皆様こんにちは、晴れる屋店主兼プロプレイヤーの齋藤 友晴です。
2013年秋の大型セット、わくわくゴッドな『テーロス』の発売がもうすぐですね!
僕はかれこれ15年間もマジックしてますが、スタンダード環境がガラッと変わるこの時期は毎年毎年心躍ります。
今回はスタンダード&ドラフトにてアイルランドで開催されるプロツアー・テーロスの参加権があるので、尚更です!
発売前、というかまだプレリ前。公式カードリストが揃い、各ショップのシングル予約販売が始まりました。そんな今、このタイミングで1ヶ月後のプロツアー本番に向けて何をすべきか。
例えば、カードリストにさらっと目を通し、強そうなカードをカラー印刷しまくったりして今までのデッキに入れてひたすら使ってみる。
それも良いかもしれません。
しかし、実際に使ってみたり、よくよく他のカードやデッキを見ていると、評価がガラッと変わってしまうなんてことは頻発するのが現実です。純粋な楽しさを別とすれば、勢い先行の非効率型となってしまう可能性が高いと思っています。
そこで、多くのプロプレイヤーやデッキビルダーが重要視しているのは、新しいカードリスト全てをじっくり見ながら話し合ったりして評価すること。強豪プロのみで行うのも勿論良いですが、今回のようにカードがガラッと入れ替わるタイミングでは、そうとも限りません。
例えばかつてのファンデッキや、ファンカード経験が新環境のガチデッキに昇華する可能性もあるため、自由な発想が大事です。
よって、コミュニティにとらわれない様々なプレイヤー層が集って話し合う価値も大きいだろうと思っていました。
そこで今回は、不特定多数での話し合いを試してみることが有意義な可能性が高いと考え、 「みんなでレビュー!」と題してTwitterや晴れる屋トーナメントセンターで参加者を募集し、不特定多数でやってみました。
テーロスの全カードを1枚1枚見ながら話し合い、5段階評価(5:環境の軸になりうるレベルの超優良カード、4:それなり以上見かけそうな優良カード、3:自分や相手のデッキは選ぶが良カード、2:ワンチャンス、1:ノーチャンス)に分ける、という形式で行いました。最初は7人でスタートし、多い時間帯にはおよそ20人が参加し、約3時間沢山の人の意見が飛び交って、結果としてもとても有意義でした。
この記事では「みんなでレビュー!」の内容や結果を元に、僕が選んだ注目カード色別トップ3を紹介していきたいと思います!
「白の注目カード」
第1位:《万神殿の兵士》
1マナ2/1。このサイズは昔は強かったものの、現代のクリーチャーとしてはギリギリデッキに入る程度かもしれません。
そして、対戦相手が多色呪文を唱えた時1点ライフを得れる能力も、相手依存かつ微量なのでほんのおまけと言えるでしょう。
しかし、「プロテクション多色」!これはやばい!!
M14はともかく、ひとつ前のラブニカへの回帰ブロックは多色ブロック。5月にラヴニカへの回帰・ブロック構築で開催された、プロツアー「ドラゴンの迷路」のリストを参考にして考えると、
《ラクドスの哄笑者》
《復活の声》
《ロクソドンの強打者》
《炎樹族の使者》
《ボロスの反攻者》
《ロッテスのトロール》
《屑肉の刻み獣》
《カルテルの貴種》
《罪の収集者》
《オルゾヴァの幽霊議員》
などの優良クリーチャーにブロックされなかったり、シャットダウンできたり、
《イゼットの静電術師》
《アゾリウスの魔除け》
《拘留の宝球》
《イゼットの魔除け》
《突然の衰微》
《戦慄掘り》
などで除去られないことが分かります。
新しい注目カード《羊毛鬣のライオン》にもかなり有効です。
もちろん、サイズ的に普通のクリーチャーに止められやすかったり、《電謀》に弱かったりはしますが、たったの1マナというコストの安さを考えればとんだエリートであると言えます。攻めるデッキで使うのも良いですが、ブロック構築のとき活躍した白青系のコントロールの《管区の隊長》のような、攻めるも良いが基本は盾というポジションでの採用も有効だと思います。
第2位:《太陽の勇者、エルズペス》
初期忠誠値4あり、+1能力の1/1を3体ばらまく能力と-3のパワー4以上除去能力で出てすぐにほとんどのクリーチャーをシャットアウト。相手に解決策が無ければそのままトークン増量や奥義起動で勝利に繋がります。
飛行の軽量クリーチャーと打消し呪文には弱いですが、それ以外は対処されても大体は1対1交換な上、トークン3体が残ります。
出れば強いものの、重いので2~3枚までの採用となりそうなため、4枚使う《万神殿の兵士》よりは下の順位となりました。
