Translated by Takumi Yamasaki
(掲載日 2024/07/24)
はじめに
月末にアムステルダムで開催されたプロツアー『モダンホライゾン3』では、紛れもなく《有翼の叡智、ナドゥ》と《手甲》を中心としたコンボデッキが優勝を飾った。トップ8にはナドゥコンボが5名入賞し、日曜日に行われたプレイオフではその5人が互いに負けただけだった。最終的に優勝したのは、プレイヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いたサイモン・ニールセン/Simon Nielsenだ。彼をチームメイトと呼べることを嬉しく思う。
🏆Congratulations to Simon Nielsen, winner of Pro Tour Modern Horizons 3!🏆
— PlayMTG (@PlayMTG) June 30, 2024
After two incredible years – including winning Player of the Year and making the Top 8 in five out of six events – he finally secured his first ever Pro Tour victory.
Congratulations again, Simon! pic.twitter.com/etQyotNe8I
《有翼の叡智、ナドゥ》デッキはプロツアーに臨むにあたって決してシークレットデッキというわけではなかったし、それをプレイしたのは我々(Team Handshake)だけではなかった。当然のことながら、このデッキは今大会で最も使用者の多かったデッキとなり、最も人気のあるデッキが最も成功したデッキになるという珍しい結果となったのだ。
このデッキをプレイしたのはTeam Handshakeだけではなかったが、我々のリストはほかよりも優れていたと思う。この記事では、なぜこのデッキが優れているのか、どのようにデッキを構築することになったのか、今後どのような構築を推奨するのか、そしてナドゥに対して風向きの強いメタゲームをどのように切り抜けるのかについて説明する。
フォースの覚醒
《有翼の叡智、ナドゥ》が『モダンホライゾン3』のプレビューで公開されたとき、簡単に自分のクリーチャーを対象に取れるカードがあれば強いだろうと多くの人が思うまでに時間はかからなかった。
HERE IS MY MH3 PREVIEW CARD(s)!!
— d00mwake (@d00mwake) May 24, 2024
Nadu looks like a potential sweet build around, and the Buried Alive reprint certainly has some applications.
Thank you to WOTC for sending these #freepreview cards! pic.twitter.com/nIsxspS02u
非常によく似た目的で、すでに《手甲》はレガシーの《セファリッドの幻術師》と一緒に使われていたので、このアーティファクトと組み合わせるのは当然のことだった。セットが発売される前から、我々はこのデッキのさまざまなバージョンの構築に取りかかることにしたのだ。
新セットのもう1つのキーカードは《春心のナントゥーコ》だ。《手甲》で対象に取れるクリーチャーを尽きないようにし、結果として《有翼の叡智、ナドゥ》の能力が無限に続くようにしてくれる。
コンボデッキにとって、デッキ構築における最も重要な3つのポイントは「速度」「一貫性」「妨害耐性」だと考えている。新しいコンボデッキを作り始め、そのデッキが不発となるかフォーマットに革命を起こすデッキになるかを見極めようとするとき、この3つの要素を最大化する方法と、そのデッキがそれらの指標でどの程度のスコアを獲得できるかを考えるべきだ。
