こんにちは。今回は第3回で予告した通り、各地で、そしてMagic Online(以下MO)上で行われたプロツアー予選(以下PTQ)の結果を主にチェックしていきたいと思います。
PTQの結果や参加レポートだったり、色々なデッキアイディアを拝見していると、モダンの盛り上がりを実感します。ただその一方で、モダンに対して「資産差が大きそう」「すでにやっている人に追いつけなそう」といった理由で、興味はあるものの始める事を躊躇してしまうという意見も目にしました。個人的にはモダンはより多くの人に体験してみてもらいたい面白いフォーマットだと思っていますし、スタンダード落ちしてしまったお気に入りのカードを使うのにもうってつけのフォーマットだと思います。そこで今回の記事では、PTQ等で結果を残したデッキの中でも、比較的最近のカードが多いものや、カードを集めやすそうなデッキを中心に紹介させていただき、「資産差が大きい」「間に合わない」というモダンに対するネガティブなイメージを少しでも払拭できればと思います。6月にはモダンフォーマットを用いて行われるグランプリ横浜もありますし、今から始めれば早すぎることこそあれど、決して遅すぎるなんてことはないでしょうし、本当に面白いデッキがたくさんあるフォーマットなので、この記事がモダンに興味を持っていただくきっかけにでもなれば幸いです。
それでは、今回も最後までお付き合いのほうよろしくお願いいたします。
赤緑トロン
4 《燃え柳の木立ち》 4 《ウルザの塔》 4 《ウルザの魔力炉》 4 《ウルザの鉱山》 1 《ウギンの目》 1 《アカデミーの廃墟》 -土地(18)- 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(23)- |
4 《古きものの活性》 4 《彩色の星》 4 《彩色の宝球》 4 《探検の地図》 4 《予言のプリズム》 4 《衝動のタリスマン》 4 《森の占術》 3 《探検》 4 《精神隷属器》 4 《解放された者、カーン》 1 《全ては塵》 -呪文(40)- | 2 《呪文滑り》 2 《ワームとぐろエンジン》 2 《大祖始の遺産》 3 《紅蓮地獄》 2 《焼却》 2 《古えの遺恨》 2 《原基の印章》 -サイドボード(15)- |
第4回のトップを飾るデッキは、MOのPTQを突破したこのデッキ。《彩色の宝球》や《彩色の星》といったカードを利用することで、瞬間的に「ウルザランド」から緑マナを捻出し、そこから《古きものの活性》や《森の占術》へと繋ぎ、最速で、すなわち3ターン目に「ウルザランド」を揃えることを主観においたデッキです。近代の「トロン」デッキには必ず採用されている《探検の地図》も、このアーキタイプ成立に大きく貢献した1枚で、トロンA、B、《探検の地図》と初手にあれば、なんら苦労することなく「ウルザランド」を揃えることが可能です。
そして一度「ウルザランド」が揃ってしまえば、残りの時間はあなたのためだけに存在します。4枚ずつ投入された《精神隷属器》、《解放された者、カーン》で対戦相手のリソースをボロボロにするもよし、《ウギンの目》から《ワームとぐろエンジン》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》で一気に攻めたてるもよしと、普通のデッキではなかなか味わえないような大味な戦い方を満喫できます。これらのカードはカウンター呪文以外での対処が難しいことに加え、《古きものの活性》で安定してサーチすることもできるとなれば、このデッキがこれほどまでに活躍している理由も見えてきます。
しかしながら、流星の如く現れ、いきなりPTQ優勝というド派手な結果を残したこのデッキは、そのあまりの強さゆえに多くのプレイヤーに対策される結果となりました。具体的には《幽霊街》や《地盤の際》が以前よりも増加しており、さらには《ガドック・ティーグ》や《エイヴンの思考検閲者》のような、今までではあまり使われることのなかったカードにまでお呼びがかかる惨状です。このデッキはそれらの対策カードを乗り越えることができるのか?そもそも他のコンボデッキ相手にスピード勝負で勝てるのか?
そんなこのデッキの今後を疑問視する声が上がる中、このデッキがさらなる進化を遂げ、再びPTQを優勝という完璧な答えを出したのは、ここから僅か1週間後の出来事でした。
日本が誇るデッキビルダー”rizer”による赤緑トロン ver.2
3 《森》 3 《燃え柳の木立ち》 4 《ウルザの塔》 4 《ウルザの魔力炉》 4 《ウルザの鉱山》 1 《ウギンの目》 -土地(19)- 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《無限に廻るもの、ウラモグ》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(3)- |
4 《古きものの活性》 4 《大祖始の遺産》 4 《彩色の宝球》 4 《彩色の星》 4 《探検の地図》 4 《探検》 4 《森の占術》 4 《紅蓮地獄》 1 《忘却石》 4 《解放された者、カーン》 1 《全ては塵》 -呪文(38)- | 2 《根の壁》 2 《ワームとぐろエンジン》 2 《自然の要求》 1 《耳障りな反応》 1 《墓掘りの檻》 1 《原基の印章》 2 《古えの遺恨》 1 《たい肥》 1 《鞭打ち炎》 1 《内にいる獣》 1 《幽霊街》 -サイドボード(15)- |
「赤緑トロン」とは、3~4ターン目に《精神隷属器》か《解放された者、カーン》を出すデッキである。友人が僕にこのデッキを紹介してくれた時に、このように伝えられましたし、僕も実際にこのデッキを見て、そのように思っていました。
しかしこのリストは、その肝心要と言われていた《精神隷属器》と、《予言のプリズム》、《衝動のタリスマン》などを抜いてしまい、序盤から相手に干渉できる《大祖始の遺産》と《紅蓮地獄》を投入しています。《大祖始の遺産》は「メリーラ頑強」、「青赤ストーム」、「Aggro Loam」、といったデッキに効果的ですし、《紅蓮地獄》は「メリーラ頑強」、「親和」、「トリコロール(青白赤)Delver-Go」なんかに良く効きます。前述の通り、「赤緑トロン」対策として日の目を浴びている《ガドック・ティーグ》や《エイヴンの思考検閲者》に対しても効果覿面ですね。《全ては塵》と《忘却石》が併用されているのも、《ガドック・ティーグ》や《真髄の針》といった《全ては塵》では対処できないパーマネントを考慮してのことだと思われます。
他にも《森》を入れて《幽霊街》に耐性を付けていたりと、ここ何日かで進んだ「赤緑トロン」対策を意識した作りが目立ちます。サイドボードに《血染めの月》や《幽霊街》対策兼、ビートダウンへのブロッカーとして重宝する《根の壁》の採用など、いくつかの変更点が見受けられますね。
今のところ、まだ《精神隷属器》入りのリストの方がMOだと主流のようですが、今後対策カードがさらに増えるようであれば、このアプローチも価値を高めていくことでしょう。
どちらのリストにするにせよ、《解放された者、カーン》とクリーチャー陣以外は比較的集めやすいと思いますし、動き自体も非常に面白いデッキなので、これからモダンを始めてみようという方にぴったりのデッキだと思います。
お次は少し趣向の異なるこのデッキを。
形を変えて活躍し続けるCaw-Blade
4 《島》 1 《平地》 2 《乾燥台地》 2 《霧深い雨林》 1 《沸騰する小湖》 4 《金属海の沿岸》 2 《天界の列柱》 2 《神聖なる泉》 1 《永岩城》 4 《変わり谷》 3 《幽霊街》 -土地(26)- 4 《戦隊の鷹》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《聖トラフトの霊》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(13)- |
