はじめに
こんにちは。晴れる屋メディアの紳さんです。
今週末はついに、『第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権』が開催されます!
今年のフォーマットは『ダスクモーン:戦慄の館』ブースタードラフト及び、スタンダード構築戦です。世界最高峰のマジックプレイヤーによる夢の競演を見届けましょう。
発表されたスタンダードのメタゲームはこのようになりました。トップメタはグルール果敢。順当な結果といえるでしょう。
使用者9名のティムール果敢はメタゲーム外のデッキです。調整チームの持ち込みデッキである可能性が高く、台風の目となるでしょうか。
《永劫の活力》と《渓間の洪水呼び》のシナジーを軸としたコンボデッキのようです。《永劫の活力》を活かして呪文をチェインさせる狙いはスプリッターコンボ(《嵐を断つ者》コンボ)と通じるものがありますが、《渓間の洪水呼び》を軸とすることでフェアなビートダウンプランでも勝てる構築になっているみたいですね。
《トーテンタンズの歌》は必殺の一撃で、生成されるネズミ・トークンは《渓間の洪水呼び》と相性がよく、全体強化で一気に勝負を決めることができるでしょう。
ディミーアミッドレンジも採用率が高く、完成度の高いリストとなっていることでしょう。
現スタンダード環境では最強のクロックパーミッションデッキで、瞬速のアタッカーとしてもドローエンジンとしても高性能の《永劫の好奇心》がこのデッキの強さを底上げしました。
世界選手権ではどんなデッキが勝ち上がるのでしょうか。とても楽しみです。
さて、それでは現スタンダード環境のおさらいを兼ねて、直近の大会入賞デッキをチェックしていきます。先週末はMOの大型イベントである『Standard Showcase Challenge』などが開催されました。
10/18(金)『Standard Showcase Challenge』
10/18(金)に開催された『Standard Showcase Challenge』には240名が参加しました。大会結果を確認していきましょう。
10/18(金)『Standard Showcase Challenge』
優勝 グルール果敢
準優勝 ゴルガリミッドレンジ
3位 ゴルガリミッドレンジ
4位 ゴルガリミッドレンジ
5位 白単
6位 アゾリウスコントロール
7位 ジェスカイ召集
8位 グルール果敢
トップメタであるグルール果敢とゴルガリミッドレンジの活躍が目立ちますね。ここではグルール果敢が優勝という結果になりました。
ゴルガリミッドレンジも準優勝含む3名がトップ8に入るなど、安定した成績を残しています。
グルール果敢
こちらが優勝したデッキのリストです。《多様な鼠》が4枚フル投入されていますが、アグロに寄せるよりもロングゲームに対応できる構築を目指すのが最近の流行型となります。
現スタンダードではこれらの赤いクリーチャーたちが大活躍中です。果敢や雄姿、呪文を唱えるたびにパワーが上がる能力など、強力なクリーチャーが揃っています。
少し前までは《残響の力線》や《裏の裏まで》を採用した、上振れ狙いの最速アグロ型が流行っていました。
強化した《騒音の悪獣》や《心火の英雄》を《無感情の売剣》の出来事面で投げ飛ばす動きで最速2ターンキルも狙える尖った構築だったのですが、どのデッキにも1マナのインスタント除去が採用されるなど、露骨にメタられた結果、現在は数を大幅に減らしています。
今回のリストでは《巨怪の怒り》や《弱者の力》など、厳選された強化呪文を少し採用する程度に収まっているようです。
また、最近では、《幽霊による庇護》などで果敢や雄姿を誘発させながら、除去や絆魂付与でアグロデッキを攻略するボロスオーラなるデッキも登場しています。
さて、今大会で優勝したグルール果敢は緑のカードを採用していますが、どういった強みがあるでしょうか。
《探索するドルイド》は出来事面で衝動的ドローを行い、息切れを防止します。自身も赤の呪文を唱えるたびに+1/+1が乗って強化されるため、ロングゲームにも強いクリーチャーです。
《亭主の才能》は毎ターン、手札を消費せずに雄姿を誘発させることができる便利なエンチャントです。中盤以降、マナがあまったらレベルを上げることでカウンターが置かれたパーマネントに護法を付与したり、パーマネントやプレイヤーに置かれるカウンターの数を2倍にする能力を得ます。サイド後は《ウラブラスクの溶鉱炉》とも相性が良いですね。
