USA Legacy Express vol.242 -新カード《変化の狂信者》が青黒リアニメイトを強化-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

今週末には『プレイヤーズコンベンション静岡2024』があり、そのなかで『Asia Eternal Weekend 2024』というレガシーとヴィンテージの大きな大会が開催されます。

日本国内で開催されるレガシーのテーブルトップイベントでは最大級です。とても楽しみですね!

さて、今回の連載では『Legacy Challenge』『第27期レガシー神挑戦者決定戦』『Legacy Super Qualifier』の大会入賞デッキについて紹介してまいります。

『Legacy Challenge 32』
新カードによって強化されたDimir Reanimator

開催日:2024年9月27日

優勝 Dimir Reanimator

準優勝 Grixis Control

3位 Doomsday

4位 Dimir Tempo

5位 Mono Red Prison

6位 Painter

7位 Reanimator

8位 Izzet Control

トップ8デッキリスト

『ダスクモーン:戦慄の館』(通常&統率者)が実装された週末に開催された『Legacy Challenge』。

今大会は筆者も参戦し、プレビュー段階から話題に挙がっていた《変化の狂信者》を試すべく、Dimir Reanimatorを使用。

ちなみに普段からDimir Reanimatorを使っていたわけではないため、今大会前に結果を残していたリストをコピーさせていただきました。

結果は……

予選ラウンド
Nadu Combo 〇〇
Cradle Control ✖〇〇
Eldrazi 〇〇
Painter 〇✖〇
Mono Black Reanimator 〇✖〇
Doomsday 〇〇

準々決勝
Izzet Wizards ✖〇〇

準決勝
Dimir Tempo 〇✖〇

決勝
Grixis Midrange 〇〇

なんと優勝することができました

そのほかの注目デッキとしては、《忌まわしき眼魔》《悪夢滅ぼし、魁渡》を採用したGrixis Controlが準優勝するなど、『ダスクモーン:戦慄の館』からの新カードが活躍しています。

Dimir Reanimator

以前から強かったDimir Reanimatorでしたが、《変化の狂信者》によってさらに強化されました。

《変化の狂信者》《渦まく知識》で「奇跡」を仕込むことができ、絆魂4/4という付加価値が付いたリアニメイトスペルとしてかなり優秀です。実際に使用してみて、プレビュー段階から評価されていた通りの強さを感じました。

☆注目ポイント

変化の狂信者渦まく知識Troll of Khazad-dûmEntomb

出たとき能力によって自分の墓地からクリーチャーをリアニメイトできる《変化の狂信者》は6マナと重いですが、「奇跡」によって2マナでプレイすることが可能です。レガシーには《渦まく知識》があるので、比較的容易に仕込むことができます。

また、奇跡の誘発に合わせて《カザド=ドゥームのトロール》をサイクリングしたり、《納墓》をプレイする動きも強力です。自身が絆魂持ちなのに加え、リアニメイトしたクリーチャーに絆魂を付与できる点にも注目で、《再活性》《思考囲い》で失ったライフを補填してくれます。とてもデッキにフィットしたカードですね。

これまで2マナのリアニメイトスペル枠だった《動く死体》の枚数を減らし、《変化の狂信者》を多く採用する構築が今後は増えるのではないでしょうか。

Psychic FrogArchon of CrueltyAtraxa, Grand Unifier

さて、新カードの活躍に目を奪われがちですが、このデッキの強さを支えているのはやはり《超能力蛙》です。《納墓》がないときでも《残虐の執政官》《偉大なる統一者、アトラクサ》を引き込んでから墓地に落とせる手段となり、攻撃しているだけでカードアドバンテージを稼ぐことができるなど、リアニメイトプランを封じられたときにも頼りになるクリーチャーです。

BarrowgoyfOrcish Bowmasters

墓地対策されるサイド後では、《納墓》を減らして《バロウゴイフ》《オークの弓使い》などを投入し、ミッドレンジプランをより濃くして戦います。

環境に変化があってもDimir Reanimatorがずっと強いのは、最強クリーチャーの《超能力蛙》を一番上手く活用できるデッキだからだと感じています。

『第27期レガシー神挑戦者決定戦』
カエル対エルドラージ軍団

開催日:2024年10月5日

優勝 Doomsday

準優勝 Eldrazi

トップ4 Mono Red Prison

トップ4 Dimir Reanimator

トップ8 The Spy

トップ8 Dimir Reanimator

トップ8 Mono Green Post

トップ8 Doomsday

トップ8デッキリスト

208名と多くのプレイヤーが参加したテーブルトップのレガシーイベント、『第27期レガシー神挑戦者決定戦』。

メタゲームブレイクダウンのデッキ分布表によると環境トップメタのDimir Reanimatorが全体の17%以上ものシェア率となり、プレイオフにも2名が進出するなど安定した成績を収めています。