4 《流刑への道》 4 《呪文嵌め》 2 《呪文貫き》 1 《鋼打ちの贈り物》 4 《差し戻し》 2 《饗宴と飢餓の剣》 2 《遍歴の騎士、エルズペス》 2 《殴打頭蓋》 -呪文(21)- | 1 《誘惑蒔き》 4 《失脚》 2 《真髄の針》 2 《無効》 2 《否認》 2 《機を見た援軍》 2 《神の怒り》 -サイドボード(15)- |
昨年、スタンダードで約6年ぶりに禁止カードを生み出す最大の要因となったのがこの「Caw-Blade」。悪名高き《石鍛冶の神秘家》と《精神を刻む者、ジェイス》はモダンでも禁止カードに指定されていますが、それでも「Caw-Blade」は活躍を続けています。
基本的な動きは、息切れ知らずの《戦隊の鷹》と、《饗宴と飢餓の剣》を筆頭とした各種装備品との組み合わせでゲームを掌握していくことになります。《饗宴と飢餓の剣》と《戦隊の鷹》、そして各種カウンター呪文の相性の良さは凶悪で、黙っていると手札がなくなってしまう相手は動くほかなくなり、そこをカウンターや《流刑への道》で捌いていくのが理想の展開です。
《聖トラフトの霊》も《戦隊の鷹》と同じくこのデッキにおける主戦力で、スタンダードよろしく《饗宴と飢餓の剣》や《殴打頭蓋》とのコンボはもちろん、《遍歴の騎士、エルズペス》の「+3/+3」能力や、《永岩城》といったモダンならではの組み合わせもあります。特に《永岩城》は、最近「青赤トロン」や「無色トロン」で使用頻度の高まっている《紅蓮地獄》を回避できたり、相手の戦場にパワー2のクリーチャーがいようともアタックを継続できたりといいこと尽くめ。このデッキに限らず、《聖トラフトの霊》を使うのであれば、ぜひともデッキに忍ばせておきたい1枚です。
このリストは「赤緑トロン」の増加を意識した作りになっていて、メインボードから搭載された3枚もの《幽霊街》に始まり、サイドボードにも《真髄の針》、《無効》、《否認》と十分な枚数を割いています。《無効》は《探検の地図》と《精神隷属器》を封じることができ、《真髄の針》と《否認》はその2種類に加え《解放された者、カーン》にも対処できる優れもの。これだけ相手の動きを阻害するカードが入ると、相手の「ウルザトロン」を揃える動きを徹底的に妨害して、さながら土地破壊デッキのような動きをして勝つこともあります。序盤から《聖トラフトの霊》や《ヴェンディリオン三人衆》、または《饗宴と飢餓の剣》のような打点の高いカードがある場合は、相手の《探検の地図》や《森の占術》を積極的に打ち消してみてもいいと思います。
残るサイドボードカードは、ビートダウンデッキ向けのものがほとんどですね。その中でも《失脚》は実に見事なチョイスで、《秘密を掘り下げる者》や《ステップのオオヤマネコ》のような、序盤に出てこそ真価を発揮する類のカードが蔓延する今のメタゲームであれば、非常に優秀な疑似除去として機能してくれることでしょう。
ここまで紹介してきた「赤緑トロン」と「Caw-Blade」は、MOで直近のPTQを突破している注目度の高いデッキで、特に「赤緑トロン」は、現在最も世間の注目を集めているデッキと言ってもいいくらいの活躍を見せています。今後モダンの大会に参加する場合に対戦する回数も多いと思うので、《幽霊街》や《血染めの月》、または《真髄の針》などでしっかりと対策しておきたいですね。
ここからは少しマニアックなコンボデッキふたつを紹介させていただきます。
忘れたころにやってくるコンボデッキその一「《死せる生》」
2 《森》 2 《山》 2 《沼》 3 《新緑の地下墓地》 1 《霧深い雨林》 2 《銅線の地溝》 2 《黒割れの崖》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《草むした墓》 1 《ドライアドの東屋》 1 《ケッシグの狼の地》 -土地(19)- 4 《大爆発の魔道士》 4 《鋳塊かじり》 4 《通りの悪霊》 4 《死の一撃のミノタウルス》 4 《巨怪なオサムシ》 4 《谷のラネット》 3 《ジャングルの織り手》 -クリーチャー(27)- |
