のぶおの部屋 -第2回 スニークショー(前編)-

斉藤 伸夫


■ゲスト紹介

今回のゲストを紹介します。

今回のゲストはスニークショーを使っている大久保 雄輝 (東京)さんです。Diarynoteでは「にゃあ」というHNで活動していらっしゃいます。

大久保さんは、Eternal Festival Tokyo2010 3位、晴れる屋エタフェストライアル2011 優勝、AMC優勝複数回などの戦績をもっています。
 
斉藤 「本日は『スニークショー』について話していきたいと思います。大久保さん、よろしくお願い致します。」

大久保 「よろしくお願いします。」



■スニークショーとは?

斉藤 「こちらが、一般的なスニークショーのレシピです。」


Brad Nelson 「Sneak and Show」 SCG Invitational Indianapolis (1位)

3 《島》
1 《山》
3 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
3 《霧深い雨林》
3 《古えの墳墓》
2 《裏切り者の都》

-土地(19)-

4 《グリセルブランド》
4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(8)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《呪文貫き》
4 《実物提示教育》
1 《直観》
4 《Force of Will》
4 《騙し討ち》
4 《水蓮の花びら》

-呪文(33)-
4 《神聖の力線》
3 《墓掘りの檻》
2 《紅蓮地獄》
2 《白鳥の歌》
2 《裂け目の突破》
1 《赤霊破》
1 《拭い捨て》

-サイドボード(15)-
hareruya


引き裂かれし永劫、エムラクール実物提示教育神聖の力線


斉藤 「スニークショーの簡単なデッキ説明をお願いします。」

大久保 「動きは単純です。《水蓮の花びら》《古えの墳墓》などからマナ加速し、《騙し討ち》《実物提示教育》《引き裂かれし永劫、エムラクール》《グリセルブランド》などのファッティを高速で戦場に出して殴るだけです。《騙し討ち》と、『滅殺』により対戦相手のパーマネントを壊滅状態にできるエルドラージとの相性はとてもよいです。あとは他のコンボデッキと同様、コンボパーツを集めるためのドロー手段や妨害排除のカウンターなどで構成されます。」





斉藤 《引き裂かれし永劫、エムラクール》《グリセルブランド》が揃う前は、《森滅ぼしの最長老》《大祖始》が使われていましたね。さらに過去になれば《セラのアバター》なども使われていた時期があります。」

大久保 《大祖始》《騙し討ち》から出しても10点しか当てられないですし、《森滅ぼしの最長老》は『頑強』で場に残りますが《剣を鍬に》されます。それに比べて《引き裂かれし永劫、エムラクール》はプロテクションがあるおかげで対処の方法が限定的です。」

斉藤 「そうですね。《グリセルブランド》《引き裂かれし永劫、エムラクール》と違ってプロテクションがない代わりに、大量のドローにより自分で自分を守れます。たくさんのカウンターがあるおかげで、《グリセルブランド》を処理するためには相手の手札だけではなくライブラリーのトップ14枚とも戦う必要があるんですよね。」





■なぜスニークか?

斉藤 「なぜこのデッキタイプを使い続けているのですか?」

大久保 「自分は2010年くらいからずっとこのデッキを使い続けていて、上記戦績もすべてスニークショーによるものですが、それも《騙し討ち》というカードが好きだからです。レガシーの2大クリーチャー《引き裂かれし永劫、エムラクール》《グリセルブランド》を簡単に出せるのがいいですね。また、墓地を使わないコンボであるというのも大きな理由の一つです。レガシーではサイドボードに墓地対策カードを積むのが一般的で、墓地活用デッキはサイド後に必ずといっていいほど対策されます。それに比べて、スニークショーはサイド後も妨害されづらいコンボデッキです。ファッティで相手を倒すのは爽快ですよ。」



■メタ上でどうか?

斉藤 「スニークショーはメタ上での立ち位置はどうなのでしょうか?」

大久保 「最近増えている《真の名の宿敵》を無視しながら、環境にいるデッキすべてに対して勝率5割以上を保てるデッキです。非青系のビートダウン(ジャンド、ゴブリン、マーベリック etc)には特に有利がつきます。《死儀礼のシャーマン》《真の名の宿敵》をある程度無視できますし、《Hymn to Tourach》などの苦手なカードを使った黒いデッキが減っているのも追い風です。各デッキの1枚1枚のカードの強さが以前よりあがっている(=少し重めのカードも使われる)ので、環境のスピードが落ちたのもスニークショーが勝てる要因になっているかもしれません。」

