準決勝: 樋口 証(神奈川) vs. 大関 麦(東京)

晴れる屋

By Yuya Hosokawa

 スタンダードは、現在主流となっている構築フォーマットの中で、使えるカードプールが最も少ない。それゆえにデッキの種類も多くなく、自ずと「環境で最も強いデッキ」が突出することとなる。そして今のスタンダードにおいて最も強いとされるデッキは、赤黒アグロだ。

 世界中でのグランプリ、そして先週行われたプロツアー地域予選でも赤黒アグロはトップ8にその名を連ね続けており、最強の座を欲しいままにしている。

 だが。

 この準決勝を戦う樋口と大関は、互いに準々決勝で赤黒アグロを見事に打ち倒しているのだ。

 まずはスイスラウンドの成績上位で先手を取る、樋口 証(神奈川)。

樋口 証(神奈川)

樋口 証(神奈川)

 使用するのは《竜髑髏の山頂》《再燃するフェニックス》と、決して赤黒に違いはないのだが、なんと赤黒コントロール。クリーチャーは《再燃するフェニックス》《包囲攻撃の司令官》のみで、大量の除去と《ウルザの後継、カーン》《死の権威、リリアナ》が投入されており、準々決勝でもストレート勝ちで赤黒アグロを退けている。

 一方の大関 麦(東京)のデッキは、青緑マーフォーク。

大関 麦(東京)

大関 麦(東京)

 レガシーやモダンでおなじみの部族の代名詞、マーフォーク。この恐るべき魚たちは、『イクサラン』で大量のカードが収録されたことでスタンダードでも活躍するのではないかと目されていたが、これまで表舞台に姿を現すことはなかった。そのマーフォークを、大関が見事に環境名人戦で仕上げてきた。

 《クメーナの語り部》《銀エラの達人》など、モダンでも使われている優秀なマーフォークたちを、《マーフォークの霧縛り》で強化し、《睡眠》で道をこじ開ける。準々決勝では赤黒アグロを駆って予選ラウンドで土つかずだった宇都宮を見事に倒して、このテーブルに座っている。

 互いにスタンダードの理解を深め、最強のデッキを倒してきた者たち。すでに名人と言って差し支えないだろう。

 タイトルを目指して、2つのローグデッキが火花を散らす。

準決勝: 樋口 証(神奈川) vs. 大関 麦(東京)

準決勝: 樋口 証(神奈川) vs. 大関 麦(東京)

Game 1

 《泥濘の峡谷》《内陸の湾港》の置きあいで始まった準決勝。

宝物の地図

 樋口の《宝物の地図》に動揺する大関。どうやら樋口のデッキを一般的な赤黒アグロだと思っていたようだ。だが、だからと言ってやることは変わりなく、《マーフォークの枝渡り》をキャストし、土地を手に入れる。

 一方樋口は、アップキープに《宝物の地図》を起動してタップイン。1マナを立てて大関のアクションを待つ。

 《マーフォークの枝渡り》の攻撃を受けた樋口は、続けて大関が唱えた《オラーズカの暴君、クメーナ》のテキストをじっくりと確認すると、4マナ目を置いて《ヴラスカの侮辱》を撃ち込む。《宝物の地図》を既に設置できていることからも、手札の枯渇を心配する必要はなく、ひとまず樋口としてはまずまずの展開と言ったところ。

 だが、大関の攻勢はここから。まずは《銀エラの達人》で手札を補充し、ブロッカーとして出てくる《再燃するフェニックス》《魔術師の反駁》で打ち消し、フルタップの隙に《マーフォークの霧縛り》を2体並べ、一気に8点のダメージを与える。瞬く間に、何もなければ次のターンにはもちろん致死量となる盤面を築き上げた。恐るべし大関のマーフォーク。

 これで樋口は万事休す。かと思われたが。

焼けつく双陽

 樋口が唱えたのは、《焼けつく双陽》一気に盤面からクリーチャーが1体もいなくなり、樋口の宝物だけが戦場にぽつんと佇む。さらに次に出てきた《クメーナの語り部》《マグマのしぶき》で対処し、《オラーズカの暴君、クメーナ》にも《最古再誕》。そして強力なアドバンテージエンジンである《ウルザの後継、カーン》

最古再誕ウルザの後継、カーン

 《銀エラの達人》を引く大関だが、《ウルザの後継、カーン》と《宝物の入り江/Treasure Cove》が樋口に手札をもたらす。《マーフォークのペテン師》に対して、《ウルザの後継、カーン》で回収した《マグマのしぶき》が打ち込まれ、再びクロックのない状態に。