一例として、新たに生まれたルビーストームを見ると、「速度」で非常に高いスコアを出していることがよく分かる。2種類の儀式系カード、スペルを軽くする手段(《ルビーの大メダル》《モンスーンの魔道士、ラル》)、より多くのカードにアクセスする手段(《レンの決意》《無謀なる衝動》)を含む手札があれば2ターンキルが可能だ。
しかしこのデッキは、カイ・ブッディ/Kai Budde、ジョン・フィンケル/Jon Finkel、ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasといったゲーム史上最高のプレイヤーたちがプレイしたにもかかわらず、プロツアーではひどい勝率だった。
なぜか?「妨害耐性」がなかったからだ。
プロツアーでは、《ドラニスの判事》をはじめとする対策カードを採用したデッキが多く登録されており、ルビーストームは単純にそのすべてを戦い抜くには力不足だったのだ。
ナドゥコンボの調整をしていたとき、作成したいくつかのバージョンは、主に「速度」に焦点を当てたオールインコンボだった。例えば、《召喚士の契約》は「速度」と「一貫性」には優れているが、「妨害耐性」にはかなり劣るカードだ。コンボパーツをサーチできる軽いチューターなので、3ターン目にコンボを決めるのには役立つが、相手の妨害に対しては弱くなる。相手に《有翼の叡智、ナドゥ》を対処されると、契約コストの支払いによって実質的に次のターンをスキップすることになるからだ。
我々が構築した別のバージョンのナドゥは、よりミッドレンジ的でフェアなゲームができ、「妨害耐性」に重点を置いたものだった。
このバージョンは平均して「速度」こそかなり遅かったが、妨害はあまり気にしなかった。
少し意外なことに「妨害耐性」については、より速いバージョンでも高いスコアを出していることが分かったのだ。特に《ウルザの物語》は3つのポイントすべてにおいて強力なカードだった。《有翼の叡智、ナドゥ》を唱えるためのマナになり、3ターン目に《手甲》をサーチできるだけでなく、別の勝利手段として機能することで「妨害耐性」を高めてくれる。また構築物・トークンによるプレッシャーにより、対戦相手はコンボへの対応が困難になるのだ。
《ウルザの物語》に加え、ナドゥコンボは妨害に対する優秀なカードを採用することができる。《喜ぶハーフリング》《夏の帳》《時を解す者、テフェリー》は打ち消し呪文に対して効果的で、《有翼の叡智、ナドゥ》自身も能力でカードをもたらしてくれるので当然除去に強い。《一つの指輪》も、こちらのクリーチャーを除去しようとする相手に対してリソース面で圧倒することができるカードだ。
ナドゥコンボはほとんどすべてのデッキを凌駕できるだけでなく、本当にこのデッキに勝とうとしても、何をすべきなのかさえ明確ではない。ルビーストームに勝ちたいなら《ドラニスの判事》を採用すればよいし、リビングエンドに勝ちたいなら《虚空の杯》《狼狽の嵐》《虚無の呪文爆弾》を使えばよい。しかし、ナドゥコンボに対して単純な答えはないのだ。
クローン・ウォーズ
最終的にいろいろな構築から、我々はこのリストでいくことにした。
デッキの核
先ほど説明したカードに加え、デッキの核となるカードがいくつかある。
《召喚の調べ》
インスタントスピードのチューターで、基本的にどのコンボパーツでもサーチすることができる。これにより安定性が増し、コントロールに対しても相手のマナが少ない内にコンボを押し通すのに役立つ。
《コーの先導》
《コーの先導》は《召喚の調べ》で持ってくることができ、インスタントスピードでのコンボを可能にしてくれるクリーチャーだ。
《森を護る者》
《森を護る者》は自分のクリーチャーを対象にして、ナドゥによるエンジンを始動させることができる。また、能力で《有翼の叡智、ナドゥ》を守れるだけでなく、《忍耐》とループすることが可能だ。
《忍耐》
《忍耐》に《春心のナントゥーコ》を「授与」することで、《森を護る者》との無限マナにはじまり、あらゆるループを可能にしてくれる。
これらの核となるカードは、プロツアーでは基本的にすべてのバージョンに採用されていた。
ループについて掘り下げよう。《忍耐》に《春心のナントゥーコ》を「授与」した場合の最も基本的なパターンは、《忍耐》のコピーを作り、墓地をデッキに戻す能力に対応して《森を護る者》で土地を生け贄に捧げることで、それらを再び《有翼の叡智、ナドゥ》の能力でデッキから場に並べて同じ動きを繰り返すことだ。
