前回に引き続き残った三つのアーキタイプの考察を進めたい。
まずは白青から。
▲白青飛行ビート
・強さの理由
コモンにこれといって魅力的なカードのない白青を選択するパターンは、多くの場合青黒、青赤からピックを始めて混雑した色を回避した結果だというのは異論も少ないことだと思う。
それ以外のパターンで見落とされがちなのは《霊異種》に代表される白or青の単色の絶対に使いたいカードをピックした場合にポジション主張する上での優位性だ。
大本命の青黒が回避先として不適当なのは当然として、青緑や青赤と比較した場合の白青の利点はカード供給の安定度にある。
青赤も青緑も確かに空いている色ではあるのだが、青緑は2パック目に、青赤は3パック目のカードの供給の偏りが、あまりにダイレクトにデッキの完成度にかかわってくるため、多くの場合多色化を視野にいれながらピックすることになる。
その点、白青は2色できれいにまとめることが比較的容易だ。白青の受け入れが他のアーキタイプに比べて広いのは「下を止めて上で殴る」というその本質にある。分かってもらえるだろうか。白青はビートでありながら壁役の居場所があるアーキタイプなのである。
デッキに採用されるカードを縛る条件は色だけではない。同じ色でも防御的なカードと攻撃的なカードで活躍するアーキタイプはおのずと分かれる。例を挙げると、同じ黒を主色にしたアーキタイプでも赤黒と青黒ではカードの取捨選択が大きく異なる。赤黒に《死体の道塞ぎ》が入ってしまうのは歓迎できないが青黒なら喜んで3マナ圏を任せることができる。逆に《ラクドスのドレイク》ならば青黒よりもずっと赤黒で活躍の場があるだろう。白ならば《聖堂の護衛》が分かりやすい。このカードの強さが白赤と白黒で大きく異なるのは誰の目にも明らかだ。
このように白がらみのアーキタイプであれば白のカードは何でも選択肢に入るわけではなく、多くの場合いわゆる「後の先」戦略と「先の先」戦略のどちらに寄せるかによってデッキに入れるべきカードはさらに取捨選択される。しかし、各ギルドがこういった事情をかかえる中、唯一、白青はこの二極化の波から外れ、ビートでありながら《聖堂の護衛》などの防御偏重型のカードを有効に運用することができるという特徴を持つのだ。
それだけではない。青のビート最右翼である青緑が不人気な点も白青には追い風である。
青自体は青黒が最強候補として認識されるので決して不人気ではないのだが、青のビートパーツ、具体的には《束縛の手》《雲ヒレの猛禽》の需要は目に見えて下落したと言っていい。特に注目すべきは《束縛の手》。
《雲ヒレの猛禽》は下がったとはいえまだまだ早めになくなることが多いが、《束縛の手》の価値の下落は顕著だ。GTC環境に比べて小型の回避生物を減量し、その分壁とアドバンテージスペル、そして《迷路の嫌悪者》のような大型生物で殴る形にシフトした現在の青黒においては《束縛の手》は既に優先して確保するようなパーツではなく、その分白青が確保するのは容易になったといえる。
全パックに満遍なく存在する緑の到達持ち生物は白青の天敵だが、それらを乗り越えるためのパーツの供給が安定化されたのは大きく白青にプラスだといえる。
ここまで白青の利点を並べてみたが、環境の最適解が白青かというとそういうことではない。やはり1パック目で供給されるインパクトのあるカードが少なすぎるのだ。
語るべき点はこの一点に尽きる。裏返すと初手で白青を選ぶにたるカードとめぐり合えた場合、高確率で進むべき道は開くだろう。
・アーキタイプの軸となるカード
白青ビートに舵を切るきっかけになるアンコモン以下の代表的なカードは以下の2種だ。
1位《ジェーレンのスフィンクス》
固い。その上ものすごい打点だ。唯一、初手で文句の無い白青のアンコモン。
他の色のアンコモンと比べた場合は《遠隔+不在》《変化+点火》《武装+物騒》よりも下。《戦導者のらせん》とは下方向に流すカードを考えて、下方向に緑が混みそうなら《ジェーレンのスフィンクス》を優先する。