《蛇皮のヴェール》はクリーチャーを守りながら、果敢や雄姿を誘発させる優秀な1マナインスタントです。これで相手のピンポイント除去を弾くことができると、かなり勝利に近づきます。
サイドボード後は赤が苦手なエンチャント破壊ができるようになっています。白系デッキの《一時的封鎖》を破壊することが一番の狙いとなるでしょう。
ちなみに、クリーチャーを除去から守る動きやエンチャント破壊は白でも可能です。緑と手を組む一番のメリットは《探索するドルイド》によるアドバンテージの獲得と《亭主の才能》による継続的なクリーチャー強化ではないでしょうか。
特に現スタンダード環境は果敢系アグロデッキがトップメタということもあり、サイドボード後はどのデッキも対策カードを投入してくるため、ロングゲームを想定しなければなりません。
ボロスよりはグルールの方が継戦能力が高く、ミシュラランドの性能もグルールに軍配が上がりますね。
グルール果敢には「ブン回ったときのイージーウィン」と「ロングゲームになっても勝ちきれるデッキパワー」という2つの魅力があり、多くのプレイヤーがこのデッキを選択する理由となっているようです。
ゴルガリミッドレンジ
つづいて、こちらが準優勝したゴルガリミッドレンジのリストです。《大洞窟のコウモリ》が不採用であったり、一般的なゴルガリミッドレンジと比べるとコントロールよりのデッキ構成となっております。
ゴルガリミッドレンジの優秀なクリーチャーは最低限の採用で、《ギックスの命令》や《執念の徳目》といった終盤以降に強い重めのカードが採用されています。
ピーピングハンデスの枠には《残虐爪の強奪》を4枚採用。《大洞窟のコウモリ》は除去されたときに手札を取り返されることがネックですが、《残虐爪の強奪》であればそういった杞憂はありません。カードを捨てさせるのではなく追放する点も、墓地利用デッキが増えている現スタンダード環境では重宝するでしょう。
贈呈で相手のデッキのカードを奪える点も、粘り強く戦うこのデッキの方針に合っていますね。使っていて楽しそうなカードです。
《花粉の分析》は最近、株を上げつつある1枚です。序盤は1マナで基本土地をサーチするカードとして使い、終盤はクリーチャーを確定サーチするカードとして運用できます。
このカードを採用することで、デッキ全体の土地の枚数を減らすことが可能となっています。
ほかにもゴルガリミッドレンジにはバリエーションがあります。
最近では《止められぬ斬鬼》と《アクロゾズの放血者》の必殺パッケージを追加したり、あるいはデーモンシナジーを狙って《ドロスの魔神》や《不浄な別室/祭儀室》を採用する構築も見かけるようになりました。
安定性が魅力で、世界選手権でも一定の使用者がいることでしょう。どのような構築のゴルガリミッドレンジが登場するか楽しみです。
10/19(土)『Standard Challenge 32』
つづいて、10/19(土)に開催された『Standard Challenge 32』の結果です。68名が参加しました。
10/19(土)『Standard Challenge 32』
優勝 ゴルガリミッドレンジ
準優勝 アゾリウス眼魔
3位 グルール果敢
4位 ディミーアミッドレンジ
5位 セレズニアミッドレンジ
6位 グルール昂揚
7位 赤単
8位 グルール果敢
この大会ではコントロールやランプ、コンボといった重めのデッキは入賞できず、トップ8すべてがアグロ&ミッドレンジという結果に。
優勝は《ドロスの魔神》と《不浄な別室/祭儀室》を4枚ずつ採用したゴルガリミッドレンジでした。
ここでは準優勝のアゾリウス眼魔をピックアップしたいと思います。
アゾリウス眼魔
こちらがアゾリウス眼魔のリストです。もともとは「メンター」として活躍していたデッキに《忌まわしき眼魔》が加わり、《僧院の導師》がサイドボードに回りました。
墓地を肥やしながら《忌まわしき眼魔》や《傲慢なジン》を《救いの手》や《再稼働》でリアニメイトして戦います。
《眼魔》も《ジン》、どちらもフィニッシャーとしての性能が高く、リアニメイトにかかるマナが1~2マナと軽いことから除去や打ち消しを構えた状態で釣り上げることが可能です。