第3位:《威名の英雄》
3マナ2/2の二段攻撃に、更に新しいキーワード能力「英雄的」で自身の呪文で対象に取ると+1/+1カウンター獲得。例えば3ターン目に召喚して4ターン目に《巨大化》2発で強化すると、トータル+8/+8で10/10二段攻撃の4ターンキル完成。4ターン目に《ひるまぬ勇気》を付けるだけでも5/5二段攻撃で、充分ゲームエンド級。
もちろん、そういうタイプのオールイン戦略は除去に弱すぎるので、やるなら《精霊への挑戦》など、除去耐性を上げる工夫が大事になってきます。
ただ、こいつの場合は普通に使っても《ロクソドンの強打者》と相打てる戦闘力を持っているので注目しています。《怨恨》がスタンダード落ちしていなければ。彼はエース級だったかもしれません。
その他の注目カード:《岩への繋ぎ止め》
「青の注目カード」
第1位:《解消》
《取り消し》に占術1が付いただけのカード。
最近だと誰も使ってなかった《取り消し》にちょっとおまけが付いただけのカードが何で?と思うかもしれませんが、ちょっとおまけが付いただけの《雲散霧消》が強かったのは記憶に新しいと思います。《雲散霧消》のオプションである追放は、特定のデッキ相手や、特定のカードを消した時にだけ好影響だったのに対し、《解消》の占術1はいつでも好影響となる能力です。
青のヘビー級パワーカード、《霊異種》や《スフィンクスの啓示》が変わらず強いと仮定すれば、相変わらずデッキの土地量が多めでドローバランスのぶれ幅が大きい為、1枚ライブラリー操作出来る恩恵はとても大きいです。
スタンダードではかなり使われるカードになると思います。
第2位:《海の神、タッサ》
クリーチャータイプが伝説のクリーチャー・エンチャント-神。
不思議な感じがしますが、アーティファクトクリーチャーがあったのに対して今まで無かったのが不思議とも言えますね
。 このクリーチャー・エンチャント-神は各色にいて、全て「破壊不能」と「信心(自分の場の同色のマナシンボル)5未満だとクリーチャーではない」+他2つの能力が付いています。そして、タッサには自分のターンの毎アップキープに占術1と、1青で自軍1体をブロックされなくする能力が付いています。
青はパーマネントを出さない色ですが、上手く行けば3マナ5/5破壊不能2マナでブロックされずで、占術1も強いので潜在能力はもの凄いです。
青の信心を稼ぐために良さそうなのは《夜帷の死霊》、《思考を築く者、ジェイス》、《潮縛りの魔道士》、《凍結燃焼の奇魔》、《雲ヒレの猛禽》などがありますが、中々大変かもしれません。
ですが、とにかく、最大到達点の高さは間違いないですし、占術は信心を揃えるためにも良い能力なので実際に使ってみて判断したいカードだと思いました。
第3位:《タッサの試練》
こちらも5色にあるエンチャントーオーラの「試練」シリーズ。
2マナに対しての最大効果は+1/+1カウンターを3個乗せて2枚ドロー。いやはや強烈!付けてアタックしているターンが長いと除去の的になって損をする可能性が高まるので、《実験体》、《雲ヒレの猛禽》、《漁る軟泥》や、「英雄的」能力持ちなどの、+1/+1カウンターが予め乗った状態で付けれるようなカードに装着し、早めに2枚引きたいところ。
その他の注目カード:《波使い》、《無効》
「黒の注目カード」
第1位:《思考囲い》
歴史が証明する、何の申し分も無い強カード。2点が痛手になるような正統派ビートダウン相手にはサイドアウトすこともあるかもしれませんが、色んなデッキで活躍しそうです。
《魂の洞窟》がスタンダード落ちした今、手札に残りやすい各種打消し呪文が強そうですし、入れ替わり直後はカードの選択肢が少ない分、全体的に重めになりパワーカードゲーになりやすいので、手札にあるうちに対処できるのは強いです。
重めのパワーカードは、上述の《太陽の勇者、エルズペス》やM14の《獣の統率者、ガラク》などの各種プレインズウォーカー、《霊異種》、出てしまうと1対1交換できないものが多いですよね。
第2位:《英雄の破滅》
シンプルに強い除去。《戦慄掘り》の単色インスタント版です。
単色な分、色々なデッキに採用されやすく、インスタントなことを活かして《解消》や《中略》と一緒に構えたくなりますね。
3マナなのでビートダウン序盤の展開に対する反応が遅いことは気になりますが、クリーチャーかプレインズウォーカーはほとんどのデッキに採用されているはずなので、無駄になりにくい優良カードだと思います。
第3位:《エレボスの鞭》
出ました、伝説のアーティファクト・エンチャント!
神様のクリーチャー・エンチャントといい、今回はカードタイプ混ぜ散らかしてますね。
アーティファクト破壊、エンチャント破壊、どちらでも対処されてしまいますが効果は大盤振る舞い。まず、自軍クリーチャー全員が「絆魂」ゲット!(エンチャントとしての能力?)そして4マナタップ起動で1ターンだけ速攻付きで場に復活!(アーティファクトとしての能力?)
釣ったクリーチャーはターン終了ステップに追放とのことですが、なんと《霊異種》や《幽霊議員オブゼダート》の場合、自身の能力で一旦取り除けば場に残り続けます。
つまりは、何らかの効果で一旦追放したり
※編注:手札に戻した場合は、《エレボスの鞭》の能力で追放されてしまうので、できません! ごめんなさい、読み間違えました!by齋藤
その他の注目カード: 《死者の神、エレボス》《骨読み》
「赤の注目カード」
第1位:《神々の憤怒》
環境のキーになりうる全体除去呪文。飛行も地上も馬術もシャドーも問わず、クリーチャー全体に3点を与え、死亡する場合は追放。つまりは超速ビートも《復活の声》も《ザスリッドの屍術師》もどんとこいというカード。
弱いわけがない。後述させていただく《森の女人像》を除去できることも嬉しいです。同じ3マナ以下で除去できないサイズの優良クリーチャーは《ロクソドンの強打者》と《海の神、タッサ》ぐらいなので、かなりのやり手だと思います。
そうなると、相対的に《カルテルの貴種》や《縞痕のヴァロルズ》の価値が高まりそうです。
第2位:《嵐の息吹のドラゴン》
これから使えなくなってしまうみんな大好き《雷口のヘルカイト》のポジションにピタリとはまりそうなカード。
試しに比較すると、
【サイズ】ヘルカイトが4回殴れば相手を倒せたのに対し、こいつだと5回。【能力】飛行、速攻は同じ。ヘルカイトは相手の飛行全てに1点ダメージ&タップ。こいつはプロテクション白と、7マナ怪物化で+3/+3、怪物化した時相手の手札分ダメージ。
都合良く怪物化できればアタック3回で勝てる可能性もあります。《ミジウムの迫撃砲》でこそ除去られるものの、《アゾリウスの魔除け》や《拘留の宝球》で対処されないので、《雷口のヘルカイト》に近い強さがある気がします。
第3位:《稲妻の一撃》
2マナ3点が帰ってきた!
《灼熱の槍》と入れ替わりで入る全く同じ内容の、違う名前のカード。つまりは間違いの無い優良カードです。しいて言うなら……新しいイラストのカードってトキメキますよね♪
その他の注目カード:《モーギスの狂信者》《燃えさし呑み/Ember Swallower《パーフォロスの槌/Hammer of Purphoros》《鍛冶の神、パーフォロス》《マグマの噴流》
「緑の注目カード」
第1位:《森の女人像》
マナサポートとしては珍しい、緑を使う理由となるようなカード。2マナのマナクリーチャーで好きな色が出るだけなら《マナ編みスリヴァー》もいますが、《森の女人像》は呪禁付きで除去られないので高確率でマナジャンプできる上、タフネスが3もあるので、出したターンから軽量ビート相手のブロッカーとしても役立ちます。
2ターン目に《森の女人像》、3ターン目に、後程紹介する《歓楽者ゼナゴス》を出し、4ターン目にそのまま両方からマナを出して《獣の統率者、ガラク》が出せればうっひょーです。
他にも《死橋の大巨虫》や《紅蓮の達人チャンドラ》、《思考を築く者、ジェイス》、《練達の生術師》など、環境には強い4マナカードが沢山あるので、大きく可能性を感じます。
第2位:《世界を喰らう者、ポルクラノス》
〔l_Polukranos, World Eaterr〕 |
4マナ5/5で怪物化、疑似格闘付き。除去やカウンターには弱いものの、サイズが良く、緑で除去能力付きは価値が高いです。《森の女人像》のマナ加速から出してもGOOD。《死橋の大巨虫》と比べて良い勝負なカードだと思うので、8枚搭載した「4マナGOGO!」というデッキができるかもできないかも(笑)
第3位:《霧裂きのハイドラ》
昔あった《スクラーグノス》と比べるととんだ化物。ウィザーズのテスト中、青が強すぎるが故の緊急ぶっこみ感がぷんぷんします。2度目ですが、《魂の洞窟》が抜けてカウンターが強くなったので、優秀なサイドボードとして活躍してくれそうです。
土地が沢山入っているデッキだったり、《円環の賢者》などの大マナブースト入りのデッキであれば真価を発揮します。
純粋な緑デッキで使うだけでなく、ロングゲーム必至の白青コン同系対決用にタッチしたりするのも面白そうです!