2位《上昇する法魔道士》
《ジェーレンのスフィンクス》よりは格段に落ちてしまうが、その分4手目程度まで回って来るのでシグナルとしては優秀だ。
《ひるまぬ勇気》をピックした後に空いてる色を探しているときなどは思い切って切り込んでみるのは悪くない。
・タッチカラーについて
前述の通り多くの場合1-1から白青まっしぐらというパターンは少ないので黒か赤がタッチ候補として上位に来る。
タッチ候補の具体的なカードは赤なら《強盗》《敵への処罰》《爆発の衝撃》《天才の煽り》《瞬間移動門》《思考閃光》。重めの除去に関してはピックの段階で門1枚からつまんでいい。最終的に門が2枚以上確保できれば成功だ。
黒のタッチ候補は《千叩き》《オルゾフの魔除け》《殺意の凝視》といったシングルシンボルの除去に加えて《影切り》も考慮に入れていい。特にデッキパワーに不安がある場合はある程度安定度を落としてでも《影切り》を採用する価値はある。
マナベースに自信があるなら《重要人物のペット》《致命的な噴煙》までタッチ候補としてカウントしていいが、その場合は黒マナソースは最低4枚欲しい。
このようにタッチでシングルシンボルの除去かボムを取るのは定番だが、3パック目に往々にして白青のパーツが供給過多になるのでその場合は余程マナベースに自信が無い限りメインは2色にまとめた方が良い。
・サンプルデッキとDGMピック履歴
7 《平地》 9 《島》 1 《アゾリウスのギルド門》 -土地(17)- 2 《雲ヒレの猛禽》 1 《つぶやく幻》 1 《新プラーフのギルド魔道士》 1 《徴税理事》 1 《大都市のスプライト》 1 《風のドレイク》 1 《臣下の魂》 1 《リーヴの空騎士》 1 《突撃するグリフィン》 1 《武器庫の護衛》 1 《尖塔のロック鳥》 1 《虚無使い》 1 《ジェーレンのスフィンクス》 1 《霊異種》 1 《至高の審判者、イスペリア》 -クリーチャー(16)- |
1 《強打》 2 《束縛の手》 1 《走者止め》 1 《劇的な救出》 1 《Protect // Serve》 1 《霊感》 -呪文(7)- |
【DGMピック履歴】 1-1 《霊異種》 1-2 《天才の煽り》 1-3 《ジェーレンのスフィンクス》 1-4 《風のドレイク》 1-5 《アゾリウスのギルド門》 1-6 《罪の収集者》 1-7 《尖塔のロック鳥》 1-8 《走者止め》 1-9 《Protect // Serve》 1-10 《つぶやく幻》 1-11 《オパール湖の門番》 1-12 《オルゾフの導き石》 1-13 《武器への印加》 |
▲黒赤ビート
・強さの理由
既に青黒タッチ赤や黒緑タッチ赤については触れてきたが、黒赤は解鎖生物を主軸にした前のめりなビートダウンとして別枠で言及する必要がある。
1-1で切り込むのはほぼレアからだが、緑と青が混んでいることを察して3手目から切り込む分にはアンコモンのグッドカードクラスで十分だ。黒赤は低マナ圏の埋め方が青黒とも白黒とも黒緑とも違うので色主張さえ普通にうまく行けば必要パーツが枯れることは珍しい。
黒赤の短所は解鎖という極端に攻めに偏ったシステムを軸にするうえでの安定度の低さだ。
先手後手であまりにゲームが変わってくる点は、長所と表裏一体であるゆえに回避することが構造上難しい。
この後手の際のゲームプランの組み立てにくさはRTR×3の頃よりも一層厳しくなっている。
黒赤の理想形は生物で戦線を膠着させるようには出来ていないので、必然的に攻められた場を捌くのはスペルに頼ることになるのだが、RTR×3の頃に比べて除去の枚数が減り、除去が重くなり、かつ環境が低速化、多色化したことにより母数が減った除去を他の色につままれるケースが増えるという踏んだり蹴ったりな状況になっている。
このようなことから、黒赤に進む際にはまず位置取りをしっかりすることと、その位置取りを生かして後手用のサイドボードを作っておくことが重要になってくる。