3 《死せる生》 4 《悪魔の戦慄》 4 《暴力的な突発》 3 《内にいる獣》 -呪文(14)- | 3 《フェアリーの忌み者》 3 《台所の嫌がらせ屋》 3 《なだれ乗り》 3 《叫び大口》 3 《ジャンドの魔除け》 -サイドボード(15)- |
「続唱」というメカニズムを最大限に悪用したデッキがこちらの「《死せる生》」。2マナ以下のスペルが入っていないこのデッキは、《悪魔の戦慄》か《暴力的な突発》を唱えると「続唱」で必ず《死せる生》にたどり着くことができます。
その《死せる生》の効果はと言いますと、あの《生ける屍》と全く同じで、戦場のクリーチャーを全滅させた上で、それ以前に墓地に落ちていたクリーチャーを全て戦場に戻すというド派手なもの。《暴力的な突発》経由であれば、そんな強力な効果がインスタントタイミングで使用できるわけで、これはモダン環境においても十分に通用する戦略です。
とは言え、普通に使うとデッキ構築に制限のかかる劣化版《神の怒り》でしかないので、《死せる生》を有効活用するためには、キャストするまでに墓地にクリーチャーを貯めておく仕掛けが必要となります。そこで登場するのが、主に「アラーラ・ブロック」から選ばれた各種「サイクリング」付きのクリーチャーたちです。
普段であれば、構築フォーマットでまずお呼びのかからないようなこれらのクリーチャー陣が、《死せる生》後の無人の荒野を駆け抜けるというわけです。これらのクリーチャーを「サイクリング」することで、《悪魔の戦慄》や《暴力的な突発》を引く確率を高めることができますし、デッキの潤滑油としての役割も重要なポイントです。
《死せる生》をほぼ確実に3~4ターン目にキャストできる関係上、このデッキは対ビートダウン性能に優れています。《死せる生》に対応して、任意の数のクリーチャーを生け贄に捧げることのできる《電結の荒廃者》擁する「親和」デッキだけは例外と言えるかもしれませんが、《鋳塊かじり》や《内にいる獣》で事前に対処することもできるので、「親和」デッキもひっくるめて、ビートダウンデッキには強いと評して差支えないでしょう。
そしてもう1点重要なのが、このデッキは先ほど紹介した「赤緑トロン」にも強いという点が挙げられます。先手であれば相手側の「ウルザランド」が揃う前に《大爆発の魔道士》か《内にいる獣》で土地破壊を開始できますし、墓地に少量のクリーチャー+《大爆発の魔道士》という状況になればすぐさま《死せる生》へと繋げて勝利することができるので、僅かながらではありますが、このデッキが有利だという印象を受けています。1ターン目に置かれた《探検の地図》を、《鋳塊かじり》で破壊したりもできるので、全体的に「赤緑トロン」側の動きを抑制しやすいのもそのように考える要因です。
墓地をフル活用するこのデッキは、一見墓地対策に対して脆いと思われるかもしれませんが、1枚程度ならばものともせずに勝つことができます。環境に蔓延する《大祖始の遺産》、《虚無の呪文爆弾》といったアーティファクト軍団には《鋳塊かじり》で対処可能ですし、昔とは違い、万能除去である《内にいる獣》を手に入れたことで、予想外のデッキから《虚空の力線》が出てきてしまっても即投了、なんてことにはなりません。ちなみに《死せる生》は墓地のクリーチャーを直接戦場に出すのではないので、《墓掘りの檻》には引っ掛かりません。このデッキを対策する際にはご注意を。
《大祖始の遺産》系統のカードへの対策としてひとつ覚えておいていただきたいのが、対戦相手が《大祖始の遺産》を出していたとしても、こちらの手札に《暴力的な突発》がある場合は、《暴力的な突発》の前に何かひとつアクションをするだけで、《大祖始の遺産》を無効化できるというものです。例えば《鋳塊かじり》や《内にいる獣》で《大祖始の遺産》を対象に取ったり、《悪魔の戦慄》で仕掛ければ、相手は必然的に《大祖始の遺産》を生け贄に捧げざるをえないので、それに対応して《暴力的な突発》をキャストすれば、《大祖始の遺産》の能力で墓地がなくなってしまう前に《死せる生》を解決させることができますからね。
