準決勝: 吉野 健昭(千葉)vs. 堀 一智(宮崎)

晴れる屋

By Shiro Wakayama


準決勝まで残ったのは吉野と堀。普段から親交のある二人は和やかに会話しながらデュエルの準備を始める。

Game 1

吉野《ルーンの母》やめてよ。」

 「《ルーンの母》。」

 「《石鍛冶の神秘家》やめてください。」

吉野  「入ってないのしってんじゃん!《Sinkhole》。」

土地が2枚で止まってしまった堀に、さらなる《不毛の大地》による土地破壊から、《闇の腹心》が降臨する。
《闇の腹心》《ルーンの母》に殴りかかり、少し悩む堀だが、ここはブロック。お互いの思惑が交錯しながら、何も能力は起動せず、互いのクリーチャーが墓地へ。

だが、《遍歴の騎士、エルズペス》が吉野の場に降り立ち、《名誉回復》でなけなしの土地も破壊される。《剣を鍬に》で吉野陣営に加えられた後続の《タルモゴイフ》は除去するものの、《遍歴の騎士、エルズペス》から生み出されるトークンも処理できなければ、プレインズウォーカー本体はさらに対処のしようがない。

吉野はダメ押しとばかりに《闇の腹心》を2体追加。

 「投了してぇー。」

更に追加されるのは、3体目の《闇の腹心》《師範の占い独楽》
堀の場に土地が1枚あるだけなのに対し、吉野の場には《闇の腹心》が3体、兵士トークンが2体、《遍歴の騎士、エルズペス》《師範の占い独楽》という絶望的な状況。

デッキの構造上、戦況をひっくり返すカードが存在せず、そのままライフを削りきられてしまう。

投了したい。確かにその通りだ。盤面は絶望的だった。ひっくり返す算段も無い。だが、負けるわけにはいかない。だから投了は出来ない。
朝、段ボールゴミを出してきた。帰りにケーキを買う約束もした。家族とMTGを両立させた。
だからこそ、半端な成績では帰れないのだ。家で待つ家族のために。左手の薬指に光る、指輪に誓って。

堀 0-1 吉野


Game2

先手は堀。ワンサイドゲームだったGame1とはうってかわって、消耗戦が始まる。
堀の《ルーンの母》を吉野が即刻《剣を鍬に》という展開でゲームが始まる。
堀は先手の利を生かして、《不毛の大地》でランドを責めながら、《思考囲い》《聖遺の騎士》を叩き落とす。吉野に残されたハンドは《聖遺の騎士》《吹きさらしの荒野》《不毛の大地》

堀は更に《ルーンの母》を盤面に追加。吉野は3マナをそろえることが出来ず、彼女の召喚酔いが解け、堀陣営の除去耐性がぐんと跳ね上がる。
堀は少し迷うが、伝家の宝刀《梅澤の十手》を出して、ディフェンス担当の《ルーンの母》に装備。隙が出来たらいつでもアタックに行ける状況を作る。

 「ランドは《Scrubland》《Savannah》でいいですか?」
吉野  「《Savannah》《Scrubland》です。・・・どっちでも変わらないですね。」

トラッシュトークをしていたかと思いきや、急に真面目な顔を見せる堀とは違い、終始飄々とした雰囲気を持つ吉野。
盤面は緊迫しているのだが、どうにも和やかな空気が流れ続ける。

だが、吉野も適当にデュエルしているわけでは全く無い。手札の《名誉回復》《真髄の針》を眺めながら、《梅澤の十手》をスルーして、冷静に《名誉回復》で堀の《森》を割る。後続に《聖遺の騎士》が出てきてしまってはゲームにならなくなってしまう。

業を煮やした堀は、《ルーンの母》でアタック。この攻撃は無事通り、《梅澤の十手》にカウンターが二つ乗る。

クリーチャーデッキ同士の戦いにおいて、攻撃が投了レベルの制圧力を誇る《梅澤の十手》。だが、吉野は全く動じない。まは《Hymn to Tourach》をプレイ。堀の手札から零れ落ちるのは、《火と氷の剣》《聖遺の騎士》という超ハイカロリーな2枚。そして、追加でプレイしたのは《真髄の針》。迷って堀はカウンターを一つだけ消費。吉野は《梅澤の十手》指定。これで場は《ルーンの母》1体分の差しか無くなった。

さらに出番を待っていた《聖遺の騎士》のが吉野の場に降り立ち、サイズは6/6。だが、堀だって負けてはいられない。ここで渾身の《聖遺の騎士》をトップデッキし、サイズは吉野のそれを凌駕する8/8。《ルーンの母》のを考えると、このクリーチャーを止めることが出来ない吉野は相当苦しい。

だが、吉野の後続は尽きない。《聖遺の騎士》の2枚目と《タルモゴイフ》をプレイ。圧倒的な豪運である。
吉野の場のクロックが膨れ上がってしまい、《ルーンの母》による強硬策を取ることが出来なくなってしまった堀だが、ここで《饗宴と飢餓の剣》を引き込む。これで後続があれば、装備→アタック→土地アンタップ→ブロッカー用意と、必勝の動きが出来る。だが、肝心の、後続がやってこない。
吉野は更に《聖遺の騎士》をプレイ。都合3体目である。後続が途切れる気配が無い。

だが、《聖遺の騎士》3体と《タルモゴイフ》という陣容を見て、吉野が気づく。

吉野  「これもう確定で《ボジューカの沼》じゃん。」

しかし、《ボジューカの沼》ではなく、《霧深い雨林》をサーチした堀。自らの《聖遺の騎士》のサイズをパンプアップして、一撃必殺の仕込みを始める。。

序盤の《不毛の大地》が絡んだ攻防と、フェッチランド、一撃必殺のサイズにまで膨れ上がった《聖遺の騎士》《饗宴と飢餓の剣》によって、実質アンブロッカブル16/16という、某エルドラージ神を凌ぐサイズになった《聖遺の騎士》。既に覆しがたい物量差がある以上、このアタックにかけるしかない堀。

星をイーブンに戻し、決勝へと駒を進めるために。家で待つ家族に優勝という最高の土産を用意するために。

堀の《聖遺の騎士》が、《饗宴と飢餓の剣》を携え、レッドゾーンに送り込まれる。

だが、無情にも、戦闘中に吉野の3体並んだ《聖遺の騎士》の1体がタップ状態となる。

そして、吉野は悪魔のように呟いた。

吉野 「《ボジューカの沼》。」

堀 0-2 吉野