Round 1: 宇田川 恒(埼玉) vs. 夏目 拓哉(山梨)

晴れる屋

By Yohei Araki



初戦は前回の龍王戦を優勝した夏目 拓哉と、第1回レガシー日本選手権準優勝の宇田川 恒という関東レガシー界巧者同士のマッチアップをお届けしよう。

宇田川はレガシー環境ではそこそこに使用者のいるアグロバントを使っての参戦。

日本選手権の時に使っていた発掘デッキはチームレガシーで0-3してしまった為に今回は使用を見送ったようだ。

対する夏目も、前回とは違うデッキを持ち込んできた様子。

「CTGがマーフォークに勝てないから、いっそのことマーフォークを使うことにしました」とは本人の弁。

夏目に言わせれば、相性は4-6くらいでアグロバントが不利のようだ。

「お2人は以前からのお知り合いなのでしょうか?」と聞く筆者に対し、「知り合いというわけではないんですけど、実は…」と宇田川が語りだしたのは因縁のエピソード。

なんと2人は6年前のGPT静岡の決勝で3byeを争いあった関係だという。

その時は夏目がbyeを獲得したらしいが…今回は果たして、どちらが笑うのか。

額面通りの相性のまま、夏目が宇田川を破るか。

それとも、相性差を覆し、宇田川が6年前のリベンジを果たすのか。

第1回戦から、波乱の予感である。



Game 1

《繁殖池》
《溢れかえる岸辺》
《貴族の教主》
《剣を鍬に》
《タルモゴイフ》
《思案》
《渦まく知識》

という絶好の初手をキープする宇田川に対し、先手ながらダブルマリガンの憂き目に遭ってしまう夏目。

いや、先手だからこそダブルマリガンは厳しいと言うべきなのかもしれない。

《島》から《呪い捕らえ》をキャストしてターンを返す夏目に対し、宇田川は開幕からいきなり悩みだす。

1ターン目のセットランドから悩むのもレガシーという環境ならではの展開であろう。

先ほどお伝えした宇田川の初手を想像してみると、如何に選択肢が多く、可能性に満ちた手札であるかがよくわかる。

結局、マナを伸ばすことを優先し、定石通りに宇田川は《貴族の教主》をプレイすることを選ぶ。

だがそうはさせまいと、夏目も必死だ。

《不毛の大地》で宇田川の土地を壊しつつ、更に《呪い捕らえ》を追加してエンド。

相手が相手なら悪夢のような展開であるのは間違いないのだが、《呪い捕らえ》はクリーチャー呪文に対しては無力であるため、夏目もそこを突かれると痛いところである。

案の定、宇田川が追加する《タルモゴイフ》に対して夏目は何もできずにいる。

ここで《Force of Will》を引けていれば展開は全く違っているのだが、そう上手くはいかないようだ。

この《タルモゴイフ》で戦況は一変することとなる。

マーフォークは基本的にサイズが小さいため、直接戦闘でサイズの大きい生物に敵う道理はないのだ。

例えば、同じマナ域で採用されているカードでも《銀エラの達人》《タルモゴイフ》を比べてみれば一目瞭然であろう。

そして夏目のライフは《貴族の教主》の賛美を一身に受けた《タルモゴイフ》のアタックにより16に減少。

まだ今なら出せる、いや、今でないと出せないと判断した夏目は《行き詰まり》をキャスト。

夏目の判断が正しかったのか、宇田川は気にせず動き、夏目に3ドローを与えてまでも自身の場を確立させることを優先させる。

宇田川は先ほどと同じく《タルモゴイフ》をレッドゾーンに送り出し、夏目のライフは9点にまで落ち込んでしまう。

手を止めず、プレイグラウンドに《聖遺の騎士》を追加する宇田川。

なんと、これもそのまま通ってしまう。

致命的なことに、夏目は3ドローを以ってしても《Force of Will》に辿り着いていないようだ。

こうなると場に出た生物に触れないーフォーク側はかなり辛い展開であると言わざるをえない。

自らの敗北を悟った夏目は、程なくして「次行きましょ、次」と、手早くカードを片付け出した。

夏目 「メインから水没でも入ってたら別だけど、メイン水没はキレていいレベルですね(笑)」

その水没が、夏目自身を苦しめるのは僅か数分後の話である。


宇田川 1-0 夏目



Game 2
 


今回は両者無事に7枚キープの後にゲームが始まる。

夏目は島を置くのみでターンを返すが、宇田川は先程と同じく《貴族の教主》からスタートを切る。

更に夏目は《銀エラの達人》を追加。

公開は珊瑚兜の司令官だが、夏目は土地が島と《不毛の大地》のみというオープンハンドをキープしてしまっている為に未だこれをプレイできずにいる。

宇田川は《不毛の大地》で夏目のマナを縛り、返す夏目も同じく《不毛の大地》で宇田川の土地を割る。

マナソースを巡っての非常にタイトな攻防戦である。

両者共に自身の展開よりも相手のマナを縛ることを優先しているのが見てとれるであろう。この環境でマナが如何に大事かということを、互いに熟知しているからこそである。

宇田川は一瞬、場が《貴族の教主》2体のみで土地が無いという状況になってしまうが、マーフォーク側のクロックが低い為にこれは決定打には至らず、ゲームは中盤戦へと突入してゆく。

順調に土地を引きこんだ宇田川は《タルモゴイフ》の2連打へと繋げていくが……夏目にしてみれば思うように土地が伸びず、しかも癌である《タルモゴイフ》をカウンターできないという踏んだり蹴ったりの展開である。

そればかりではない。

夏目の手札の中では2枚の《水没》が、ピッチによるプレイができずに腐っていたのだ。

あろうことか宇田川は中盤素で森を引いておらず(引いていた《Tropical Island》は先程《不毛の大地》によって割られてしまっている)、緑マナは《地平線の梢》によって供給されていた為に、夏目の手の中で今か今かと出番を待ちうける《水没》がプレイされることは永久に無かったのであった。

尤も、2枚ずつの《呪文貫き》《剣を鍬に》を擁する宇田川は盤石そのものであり、夏目がどう動いていたとしても宇田川の勝利は揺るぎないものであったということを付け加えておこう。

そして場の優位を保ったまま、《タルモゴイフ》が夏目に襲いかかり、ゲームの幕を閉じた。


宇田川 2-0 夏目


《水没》の件といい、夏目に運がなかったのは事実である。

だが、試合終了と同時に夏目と宇田川はそれ以外の部分でわずかでも勝利の目がなかったか、真剣に話を始めた。

その熱さときたら、筆者が口を挟むのを一瞬躊躇ってしまった程である。

何故2人が巧者たりえるのか、その理由を垣間見た気がした。