「帝王」の2つ名で知られ、2005年の世界王者や、2006年の日本選手権・The Finals連覇、数々のグランプリタイトルと華々しい戦績を持つ男、森 勝洋(東京)。
高いプレイングスキルとセンスを持つ森ではあるが、実際の所、いわゆる「練習の虫」であり、練習の積み重ねを無視しない独特のストイックさを持っていることは意外と知られていない。実際、森がタイトルをとった大会のほとんどは、森が自分自身でも満足するだけの練習をしている大会がほとんどだ。
グランプリ・静岡を前に、森はニコ生の放送を開始し、Magic Onlineでの自身の調整を公開していた。例えば、市川のような人気生主に比べれば視聴者数はまだまだ少ないものの、青タッチの黒単信心、「勝てる屋ブラック」でのプレイスキルとプレイ量は一部のマニアには好評で、例えば彌永 淳也(東京)などは、グランプリ・静岡で「本当は勝てる屋ブラックで出たかった」と語っていたほどだ。
それだけの練習量を積んでいたにも関わらずタイトルはおろか、トップ8入賞にも届かなかった森は、手応えがあっただけに非常に無念の思いだったようで、このThe Last Sunにかける意気込みにも並々ならぬものがあるようだ。
さて、そんな風に森が十分に手応えのある練習を積んで臨み、タイトルに結びついた大会として、2010年日本選手権がある。「世界一《ゴブリンの先達》でアタックしない」と言われる程に赤単のゲームプランを熟知して臨んだこの大会で、森は2回めの日本王者を獲得した。
だが、この2010年の日本選手権に、森と同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上の熱意と野心を持って臨んでいたプレイヤーがいた。
「シミックの王子」清水 直樹(東京)だ。
二人は準々決勝で対決し、森をして「練習で全然勝てなかった相性の相手」という君主バントで対決した清水だったが、ドローに恵まれなかったこともあり、敗北してしまった。
最近ではすっかり、DeckがAmbitionsじゃないとのウワサはあるものの、その胸の中のAmbitionsは衰えない清水は、このThe Last Sunに向けてもきっと練習を積んで望んできたのだろう。
当時は、共に大阪在住だった二人が、今度は共に東京在住として戦う。時の流れは二人のマッチアップにどのような変化をもたらすのか。
Game 1
後手の清水がマリガン。森は、1ターン目にセットした《変わり谷》で2ターン目からアタックを続ける。対して、清水は森の2ターン目エンドに《アゾリウスの魔除け》でドローした上で、3ターン目にはさらに《予言》でドローを進める。
このタップアウトの隙に《冒涜の悪魔》を召喚した森だったが、返して清水も《思考を築く者、ジェイス》をプレイ。-2能力で《変わり谷》を含む土地が3枚めくれ、結果清水は《変わり谷》を1枚だけ手札に加えることとなる。
ここで森は《思考囲い》をプレイ。開示された清水の手札、《スフィンクスの啓示》《解消》2枚《予知するスフィンクス》《思考を築く者、ジェイス》に《平地》《変わり谷》から、《スフィンクスの啓示》をディスカードさせる。
返すターンで清水は2枚めの《思考を築く者、ジェイス》をプレイ。再び-2能力が起動され、《拘留の宝球》《太陽の勇者、エルズペス》と土地というめくれから、今度は《拘留の宝球》1枚を清水は手に入れる。
返すターン、森はジェイスを無視して《冒涜の悪魔》で6点のダメージを本体に叩き込み、清水のライフは4。
そして、信心がちょうど4の《アスフォデルの灰色商人》が盤面に追加されると、清水は土地を片付ける。
森 1-0 清水
Game 2
先手を取った清水だったが、再びマリガン。だが、続く6枚の手札は充実したものだったようで、《変わり谷》をセットしつつ、森の《群れネズミ》を《中略》する立ち上がり。