これにより、《春心のナントゥーコ》の能力で無限にクリーチャーが増え、土地を生け贄に捧げる前にマナを浮かせれば無限マナも得られる。
これを応用することで、いろいろなことができるようになる。例えば、《春心のナントゥーコ》を《機能不全ダニ》などほかのクリーチャーに「授与」して、そのクリーチャーのコピーを無限に作ったり、《冠水樹林帯》《耐え抜くもの、母聖樹》《天上都市、大田原》で「魂力」土地を無制限に使うこともできる。特に「魂力」土地のループは非常に複雑で、正直なところそれほど重要ではないので、ここではあまり深入りするつもりはない。
採用候補
《破滅の終焉》
採用し得るカードとして、ジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Deprazやほかのフランスのプレイヤーが使っていたように、《破滅の終焉》を1枚採用することを勧める。このカードがあれば、コンボを始動したターンに勝利することができ、実際にゲームに勝つ前に相手にターンを渡さなければならないという複雑な事態をさけることができる。また《破滅の終焉》は勝利手段になる以外でも、コンボパーツをそろえるチューターとしても使えるカードだ。
《オークの弓使い》
もうひとつの採用候補は《オークの弓使い》だ。例えば、トップ8に入賞したダニエル・ゲッチェル/Daniel Goetschelのリストには、このカードが4枚採用されていた。《春心のナントゥーコ》を《オークの弓使い》に「授与」すれば、無限にコピーして1点ダメージの誘発によってライフを削りきることができる。
しかし、それ以外の点では現在のメタゲームではあまり良いカードとは思えないし、黒いカードを入れることでマナ基盤はかなり悪くなってしまう。
《タッサの神託者》
最後のよくある採用候補は、実際にゲームに勝利できる《タッサの神託者》だが、このカードの採用には強く反対する。《タッサの神託者》を素引きしたり、手札からプレイするのは本当に恥ずかしくなるし、すべてにおいてまったく必要のないカードだ。
《タッサの神託者》だけを採用することよりもさらに悪いのは、《破滅の終焉》や《オークの弓使い》が入ったリストで《タッサの神託者》を採用することだ。トップ8に入賞したダニエル・ゲッチェルのリストには、《オークの弓使い》と《タッサの神託者》が採用されており、その時点で《タッサの神託者》は完全に冗長である。
とはいえ、このデッキの中核は非常に強力なので、メインデッキに弱いカードを入れたとしても、プロツアーでトップ8入りする余裕があるのは明らかだ。
自由枠
デッキの自由枠に採用したのは以下のカードだ。
4枚 《喜ぶハーフリング》、2枚 《根の壁》
ほとんどのチームがマナ加速を採用しており、我々は打ち消し呪文に強い《喜ぶハーフリング》と、《召喚の調べ》とシナジーのある《根の壁》の採用を優先した。《樹上の草食獣》はマリガンしたときやロングゲームで弱く感じたので、採用を見送っている。
2枚 《機能不全ダニ》
《ウルザの物語》で持ってくる用に1枚採用していたが、このカードの良さに感動して2枚目を採用したくなった。特にミラーマッチで強く、単純な速度勝負になりやすいマッチアップだとしても後手で勝てるようになる。また、ほとんどのデッキが《一つの指輪》や《ルビーの大メダル》《ネクロドミナンス》など、《機能不全ダニ》の対象になるようなカードを採用しているのも大きい。
2枚 《一つの指輪》
コントロールデッキに対して強力なカードで、特に《喜ぶハーフリング》と組み合わせたときが強い。
2 《棘を播く者、逆棘のビル》
コンボを始動することができる《召喚士の契約》でサーチ可能なクリーチャーであり、特にサイドボード後の優秀なバックアッププランでもある。チームでの調整中、対戦相手がコンボを妨害するためにリソースを割いた後の《棘を播く者、逆棘のビル》が非常に印象的で、多くのフェアなゲームで勝つことができた。
《荒れ模様のストームドレイク》