位置取りで気をつけるべき点は上方向に黒が混んでいないこと(理想は上が白緑)、下方向に赤白が混んでいないことだ。次にサイドボードだが、先手後手でデッキを作り変えるということはつまり、序盤に相打ちを繰り返す展開が可能で、さらにその後を任せられるような生物を確保しておくことになってくる。
具体的には《テーラスのワーム》《ザーニケヴの蝗》《長屋壊し》《危険な影》がそれに当たる。これらのカードを「デッキに合わない」という理由で軽々にスルーせずにサイドボードとして確保して置くようにし、後手からまくるゲームプランを用意するようにするだけで勝率は目に見えて変わるだろう。
・アーキタイプの軸となるカード
黒赤ビートに舵を切るきっかけになるアンコモン以下の代表的なカードは以下の2枚になる。
1位《殺戮の剣闘士》
初手、2手目では《敵への処罰》《瓦礫帯のマーカ》《クロールの戦士》などの単色の優秀なカードを優先するべきだが3手目以降に流れて来る場合は腹をくくってそこから黒赤に飛び込むのはアリだろう。劣勢な場を巻き返す力はないものの、押し込む性能はズバ抜けており間違いなく「勝てるカード」の部類に入る。早いだけで息切れがすぐ来るタイプのデッキが敬遠される環境なので、お供の確保は比較的楽だ。
2位《とげの道化》
単純な強さではなく上方向の黒赤の混み具合を察するための目安として捉えて欲しい。
5手目以降に回ってきたら黒赤に切り込むチャンスと捉えて良いだろう。ただし下方向に白赤のパーツを多く回している場合は2パック目で《くすぶり獣》などの赤の単色ビートパーツが枯れやすいので判断を保留にするのが堅い。
・サンプルデッキとDGMピック履歴
7 《沼》 8 《山》 1 《ラクドスのギルド門》 -土地(16)- 1 《ラクドスの哄笑者》 1 《ラクドスの切り刻み教徒》 1 《リックス・マーディのギルド魔道士》 1 《とげの道化》 1 《炎樹族の使者》 1 《灰の盲信者》 1 《暴動の長槍使い》 1 《火拳の打撃者》 1 《ラクドスのドレイク》 1 《戦心の歩兵》 1 《くすぶり獣》 1 《死の歓楽者》 1 《ヘルホールのフレイル使い》 1 《瓦礫帯のマーカ》 1 《殺戮の剣闘士》 1 《ラクドスの血魔女、イクサヴァ》 1 《乱打角》 -クリーチャー(17)- |
1 《武器への印加》 2 《向こう見ずな技術》 1 《反逆の行動》 1 《穴開け三昧》 1 《打ち上げ》 1 《敵への処罰》 -呪文(7)- |
【DGMピック履歴】 1-1 《ラクドスの血魔女、イクサヴァ》 1-2 《瓦礫帯のマーカ》 1-3 《敵への処罰》 1-4 《クロールの戦士》 1-5 《殺戮の剣闘士》 1-6 《罪の収集者》 1-7 《ラクドスのドレイク》 1-8 《とげの道化》 1-9 《盗まれた計画》 1-10 《腐敗農場の骸骨》 1-11 《暴動の長槍使い》 1-12 《武器への印加》 1-13 《グルールの導き石》 |
▲緑多色
・強さの理由
現環境は近年まれに見る多色環境なので、なかなかポジションが見つからず道に迷ったまま1パック目中盤を終える状況というのは、今までよりも多くなる。そんな時の頼みの綱が緑多色である。
また、緑多色の利点は目に付いたボムは全部使えるという点にもある。強いカードをたくさん使うのは楽しいし、勝つときは勝ち点100くらいもらってもいいんじゃないかという豪快な勝ち方になることも珍しくないので、この魅力に取り憑かれて自ら進んで迷子になるという遊び心の多い人もいるのだが、勝利を至上命題にした場合の緑多色は、初手と2手目で共存できない強力カードをピックした場合で、どちらかに寄せるのが難しかった場合の避難先として捉えるのがいいだろう。
楽しさを至上命題にした場合は、地盤をそろえた上で空から勝ち手段が降ってくるのを口をあけて待つという展開になりがちなので、まぁ、なんというか、思う存分楽しんでもらえればそれでいい。
