The Last Sunの最終戦。ここでは、1敗1分と2敗というラインで戦う二人のマッチをお届けしよう。
プロツアー「神々の軍勢」でのトップ8入賞をはじめとして、最近上り調子で売り出し中のプレイヤーである山本 賢太郎(埼玉)。そして、春夏2回のレガシー選手権を優勝し、先日のグランプリ・静岡でもトップ16に入賞と着実にトッププレイヤーへの階段を登っているプレイヤーだ。
この二人、リアルでの面識はあまり無いようだが、市川の所属がMagic Onlineであり、また、山本も日本で屈指のMOジャンキーであったため、オンラインではかなり面識があるようだ。
市川 「いやぁ、僕、MOPTQの決勝で山本さんに負けたことがあるからなぁ」
山本 「そんなこともありましたねぇ」
というように、二人はかなり仲良く雑談をしていたことを、ここで強くアピールしておきたい。
とにかく、電脳世界では有名プレイヤーであり、プロツアーシーズンの期は変わるものの、2013年シーズン、色々な意味でマジック界を賑わしてくれた二人であり、イケメン対決である。
なにより、このThe Last Sun開催に寄せて寄稿している、まさにこの大会を象徴するような二人のマッチを、一日目の最後にカバレージとして書けることを僕は誇りに思いたい。
それまで談笑していた二人だったが、ゲームが始まると、嘘のように勝負師の顔となった。
Game 1
ダイスロールで先手の市川は《Underground Sea》をセットしてターンを終了。対して、山本は《島》セットからの《定業》をプレイして、手札を充実させる。
これには負けじと市川は《霧深い雨林》をセットしてからの《渦まく知識》プレイ、そして、即《霧深い雨林》起動というレガシーではおなじみの行動でこちらも手札を充実させる。そして、《秘密を掘り下げる者》をプレイする。
山本は《沸騰する小湖》をセットして《定業》をプレイ。対する市川は《秘密を掘り下げる者》こそ変身しなかったものの、《タルモゴイフ》をさらに盤面に追加して、クロックを増加、《秘密を掘り下げる者》をレッドゾーンに送り込む。
山本は《Volcanic Island》をセットすると、さらに《沸騰する小湖》から《Volcanic Island》をサーチし、《水蓮の花びら》をプレイ。そして、大技の《実物提示教育》をプレイする。市川はこれに《Force of Will》を打つが、《水蓮の花びら》からの青マナで《呪文貫き》。
これを《目くらまし》で対処する市川だが、山本は《Force of Will》で対抗。だが、市川の手には2枚めの《目くらまし》があり、結果、この《実物提示教育》はカウンターされてしまう。市川は、《新緑の地下墓地》をセットすると、《秘密を掘り下げる者》と《タルモゴイフ》をレッドゾーンに送り込む。
返すターンに山本は《思案》をプレイし、山札のトップを確認するとシャッフル。ドローした上で、4枚めの土地となる《霧深い雨林》をセットする。
市川は、アップキープの《秘密を掘り下げる者》の誘発で山札トップを確認すると、《新緑の地下墓地》を起動して山札のトップをリフレッシュする。まだ変身しないままの《秘密を掘り下げる者》と《タルモゴイフ》をレッドゾーンに送り込む。
続く山本のターンにアクションはなく、またも《秘密を掘り下げる者》は変身しない。市川は2体をレッドゾーンに送り込むと、2体目の《タルモゴイフ》をプレイする。
ここで《実物提示教育》を引ければ逆転のチャンスもあった山本だったが、トップに恵まれず土地を片付けたのだった。
市川 1-0 山本
試合中は勝負師の顔だった二人も、サイドボーディング中には談笑をはじめた。
市川 「いやぁ、これ、人のデッキなんでサイドボーディングわからないんですよね」
山本 「《Force of Will》《目くらまし》《目くらまし》ですよね……もってるなぁ」
市川 「最初の《渦まく知識》で全部揃ってきたーって感じでしたよ」
山本 「っていうか、カナスレ(RUGデルバー)じゃないんですね」
市川 「いや、僕、マジックやる時、ストレスためたくなくて。《真の名の宿敵》ってカード、ストレスしかたまらないんですよ」
などという会話や、Magic Onlineについて語り合っている。
だが、サイドボーディングが終わり、シャッフルをはじめると、二人はまたも勝負師の顔になる。
Game 2
先手の山本がマリガン、対して、市川は初手をキープし、勝負師の顔をキープする。