斉藤 《死儀礼のシャーマン》があるから少し重いカードを使うデッキ(BUG続唱やジャンド)が増えていますし、《真の名の宿敵》に対抗するために対ビートカード(石鍛冶デッキの3枚目の装備品や、全体除去など)を増やす人も多くなってきましたしね。《死儀礼のシャーマン》は、2点ライフルーズはありますが直接コンボには影響しないですし、普通のデッキなら除去できなくて手を焼く《真の名の宿敵》も、コンボデッキに対しては3マナと重い3/1バニラクリーチャーに近いです。あと、《死儀礼のシャーマン》の能力もスニークショーに有利な環境にしてませんか?」

大久保 「そうですね。《死儀礼のシャーマン》の登場により苦手な墓地活用デッキが減っていることが、このデッキが一番使われているコンボになった要因だと思います。また、他のコンボデッキに比べ各種ヘイトベアーに引っ掛かりにくい点も利点として挙げられるでしょう。スニークショーはヘイトベアー1体のみで完封されることがほとんどありません。」

斉藤 「そうかもしれませんね。《騙し討ち》《実物提示教育》と仕掛けるカードが2種類あるので《翻弄する魔道士》は指定に裏目があり、《ガドック・ティーグ》も止められるのは《騙し討ち》のみ。《ファイレクシアの破棄者》《グリセルブランド》《騙し討ち》は止められても《引き裂かれし永劫、エムラクール》《実物提示教育》は止められません。《スレイベンの守護者、サリア》は1マナ多く用意すればいいですし、《エーテル宣誓会の法学者》は結局カウンターがセットで必要です。」


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斉藤 「では、どんなデッキを苦手としているのですか?」

大久保「苦手なタイプは大きくわけて2つあります。

1.≪Karakas≫にアクセスしやすいデッキ
・バント(《聖遺の騎士》からの《Karakas》サーチ)
・デス&タックス(《Karakas》の枚数が多い)

上記のデッキは、バントであればカウンター、デスタクであれば《コロンドールのマンガラ》コンボや《スレイベンの守護者、サリア》《リシャーダの港》によるマナ縛り、《ファイレクシアの破棄者》など、《Karakas》以外にも妨害手段があるデッキです。

2.ハンデスとカウンター両方構えるデッキ
・エスパー(《思考囲い》+《瞬唱の魔道士》)
・チームアメリカ(《Hymn to Tourach》)
・グリクシスデルバー(《陰謀団式療法》)

もう1種は、カウンターを構えつつ2枚以上ハンデスしてくる可能性が高いデッキです。
ハンデス1回くらいの妨害であれば《渦まく知識》《呪文貫き》などでも回避可能ですが、そういったスニーク側の回避手段をもさらに妨害できるカウンター呪文も積まれているので、苦手とするデッキタイプです。」

斉藤 「コンボに本当に強いデッキタイプがあがりましたね。逆にいえば普通のデッキでは簡単に負けてしまうくらいのデッキパワーがあるのが分かります。」



■一般的なレシピとの違い

斉藤 「では、実際に大久保さんが使っているレシピを踏まえた上で、一般的なレシピとの違いを教えてください。」

大久保 「これが最近大会で使っているレシピになります。」


大久保 雄輝 「Sneak and Show」 AMC – 第147回 (3位)

3 《島》
1 《山》
3 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
1 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
1 《溢れかえる岸辺》
3 《古えの墳墓》
2 《裏切り者の都》

-土地(19)-

4 《グリセルブランド》
4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(8)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
3 《呪文貫き》
2 《定業》
4 《実物提示教育》
4 《Force of Will》
2 《誤った指図》
4 《騙し討ち》
4 《水蓮の花びら》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(33)-
3 《墓掘りの檻》
3 《防御の光網》
2 《赤霊破》
2 《拭い捨て》
2 《紅蓮地獄》
1 《青霊破》
1 《紅蓮破》
1 《裂け目の突破》

-サイドボード(15)-
hareruya


グリセルブランド騙し討ち防御の光網


斉藤 「なにがトップメタだと思ってこのレシピのカード選択をされたんでしょうか?」

大久保 「RUGデルバー、スニークショー、エスパー石鍛冶系、ジャンド、ミラクルです。」

斉藤 「なるほど。ではそういったメタに合わせて改良した点などを具体的に教えていただけると助かります。」

大久保「比較対象として、SCGのリストがあります。最近よく見られるメインに《ギタクシア派の調査》を積んだタイプです。それに対して自分のリストはサイドにハンデス対策の《神聖の力線》をとっていないので、《ギタクシア派の調査》の枠を《誤った指図》の増量と《精神を刻む者、ジェイス》にあてて、ハンデスに対して強い構成をとっています。また、サイドにはトップメタであるRUGデルバーやSnTミラーに強いカードを多めに採用しています。それに対しSCGのリストのサイドボードには、特にRUGに対してサイドインするカードが少ないように思います。」