その他に気をつける点として、緑多色をやる上でのアプローチは腹を括って本格的に多色化するタイプと、可能ならばどこかに落ち着けたいタイプの2種類があるということだ。前者は青緑黒をベースにコントロール要素を多めに組むのに対して、後者の場合は緑白黒でグッドスタッフ的に組むタイプになる。しかし前者は1パック目からデッキを組んでいけるのに対して後者はギルドが3パック目に集中しているので、狙うというよりは卓内の流れに任された末の結果という形になる。
・アーキタイプの軸となるカード
緑多色を視野に入れたら優先度を上げてピックすべきカードは以下のようになる。
1位 各種の門
このアーキタイプ、何はともあれ門である。門番を運用するのであれば5枚は欲しい。
2位《種喰らい》
各種の門番を回すエンジンとしてだけでなく、単純なサイズで勝つこともしばしば。
エンジンとしての役割を無視しても悪くない性能のカード。
青緑が不人気であることから比較的回りやすいが、2枚は入れすぎなので注意しよう。
この優先度はコントロール型での評価だ。《クロールの戦士》との二択になった場合にどちらを優先するかがグッドスタッフ型との分かれ道になるのでそれまでの流れや、あなたの宗派を参考にして決めると良いだろう。
3位《ウブール・サーの門番》
他の門番は黙っていても集まるのであまり気にする必要はないが、《ウブール・サーの門番》だけは意識してピックしていい。
コントロール型ならデッキ内の門番は最大3~4枚を目安にするのがマナカーブ的に妥当だ。その場合《ウブール・サーの門番》を最優先にし、次点が《オパール湖の門番》、次に《サルーリの門番》を採用したい。
グッドスタッフ型でも《ウブール・サーの門番》の重要度は変わらない。逆にそれ以外の門番はパワーが3以上あるパーツの居場所を残すために優先度が下がる。
・サンプルデッキとDGMピック履歴
5 《森》 5 《島》 1 《平地》 1 《セレズニアのギルド門》 1 《ディミーアのギルド門》 1 《ボロスのギルド門》 1 《ラクドスのギルド門》 1 《ゴルガリのギルド門》 1 《ギルド渡りの遊歩道》 -土地(17)- 1 《門を這う蔦》 1 《エリマキ眼魔》 1 《緑側の見張り》 1 《ザーメクのギルド魔道士》 1 《ヴィトゥ=ガジーのギルド魔道士》 1 《構脚のトロール》 2 《ケンタウルスの癒し手》 1 《オパール湖の門番》 1 《ウブール・サーの門番》 1 《サルーリの門番》 1 《種喰らい》 1 《鎧の狼乗り》 1 《首席議長ゼガーナ》 1 《トロスターニの召喚士》 -クリーチャー(15)- |
2 《予言のプリズム》 2 《穴開け三昧》 1 《覚悟+意欲》 1 《遠隔+不在》 1 《生存+存命》 1 《見えざる者、ヴラスカ》 -呪文(8)- |
【DGMピック履歴】 1-1 《覚悟+意欲》 1-2 《遠隔+不在》 1-3 《ディミーアのギルド門》 1-4 《セレズニアのギルド門》 1-5 《種喰らい》 1-6 《ウブール・サーの門番》 1-7 《生存+存命》 1-8 《トロスターニの召喚士》 1-9 《鎧の狼乗り》 1-10 《オパール湖の門番》 1-11 《サルーリの門番》 1-12 《ゴルガリの導き石》 1-13 《オルゾフの導き石》 |
緑多色についてはタッチカラーについては多く言及するのを避ける。
一つだけ気をつけるのはダブルシンボルだけは慎重に採用を検討すべきだということで、それ以外は目に付いたレアは片っ端から食い散らかすレベルでいい。
また、色だけでなく重さについても寛容になっていい。6マナや7マナの生物も導き石などの追加のマナソースを採用するなら6マナでもそれに見合った性能があるのなら問題なく、むしろ導き石を採用した上で重いところが足りなくてリソース負けするパターンを避けるように注意するべきだ。
以上、独自の視点で環境を6種のアーキタイプに分けて分析してみたがどうだっただろうか。
何か一つでも発見があったのならうれしい。
それでは、よいリミテッドライフを。