ヴィンテージにマジックを見た~ヴィンテージトーナメント観戦記~

晴れる屋


By MIYASITA Naoyuki

マジック:ザ・ギャザリングの数ある構築フォーマットのなかでも「孤高」という印象のあるヴィンテージ。プレイするための敷居も高そうだが、しかし、「グランプリ横浜2012」パブリックイベントの「ヴィンテージトーナメント」には46人が集まった。多くのプレイヤーを惹きつけるヴィンテージの魅力とは何か。トーナメントを取材することになった筆者に、あるジャッジが言った。

「ヴィンテージの世界チャンピオンが参加していますよ」



世界チャンピオンに聞いた



チャンピオンの名は伊藤裕道(いとう ひろみち)さん。2009年「ヴィンテージ選手権」の優勝者だ。2003年から毎年アメリカで行われているヴィンテージ選手権は、当時のレーティング制でK値が最高の48だったことからも分かるように、ヴィンテージ界の世界選手権だ。

伊藤さんがヴィンテージ大会のために初めて海外遠征したのは2006年。パリで行われたWorld Championshipのサイドイベントだった。2009年の優勝以来、ヴィンテージ選手権には毎回参加している。やはり、マジックの本場アメリカやプレイ人口の多いヨーロッパはヴィンテージも盛ん。海外の参加者100人以上の大イベントは格別だという。

海外遠征に駆り立てるほどのヴィンテージの魅力とは何か。そもそも伊藤さんとマジックの出会いは「ストロングホールド」発売前の1998年。その後「テンペスト」ブロックがスタンダード落ちした際、好きなカードを使い続けたいと当時のType1、今のヴィンテージを始めた。それ以来「好きなカードが最も多く使える」このフォーマットを遊び続けている。

伊藤さんはヴィンテージの魅力をこう語ってくれた。
「マジック:ザ・ギャザリングの歴史的なカードを並べられる」
「カードパワーが高いので1ミスが命取り。逆に、どんな状況でも巻き返す可能性がある」
「考え抜く必要があるので、カードゲームをやっている、と強く感じられる」



ヴィンテージのメタゲーム


環境を代表するデッキを4つ、伊藤さんに挙げてもらった。

テゼレッター/Tezzereter

《修繕》を軸にした青いアーティファクトデッキで、《Time Vault》+《通電式キー》or《求道者テゼレット》という無限ターンコンボを搭載。

修繕Time Vault求道者テゼレット





発掘/Dredge

基本的にレガシーの「発掘」と同じだが、《Bazaar of Baghdad》のおかげで安定感とスピードがアップ。パワー9を必要とせず、組みやすいのもお勧めポイント。

Bazaar of Baghdadゴルガリの墓トロール黄泉からの橋





茶単/MUD

レガシーにも同じようなアーキタイプの「MUD」があるが、ヴィンテージならではの《Mishra's Workshop》から脅威を高速展開し、《磁石のゴーレム》などで妨害する。この日、伊藤さんが使用するデッキも「MUD」だった。

Mishra's Workshop磁石のゴーレムからみつく鉄線





フィッシュ/Fish

「フィッシュ」と言えば「マーフォーク」を想像するが、ヴィンテージでは熊(2マナ2/2)が入っていれば何でも「フィッシュ」だ。緑白の軽量クリーチャーをカウンターでバックアップし、《無のロッド》などで妨害するクロックパーミッションのこと。

タルモゴイフForce of Will無のロッド





ヴィンテージのプレイ経験がないと「1ターンキルや2ターンキルが頻発するのではないか」と思ってしまうが、実際そんなことは少ない。トーナメントを観戦していても、序盤~中盤~終盤にそれぞれの攻防があり、50分の対戦時間を目いっぱい使う、まさに「マジックしてる」ゲームがたくさんあった。上に挙げたデッキがそれぞれに妨害手段を持ち、牽制しあうことで、ワンサイドゲームを防いでいるのだろう。一強デッキがないことからも、ヴィンテージが意外にもバランスのとれた環境だと分かる。



ヴィンテージの光景

ヴィンテージの大会を見るのはこれが初めてだが、写真を撮って回るうち、自分が自然と笑顔になっていることに気づいた。普通のパブリックイベントであるにもかかわらず、たくさんのギャラリーが付いていて、やはりみんな笑顔だった。そう、ヴィンテージは見ているだけでも楽しい。





パワー9やレガシーの禁止カードがゴロゴロしているだけでテンションはうなぎ上り。








紙道楽の究極、ヴィンテージでは、カードのお洒落も欠かせない。拡張アートにフォイルカード。伊藤さんによると、海外では特に拡張アートの人気が高いそうだ。



伊藤さんのラウンド1を観戦。対戦相手は《Time Vault》《求道者テゼレット》コンボで無限ターンに入っているようだ。《けちな贈り物》から持ってきたのは何と、3枚のMoxと《Black Lotus》で、伊藤さん投了!
筆者は「なんとも魅せるプレイだな」と思ったが、後ほど伊藤さんに訊くと、これは至って合理的なプレイだという。《求道者テゼレット》の奥義でMoxなどを5/5にして勝つことで、デッキ中の勝ち手段を教えないで済むのだ(Moxや《Black Lotus》は入っていて当たり前だから)。ヴィンテージならではのプレイングにしきりと感心してしまった。



ヴィンテージの優勝デッキ

スイスラウンド6回戦を終えて、どんなデッキが優勝するのか。「テゼレッター」か「発掘」か「MUD」か。そこにはどれだけの高額カードが入っているのか……
しかし、優勝したArakane Daisukeさんのデッキは「Zoo」で、パワー9は1枚も入っていなかった。メインデッキの《ゴリラのシャーマン》《石のような静寂》で各種Moxなどを封じるというヴィンテージらしい構成だ。《魂の洞窟》からカウンター無視で展開する強力な軽量クリーチャー、特に《クァーサルの群れ魔道士》は、Arakaneさんいわく「環境最強生物」だそうだ。



驚くことに「ヴィンテージのトーナメントに出るのは2回目」というArakaneさん。ヴィンテージは、いつでも誰でも気軽に挑戦できる環境なのだ。



Arakane Daisuke 「Zoo」 ヴィンテージトーナメント 優勝

1 《露天鉱床》
3 《不毛の大地》
2 《魂の洞窟》
3 《樹木茂る山麓》
3 《吹きさらしの荒野》
2 《乾燥台地》
2 《Taiga》
2 《Savannah》
1 《Plateau》
1 《森》
1 《山》
1 《平地》

-土地(22)-

3 《貴族の教主》
4 《野生のナカティル》
4 《ゴリラのシャーマン》
4 《クァーサルの群れ魔道士》
4 《漁る軟泥》

-クリーチャー(19)-
4 《精神的つまづき》
4 《稲妻》
4 《流刑への道》
3 《忘却の輪》
3 《石のような静寂》
1 《森の知恵》
1 《忌むべき者のかがり火》

-呪文(20)-
4 《赤霊破》
2 《精神壊しの罠》
3 《自然の要求》
2 《墓掘りの檻》
1 《トーモッドの墓所》
3 《虚空の力線》

-サイドボード(15)-
hareruya




ヴィンテージへの招待

世界チャンピオンの伊藤さんは言う。
「ヴィンテージは本当に面白いので、ぜひ一度遊んでみてください。ヴィンテージやってる友達がいるなら、きっとデッキ貸してくれますよ」

こんなエピソードも話してくれた。
「競技プレイヤーがトーナメントでByeになると喜ぶでしょ。ヴィンテージだとByeは嫌がられるんです。せっかくの遊ぶチャンスが減ってしまうから」

平均して月2~3回、「ヴィンテージ選手権」前は毎週ヴィンテージをプレイするという伊藤さん。関東では池袋BIG MAGIC、川崎PAC、調布AKMと遊ぶ場所には困らない。

まずは一度見学して、次にデッキを借りて体験して。いや、自分が好きだったデッキをヴィンテージの環境に合わせてちょっとチューンしてあげるだけで、立派な参加チケットになるのかも知れない。マジックプレイヤーなら誰でも、参加するだけで笑みがこぼれるような環境。ヴィンテージの世界は両手を広げて、あなたの挑戦を待っている。