さらに《予言》でマリガン分の枚数差を埋めにかかるのだが、森も《骨読み》をプレイして、差を付けさせない。
しかし、アドバンテージの塊である《思考を築く者、ジェイス》が着地、-2能力でめくられた3枚は《アゾリウスの魔除け》《今わの際》と《霊異種》に分けられ、清水は2枚の束を手に入れる。
《変わり谷》が引けていないため厳しい展開の森だったが、《思考を築く者、ジェイス》は《真髄の針》で対処する。続くターンに清水がセットランドでターンを終えてきたところで、《群れネズミ》をプレイし、これを通すことに成功する。
6枚目の土地をセットできなかった清水はターンを終え、そのターンエンドに森は《沼》をすてて《群れネズミ》の能力でコピートークンを生み出す。森はその2体のネズミを1体は《思考を築く者、ジェイス》に、そして1体は本体へとアタックさせる。そして土地を置くと6マナを残してターンを終了する。
このターンエンドに《スフィンクスの啓示》をX=2で打ってライフを20とした清水は、無事6枚目の土地をおきつつ《アゾリウスの魔鍵》を設置する。森は、清水のターンエンドにさらに《冒涜の悪魔》をディスカードして3体目のネズミを生み出す。
この3体の3/3が本体にアタックして9点のダメージを与えると、役目を終えただろうとばかりの清水の《至高の評決》によって盤面をリセットされる。
返すターン。森は《思考囲い》をプレイ。清水の手札は《太陽の勇者、エルズペス》《中略》《今わの際》《至高の評決》《予知するスフィンクス》《解消》とかなり強力なものであり、森も思わず「つえぇな……」とつぶやくほどだ。長考の末、森は《予知するスフィンクス》をディスカードさせるが、続くターンエンドに清水がX=5で《スフィンクスの啓示》を打つと、土地を片付けるのだった。
森 1-1 清水
2010年の日本選手権では、3本連取で敗北した清水ではあったが、ここで勝ち星をタイに戻し、最終戦が開始される。
Game 3
互いにマリガン無く、先手の森が2ターン目に《群れネズミ》をプレイしたところからゲームがスタート。森は2枚の《変わり谷》をセットしつつ、《群れネズミ》でのビートを決行しようとするが、ここは《拘留の宝球》でまったをかける清水。
対して、今度は《地下世界の人脈》をプレイしてアドバンテージ差をとりに行く森。だが、この《地下世界の人脈》には2枚めの《拘留の宝球》が。森は《骨読み》で更なる手札を求め、占術で見た2枚を下に送り込む。
そして、《思考囲い》。今度も《アゾリウスの魔鍵》《島》《太陽の勇者、エルズペス》《思考を築く者、ジェイス》《予知するスフィンクス》というカロリーが高めな中から、やはり《予知するスフィンクス》をディスカードさせる森。
《アゾリウスのギルド門》《アゾリウスの魔除け》と《思考を築く者、ジェイス》に分割され、清水は枚数の増える前者を手に入れ、そして《真髄の針》で《変わり谷》を指定する。
返すターン。森は、《強迫》をプレイ。この時点で清水の手札は知っている《アゾリウスの魔鍵》と《アゾリウスの魔除け》、そして《思考を築く者、ジェイス》なわけで、森は《思考を築く者、ジェイス》をディスカードさせる。
さらに《漸増爆弾》と《冒涜の悪魔》を追加する森。この悪魔は《アゾリウスの魔除け》でしのぐ清水は、さらに森の《地下世界の人脈》を《中略》でカウンターする。さらに《思考を築く者、ジェイス》で《アゾリウスの魔除け》を手に入れる清水だったが、《漸増爆弾》のカウンターが3になり、《拘留の宝球》に封印されていた《群れネズミ》と《地下世界の人脈》が森のコントロール下に復帰してしまう。
《アゾリウスの魔除け》や《予言》で必至に回答を模索する清水だったが、物量と膨れ上がるクロックへの対抗策はないのだった。
森 2-1 清水