はじめに
みなさんこんにちは。
11月はアメリカのピッツバーグで、12月はチェコのプラハで『Eternal Weekend 2024』が開催されます。現レガシー環境の総決算となるイベントとなるでしょう。とても楽しみですね!
さて、今月から『MTGO Creator Season』が始まっており、MOと有名クリエイターとのコラボイベントなども開催されています。
今回の連載は『MTGO Creator Season』関連のコラボイベント、『legacy Challenge ANZID Showdown』の結果を中心にお伝えしていきます。
『Legacy Challenge 32 AnziD Showdown – 2024/11/08 #1』 -コンボデッキの隆盛-
『Legacy Challenge 32 Anzid Showdown』シリーズは有名ストリーマーのanzidmtg(Twich / YouTube / X)とコラボしたチャレンジイベントです。
トップ8入賞者は『Eternal Legacy Showdown』へ招待されるため、予選大会の面もあるチャレンジイベントとなりました。
この大会ではMono Red Prisonが優勝、Mystic Forge Comboが準優勝という結果になっております。
デッキ紹介
Mystic Forge Combo
Mystic Forge Comboは《一つの指輪》が登場して以来、人気を獲得してきたアーティファクトデッキです。
《古えの墳墓》、《裏切り者の都》、《厳かなモノリス》&《通電式キー》などでマナ加速して、《一つの指輪》や《大いなる創造者、カーン》、《神秘の炉》といった強力なカードを高速展開します。
☆注目ポイント
従来のMystic Forge Comboは1-2ターン目に《神秘の炉》を設置することで速やかにゲームを終わらせる爆発的な展開が望める反面、打ち消しなどで妨害されるとあっさり負けてしまうなど、脆い部分がありました。
しかし、『指輪物語:中つ国の伝承』で《一つの指輪》を獲得したことで手札補充ができるようになり、妨害されても再度仕掛けることが可能なデッキへと進化しました。
さらに『モダンホライゾン3』で《苛立たしいガラクタ》という妨害札を手に入れたことで、《意志の力》 の魔の手から逃れ、強力な4マナ圏の呪文を通しやすくなっています。
《コジレックの命令》と《まばゆい肉掻き》もデッキを大幅に強化しました。《コジレックの命令》の存在は特に大きく、このデッキが苦手としていた除去とドローの役割を見事にこなし、さらに墓地追放のモードは現環境のトップメタであるDimir Reanimatorへの対抗手段として機能します。
《まばゆい肉掻き》は無色の呪文しか採用していないこのデッキにおいては最強のフィニッシャーとなり、《コジレックの命令》とのコンボはゲームを終わらせるほどの爆発的なダメージを叩き出します。
現在のMystic Forge Comboはトップメタとも互角に渡り合える強力なデッキといえるでしょう。
ただし、無色のエルドラージ以外は「アーティファクト単」ともいえるデッキです。《無のロッド》や《溶融》といったアーティファクト対策が刺さりますので、サイド後は注意が必要となります。
このデッキの強さは「環境的にどれほどアーティファクト対策がされているか」で変動するため、安定して高いパフォーマンスを発揮するタイプのデッキにはならなさそうです。
『Legacy Challenge 32 AnziD Showdown – 2024/11/08 #2』 -ANTの復権-
この大会のトップ8にはThe spy、ANT、Painter、Mystic Forgeなどコンボデッキが多く入賞しました。
デッキ紹介
ANT
ストーム系の高速コンボデッキといえばスピードに特化したTESがここ最近の主流でしたが、《炎の中の過去》を採用したANTも結果を残し始めています。
☆注目ポイント
《金属モックス》のようなマナ加速を少なめにする代わりにハンデスを多めに採用しており、ほかのコンボデッキや青いデッキに対して強い構成となっております。
ANTやTESにとって《記憶への放逐》はストームの誘発自体を打ち消されてしまうクリティカルな呪文です。現レガシー環境はEldraziとMystic Forge Comboが活躍している都合で《記憶への放逐》が多く採用されていますが、事前にハンデスすることで安全にコンボを決めることができるでしょう。
《夏の帳》を不採用のため《オークの弓使い》と《苛立たしいガラクタ》が弱点となりますが、遭遇する確率が高い《記憶への放逐》に対して強い構成であることが、このバージョンのANTを選択している理由だと考えられます。
サイドボードは《燃え立つ願い》のサーチ先となるカードで占められていますが、Dimir Reanimator対策として《フェアリーの忌み者》が3枚も採用されています。マナがかからず、インスタントタイミングでカウンターされずにリアニメイトを妨害できるのが強みとなります。
今回紹介したANTは《炎の中の過去》からストームカウントを稼ぐのが勝ち筋となるため、《鏡に願いを》は採用していません。TESよりも0マナアーティファクトの採用枚数が少なく、デッキ内のマナ総量も高いため、《むかつき》をプレイするときは残りライフに注意が必要です。
《深淵への覗き込み》は懐かしいカードですが、《燃え立つ願い》からサーチするスペルとして強力です。
『Legacy Challenge 32 AnziD Showdown – 2024/11/09』 -Sneak and Showの逆襲-
この大会もコンボデッキが複数入賞しましたが、特に目立ったのはトップ8に3名を送り込んだSneak and Showで、見事に優勝も果たしています。
デッキ紹介
Sneak and Show
Sneak and Showは現環境のトップメタであるDimir ReanimatorやDimir Tempoと相性が悪く、環境から姿を消していたデッキです。
