日本から送り出された「世界王者」を、あなたは何人知っているだろうか?
2005年の森勝洋、2006年の三原槙仁、2011年の彌永淳也。
この3人? いや、違うのだ。ここにもう一人「2009年の世界王者」がいる。
ヴィンテージ選手権2009王者、伊藤裕道である。
伊藤が本大会に持ち込んだのは、「ラブニカへの回帰」から《死儀礼のシャーマン》と《突然の衰微》を投入した最新のVAULT-COMBO、その名も「DDS-JACE」。
このデッキはいわゆる《Time Vault》と《通電式キー》のコンボを、《死儀礼のシャーマン》《闇の腹心》《瞬唱の魔道士》《稲妻》《精神を刻む者、ジェイス》などの歴代の最強カードたちで包み込んだ、王道のデッキ。まさに、王者が使うにふさわしい。
対する星野は《ドルイドの誓い》コンボと《実物提示教育》コンボとのハイブリッドデッキ。
その名も「OATH OF OOSU(大須)」。
「とにかく早いデッキが好きで、スタンダードなら赤単、レガシーならZOOを使ってます」
という彼は、「環境最速」を目指してこのデッキを練り上げてきた。
さあ、最速のコンボは、王の行く手を阻めるか?
Game 1
ダイスロールの結果、先手は伊藤。互いにマリガンなく、高らかなキープ宣言が響き渡る。
伊藤、1ターン目から《トレイリアのアカデミー》《Mox Emerald》《Mox Ruby》
そして、《精神を刻む者、ジェイス》というロケットスタート!
《Force of Will》を持たない星野はこれを通してしまう。
もはや、速攻でコンボを決めるしかない星野は、覚悟を決めて《禁忌の果樹園》《Mox Sapphire》からの、《ドルイドの誓い》。これさえ通れば、《ドラゴンの息》とファッティのコンボで、倒しきれる!
しかし、当然のようにこれは《Force of Will》(コストは《瞬唱の魔道士》)されてしまう。
こうなると、星野としては伊藤の動きを阻害しつつ、2枚目のコンボを用意せねばならない。
願いは一つだ。……時よ止まれ! せめて、遅れてくれ!
しかし、現実は非常である。ここはヴィンテージ。最速たるフォーマット。
伊藤は追加した《Mox Pearl》からの《Time Walk》。
もはや観客者と化した星野を尻目に、2枚の《闇の腹心》を並べて悠々とターンを終える。
追い詰められた星野は《神秘の教示者》。
これは、互いに《精神的つまづき》を撃ちあった結果《暗黒破》へと変わる。
《暗黒破》は1枚の《闇の腹心》を撃ち落とすが、これすらも伊藤の計算通り。
《精神を刻む者、ジェイス》と《闇の腹心》が伊藤に潤沢なカードを提供し続ける。
手札には2枚の《Force of Will》が収納され、あとは勝ち手段を得るのみ。。
星野も2枚目のコンボを探すのだが、伊藤の方が早く《修繕》に辿りつき、《ヨーグモスの意志》まで撃たれたところで、投了。
星野 0-1 伊藤
伊藤は《稲妻》《死儀礼のシャーマン》などのコンボには無効なカードを抜き、
《墓掘りの檻》《突然の衰微》《外科的摘出》を追加。
星野は《精神を刻む者、ジェイス》《呪文嵌め》を投入して、
《修繕》コンボとを破棄。デッキを「カウンタージェイス」へと変化させる。
一度は《破滅的な行為》も検討したが、勝ち手段が薄くなりすぎるのを嫌ったようだ。
Game 2
互いにマリガンはなく、ゲームスタート。
今度は先手の星野だが、置けたのは《汚染された三角州》のみ。
《呪文嵌め》《突然の衰微》で伊藤の脅威に備える。
しかし、伊藤は《Mox Jet》《Mox Sapphire》《Underground Sea》からの《師範の占い独楽》。
さらに、《Ancestral Recall》!
もちろんこれをカウンターしたい星野だが……なんと、これが通ってしまう。
圧倒的アドバンテージをつけられた星野は、《露天鉱床》で稼ごうとする。
もちろん伊藤は悠々と《太陽の指輪》からの《精神を刻む者、ジェイス》!
これまた通り、星野は渋い表情。
その後も伊藤の《闇の腹心》《瞬唱の魔道士》はさすがに《呪文嵌め》するが、一度ついたアドバンテージ差は覆らない。
伊藤は《外科的摘出》で星野の手札を確認しつつ、《吸血の教示者》からの《修繕》で、挑戦者を鮮やかに介錯した。
星野 0-2 伊藤