《鋳塊かじり》と《内にいる獣》は墓地を狙ってくるカードのみならず、「続唱」を妨害してくる《エーテル宣誓会の法学者》、《法の定め》といったカードにも幅広く対応できるので、対戦相手がどのような対策を施してこようとも、パーマネントであればほとんどのカードに対処できるのが心強い限りです。
土地構成で目を引くのは《ドライアドの東屋》と《ケッシグの狼の地》の採用でしょうか。《ケッシグの狼の地》の必要性については、残念ながら答えを出すことができませんでしたが、《ドライアドの東屋》には《悪魔の戦慄》の弱点を補うという重大な役割があります。《悪魔の戦慄》は、戦場にクリーチャーが1体もいないとキャストできないという欠点を抱えていますが、そんな時でも《新緑の地下墓地》のようなフェッチランドで《ドライアドの東屋》を導けば問題なくキャストできるようになります。以前は《禁忌の果樹園》でクリーチャーを生み出してこの弱点をカバーしていましたが、トークンが増えすぎるとそれだけで《死せる生》を使わざるをえない展開もあったりしたので、この変更はデッキパワーの向上に大きく貢献したと思います。
サイドボードも「続唱」の都合上、2マナ以下のカードを入れることは叶いませんが、追加の土地破壊や、除去、墓地対策と分かりやすい構成になっています。現状ではカウンター呪文に対抗する手段が何もありませんが、もしも青いデッキを意識するのであれば、《跳ね返りの罠》を入れてもいいかもしれません。
このデッキはメタゲーム的な観点で見てもお勧めのデッキで、今回の記事の中でも個人的な一押しです。墓地対策やカウンター呪文を使用するデッキがあまりにも増えすぎると厳しいかもしれませんが、前述の通り多少の墓地対策ならなんとかなるので、少し変わったデッキがお好きなみなさんはぜひお試しください。
忘れたころにやってくるコンボデッキその二「《集団意識》」
8 《冠雪の島》 3 《冠雪の山》 4 《沸騰する小湖》 1 《蒸気孔》 1 《シヴの浅瀬》 2 《トレイリア西部》 -土地(19)- 4 《猿人の指導霊》 1 《天上の案内者》 -クリーチャー(5)- |
4 《タイタンの契約》 4 《否定の契約》 1 《殺戮の契約》 1 《仲裁の契約》 4 《手練》 4 《血清の幻視》 2 《ギタクシア派の調査》 4 《差し戻し》 4 《五元のプリズム》 4 《煮えたぎる歌》 4 《集団意識》 -呪文(36)- | 3 《月の大魔術師》 2 《呪文貫き》 2 《大祖始の遺産》 1 《払拭》 1 《墓掘りの檻》 1 《真髄の針》 3 《紅蓮地獄》 2 《無知の喜び》 -サイドボード(15)- |
前回の記事で「青赤」はコンボの色と紹介しましたが、この「《集団意識》」もまた、ご多分に漏れずコンボデッキです。
その手法は《集団意識》を張った状態で《タイタンの契約》や《否定の契約》などの契約カードを唱え、そのコピーを解決させることで対戦相手を強制的に「契約死」に追いやるというもの。豪華4種類もの契約カードが採用されていますが、《仲裁の契約》以外の3種類には明確な採用理由があります。ここではそれぞれの役割を簡単に見ていきましょう。
■《タイタンの契約》
対戦相手のデッキにカウンター呪文が入っているなどの理由で、ゲームが長引いてしまった場合には、普通にキャストしてアタックにいくこともありますし、時には《ガドック・ティーグ》をブロックするために戦闘中にキャストしたりといったこともありますね。
■《否定の契約》
■《殺戮の契約》
■《仲裁の契約》
「《集団意識》」デッキは、コンボ開始に6マナが必要なこともあり、他のコンボデッキに比べて少し悠長ですが、このデッキの真の強みはサイド後にあります。「青赤ストーム」が墓地対策と《法の定め》系統のカードに、「青赤《欠片の双子》」デッキが《静寂の守り手、リンヴァーラ》や《焼却》に手を焼くのに対し、「《集団意識》」デッキにはこれといったキラーカードが存在しないためです。《集団意識》に対して、どのタイミングで《帰化》系のカードで割り込まれようとも、契約カードのコピーは絶対にスタックに乗るので、《帰化》などのカードでは解決になりません。