これらのカードは2マナで墓地を肥やしながら《救いの手》を探すことができます。手札に来てしまった《眼魔》や《ジン》は《航路の作成》で捨てるのがスムーズです。
とはいえ、《眼魔》と《ジン》は十分に通常キャストできる範囲のカードであり、手札で重なってもそこまで苦しくはなりません。
このデッキの強みはアクションの軽さで、うまく回れば3ターン目には、打ち消しや除去を構えながらフィニッシャーを戦場に出すことが可能です。
普段からクロックパーミッション系のデッキを使っている方は、肌になじみやすいと思います。
サイド後は相手が墓地対策をしてくることが予想されるため、墓地を使わずとも勝てるカードを投入することになりそうです。
クリーチャー以外の呪文を多く採用しているデッキのため、《僧院の導師》や《金属の徒党の種子鮫》が候補となるでしょう。
もし、世界選手権でこのアーキタイプが活躍するとしたら、さらなるアップデートが加わるかもしれません。
10/20(日)『Standard Challenge 32』
それでは最後に、10/20(日)に開催された『Standard Challenge 32』の結果です。64名が参加しました。
10/20(日)『Standard Challenge 32』
優勝 グルール果敢
準優勝 グルール果敢
3位 赤単
4位 白単
5位 ゴルガリミッドレンジ
6位 ゴルガリミッドレンジ
7位 グルール果敢
8位 ボロスオーラ
この大会でもアグロ&ミッドレンジが上位を独占することになりました。特にグルール果敢は優勝、準優勝と圧倒的なパフォーマンスを見せています。
ここでは赤系アグロデッキの対抗馬として期待がかかる白単に注目したいと思います。(今大会ではグルール果敢に敗れてはいますが。)
白単
4位に入賞した白単のリストです。
トークン戦略にドローとライフ回復要素が加わり、かなりディフェンシブな動きができます。やや除去コントロールよりのミッドレンジといったデッキです。
《失せろ》も強力ですが、《軍備放棄》をはじめとした追放除去をたくさん採用できるのが白単の強みといえるでしょう。
強化された《心火の英雄》を安全に処理できるほか、《苔森の戦慄騎士》や《止められぬ斬鬼》の復活を阻止したり、アゾリウス眼魔の再展開なども防ぐことができます。
現スタンダード環境では追放除去というだけで評価が上がりますね。
地味ながら、《お別れの突風》で自身の《跳ねる春、ベーザ》をブリンクするテクニックも見逃せません。
トップメタのグルール果敢やゴルガリミッドレンジに対して有利に戦えそうなデッキであるため、世界選手権でもそれなりに使用者がいそうです。
ただし、《完成化した精神、ジェイス》を採用したランプやコントロールデッキとは絶望的なマッチアップとなります。
今回のリストでは、青をタッチしてサイドから《完成化した精神、ジェイス》と《否認》を投入し、なんとか勝負できる形にしているようですね。
おわりに
今回、3つの大会の入賞デッキをチェックしていきましたが、グルール果敢とゴルガリミッドレンジの入賞率があまりにも高く、やや偏った結果となりました。
一方、世界選手権ではゴルガリミッドレンジの採用率はそこまで高くありません。使用者がゴルガリランプ(コントロール)の方へ流れている可能性もありますね。
現スタンダード環境には、今回紹介したデッキ以外にも有力なデッキがいくつかありますので、最後に少し紹介させていただきます。
かつてのトップメタ、ボロス召集(ジェスカイ召集)も一定数の使用者がいます。《画家の仕事場/汚された画廊》を獲得し、戦略の幅が広がりました。
《画家の仕事場》は衝動的ドロー、《汚された画廊》は攻撃クリーチャー全体に+1/+0修正を与えます。《戦導者の号令》よりもフレキシブルにプレイできる全体強化エンチャントですね。
《ドッペルギャング》をフィニッシュ手段に据えた新型の版図ランプもカードパワーでは負けません。
速度的にグルール果敢と渡り合えるかどうかが課題となります。版図ランプ側に策はあるでしょうか。
どんな大会になるかとても楽しみですね!激戦の様子はマジック公式YouTubeチャンネルで見ることができます。
来週の記事では世界選手権の結果を中心に、最新のメタゲームをお伝えします。それではまた!