グランプリ静岡の、終焉のとき。
否。
今まさに終わらんとする、その末期のとき。
既に撤収作業に入り始めた会場で、2人のシャッフルするカードの音だけが、響き渡っていた。
シールド部門から勝ち抜いてきた行弘。スタンダード部門を駆け抜けた松本。
2人だけが、残っていた。
2人だけが、戦っていた。
彼らのうちのどちらかが。このあまりに長かった三日間の、最後の勝者になるのだ。
だから。それはもはや儀式だった。
静謐で。純粋で。清浄で。
マジックという遊戯の、そう究極形と言ってもいいほどに。
神聖な、ひとときだった。
行弘か。
松本か。
今、これから。
それが決まる。
Game 1
先手の行弘が《アクロスの十字軍》を連打する立ち上がり。
対して松本、2枚目の《森》と見間違えて《高木の巨人》をセットしてしまう。
行弘 「それ違いますよ!w」
松本 「あっ。ちょっと緊張してしまって……w」
気を取り直して《ナイレアの存在》をプレイするが、返すターンに行弘が《タイタンの力》で『英雄的』を誘発させつつフルアタックすると、既に松本の残りライフは13。
後手3ターン目にようやく《雨雲のナイアード》をブロッカーに立てるが、これには《破壊的な享楽》が突き刺さる。
続けて《つややかな雄鹿》を出すも、《ミノタウルスの頭蓋断ち》が『速攻』で走ってくると、さすがにこれに対して相打ちに回らざるをえず。
脇から突き抜けた1/1たちのダメージにより、もはや松本の残りライフ、わずかに5。
それでも。
ここでようやく松本は5マナ目に到達した。
すなわち、先ほどうっかり手札から見せてしまった《高木の巨人》が、ついに降臨するときが来たのだ。
松本、意を決してフルタップで《高木の巨人》をキャスト!
……したのと、ほとんど同じタイミングで。
起死回生の《高木の巨人》が、松本の手から離れたまさにその刹那。
残りの手札2枚を勢いよく振りかぶった行弘が《マグマの噴流》《稲妻の一撃》を盤上に公開し。
同時に勝利も松本の手から離れたのだった。
行弘 1-0 松本
ここで、5~6枚ほどをスリーブから抜いてカードを入れ替える松本に対し、行弘が思わずツッコミを入れる一幕も。
行弘 「むちゃくちゃ入れ替えてるじゃないですかw」
松本 「あまりに(デッキが)早かったので……w」
Game 2
《菅草の蠍》に対し再び《アクロスの十字軍》スタートを切る行弘。だが松本はさらなる《菅草の蠍》を展開し、1ゲーム目のようにはいかないぞと言わんばかりに守りを固めにいく。
続くターンには《雨雲のナイアード》をも戦線に加えるが、行弘はただの《さまようもの》=1/1バニラであるはずの2体の《アクロスの十字軍》で果敢にアタックすると、これが警戒されてスルーされるやいなや、なおも《死呻きの略奪者》を追加する。
これに対し、《ナイレアの使者》で盤面を下支えしつつ《雨雲のナイアード》で果敢にダメージレースを挑もうとする松本だったが、依然行弘は意に介さず、《パーフォロスの試練》を《アクロスの十字軍》につけると、トークンを含め4体でフルアタック!!
たまらず《菅草の蠍》2体で1体ずつブロックしにいくと、行弘の手からは《統率の取れた突撃》が飛び出し、松本の防御に綻びが生まれ始める。
それでも松本、なおも《雨雲のナイアード》でアタックすると、《サテュロスの享楽者》をブロッカーとして用意。《ナイレアの使者》は健在であり、防御態勢は十分。そう思われた。
しかし。
行弘が乾坤一擲で組み上げた鬼の赤緑の底力は、こんなものではなかった。
満を持して行弘がキャストしたのは『速攻』持ち猛牛、《ミノタウルスの頭蓋断ち》!!
トークン含めた6体によるフルアタックにより、『試練』つきの《アクロスの十字軍》と《ミノタウルスの頭蓋断ち》が《ナイレアの使者》《サテュロスの享楽者》とそれぞれ相打つものの。
松本の場に残されたクリーチャーはついに《雨雲のナイアード》のみ。
何とか防御網を再構築したい松本だが、この局面でドローは《蒸気の精》。場に出しはするものの、行弘の攻勢を押しとどめるのには役立たない。
そして。そのときは訪れた。
《炎語りの達人》を展開した次のターン。
残り9の松本に対して行弘、再度のフルアタック!!
唯一のブロッカー、《雨雲のナイアード》がブロッカーに指定されたあと。
行弘が《マグマの噴流》を本体に打ち込み、『占術』で《炎語りの達人》の能力の誘発を示唆すると。
松本が、この三日間で最後の、
敗者となった。
行弘 2-0 松本
グランプリ静岡サイドイベント、スーパーサンデーシリーズ予選。
優勝は行弘 賢!!おめでとう!!