斉藤 《神聖の力線》を採用しなかった理由は何なんでしょうか?」

大久保 《神聖の力線》はまず初手にないといけないというデメリットを持っているからです。初手にないのに途中で引いてくるせいで負けてしまうゲームがあるのを懸念しています。また、そもそも環境に《Hymn to Tourach》を使うデッキが減っているということも挙げられます。しかも《神聖の力線》をサイドにとると枠を使いすぎてしまうので、この枠は他のメタデッキ対策に回したいと思いました。それに、特にサイドインしたい相手であるBGx系は《ゴルガリの魔除け》の採用率が上がってきていて、《神聖の力線》の有無にかかわらず相手はサイドにエンチャント破壊系のカードがあればインしてくるのが基本になっているというのもあります。」




斉藤 《ゴルガリの魔除け》の採用率はかなりあがりましたね。ここでも《真の名の宿敵》の影響力がうかがえます。では、《ギタクシア派の調査》《直観》はなぜ採用しないのですか?」

大久保 《ギタクシア派の調査》のメリットは、相手のハンドを見ることでプラン立てをすることができることです。相手のカウンターの有無や、《実物提示教育》に合わせて出てくる脅威の確認もできます。しかし、ドロー操作としてはただのキャントリップなので弱いですし、相手の脅威を確認するだけで結局別途回答を探さなくてはならない、という欠点も挙げられます。したがって、ドロー操作としての能力が高い《定業》を採用しました。また、《直観》はサイドアウト率が高いので採用していません。」

斉藤 「確かに《直観》は相手によって遅かったり、重かったりします。それに比べ、軽い《定業》を早いターンに打つのはキルターンも早くなりますし、ハンデスや《ヴェンディリオン三人衆》にも強くなるので、理にかなっていますね。では、《誤った指図》《精神を刻む者、ジェイス》の選択理由を教えてください。」

大久保 《誤った指図》には2つの役割があり、(1)「相手のハンデスを跳ね返す役割」(2)「追加の≪Force of Will≫」です。特に(2)の「追加の《Force of Will》」については、トップメタのテンポ系Delver(RUG、パトリオット、グリクシス)に対して、コンボ開始時に必ずこちらが《Force of Will》《誤った指図》を構えたいので、枚数を多めにしています。



《精神を刻む者、ジェイス》は、ハンデスを撃ってくる相手にはもちろん、序盤に出ればビート系相手にも時間を稼ぐことができます。このデッキにおける《精神を刻む者、ジェイス》は、基本的には使い捨てですが、

(1) 《渦まく知識》能力を2回以上使えればアドバンテージがとれる。
(2) クリーチャーバウンスから入っても次のターンに《渦まく知識》できれば、アドバンテージを失わずに擬似的なタイムワープになる。
(3) 《渦まく知識》能力を1回しか使えず返しのターンに《精神を刻む者、ジェイス》が死んだとしても、結果としてブレスト+プレイヤーへのダメージ軽減が起こるので、アドバンテージを失わずターンを伸ばせる。
(4) 仮に《精神を刻む者、ジェイス》がカウンターされてしまったとしても、その分次のコンボの部分を通しやすくすることができる。

と、無理に維持しなくても十分な効果が見込めるため、4マナまで簡単にマナを伸ばせるこのデッキには合っていると思います。」

斉藤 「自分もエンド時にプレイヤーに打ってきた火力を《誤った指図》《秘密を掘り下げる者》(や《闇の腹心》)に移しかえたり、《謙虚》を貼ってきたコントロールを《精神を刻む者、ジェイス》だけで負かしたことがあります。それに、メインからハンデスに強い形にすることによって、RUGやミラーに対してサイドが増やせたのはいいことですね。」



■メタに合わせた変更点

斉藤 「メタが変わったらどのような変更を施しますか?」

大久保 「ビートが増えればコンボ特化にすることによって勝てます。《渋面の溶岩使い》《水没》などの採用カードも候補にあがるでしょう。ハンデスばかりの環境になれば《神聖の力線》を使用することになるかもしれません。コントロールが増えれば《ヴェンディリオン三人衆》の起用を考えます。カウンターだけのテンポが台頭すれば《圧服》なども再度検討することになると思います。」





次回はスニークショーの弱点やサイドボードの考え方、事例をあげての小テクを紹介するといったプレイ編をお届けします。

では、次回プレイ編でお会いしましょう。