ジェイソン・イェ/Jason Yeとサム・パーディ/Sam Pardeeのトップ8リストには、メインデッキに《荒れ模様のストームドレイク》が採用されていた。正直なところ、我々は彼らを少し羨ましく思っていた。チームのリストでは、このカードをサイドボードに入れていたし、メインデッキに採用しようとも考えていたが、ミラーマッチがそれほど多くないだろうと思っていたので入れないことにしたのだ。
しかし、ほかのナドゥコンボに対しては間違いなく強力なカードであり、振り返ってみるとメインデッキにも入れておけばよかったと思う。
2枚 《召喚士の契約》、0枚 《邪悪鳴らし》
速度が重要なメタゲームを予想していたので、《召喚士の契約》を2枚採用してゲームを決める速度をより安定させた。しかし、ジェスカイコントロールのような妨害してくるデッキが多いメタゲームを予想するのであれば、代わりに《邪悪鳴らし》を採用することをオススメする。
サイドボード
ナドゥコンボのもう1つの強みは、強力なサイドカードを幅広く使えることだ。ほかのコンボデッキとは異なり、このデッキは多くのマッチアップでサイドボード後のほうが有利になる。《召喚の調べ》や《ウルザの物語》によって、サイドボードのカードに普通のデッキよりもアクセスできるため、それらをより有効に活用できるのだ。これらのチューター呪文は、特定のカードが有効なマッチアップにおいて非常に大きな影響を与えることが多い。
ではサイドボードについて、いくつか紹介しよう。
《陽光浄化者》
ボロスエネルギーに対する強力な対策カードで、相手はこのカードを対処するのに一苦労する。また、ナドゥコンボの天敵である《空の怒り》に対する解答でもある。《空の怒り》に対応して《召喚の調べ》から《陽光浄化者》をサーチすることで、その効果を大幅に下げることが可能だ(トークンや《ウルザの物語》は破壊されてしまうが)。
《時を解す者、テフェリー》+《夏の帳》
こちらを妨害しようとするすべてのデッキに対して本当に強力な2枚だ。
《ブレンタンの炉の世話人》
赤いデッキに対して単体で有効なカードであり、特に《過酷な指導者》を乗り越えてコンボを決めるために、《召喚の調べ》で持ってこれるクリーチャーとして有用だ。《春心のナントゥーコ》でコピーを作るのも楽しいだろう。
《ドラニスの判事》
ルビーストームに対するベストカードだ。このデッキでは《森を護る者》で守れるのでなおさら良い。この2枚がそろえば、ルビーストームにとってほぼ完全にロックされている状況に近い。
《苛立たしいガラクタ》
0マナの打ち消し呪文や想起エレメンタル、《魂の撃ち込み》のあるデッキに対して、《ウルザの物語》で持ってこれる優秀なカードだ。
最新リスト
プロツアーでのデッキリストには全体的に満足しているが、今後はいくつか変更を加えたいと思う。これが最新のリストだ。
ルビーストームがプロツアーで良い成績を残せず下火なので、「速度」の重要性は少し下がっている。そのため、《召喚士の契約》を抜いて強力なカードを1枚ずつ入れた。
《荒れ模様のストームドレイク》はミラーマッチを改善するためにあり、《苛立たしいガラクタ》は黒単ネクロやジェスカイコントロールに対して素晴らしいカードだ。《魂標ランタン》は《火の怒りのタイタン、フレージ》や《御霊の復讐》に対して役立つ。《陽光浄化者》は先ほど説明した通り、《空の怒り》を弱体化させてゲームに勝てるカードだ。
《呪文貫き》は1枚挿しするカードとしてとても好きで、リスト非公開のイベントであれば相手の不意を突くことができる。また、先ほど話した《破滅の終焉》も追加した。マジック・オンラインでは特に重要で、ループで勝とうとすると時間切れになってしまうので必要なのだ。
サイドボードには、ロングゲームになるマッチアップ用に《セヴィンの再利用》を採用した。ミラーマッチ用には《巻き添え》を2枚入れている。また最近では、トロンが《石の脳》をたくさん入れるようになり、黒単ネクロにも《屍呆症》や《不敬な教示者》をときどきプレイされるので、追放領域のカードをデッキに戻せる《裂け目掃き》を採用した。
《一つの指輪》も現在のメタゲームではそれほど優秀ではないので、サイドボードに移している。コントロールに対してはもちろん強いが、そのほかのデッキ相手には少し遅すぎる。
