ここのところ、日本で急速にレガシー熱が上がり始めているのは周知の通りであり、第1回レガシー日本選手権が行われたのも記憶に新しい。
数多のプレイヤーの中にはレガシーしかプレイしないというプレイヤーも少なくないのだ。
本ラウンドはレガシーが好きで好きでたまらず、そして大会でよく会う顔見知り同士でもある、そんな2人の試合をお送りしようと思う。
ANTを駆る水田は完全なレガシープレイヤーであり、スタンダードはしばらく触ってすらいないとのこと。
対して、カウンターバーンを使う岩崎は1年ほど前まではスタンダードプレイヤーであったが、レガシーに移行してきたとのことだ。
どちらのプレイヤーからも、レガシーに対する愛は言うまでもなく充分伝わってくる。
ところで、レガシーといえば日本ではプレミアイベントがないことからもカジュアル色が強いフォーマットというイメージが強いかもしれない。
そこで、筆者は2人に尋ねてみた。
--「普段からレガシーの大会に参加されているということですが、いわゆるプレミアイベントには興味は無いんですか?」
水田 「PTQは何回か出た程度だから…」
岩崎 「あんまり興味わかないですね」
--「では、もし日本でレガシーのグランプリが行われるとしたら?参加したい気持ちはありますか?」
(二人同時に声を揃えて)「勿論!是非参加したいです!」
レガシー旋風は夢を夢のままに留めず、現実に変えるかもしれない。
少なくとも、それだけの力は持っているのだ。
Game 1
1本目は2人ともノーマリガンの中、和やかにスタートすることとなった。
水田が《師範の占い独楽》を置きつつターンを返せば、岩崎は《祖先の幻視》で応じる形に。
アップキープに《師範の占い独楽》を起動して《強迫》を見つけた水田であるが、手札がまだ整ってない為か直ぐには打たず、まだ温存することにしたようだ。
静かに土地を置き合う展開が続き、岩崎はコツコツ《ミシュラの工廠》でアタックを続ける。
やがて水田がライブラリーの上に《神秘の教示者》を見つけ、少し考え込む。
好機と判断したのか、水田は温存しておいた《強迫》をキャスト。しかし岩崎はスタックしての《ヴェンディリオン三人衆》で応える。
これにより公開された水田の手札は以下の4枚。
《苦悶の触手》
《水蓮の花びら》
《陰謀団の儀式》
《ライオンの瞳のダイアモンド》
小考の末、岩崎は《水蓮の花びら》をライブラリーの下に送ることに。
さて、続いて岩崎の手札が公開される。
これは《仕組まれた爆薬》の他には土地が2枚という味気ないもの。
当然、《仕組まれた爆薬》をディスカードさせたうえで《神秘の教示者》を解決し、トップに《むかつき》を積み込む水田である。
岩崎の手札にはもはや対抗手段は無いことは火を見るより明らかであり、返しで派手にストームを決めたいところであるが……それはライフが満タンならの話である。
《むかつき》からの大量ストームによる《苦悶の触手》を決めるには一定量のライフが必要であり、《ミシュラの工廠》のアタックが地味に効いているのを忘れてはならない。
そのうえ盤面には《ヴェンディリオン三人衆》まで追加されてしまったのだ。
少なくとも1回は確実にアタックを食らってしまう。
その1回が、今はあまりにもきつく思える。
そのうえ岩崎はトップから《噴出の稲妻》を引きこんで更にライフを減らしにかかり、水田にとっては泣きっ面に蜂状態。
やっと水田が《むかつき》をプレイできた時には、水田のライフは7まで減っていた。
一応めくってはみるものの、どう足掻いてもストームが足りないことを確信した水田は、次のゲームに進むことを認めた。
水田 0-1 岩崎
Game 2
再び先攻を手にした水田。
環境最強の呼び名も高いANTであるが、その速さもなかなかのものである。
ここで水田のオープンハンドをご覧頂こう。
《水蓮の花びら》
《水蓮の花びら》
《水晶鉱脈》
《Underground Sea》
《暗黒の儀式》
《思考囲い》
《むかつき》
見ているこちらがうっとりしてしまうような手札である。
何しろ、相手に妨害手段がなければ1ターンキルが発生してしまう。
わずか1ターンで勝利を手中に収めるなどということが、マジックというゲームで発生して良いのだろうか?
答えはYesである。
少なくとも、レガシーという環境においては、認められねばならない。
ところで、筆者はANTを環境最強というように表現した。
最強であればこそ、メタられるのは世の常である。
そのメタをくぐり抜けて勝ちあがるのもまたマジックの醍醐味である。
だが、而して夢は叶わなかった。
震えそうになる手を隠し、まずは落ち着いて《思考囲い》をプレイした水田であるが、これに対して飛んでくる《誤った指図》には水田も驚きを隠せない様子。
時間があれば、お手元の《思考囲い》のテキストを確認してみてほしい。
そこには確かにTarget playerの一文が記されているはずだ。
わずか1ターン目までにこれほど熱い攻防戦が行われるとは、さすがレガシーであると言わざるを得ない。
テンパイハンドを一瞬にして変えられてしまった水田はその後もたついている間に岩崎が引きこんでいた3枚の《対抗呪文》の壁を破ることができずに、地に膝を屈することとなった。
思わず「どないせえっちゅーんやー」と呟いてしまう水田の気持ちも、わからないでもない。
この手札に夢を託してしまう気持ちもまた然り、である。
だがifをいくら考えてみてもキリがない。
それもまたマジック、なのである。
水田 0-2 岩崎
余談ではあるが、岩崎は「へぎーおにいちゃん」という名前でDiaryNoteを書いていることで有名である。
こうしたBROGの有名人が上位に進出していることは、近頃のトーナメントシーンの特徴であるといえよう。
最後に、それぞれのデッキ選択理由を聞いてみた。
岩崎 「やはり愛ですかね……青系で《Volcanic Island》が一番安いので、自分が活躍してなんとしてでも値段を上げてやりたいです!」
水田 「以前何度かランドスティルを使って優勝してるんですけど、自分でANTを相手にした時に何をどうやって対処したらいいか、また相手がどうやって動いてくるのか全然わからんかったんですよ。だから自分で回してみたら少しは詳しくなるかなって」
どちらもベクトルは違えど、非常にポジティブな理由であり、好感が持てる。
2人の今後のさらなる活躍を、期待したいと思う。