 しかも《最古再誕》《再燃するフェニックス》を釣り上げると、ただでさえ強固な樋口の場は鉄壁に。アドバンテージ勝負で全く勝てない大関は、《水罠織り》《再燃するフェニックス》をタップしてライフを削りにかかるのだが、《ヴラスカの侮辱》がその望みすら刈り取る。

樋口 証(神奈川)

樋口 証(神奈川)

 次の《ウルザの後継、カーン》《ヴラスカの侮辱》《大災厄》をめくり、《死の権威、リリアナ》がトークンを生み出し始めると、大関は一点のダメージも受けないまま、第1ゲームを投了したのだった。

樋口 1-0 大関

Game 2

 マリガンを喫した大関が《内陸の湾港》でゲームを始め、2ターン目に《クメーナの語り部》、続くターンに《マーフォークの枝渡り》と続ける。 《クメーナの語り部》《マグマのしぶき》で失った大関だが、ここで唱えたのは秘密兵器、《深根の水域》。これには樋口も思わずテキストを確認する。除去コントロールに対して大関が用意したスペシャルサイドボードだ。

深根の水域

 この《深根の水域》が、《オラーズカの暴君、クメーナ》と組み合わさって恐ろしい強さを見せる。トークンたちがドローに変換され、それによって新たなマーフォークが供給され、戦場にトークンを引き連れて現れる。

 《再燃するフェニックス》が立ちはだかろうともおかまいなしに、大関は盤面と手札を強化していく。《栄光をもたらすもの》の「督励」を大関はたっぷりとある手札から《顕在的防御》を開示する。

オラーズカの暴君、クメーナ

 そして、いよいよ《オラーズカの暴君、クメーナ》が自軍のマーフォークに「+1/+1」カウンターを付与し始める。

 《オラーズカの暴君、クメーナ》は2枚の火力によって退場したものの、《マーフォークのペテン師》《再燃するフェニックス》をタップさせると、一撃で樋口のライフを0へと落としたのだった。

樋口 1-1 大関

Game 3

 最後のゲームも樋口はタップインからスタートし、《銀エラの達人》《マグマのしぶき》で除去する立ち上がり。続けて大関が唱えた《マーフォークの枝渡り》にも《マグマのしぶき》を向ける樋口なのだが、痛恨のランドストップ。

 この間に大関は《クメーナの語り部》、そして土地をようやく引いた樋口のターン終了時に《マーフォークのペテン師》と、軽快に攻める。

大関 麦(東京)

大関 麦(東京)

 一度は土地が止まったものの、その後は順調に引き続けた樋口の次のアクションは《死の権威、リリアナ》。これを《呪文貫き》で打ち消した大関は、フルタップの隙を突いて、《ハシェプのオアシス》《クメーナの語り部》をパンプアップし、ライフを9まで落とす。手札には打ち消し呪文もあり、このまま盤面の4点で押し切ってしまおうという算段だ。

 が、ここで樋口の放った《強迫》が、大関のプランを狂わせる。手札を見られることを嫌った大関は仕方なく《魔術師の反駁》で打ち消し、引き換えに《ヴラスカの侮辱》《マーフォークのペテン師》を失う。

 貴重なクロックを失ってしまったため、何かクリーチャーが欲しい大関。ここで引いたのは、この状況で最もほしかった《銀エラの達人》《水罠織り》を公開しつつ、再び4点クロックを盤面に残す。

銀エラの達人

 樋口も負けていない。土地が止まっていたということは、手札に対処するカードはあるのだ。次にプレイしたのは《栄光をもたらすもの》。「督励」で《銀エラの達人》を焼き払う。

栄光をもたらすものウルザの後継、カーン

 そして続くターン、樋口は《ウルザの後継、カーン》を唱え、ライブラリーの上から2枚を追放する。それは《焼けつく双陽》《再燃するフェニックス》! この強烈な2枚から、《再燃するフェニックス》が樋口の手札に加わる。

 次のターンには、《栄光をもたらすもの》の「督励」が解け、《ウルザの後継、カーン》《焼けつく双陽》が手に入る。このターンさえ、しのいでしまえば。

 そんな樋口の希望を打ち砕いたのは、ターン終了時に大関が唱えた《俊敏な番人》

俊敏な番人

 場には元々あった4点のクロックと、《俊敏な番人》。この緑のマーフォークのパワーは3。

 樋口のライフは、7。

樋口 1-2 大関

この記事内で掲載されたカード