オリジナルデッキとコピーデッキの間に貴賎はない。
どちらも勝利という等しい目的に向けられた手段でしかないからだ。
だが、それでも我々が八十岡 翔太や浅原 晃といった一流のデッキビルダーに憧れてやまないのは。
つまるところ、オリジナルデッキで勝つことが、何よりの存在証明となるからであろう。
想像力と創造力とを幾度となく掛け合わせて結実する、奇跡のような75枚。
それを生み出すことで得られる麻薬のような快感に魅せられた男が、ここにも一人。
つい昨日開催されたプロツアーテーロス予選東京大会で、282分の1という限りなく狭き門をくぐり抜けてプロツアーの招待権を獲得した、PTQ突破の常連でもある松本だ。
人間リアニメイトという既存のアーキタイプを根幹としながらも、独自の感性で新基軸のチューンを施し282人の頂点に立った彼に、祝福ついでにインタビューを試みた。
松本 悠希(東京)
--「昨日はPTQ優勝おめでとうございます。このデッキはどういった経緯で出来たんでしょうか。」
松本 「ありがとうございます。デッキが出来たのはPTQ当日の朝だったんですが、発想としては、『BLITZにも戦えるリアニが組みたい』というところからスタートしています。それで、人間リアニのサイドの《スラーグ牙》や《修復の天使》がサイドスロット的に勿体ないということでメインに移して、そこに代わりに対ビート用の単体除去を目いっぱい積むことでビート耐性の問題を緩和しています。」
--「当たり前のテクと思われていた《炎樹族の使者》や《地底街の密告人》を採用していないのは何故なんでしょうか。」
松本 「結局そういうコンボパーツは単体では弱いので、動きにムラが生まれやすいんですよね。それにサイド後に《安らかなる眠り》などの墓地対策に極端に弱くなりすぎるというのもあります。単体のカードパワーを高く、カード相互の依存性を低くすることで、単純なリアニメイトコンボというよりは、相手によってミッドレンジ然とした振る舞いができるようになったのがこのデッキの強みだと思います。」
--「なるほど。トップメタはリアニ同型だったと思うんですが、そのあたりの相性はどうだったんでしょうか。」
松本 「一般的なジャンクリアニメイトを仮想敵として想定すると、序盤のマナクリーチャーをめぐる攻防では《悪鬼の狩人》《高原の狩りの達人》が有効に働きますし、通常の人間リアニと違って《スラーグ牙》も入っているのでリソース勝負で不利になるということもあまりありません。それにこちらには無限コンボ(《カルテルの貴種》+《栄光の目覚めの天使》+《悪鬼の狩人》+《高原の狩りの達人》)という要素があるので、フィニッシュの確実性がある分、互角以上に立ち回れると思います。」
--「ミッドレンジ相手には、お互いリソースの根強い粘り腰でも、こちらだけ一方的に必殺技がある構図になるということですね。」
松本 「そうですね。またサイド後は《安らかなる眠り》を見越して《堀葬の儀式》を全抜きし、《ミジウムの迫撃砲》を入れることで、ミッドレンジ同型のような戦い方をすることになります。」
--「そうすると、このデッキには弱点はないということでしょうか。」
松本 「いえ、とにかく飛行が明確な弱点なので、ラクドスミッドレンジのように《ファルケンラスの貴種》→《雷口のヘルカイト》と動かれると一瞬で負けますね。PTQでもラクドスミッドレンジに負けましたし、今日のWMCQでも、不運にも1回戦目にラクドスミッドレンジを踏んでしまって、あえなく敗北してしまいました。警戒して今日はサイドに《絹鎖の蜘蛛》を入れていたんですけどね……」
--「ありがとうございました。」
スタンダードは常に最も多くの人が調整し、新たなデッキやテクニックを日々模索している。
そんな中でも、斬新な発想で他のプレイヤーを出し抜いて結果を残せる松本のようなプレイヤーを。
デッキビルダーと、そう呼ぶのだろう。
2 《聖なる鋳造所》 3 《寺院の庭》 4 《踏み鳴らされる地》 1 《神無き祭殿》 1 《血の墓所》 4 《根縛りの岩山》 1 《森林の墓地》 1 《孤立した礼拝堂》 2 《陽花弁の木立ち》 3 《魂の洞窟》 -土地(22)- 3 《アヴァシンの巡礼者》 3 《カルテルの貴種》 4 《悪鬼の狩人》 4 《高原の狩りの達人》 2 《オリヴィア・ヴォルダーレン》 2 《スラーグ牙》 3 《栄光の目覚めの天使》 1 《静穏の天使》 -クリーチャー(22)- |
4 《根囲い》 4 《信仰無き物あさり》 1 《忌まわしい回収》 4 《遥か見》 3 《堀葬の儀式》 -呪文(16)- |
4 《ミジウムの迫撃砲》 2 《灼熱の槍》 2 《鷺群れのシガルダ》 2 《殺戮遊戯》 2 《士気溢れる徴集兵》 2 《絹鎖の蜘蛛》 1 《ケッシグの狼の地》 -サイドボード(15)- |