強いて挙げるとすれば、《集団意識》やマナ加速を的確に対処してくる手札破壊やカウンター呪文だったり、「契約死」を無視できる《天使の嗜み》なんかがありますが、それでも他のコンボデッキと比較して、サイド後にこれといった対策カードがないのは「《集団意識》」デッキの強みと言っていいでしょう。
サイドボードに《血染めの月》ではなく《月の大魔術師》が採用されているのは、このデッキに《帰化》系のカードを入れてくるプレイヤーこそいれど、除去を残してくるプレイヤーはいないという判断からでしょう。「赤緑トロン」に対しては《月の大魔術師》の方が強いのですが、今後「青赤トロン」や「Zoo」のように、《稲妻》を利用するデッキが増えてくるのであれば、《血染めの月》を優先してもいいでしょうね。
このリストは土地が少ないので、サイド後に《五元のプリズム》を破壊されてしまうとマナが伸びずにそのまま負けてしまう、ということが多々ありました。そしてコンボ開始に6マナを必要とすることもあり、土地はもう少しあってもいいかなと思ったので、昔のエクステンデッドのリストを参考にしながら、少しだけ変更を加えてみたものが以下のリストになります。
6 《島》 3 《山》 4 《沸騰する小湖》 4 《ハリマーの深み》 2 《トレイリア西部》 1 《蒸気孔》 1 《湿った墓》 -土地(21)- 4 《猿人の指導霊》 2 《天上の案内者》 -クリーチャー(6)- |
4 《タイタンの契約》 4 《否定の契約》 1 《殺戮の契約》 4 《手練》 4 《血清の幻視》 4 《差し戻し》 4 《捨て身の儀式》 4 《煮えたぎる歌》 4 《集団意識》 -呪文(33)- | 3 《月の大魔術師》 1 《払拭》 1 《真髄の針》 1 《墓掘りの檻》 1 《大祖始の遺産》 4 《紅蓮地獄》 2 《焼却》 2 《無知の喜び》 -サイドボード(15)- |
ちょっとサイドボードまでは練り込む時間がなかったのですが、メインボードは個人的に好きな形になりました。《ハリマーの深み》は《トレイリア西部》で持ってくることがあるくらいに強いですし、この手のコンボスタートまでに時間がかかるデッキにはうってつけだと思います。
このデッキは、モダン環境で誕生してからまだ日が浅いので、今後の成長に期待できるデッキです。みなさんもご自身の手に馴染む形を追及してみてください。
最後に、今までなかなか紹介する機会のなかったふたつのビートダウンデッキを紹介してお別れしましょう。
理論上最強カラーの台頭!?「白黒トークン」
5 《平地》 1 《沼》 4 《湿地の干潟》 2 《乾燥台地》 4 《風立ての高地》 3 《孤立した礼拝堂》 2 《神無き祭殿》 2 《大天使の霊堂》 -土地(23)- 4 《潮の虚ろの漕ぎ手》 -クリーチャー(4)- |
4 《コジレックの審問》 4 《流刑への道》 4 《急報》 4 《清浄の名誉》 3 《盲信的迫害》 2 《無形の美徳》 2 《燻し》 4 《未練ある魂》 4 《幽体の行列》 2 《黄金のたてがみのアジャニ》 -呪文(33)- | 3 《戦争の報い、禍汰奇》 2 《抑制の場》 1 《盲信的迫害》 3 《機を見た援軍》 2 《四肢切断》 4 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
《変身》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を導く「青白」バージョン。大量のトークンを《ガヴォニーの居住区》でサポートする「白緑」バージョン。「闇の隆盛」加入前はそれらのバージョンが主流でしたが、《未練ある魂》がリリースされてからというもの、この「白黒」バージョンが一気に勢力図を塗り替えました。