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しかし、『Eternal weekend 2024 Asia』の影響によってMono Red Prisonが台頭し、状況は一変しました。Mono Red Prisonにとって一番不利なマッチアップとされるデッキがSneak and Showであり、現環境的にいい立ち位置にあります。
☆注目ポイント
マナ加速から《騙し討ち》や《実物提示教育》を高速でプレイし、《偉大なる統一者、アトラクサ》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》を踏み倒します。仕掛けるときに《意志の力》でバックアップできる点も強みです。
《実物提示教育》からは《全知》を戦場に出すこともでき、着地後は《引き裂かれし永劫、エムラクール》を「唱える」ことができるので、追加ターンでほぼ確実な勝利が狙えます。
どうしてもアクションが大ぶりなため、打ち消しは天敵です。《苛立たしいガラクタ》は《意志の力》や《目くらまし》を封じる優秀な対策カードで、「1マナの《防御の光網》」といえるほどの性能ですが、自分の《意志の力》も封じることになってしまいます。このリストでは《防御の光網》もサイドに1枚採用し、キーカードを通しやすくしているようです。
このデッキにも《一つの指輪》が採用されています。マナ加速から早い段階でプレイすることができ、コンボパーツやカウンターを手札に集めやすくする優秀なカードです。
サイドボードにはEldrazi対策の《月の大魔術師》《記憶への放逐》、アーティファクト対策兼ヘイトベアー対策の《兄弟仲の終焉》、Reanimator対策の《フェアリーの忌み者》、クリーチャー対策として《紅蓮地獄》《激情》などが採用されています。
『AnziD’s Eternal Legacy Showdown』 -The SpyがDimirの海を渡りきる-
開催日:2024年11月9日
優勝 The Spy
準優勝 Dimir Reanimator
3位 Dimir Tempo
4位 Dimir Tempo
5位 Dimir Tempo
7位 Dimir Tempo
8位 Eldrazi
この大会は先述した通り、『Legacy Challenge 32 AnziD Showdown』などMOの各種大会の結果をもとに241名が招待され、大盛況のなか開催されました。
さすがに招待制のイベントだけあって、上位はトップメタであるDimir ReanimatorやDimir Tempoが独占する結果となりましたが、優勝したのは高速コンボデッキのThe Spyで、Dimirデッキが猛威を振るうなかでの勝利となりました。
デッキ紹介
Dimir Tempo
一時期はDimir Reanimatorに押されていましたが、最近はコンボやMono Red Prisonなどが増加したため、それらに対して強く戦えるDimir Tempoもかなりいい立ち位置のデッキです。
こちらのサイトのデータによると、直近の対戦ではMono Red Prisonとのマッチアップでは勝率79%、Eldraziに対しても勝率59%を誇り、トップメタのDimir Reanimatorに対してもほぼイーブンと好成績を収めています。
現在、台頭しているMystic Forge Comboに対しても有利に戦えるデッキです。
☆注目ポイント
最先端の軽くて優秀なクリーチャーが揃い、これらを《目くらまし》や《不毛の大地》でバックアップしながらクロック・パーミッションを遂行します。
《古えの墳墓》や《裏切り者の都》など2マナ土地を採用するデッキが増えているため、《不毛の大地》の価値はとても高くなっています。
Reanimator対策としてメインから《虚無の呪文爆弾》が3枚と多めに採られています。キャントリップが付いているのでメインから無理なく使える墓地対策であり、アーティファクトカードなので《バロウゴイフ》の強化にも繋がりやすいという強みがあります。
成長した《バロウゴイフ》はあらゆるクリーチャーを戦闘で止めることができ、絆魂によってダメージレースでも優位に立てます。
追加のドローを咎める《オークの弓使い》は、《一つの指輪》を用いるあらゆるデッキに対して有効です。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》はほかの1マナクリーチャーと異なり、直接的な勝ち手段になりにくいためテンポデッキには合わないように思えます。しかし、安定してカードアドバンテージをもたらし、《渦まく知識》一発で強力なプレインズウォーカーに変身できるため、クリーチャー除去を多用するデッキとのマッチアップで軸をずらした戦い方を可能にします。
サイドボードにはEldrazi対策として《記憶への放逐》と《海の先駆け》を採用。《記憶への放逐》は《一つの指輪》対策にもなるため、サイドボードから抜けることは少ないでしょう。
赤系のデッキに刺さる《水流破》も3枚と多めに採用されており、Mono Red Prisonを意識していることが伺えます。
総括
有名ストリーマーのanzidmtgとMOのコラボは大いに盛り上がりました。
Dimir Reanimator / Tempoは変わらず人気があり、高い勝率を維持していますが、一時期に比べるとほかのデッキの勝率も上がってきており、支配率は少し下がっているように見受けられます。
Mono Red Prisonも好調ですが、それ以上にMono Red PrisonやMystic Forge Comboに対して優位に戦えるDimir Tempoが勝率を上げているようです。
Dimir ReanimatorとEldraziの2強環境と言われ続けたレガシーも変化しました。現在はMono Red Prison、Mystic Forge Combo、Naduに加え、復権してきたSneak and Showなどの活躍が見られ、かなりバランスが取れた環境という印象です。
来週末に開催されるEternal Weekendではどのようにメタゲームが動くのか要注目です。USA Legacy Express Vol.244は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!