Round 8: 相澤 恵司(茨城) vs. 長島 誠(山梨)

晴れる屋

By Daisuke Kawasaki



 関東最大級のトーナメント、PWC。その特製プレイマットを敷いてフィーチャリングエリアでプレイをするのは、ミスターPWCの一人である「スタンダードの貴族」こと相澤 恵司(茨城)だ。年間の成績に応じたポイントレースによって決定されるミスターPWCの称号を持っているように、PWCでは安定した成績を残している相澤。ここ最近は、独自に調整を重ね続けているトリコトラフトを使い続けている。この大会にもトリコトラフトを持ち込んできているのだろうか。

 そんな相澤に対するのは、過去に日本選手権でトップ4入賞、つまり、日本代表権利を獲得したことのある長島 誠(山梨)。とはいえ、長島は仕事の都合などもあり、その年の世界選手権には参加していない。そんな、長島に聞いてみた。今回権利を獲得したら、WMCには参加するのか?と。

長島 「まぁ、メンバー次第ですけど、ナベ(渡辺 雄也)とだったら、多分楽しい旅になると思うんで、いきたいですよね。もう、最近はプロツアーレベルのマジックに求めているものはないっちゃないですけど、旅自体が楽しいなら、それは話は別で」

 それを聞いて、観戦していた中村 修平(東京)がニヤニヤする。現時点ではプロポイント最上位による代表は決定していない。残り2つのプレミアイベントを残して、ポイント的に可能性を残すのは、現時点でトップの渡辺と、それを追う中村の二人。とはいえ、中村はプロツアートップ8入賞をしても届かない点差であり、それをなせるかという位置であり、旧知の仲である長島としては、やはり渡辺の代表入りは期待したいところだろう。

 なんにしろ、日頃からともにプレイする仲である二人。負ければ可能性のなくなる1敗ラインとはいえ、和やかな雰囲気でゲームが開始される。


Game 1



相澤 恵司(茨城)


 相澤特有の謎の形をしたダイスによって、先手は相澤。互いにマリガンは無く、後手の長島が《アヴァシンの巡礼者》をプレイするところからゲームはスタートする。

 2ターン目は互いにアクションはなく、3ターン目に相澤は《ボロスの反攻者》をプレイ、対して、長島は4マナを残してターンを返す。

 《修復の天使》の姿がちらつくため、アタックしにくい相澤だが、《ケッシグの狼の地》をセットして、《修復の天使》でのブロックをけん制する。このアタックに対して長島は《アヴァシンの巡礼者》でブロックした後に、《修復の天使》を召喚し、ダメージをゼロに抑える。マナを温存した相澤は《高原の狩りの達人》をプレイ。

 《修復の天使》でアタックした長島は、《アヴァシンの巡礼者》のマナ加速を最大限に享受する4ターン目の《スラーグ牙》プレイ。相澤は自身のターンに呪文をプレイせずに《高原の狩りの達人》を変身させる。いい忘れていたが、この時点でわかるように、相澤の使用するデッキはいつものトリコトラフトではない。

 《高原の荒廃者/Ravager of the Fells》の能力で《アヴァシンの巡礼者》を除去されつつ2点のダメージを喰らい、長島のライフは21。ここで《修復の天使》でアタックし、相澤のライフを16としてターンを終了する。

 相澤はショックランドをアンタップインさせて、《ボロスの反攻者》に先制攻撃をつけるマナを確保しつつ《雷口のヘルカイト》をプレイし、長島のライフを16とするが、このターンエンドに長島は《修復の天使》2体目で《スラーグ牙》の戦場を離れた時の能力と出た時の能力を使いまわして、ダメージを無効化しつつ、3/3トークンを確保する。

 2体の天使と《スラーグ牙》がアタックし、《スラーグ牙》を狼トークンでブロックしたことで、相澤のライフは8に。《東屋のエルフ》を召喚して長島はターンを返す。

 ライフがかなり追い詰められてしまった相澤。ここで自身のコントロールするすべてのクリーチャー、《雷口のヘルカイト》《高原の荒廃者/Ravager of the Fells》《ボロスの反攻者》の3体でアタックする。

 これに対して、長島は残されているブロッカーのすべて、《東屋のエルフ》と3/3のビーストトークンで《高原の荒廃者/Ravager of the Fells》をブロック。この《高原の荒廃者/Ravager of the Fells》に《セレズニアの魔除け》が使用され、2点のダメージが貫通しつつ、《高原の荒廃者/Ravager of the Fells》が生き残る。