その他の注目カード:《神々との融和》《恭しき狩人》《加護のサテュロス/Boon Satyr《ナイレアの弓/Bow of Nylea》
「マルチカラー、アーティファクト、土地の注目カード」
パワーアップして帰ってきた《番狼》。止めれたからといって放置すると呪禁&破壊不能の4/4になってしまうので要注意。《ロクソドンの強打者》《復活の声》《ワームの到来》を有する、ただでさえ強いセレズニアカラーがまだ強化されるのか。
マナが溜まると破壊不能にできるため、《至高の評決》にも耐性があるところが素敵ですね。
第2位:《歓楽者ゼナゴス》
4マナ初期忠誠値3。
+1能力は自分のクリーチャー分赤マナか緑マナ。4体いればフリースペルとして出せるし、ターンが明ければマナ加速。《炎樹族の使者》と相性が良いですね。
+0能力は2/2速攻トークン。スタン落ちする《情け知らずのガラク》のトークン能力と比べてただ強い。
-6の奥義はライブラリートップを7枚追放してクリーチャーと土地を全て場に出せる。最大1対7交換。
総合的に見て強いカードであると素直に言えます。
第3位:《奔放の神殿》《欺瞞の神殿》《神秘の神殿》《静寂の神殿》《凱旋の神殿》
占術1付きのギルド門。本物と違って《迷路の終わり》で10種揃えてハッピー!みたいのは無いものの、色を増やすと事故りやすくなるというマジックの概念を覆す、良いデザインの土地。色事故はともかく、枚数事故の確率は下げてくれます。
1ターン目に置いたときのトップ操作は勿論強いですし、後半引いたときも普通の土地と比べ、次のトップデッキ期待度を高めてくれるので悪くなさそうです。
タップインが自然にできる、1マナ圏があまり入らないカラーコンビネーションで使うと特に強く、1マナカードが《思考囲い》ぐらいしか入る想定の無い青黒の土地は、この5種の中では一番良さそう。
その他の注目カード:
《悪夢の織り手、アショク》
《都市国家の破壊者》
《荒野の収穫者》
《死の国のケルベロス》
《ニクスの祭殿、ニクソス》
ずらっと紹介してきましたが、如何でしたでしょうか?
まとめて振り返ってみても、各色の1位はどれもこれからよく見かけそうなカードだと思います。
クリーチャー良し、カウンター良し、除去良し、プレインズウォーカー良し、ハンデスありな環境で、大きく偏ってこの色だけ強くなりすぎという感じもしないので、多くのプレーヤーにとって凄く楽しめそうな感じがしました。
ただ、白緑は素直な色なので気を緩めてしまいがちですが、テーロス加入で更に侮れない存在となりそうなので要警戒です。
そこで今回は、白緑のビートダウンのサンプルデッキリストを出して締めさせて頂きます。
まだ時期が時期なのでメインデッキのみですが、そこはご容赦下さい。
10 《森》 10《平地》 4 《寺院の庭》 -土地(24)- 4 《実験体》 4 《万神殿の兵士》 4 《羊毛鬣のライオン》 4 《復活の声》 4 《ロクソドンの強打者》 -クリーチャー(20)- | 4 《議事会の招集》 4 《セレズニアの魔除け》 4 《根生まれの防衛》 4 《ワームの到来》 -呪文(16)- | -サイドボード(0)- |
それでは、長らくお付き合い頂きありがとうございました!
……と、言いたいところですが、ほとんどがラヴニカ限定構築の組まされデッキで不完全燃焼なのでもうひとつ!!
9 《島》 7 《沼》 4 《湿った墓》 4 《欺瞞の神殿》 2 《浸食する荒原》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- | 4 《中略》 3 《思考囲い》 3 《破滅の刃》 2 《本質の散乱》 4 《解消》 3 《英雄の破滅》 3 《遠隔+不在》 1 《好機》 2 《家畜化》 3 《悪夢の織り手、アショク》 4 《思考を築く者、ジェイス》 2 《記憶の熟達者、ジェイス》 -呪文(34)- | -サイドボード(0)- |
こういうデッキはそれこそ環境ができていかないとまともにカードチョイスも出来ませんし、
強いか分かりませんが、とりあえず相手の除去が完全に腐るのはハッピーということで、宜しくお願いします(笑)
これからどんなデッキが出てくるか楽しみです、個人的にはオーラを使うデッキは台風の目になりえるかな、なんて。
試練シリーズ、特に青、赤、緑は上手く噛み合わせることができれば強そうなので試しに使ってみたいです。
それでは、皆様が『テーロス』参入後のスタンダードをどーんと楽しめることを願っています!
ありがとうございました!!