続く6枚の手札をキープした山本は、《島》をセットした上で《水蓮の花びら》をプレイ。対して市川は《汚染された三角州》をセット。山本が《Volcanic Island》をセットしたターンエンドに能力起動し、《Underground Sea》をフェッチし《渦まく知識》をプレイする。
これがカウンターされず、手札を充実させた市川は《新緑の地下墓地》をセットして《秘密を掘り下げる者》をプレイ。さらに《新緑の地下墓地》で《Tropical Island》をフェッチして山札をリフレッシュすると《死儀礼のシャーマン》をプレイする。
手札は《騙し討ち》が2枚に《エムラクール》が2枚という状況から、4枚めのマナソースを引いてきた山本だったが、ここは《沸騰する小湖》をセットするのみでターンを返す。
相変わらず市川の《秘密を掘り下げる者》は変身せず、これをレッドゾーンに送り込む。ちなみに、市川は、土地を対戦相手側、クリーチャーを自分側に配置するタイプのプレイヤーなので、厳密にはレッドゾーンに送り込んでいないが、慣用表現としてここではレッドゾーンに送り込むと使わせていただく。
市川はさらに《渦まく知識》をプレイし、今度こそ《秘密を掘り下げる者》が変身できる体制を整えるとターンを終了する。
山本はフェッチを使用した上で《血染めの月》をプレイ。このプレイに市川は勝負師の顔となるが、対応して緑マナと黒マナを生み出しカウンターせず着地することを許可、ターンエンドに《ゴルガリの魔除け》でこれを破壊する。さらに、《秘密を掘り下げる者》を変身させる際に、手札に2枚めの《ゴルガリの魔除け》が入ることを山本に知らせる。
ついに変身した《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》がレッドゾーンに送り込まれる。市川はさらなる《死儀礼のシャーマン》をプレイするとターンを終了する。
山本は《渦まく知識》をプレイし、手札の重量級クリーチャーを山札に戻すと、そこで引き当てた《思案》で山札をシャッフルし、ドローしたカードが《実物提示教育》。《死儀礼のシャーマン》も含めると残りターンにかなり余裕のなくなってきている山本だが、ここは少考の末にターンを終了する。
市川は黒マナを2つ残して、《渦まく知識》をプレイ。《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》をレッドゾーンに送り込むと、《汚染された三角州》をプレイしてターンを終了。山本が2マナを残してプレイした《実物提示教育》に対して、勝負師の顔で《Force of Will》をプレイする。
自身のアップキープに《汚染された三角州》をプレイし、山札をリフレッシュすると、《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》をレッドゾーンに送り込む。
ここで《不毛の大地》がセットされると、残るターンで市川を倒すことは不可能と考え、山本は土地を片付けた。結局、山本のクリーチャーがレッドゾーンに送り込まれることは一度もなかったのだった。
市川 2-0 山本
対戦が終了したあとも、市川は飽くなき反省をする。
市川 「さすがに結構相性は良かったですね」
山本 「最後の手札って《ゴルガリの魔除け》あったんですか?」
市川 「いや、《実物提示教育》相手にはそこまで効くカードではないので、見せたあと、《渦まく知識》で山札に戻しましたよ」
前述の様に、《騙し討ち》を手札に2枚抱えていた山本にとって、《ゴルガリの魔除け》はかなりプレイに制限を与えていただろうと考えられるため、《ゴルガリの魔除け》を見せていたのは結果、かなり大きかっただろう。
山本 「まぁ、でも相性悪いですよね、《Hymn to Tourach》とかありますもんね」
市川 「そうですねぇ……」
飽くなき反省が終わり、山本が席をたつとき、市川に声をかける。
山本 「今度、飲みに行きましょうよ」
「前から誘ってみたかったんですよね」と語る山本。今後、二人が談笑する姿を見ることはさらに増えることだろう。そして、その瞬間に立ち会い、カバレージを書けたことを僕は誇りに思いたい。
山本が立ち去ったあと、市川はサイドボードプランなどについて、友人たちとさらに飽くなき反省を続ける。
飽くなき反省と言えば、プロツアーなどのビデオマッチでは、クリーチャーのアタックを明示するためにレッドゾーンに送り込むことがジャッジに要求され、市川の配置は矯正されることもあるので、ここにも飽くなき反省があればと個人的に思う。
なお、筆者はカバレージを書くのが苦手なので、市川のこちらの記事を参考にさせてもらえたことを付け加えて誇りに思わせていただきたい。