 相澤がさらに《ボロスの反攻者》を追加したことで、変身条件が満たされ、再び元にもどった《高原の狩りの達人》が相澤に2点のライフと2/2のトークンを提供する。これによってイニシアチブを失った長島。手札が《堀葬の儀式》《静穏の天使》2枚という有効でないか出せないかという、事実上「詰んでいる」ものであり、相澤のミスを期待して《高原の狩りの達人》の変身防止も踏まえて《堀葬の儀式》をプレイして《東屋のエルフ》を戦場に戻し、ターンを終了する。

 2体の天使がブロッカーとして残されているものの、相澤の土地は《ケッシグの狼の地》を含む7枚。例えば、《雷口のヘルカイト》《修復の天使》2体でブロックされたとしても、《ケッシグの狼の地》の能力で2体ともうち取りつつ、なおも《ボロスの反攻者/Boros Reckoner(GTC)》への先制攻撃用のマナが残る状態だ。さらに長島はタップアウトしているので、あとは自身のプレイにミスがないように相澤は長考する。

 結果、すべてのクリーチャーを横に倒したところで、長島は土地を片付けた。

相澤 1-0 長島


相澤 「すいません、トリコトラフトじゃないんですよ。これは没落ですね、没落貴族です。まぁ、オレンジ色のカードが強いんで……」

 サイドボーディング中に、そう語る相澤。特に相澤のトリコトラフトに期待していたわけではないので構わないのだが、とは言え、使い込んでいたトリコトラフトを使わなかった以上は、それなりの理由があるのだろう。

長島 「っていうか、俺の手札ひどかったからね。カバレージみてびっくりするといいよ」

 そんな会話をしながら、ゲーム2が開始する。


Game 2



長島 誠(山梨)


 互いに入念なシャッフルを繰り返した後に、土地こそ1枚しか無いものの、2枚の《アヴァシンの巡礼者》《根囲い》のある初手をキープした長島。対する相澤もキープ。

 1ターン目の《アヴァシンの巡礼者》から、2ターン目に《根囲い》を撃つ長島に対して、相澤は《ミジウムの迫撃砲》《アヴァシンの巡礼者》を除去する。長島はさらに2体の《アヴァシンの巡礼者》をプレイしマナを伸ばし、対する相澤は《ロクソドンの強打者》を戦場に置き、盤面を固める。

 マナの量では優位にある長島は、さらに《酸のスライム》で相澤の《聖なる鋳造所》を破壊し、マナ差を広げる。相澤は3枚めの土地を再びセットすると《アヴァシンの巡礼者》を召喚してターンを返す。

 ここでこのマッチ初のプレインズウォーカー、《情け知らずのガラク》が呼び出され、格闘能力を《アヴァシンの巡礼者》に使用する。相澤はこれに対して《セレズニアの魔除け》をプレイして、《情け知らずのガラク》《アヴァシンの巡礼者》を相打ちさせる。

 2体目の《ロクソドンの強打者》をプレイし、攻守ともに盤面を固めていく相澤に対し、長島は《スラーグ牙》をプレイ。一旦はライフの優位を得るが、ここで獲得した5点のライフを《雷口のヘルカイト》にごっそりと持っていかれてしまう。

 長島も《スラーグ牙》でアタックして相澤のライフを5点奪い、ダメージレースが始まるかと思われたがここで奇跡が起きる。文字通り奇跡のX=4の《忌むべき者のかがり火》。これによって盤面が壊滅してしまった長島。せめてもの陰鬱な《悲劇的な過ち》《雷口のヘルカイト》を除去したが……後続を用意することはできなかった。

相澤 2-0 長島


 ゲーム開始前に、長島は言っていた。

長島 「まぁ、このラインで知り合いに当たるのはいいっちゃいい部分もありますよね。少なくとも知り合いのどっちかが勝ち抜く可能性があがるわけで」

 長島や、相澤や、話題に出ていた渡辺の付き合いは、長く深い。彼らが昔、ともに遊んでいた時期には夢にもみなかった世界選手権の会場で、当時の仲間達と共に参加するのは、それは確かに夢のようなことだろう。

 だが、すでに、初代ミスターPWCである渡辺はその夢の世界を現実のものにし、プロマジックプレイヤーとしての生活を着実に歩み続けている。

 渡辺のプロキャリアのスタートとなったグランプリ・京都。そこで使用していた赤青トロンは、相澤とともに調整したデッキであり、渡辺の決勝戦で、横で見ていたのは相澤だった。

 そして、今度はWMCの会場で、渡辺の横に座るために、まずは、トップ8入賞をかけて次の戦いに臨む。