帝国の逆襲
ナドゥコンボの人気が高まるにつれて、対戦相手もこのデッキへの対策を練ってきている。そのため、相手がどのようにこちらを倒そうとしているのか、そしてそれに対して何ができるのかを知ることが重要だ。
最近は、アーキタイプの中でもデッキリストにばらつきがあるので、正確なサイドボーディングガイドをここで紹介するのはあまり現実的ではないだろう。その代わり、各マッチアップで何が重要か、また何に気をつけるべきかについて、基本的なポイントを教えよう。
黒単ネクロ
多くの人がナドゥにとって不利なマッチアップだろうと言っているのを聞いたが、そうとは思わない。プロツアーの結果を見ても、ナドゥコンボはこのマッチで有利である。
まず《ネクロドミナンス》でカードを引かせなければ、相手の動きはかなり悪くなる。これには《耐え抜くもの、母聖樹》が非常に有効で、エンチャントに対するインスタントスピードでの解答になり、土地なのでハンデスで抜くこともできない。
《一つの指輪》もやっかいだが、カードを大量に引くまでに時間がかかり、《機能不全ダニ》で簡単に止めることができる。
《苛立たしいガラクタ》はこのマッチでのMVPカードだ。先手で初手にあれば、1ターン目の《悲嘆》+《まだ死んでいない》を止められる。さらに《魂の撃ち込み》を封じることで、《ネクロドミナンス》でのドローの信頼性がかなり低くなる。《絶望の力》や《悪意の閃光》といった対ナドゥコンボ用のカードもシャットダウンすることが可能だ。
《夏の帳》は誰が見てもこのマッチで優秀なサイドカードだ。また《セヴィンの再利用》はハンデスに対して強い新たなツールである。《ネクロドミナンス》用に、少なくとも後手では《活性の力》を1枚サイドインすることも検討したい。
サイド後は基本的にコンボで勝つのがかなり難しいが、このデッキは間違いなく攻撃することでもゲームに勝利できる。たとえ相手を倒せなくても、攻撃によってライフを減らすことで、相手は《ネクロドミナンス》や《一つの指輪》を使いづらくなるので重要だ。
またこちらがコンボに重きを置いていないので、ゲームが長引く傾向にある。相手はアーティファクトや《ウルザの物語》を触れないため、《手甲》を1-2枚サイドアウトしても問題ない。ハンデスを使うデッキに対して、大事なコンボパーツを抜くのは直感的ではないと感じるかもしれないが、必要になればたいてい見つけられるだろう。また、相手が対策してくるのはアーティファクトではないし、何枚も《手甲》を引くのは嬉しくない。
ジェスカイコントロール
多くの1枚挿しされたカードがこのマッチで輝き、ゲームに劇的な変化をもたらしてくれる。
何度も言ったように、《陽光浄化者》は《空の怒り》への解答となり、《苛立たしいガラクタ》は《否定の力》や《緻密》を封じ込める。《火の怒りのタイタン、フレージ》には《魂標ランタン》、《一つの指輪》には《機能不全ダニ》が有効だ。《荒れ模様のストームドレイク》で《火の怒りのタイタン、フレージ》を奪えることもあるだろう!《呪文貫き》も刺されば、相手にとって壊滅的な打撃となる。
《ウルザの物語》は“祝福”でもあり“呪い”でもある。打ち消しされずにプレッシャーをかける手段であり、相手に対応を迫るカードだが、《空の怒り》に弱すぎるので1-2枚サイドアウトすることが多い。
個人的には《ウルザの物語》よりも《手甲》のほうが好みだ。コンボを始めるまで手札に持っておくことができ、展開しすぎて《空の怒り》で流されたり、《虹色の終焉》をケアすることができる。特にゲームが長引いた場合は、コンボを決めるターンにこっそりプレイできる軽さも良い。
これもまた《夏の帳》と《セヴィンの再利用》をサイドインするマッチアップだ。特に《夏の帳》は、《召喚の調べ》との相性が良いことを発見した。
よくあるパターンとして、相手が《対抗呪文》を構えながら《空の怒り》を唱えたとき、それに対応して《召喚の調べ》を唱え、相手が《対抗呪文》してきたのを《夏の帳》で弾けば、《陽光浄化者》により《空の怒り》を無力化することができる。これが決まると、相手にとってはその瞬間ゲームが終わってしまうほどの大打撃となる。