《風立ての高地》の「秘匿」条件を1枚で達成できるカードが、《幽体の行列》と《未練ある魂》の2種類になったことで、以前よりも安定性が向上していますし、他にも「白黒」バージョンにする理由として、手札破壊や《盲信的迫害》の存在が挙げられます。手札破壊は相手のデッキを問わず活躍が見込め、《盲信的迫害》は対戦相手のトークンだったり、マナクリーチャーや《臓物の予見者》、《ステップのオオヤマネコ》や《やっかい児》なんかにも対処できる優れもの。+1/+1能力のおかげで最後の一押しに使えますし、これもまた、「白黒」バージョンを選ぶ要因のひとつと言えるでしょう。
今は《仕組まれた爆薬》のような、トークンをまとめて対処できるカードがあまり使われていないので、そういった意味でも今が旬のデッキかもしれません。トークン系のデッキを使う際には、常に《仕組まれた爆薬》がどれくらい使われているかに気を配っておきたいですね。
いつの世も環境に存在するデッキ「Red Deck Wins」
7 《山》 4 《黒割れの崖》 4 《乾燥台地》 4 《沸騰する小湖》 1 《血の墓所》 -土地(20)- 4 《ゴブリンの先達》 3 《渋面の溶岩使い》 4 《ケルドの匪賊》 2 《地獄火花の精霊》 -クリーチャー(13)- |
4 《夜の衝突》 4 《溶岩の撃ち込み》 4 《稲妻》 3 《噴出の稲妻》 3 《欠片の飛来》 2 《焼尽の猛火》 4 《裂け目の稲妻》 3 《火山の流弾》 -呪文(27)- | 3 《墓掘りの檻》 2 《破壊放題》 3 《倦怠の宝珠》 2 《血糊の雨》 2 《粉々》 2 《喉首狙い》 1 《焼尽の猛火》 -サイドボード(15)- |
こちらは由緒正しきバーンデッキ。殴って、焼いて繰り返すことになるのですが、このリストは黒を足すことで、《夜の衝突》という高性能の本体火力の採用を可能としています。
黒には息切れを防止してくれる《闇の腹心》もありますが、《火山の流弾》を使う場合は《闇の腹心》を採用しないことが多いようです。
《火山の流弾》は《ステップのオオヤマネコ》、《秘密を掘り下げる者》、《聖トラフトの霊》擁する「トリコロール(青白赤)Delver-Go」や、コンボに小粒のクリーチャーを使用する「メリーラ頑強」辺りに強いので、この2種類は想定するメタゲーム次第で使い分けるといいでしょう。
歴代の優秀な火力をこれくらいまでに集めると、見た目以上にキルターンが早く、最速だと3ターンキルも可能なデッキです。対戦相手がフェッチランド→ギルドランドと動くだけで、こちらのゴールは近くなるわけですし、ギルドランドが使えることを逆手にとったデッキと言えますね。メタゲーム上に《台所の嫌がらせ屋》や《強情なベイロス》が減っている時期が、このデッキを使う絶好のチャンスだとは思いますが、どんな時でも《血の手の炎》、《恒久の拷問》、《処罰の力線》、またはこの方のように《血糊の雨》でライフゲイン対策をしっかりとしておきましょう。
ここまで何度となくお伝えしている通り、今現在は「ウルザトロン」デッキと対峙する機会が非常に多いので、サイドボードに《溶鉄の雨》を採用しておくといいでしょう。「ウルザトロン」系統のデッキ以外にも、モダンならではの多色デッキなどと当たった際にも重宝しますし、少なくともこれほどまでに「ウルザトロン」系のデッキが多い現状であれば、入れておいて損のないカードだと思います。
今回はこの辺りでお別れです。これまでにも色々なデッキを紹介してきましたが、冒頭でも少し触れたように、みささんがこの記事で少しでもモダンに興味を持っていただけば幸いです。それと、今回の記事で何度も話題にあがった「赤緑トロン」は、噂によると日本の方が制作したデッキだそうです。今となっては推しも推されぬメタゲームの中心を担うデッキなので、今週末にイタリアで行われるモダングランプリでも要注目のデッキです。このようにひとつのアイディアが突如としてメタゲームを動かすというのは、膨大なカードプールが使用できるフォーマットではよくある出来事ですし、次にメタゲームを変えるのはあなたのアイディアかもしれませんよ!
それでは、また次回の連載で。