードショップの店長をやっているのだが、全くカードの効果がわからない。調べてみるとなるほど強い。毎ターンドラゴンがレッドゾーンへと送り込まれるらしい。
これが通ってしまうと、中々に厳しいのでは?と思ったが、三角が用意している解答は、浅はかな筆者のはるか斜め上を行っていた。

《手綱》である。

対戦相手にとっては無用の長物である《裂け目の精霊》を押し付け、《鉤爪のジィーリィーラン》のコントロールを得る。当然《大いなるガルガドン》によって時間の狭間へと、かのドラゴンは飲み込まれていく。

次のターン、《裂け目の精霊》のパンプ能力を限界まで使った後、全ての土地を飲み込んだ《大いなるガルガドン》が長田を一撃で葬り去った。

様々なデッキやカードを見てきた自負がある筆者ではあるが、知らないカードのオンパレードである。レガシーフォーマットはかくも広漠で深遠なものなのか。
若山史郎、汗顔の至りである。

長田 0-1 三角

Game2

先手の利を最大限に生かせるデッキを使っている長田。ここは何としても一本取り返したいところだが、痛恨のダブルマリガンをしてしまう。
だが、ここから渾身の《裏切り者の都》→マナを出してから《裏切り者の都》《猿人の指導霊》《業火のタイタン》をプレイするが、これは《対抗呪文》。相手のデッキの性質上、ブラフでマナを立てていてもしょうがないので、三角は《渦まく知識》から《裂け目の精霊》《祖先の幻視》と展開していく。

このままではあまり時間が無い長田、ここで何とか流れを引き戻せればチャンスが残る。祈るようにプレイした《鉤爪のジィーリィーラン》は、無念の《目くらまし》

一つの呪文をプレイするために、リソースを絞り出すように使っていく長田には、既に残ったハンドは1枚。次元の狭間から、無理矢理たたき起こされた《大いなるガルガドン》と、時間を食べた《裂け目の精霊》が長田を食らいつくした。

今までに印刷されたカードの種類はゆうに1万種類を超える。そのうちのほぼ全てを使えるレガシーフォーマットですら、頻繁に使われているカードは数百種類程度だろう。青いデッキなら大抵《渦まく知識》は入っているし、黒いデッキなら《思考囲い》といった感じで、パーツの根幹を為す構成はかなり洗練されていると思う。だが、蓄積された知識こそが、独創性を阻害する一番の癌なのである。レガシーは”自分がやりたいこと”や”使いたいカード”を使ってゲームを楽しむために、マジックの歴史が答えてくれる。三角と長田は、環境に存在するデッキへの対抗手段を自分のデッキに練り込み、勝利への探求心を失うことなく、独創的なカードを使い、独創的なデッキを創り上げた。

ローグデッキ対決は、三角に軍配が上がった。

長田 0-2 三角