このマッチアップでの《変容する森林》は素晴らしく、打ち消されない《有翼の叡智、ナドゥ》として機能する。プロツアーの調整中、コントロール側でナドゥと対戦することが多かったのだが、手札に打ち消し呪文を複数抱えたままこのカードに何度もやられた。
ボロスエネルギー
ボロスエネルギーは『モダンホライゾン3』の強力なカードを多く採用しているが、ナドゥコンボと競り合うほど速くもなく、こちらを妨害するのが得意なわけでもない。《魂の導き手》は序盤から速いクロックを刻むのに役立つので、おそらく相手のベストカードだろう。しかし、一番問題なのはナドゥコンボへの妨害が足りていないことだ。ボロスエネルギーの妨害はほとんどが対象を取る除去なので、1ゲーム目では《森を護る者》が非常に効果的だ。
赤白系のデッキに対しては《血染めの月》に注意しよう。特に《ウルザの物語》は、《摩耗/損耗》にも弱いので数枚サイドアウトすべきだろう。できれば《摩耗/損耗》をケアして、エンチャントとアーティファクトを一緒に並べないようにしたい。相手が3マナ構えているときは、特に注意が必要だ。
ボロスエネルギー側の一般的な対策カードは《過酷な指導者》で、《ブレンタンの炉の世話人》や《荒れ模様のストームドレイク》《四肢切断》で対処することができる。
《過酷な指導者》に対しては、相手のターンでもインスタントタイミングでコンボを決めることが可能だ。《コーの先導》を起動し、《有翼の叡智、ナドゥ》の能力を誘発させ、《過酷な指導者》の能力が解決される前に、もう一度《コーの先導》を起動してこれを繰り返す。
最終的に《召喚の調べ》から《ブレンタンの炉の世話人》をサーチし、起動型能力によりスタックに積まれたすべての《過酷な指導者》のダメージを軽減することができる。ただこれを行うには、対象となるクリーチャーが尽きないように、あらかじめ《春心のナントゥーコ》をプレイしておく必要があるのに注意してほしい。
これはバーンや果敢デッキのような、《過酷な指導者》を使うほかのデッキに対しても有効だ。
ミラーマッチ
1ゲーム目はほとんど速度勝負であり、3ターンキルできる手札を求めて積極的にマリガンすべきだ。また後手時には、3ターンキルできる手札だとしても十分でない可能性が高いことも意識しておく必要がある。実際に引きたいカードは《機能不全ダニ》《耐え抜くもの、母聖樹》《荒れ模様のストームドレイク》だ。
腹立たしいことに、後手だと《荒れ模様のストームドレイク》をサーチしてくる暇はないだろうが、素引きすれば《有翼の叡智、ナドゥ》やほかの重要なクリーチャーを奪って勝てることもある。
サイド後はより妨害の多いゲームになる。《活性の力》と《巻き添え》は、後手でも勝利に貢献する素晴らしいサイドカードだ。これらのカードやほかの対策カードがあるということは、1ゲーム目よりも遅くて妨害耐性のある手札のほうが有利になるということだ。また対戦相手も《巻き添え》を採用している場合、《極楽鳥》は《有翼の叡智、ナドゥ》を守る手段として重要になる。
これもまた、マナを効率的に使えないとしても《手甲》を手札に温存しておきたいことが多いマッチアップだ。というのも、《活性の力》で破壊されるのは防ぎたい。《ウルザの物語》のみ、または《手甲》だけを破壊されるのはいいが、2枚とも吹き飛ばされるのは避けなければならない!
おわりに
ナドゥコンボは、現在モダンで使用可能なデッキの中で最も強力なデッキだ。「速度」「一貫性」「妨害耐性」の総合力はほかに並ぶものがなく、リーガルである限りプレイすることを強くオススメする。
ただ、このデッキが長く続かない可能性が高いことは認めなければならない。
対戦相手は対策カードを用意してくるが、どれもかなり乗り越えやすく、対策をかいくぐって勝利を目指す方法を考えるのはとても楽しい(少なくとも私は)。今では誰しもがナドゥコンボを知り、このデッキを倒そうとベストを尽くしている。今後は相手の妨害が増してやりがいのあるゲームになり、そこでの勝利はより達成感のあるものになるだろう。
マッティ・クイスマ (X)
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