そんななか、決勝まで勝ち上がったのはDoomsdayとEldraziでした。どちらも『モダンホライゾン3』の新カードによって大幅に強化されたアーキタイプになります。

Doomsday

Doomsdayはレガシーの定番コンボデッキですが、優勝したこちらのリストでは《知りたがりの学徒、タミヨウ》《超能力蛙》を採用し、テンポ寄りの構築となっております。

《悲嘆》が禁止になったことに加え、《超能力蛙》が流行っているおかげで《稲妻》の採用率が下がり、禁止改定前の環境よりさらに立ち位置が良くなりました。

☆注目ポイント

暗黒の儀式最後の審判魂の洞窟タッサの神託者

1ターン目に《暗黒の儀式》から《最後の審判》という動きは、どんなデッキにとっても脅威となります。

任意に選ぶ5枚の束(パイル)に《魂の洞窟》《タッサの神託者》を紛れ込ませれば、こちらの特殊勝利に対抗できるデッキはほとんどありません。

超能力蛙知りたがりの学徒、タミヨウEdge of AutumnStreet Wraith

また、このデッキもDimir Reanimatorと同様で、コンボ対策されたとしても《超能力蛙》《知りたがりの学徒、タミヨウ》がフェアな勝ち筋を見出してくれます

《渦まく知識》はもちろん、《秋の際》《通りの悪霊》といった0マナサイクリングのおかげで《タミヨウ》を変身させることも容易です。

BarrowgoyfMurktide Regent

サイド後は相手が除去を減らして《最後の審判》対策を厚くすることが予想されますので、軸をずらして《バロウゴイフ》《濁浪の執政》といったクリーチャーを追加するプランが有効となります。

Consign to MemoryGrafdigger's CageDark Betrayal

そのほかのサイドカードとして、エルドラージ対策に《記憶への放逐》、リアニメイト対策に《墓掘りの檻》が採用されています。

《闇の裏切り》は現環境において当てどころが多く《超能力蛙》《ネザーゴイフ》《バロウゴイフ》《カザド=ドゥームのトロール》《変化の狂信者》などを1マナで対処できる優秀な除去です。

Eldrazi

Eldraziは《エルドラージの寺院》《古えの墳墓》といった2マナランド、そしてエルドラージ呪文のコストを軽減させる《ウギンの目》によって強力なエルドラージ呪文を早いターンから唱えるデッキで、『モダンホライゾン3』の新カードによって大幅に強化されたデッキです。

Blood MoonHarbinger of the Seas

《血染めの月》《海の先駆け》が弱点となりますが、全体的に軽めの構成で、早期ターンからエルドラージ・落とし子・トークンを量産することも可能であるため、まったく耐性がないわけではありません。

☆注目ポイント

Sowing Mycospawn不毛の大地ウギンの目成長の揺り篭、ヤヴィマヤ

《まき散らす菌糸生物》はキッカーでプレイすることで相手の土地を破壊しつつ、状況に応じてデッキから有効な土地を探してこれる強力なエルドラージです。

《不毛の大地》で相手のマナを縛ったり、《ウギンの目》《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》を揃えたり、打ち消しのあるデッキ相手に《魂の洞窟》をサーチすることもできます。

2ターン目の《難題の予見者》に加え、早いターンから《まき散らす菌糸生物》を戦場に出す動きは、このデッキの強力なアクションです。

まばゆい肉掻きコジレックの命令

そして、『モダンホライゾン3』で最も強化されたポイントは《まばゆい肉掻き》《コジレックの命令》の加入です。《まばゆい肉掻き》は無色の呪文を唱えるたびにエルドラージ・落とし子・トークンを出すだけでなく、無色のクリーチャーが出るたびに対戦相手に1点のダメージを与えるという強力無比なダメージソースとなります。

