By MURAKAMI Yuuki
グランプリ横浜本戦の記事では新デックとして「グリセルシュート」が紹介されていました。
モダン環境に大きな影響を与えたこのデカ物は、レガシー環境にも大きな影響を与えました。
その具体例として、「リアニメイト」と「スニーク・ショー」という、大型クリーチャーの高速召喚に特化したデッキをご紹介しましょう。
解説してくださったのは、黒田 正城さんと斎藤 悠さんです。
黒田 正城の「リアニメイト」
2 《島》 3 《沼》 2 《溢れかえる岸辺》 4 《Underground Sea》 3 《血染めのぬかるみ》 4 《汚染された三角州》 -土地(18)- 4 《グリセルブランド》 1 《魅力的な執政官》 1 《鋼の風のスフィンクス》 1 《絶望の天使》 -クリーチャー(7)- |
4 《Force of Will》 4 《死体発掘》 4 《目くらまし》 4 《再活性》 4 《納墓》 4 《思案》 4 《入念な研究》 4 《渦まく知識》 3 《思考囲い》 -呪文(35)- |
2 《実物提示教育》 2 《残響する真実》 2 《虐殺》 2 《非業の死》 2 《トーモッドの墓所》 2 《真髄の針》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 1 《エメリアの盾、イオナ》 1 《思考囲い》 -サイドボード(15)- |
「プロツアー神戸2004」チャンプと言えばこの方。
マジックプレイヤーであれば1度は聞いた事がある実力者です。
黒田 正城
2年前からレガシーでは「リアニメイト」を好んで使用しているそうで、今回は、調整に十分な時間がとれなかった為、海外のトーナメント結果を参考にして来たとか。
しかし、時間が取れなかったという言葉に反して、デッキに十分な手ごたえを感じているご様子でした。
黒田氏曰く、レガシー環境の「リアニメイト」デッキは《核の占い師、ジン=ギタクシアス》が参入した時点で以前より1段強くなったとのことですが、今回の《グリセルブランド》の参入は、その時以上のインパクトがあるそうです。
それもそのはず。
《核の占い師、ジン=ギタクシアス/Jin-Gitaxias,Core Augur》はターンエンドまで生き残らなくてはドローできないのですが、《グリセルブランド》は戦場に現れれば、7ドローできるのです。
これだけ引けば、ほぼ確実に追加の生物とリアニメイトカードにアクセスできることでしょう。
もちろん、ドローに含まれていたクリーチャーは、ディスカードフェイズに簡単に墓地に送り込む事ができる上、《Force of Will》と《思考囲い》が容易に《グリセルブランド》自身を守ってくれます。
7/7というサイズを処理できるこの環境の一般的な除去が《剣を鍬に》であり、ライフゲイン効果がドローのために費やしたライフを補填してくれるため、ほとんど無料でアドバンテージを稼いでしまうのです。
と、《グリセルブランド》自慢のようになってしまいましたが、リアニメイトデッキの優秀な点は、とにかく軽いこと。
《死体発掘》は2マナ、《再活性》にいたってはわずか1マナです。
《納墓》もわずか1マナ、しかもインスタントタイミングで《グリセルブランド》へのサーチを可能とするため、とにかく早いターンにゲームを決めることが出来ます。
もちろんデメリットもあります。
墓地利用はサイドボード後に対戦相手に対策される可能性が高く、サイドボードの枚数も多く取られ易いのです。
そのため、黒田氏のデッキでは前述の《Force of Will》と《思考囲い》により、メインから干渉可能となっています。
実際、二回戦目では対戦相手の場に《大祖始の遺産》がある状況で《死体発掘》をプレイし、対応しての墓地追放後に《納墓》でクリーチャーを埋め直す等、細かく手順を踏むことで、対策を回避したそうです。
やることが派手な分、奥深く繊細な操作が必要とされるデッキですが、黒田氏のような熟練のプレイヤーにとっては、プレイングを存分に発揮できる理想のデッキと言えるでしょう。
斎藤 悠の「スニーク・ショー」
3 《島》 1 《山》 4 《沸騰する小湖》 1 《溢れかえる岸辺》 3 《Volcanic Island》 3 《古えの墳墓》 2 《裏切り者の都》 -土地(17)- 4 《グリセルブランド》 4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(8)- |
4 《実物提示教育》 4 《騙し討ち》 4 《Force of Will》 3 《誤った指図》 2 《呪文貫き》 2 《目くらまし》 4 《渦まく知識》 4 《思案》 2 《定業》 2 《直観》 4 《水蓮の花びら》 -呪文(35)- |
4 《神聖の力線》 4 《墓掘りの檻》 3 《赤霊破》 4 《虚空の杯》 -サイドボード(15)- |
プロプレイヤーGerry Thompsonをしてジャパニーズ・レガシー・マスターと言わしめ、レガシープレイヤーの間では《むかつき》使いとして有名な斎藤氏。
斎藤 悠
ここ数年間は《むかつき》を使用し続けていましたが、今回はメタゲーム的に《むかつき》が厳しいと考え、《グリセルブランド》に魂を売り渡したそうです。
メインはもちろん、サイドボードも綺麗に3~4枚のカードが揃っており、スマートな印象を与えます。
「スニーク・ショー」と言えば以前は《大祖始》と《引き裂かれし永劫、エムラクール》が主なクリーチャーでしたが、《グリセルブランド》の登場によって《大祖始》の居場所はなくなってしまいました。
リアニメイトとの大きな違いは、やはり《引き裂かれし永劫、エムラクール》の存在でしょう。
斎藤氏に《引き裂かれし永劫、エムラクール》と《グリセルブランド》のどちらを先にプレイしたいか? と質問すると「間違いなく《グリセルブランド》」と即答してくれました。
《騙し討ち》でいずれかを出した場合、《引き裂かれし永劫、エムラクール》で相手の場はほぼ壊滅するのですが、ライフが残り、自分の後続が切れてしまう可能性があるのに対し、《グリセルブランド》であれば、ドローで《引き裂かれし永劫、エムラクール》と《水蓮の花びら》を引き込み、そのターンの内にゲームを終わらせることが出来るのです。
《実物提示教育》で出した場合にも、《引き裂かれし永劫、エムラクール》は《精神を刻む者、ジェイス》の能力や、《悪魔の布告》を初めとする生贄系の除去で対処されてしまいますが、《グリセルブランド》なら妨害手段や後続に繋がってくれます。
スピードこそ「リアニメイト」に劣る「スニーク・ショー」ですが、妨害されにくさは「リアニメイト」を上回ります。
斎藤氏自身も、『「リアニメイト」だと、通常のハンデスやカウンターの上、墓地対策カードまでケアしなければならないので「スニーク・ショー」にした』とのことでした。
「リアニメイト」 「スニーク・ショー」
いずれのデッキも、これまでは場に出したクリーチャーが対処されると、そこで息切れをしてしまうのが弱点の1つでしたが、《グリセルブランド》というフィニッシャーとドローエンジンの役割を果たす『完璧超人』の存在が、弱点を補っています。
どちらのデッキを使うかは、好みの部分もありますが、この巨大な悪魔は今後もレガシー環境でよく見かけることになるでしょう。