《コジレックの命令》はフレキシブルなスペルで、モードを選んでドロー・追放除去・墓地追放ができるほか、エルドラージ・落とし子・トークンをX体生成できるモードが特に強力です。《まばゆい肉掻き》が複数いれば大ダメージとなりますし、《コジレックの命令》が複数枚あれば生成したエルドラージ・落とし子・トークンを生け贄に捧げて、さらに《コジレックの命令》を唱えるといった動きが可能です。

Faerie Macabre

サイドボードにはトップメタのDimir Reanimatorに対して強い《フェアリーの忌み者》が多く採用されています。マナを支払わずにインスタントタイミングで墓地追放ができ、スペルではないのでカウンターされることもありません。

『Legacy Super Qualifier』
レガシーでも《一つの指輪》が大活躍

開催日:2024年10月5日

優勝 Mono Red Prison

準優勝 Riddlesmith Combo

トップ4 Cradle Control

トップ4 Dimir Reanimator

トップ8 Mono Red Prison

トップ8 Eldrazi

トップ8 Cradle Control

トップ8 Dimir Reanimator

トップ8デッキリスト

地域チャンピオンシップ本戦出場の権利が得られる、MOの予選大会。トップメタのDimir ReanimatorやEldraziを制し、優勝したのはMono Red Prisonでした。

トップ16に3名が入賞するなど、Mono Red Prisonは今大会で高い勝率を残しています

Mono Red Prison

レガシーを代表する「2マナ土地デッキ」の一つで、マナ加速からの最速1ターン目に《血染めの月》をプレイすることで相手の動きを著しく制限することができます。Eldraziが猛威を振るう現レガシー環境でなかなか良い立ち位置のデッキです。

最近ではマナ加速をして《混沌の洞窟の冒険者》を叩きつける「イニシアチブストンピィ」のような動きを狙う構築も増えており、Mono Red Initiativeとして分類されることもあるデッキです。

☆注目ポイント

Pyrogoyf鏡割りの寓話

『モダンホライゾン3』統率者で登場した《パイロゴイフ》はこのデッキの主力クリーチャーです。ほかの「ルアゴイフ系」クリーチャーと同様に墓地のカードタイプによってサイズが変動するため、《苛立たしいガラクタ》のような能動的に墓地に送ることができるアーティファクトと相性が良く、戦場に出たときに与えられるダメージは《パイロゴイフ》が複数体並ぶことで誘発が増え、強力なダメージソースとなります。

《キキジキの鏡像》が着地した盤面では、コピー元としても《パイロゴイフ》は優秀です。

血染めの月Vexing BaubleChalice of the Void

さて、最近のMono Red Prisonにおける「プリズン要素」についてですが、妨害は《血染めの月》《苛立たしいガラクタ》のみに絞り、《虚空の杯》は不採用とする構築が増えております。

《意志の力》など0マナカウンターをシャットアウトするなら《苛立たしいガラクタ》の方が適しており、流行中のEldraziに対して《虚空の杯》がほぼ無力ということもあって、《虚空の杯》が有効となるケースが減りました。仮に採用するとしてもサイドボードに回ることになりそうです。

PyroblastFaerie MacabreFiery Confluence

そのほかのサイドボードとしては各種打ち消しと《超能力蛙》に強い《紅蓮破》、Reanimator対策に《フェアリーの忌み者》、フレキシブルに使えるスイーパーとして《焦熱の合流点》などが採用されています。《焦熱の合流点》は1枚でアーティファクトを最大3つまで破壊できるということもあり、《ウルザの物語》対策としても優秀です。

総括

変化の狂信者超能力蛙まき散らす菌糸生物

《変化の狂信者》の台頭は気になりますが、やはり《超能力蛙》の尋常ではない強さが際立ちます。Dimir Reanimator、Dimir Tempo、多色コントロール、そしてついにはコンボデッキのDoomsdayにまで採用され、結果を残しました。

この調子ですと、Doomsdayだけにとどまらず、環境の多くのアンフェアデッキに「テンポ寄りの戦略にシフトチェンジする選択肢」が生まれたと考えるべきかもしれません。

また、Dimir Reanimatorの次に高い勝率を誇っているのがEldraziですが、《超能力蛙》系デッキとEldraziを同時に攻略することは困難を極めるでしょう。

USA Legacy Express vol.242は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら