はじめに
みなさん、こんにちは。
先週末はアメリカで『Eternal Weekend 2024』が開催されました。そのなかのイベントのひとつ『2024 NA Legacy Championship』は1150名ものプレイヤーが参加し、歴代でも最大規模のイベントとなりました。
今回の連載では、先週末に開催された『2024 NA Legacy Championship』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『2024 NA Legacy Championship』 -環境最高の《古えの墳墓》デッキ-
先週末にアメリカで『2024 NA Legacy Championship』が開催されました。参加者数はなんと1155名!
優勝したMystic Forge Comboは今大会で圧倒的な強さを見せ、多くのデッキが《無のロッド》や《溜め込み屋のアウフ》といった対策カードを採用している中で、複数の上位入賞者を出していました。
決勝戦でのNadu Comboとのマッチアップでは、Nadu側がトリプルマリガンしたものの、Mystic Forge Comboが《溜め込み屋のアウフ》を出された状態でも勝っており、対策カード1-2枚で止まるデッキではないことが分かります。
《超能力蛙》デッキはプレイオフにこそわずか1名だったものの、EsperやSultai Beansなども含めるとトップ32(スイスラウンド9-2以上の成績)に10名以上見られるなど、安定した成績を残していました。各デッキのマッチアップや勝率については、こちらのリンクを参考にしてみてください。
Mystic Forge Combo
Mystic Forge Comboは、現環境で活躍している《古えの墳墓》デッキのひとつになります。アーティファクトが中心に構成されたデッキなので「茶単」とも呼ばれているデッキで、《古えの墳墓》、《次元の結節点》+《ウルザの塔》、各種マナアーティファクトを利用して《大いなる創造者、カーン》《神秘の炉》《一つの指輪》といった強力なカードを高速展開していきます。
また『モダンホライゾン3』から《苛立たしいガラクタ》が登場したことで大幅に強化されました。今大会でも、Reanimatorに対して75パーセント以上の勝率を出しており、Dimir Tempoともイーブンと青いデッキに耐性が付いています。
☆注目ポイント
『モダンホライゾン3』統率者デッキから登場した《次元の結節点》によってデッキの安定性が向上しています。基本土地以外のすべての土地タイプを持つ《次元の結節点》が1枚あるだけで、トロンランドがそろったことになるため《ウルザの塔》と組み合わせることによって重い強力な無色スペルを素早くプレイできるようになります。
《苛立たしいガラクタ》のおかげで《意志の力》を採用したデッキに対しても、強力な4マナ圏のスペルが通りやすくなりました。また、このタイプのデッキに有効な《活性の力》もシャットアウトすることもできます。《ウルザの物語》でサーチすることも可能で、メインの0マナスペルが《水蓮の花びら》と《オパールのモックス》だけなので多くの場合相手にかかる制限のほうが大きくなります。
『指輪物語:中つ国の伝承』から《一つの指輪》を得たことによって、カードアドバンテージを稼げようになったのも青いデッキに強くなった理由になります。
無色のスペルのみを採用したこのデッキの《まばゆい肉掻き》は、優秀なフィニッシャーとして機能します。大量のマナが出るので《コジレックの命令》の1つ目のモードとのコンボでそのままゲームに勝つことも可能です。また《コジレックの命令》は、Nadu Comboなどがメインから採用している《溜め込み屋のアウフ》を含めた厄介なクリーチャーを除去することもできます。
今回のリストの注目ポイントは、サイドに3枚と多めに採用された《耐え抜くもの、母聖樹》です。多くのデッキがサイドボードに入れている《無のロッド》を含めた多くの厄介な置物を処理できます。
Nadu Combo
《有翼の叡智、ナドゥ》デッキはCephalid Breakfast型やミッドレンジ寄りのBant Naduなどいくつかバリエーションがありますが、準優勝したリストはElves要素をハイブリットしたものでした。
タフネス1のクリーチャーが中心だったElvesは、《オークの弓使い》が登場して以来しばらく環境から姿を消していました。エルフ・クリーチャーは《アロサウルス飼い》のみになっていますが、クリーチャーを複数並べて《ガイアの揺籃の地》から大量のマナを出し、《自然の秩序》から《孔蹄のビヒモス》をサーチしてゲームを決める動きは健在です。また、《アロサウルス飼い》のおかげで《意志の力》デッキに対しても耐性があります。
クリーチャーを複数枚並べるデッキなので《毒の濁流》などのスイーパーに弱くなりますが、現在はスイーパーを採用したデッキは少数であり、《空の怒り》などを使うコントロールが現環境では衰退していたこともこのデッキの勝因になります。
☆注目ポイント
《有翼の叡智、ナドゥ》は《オークの弓使い》を誘発させずにカードアドバンテージを得ることができます。ループを決める必要はなく、多くの場合毎ターン複数枚の追加のカードを加えるだけでも十分で、《ガイアの揺籃の地》が捲れれば多大なマナアドバンテージを得ることができます。
緑のクリーチャーを状況に応じてサーチできる《緑の太陽の頂点》があるので、メインから特定のマッチアップで強さを発揮するクリーチャーも複数採用されています。
《溜め込み屋のアウフ》は、今大会でも活躍していたMystic Forge Comboなどアーティファクトを中心としたデッキに刺さります。相手の追加のドローを制限する《トレストの使者、レオヴォルド》は、主に青いフェアデッキや青ベースのコンボデッキとのマッチアップで有用です。
サイドには除去の《剣を鍬に》のほかにも《記憶への放逐》や《活性の力》が多めに見られるなど、アーティファクトデッキを意識した構成になっています。
Painter
レガシーではお馴染みの《絵描きの召使い》+《丸砥石》コンボ。最近よく見られるようになった《アガサの魂の大釜》+《Phyrexian Devourer》のコンボも搭載されたバージョンが入賞していました。
メインから複数枚採用された《紅蓮破》《赤霊破》《苛立たしいガラクタ》や、サイドには《血染めの月》も採用されているのでDimir ReanimatorやDimir Tempo、Eldraziが活躍する現環境では良い立ち位置にあります。
☆注目ポイント
このデッキの《ウルザの物語》はアドバンテージを稼ぎつつ、コンボパーツである《丸砥石》や墓地対策の《除霊用掃除機》をサーチすることができます。相手にとってはコンボを警戒しつつ《ウルザの物語》の構築物・トークンを捌くのは容易ではなく、多くのフェアデッキとのマッチアップでゲームを優位に進めることができます。
《除霊用掃除機》はReanimatorだけでなく、Dimir Tempoの《濁浪の執政》の「探査」を妨害したり、《ネザーゴイフ》をサイズダウンさせたりと複数のマッチアップで活躍します。
《ケイオス・ディファイラー》を《ゴブリンの技師》でサーチし、《ゴブリンの溶接工》でリアニメイトして相手のパーマネントを複数除去する動きも強く、《ケイオス・ディファイラー》は単体でも5/4・トランプルというフィニッシャー級のスペックを持ちます。
《アガサの魂の大釜》はコンボ以外にも普通に墓地対策としても機能するため、墓地を使ったさまざまなデッキとのマッチアップで使えます。すでにメインから複数の墓地対策を搭載していますが、サイドには《虚空の力線》も積まれているなど対策が徹底しています。
《真髄の針》は現環境で有用なサイドカードの1枚で、Nadu Comboの《コーの遊牧民》や、Sneak and Showの《騙し討ち》、多くの《古えの墳墓》デッキで採用されている《一つの指輪》などを1マナで止めることができます。
Dimir Reanimator
現環境のトップメタであり、今大会でも最大勢力でトップ8ではわずか1名と上位では少なめでしたが、多くのデッキがメインから墓地対策を採用するなど対策が激しかったのにも関わらず、複数のプレイヤーがトップ32以内に入賞していました。
現在の青いデッキで《超能力蛙》を採用していないデッキを見つけるのは難しく、このカードを採用しているDimir ReanimatorとDimir Tempoは、今大会でも両方合わせて27パーセントを占めるなど驚異的な数字を出していました。
今大会で上位に複数入賞していたMystic Forge Comboには特に苦戦していたので、今後は《無のロッド》などサイドボードにアーティファクトデッキ対策を増やしたほうが良さそうです。
☆注目ポイント
メインは一般的なリストになります。統率者セットから登場した新戦力の《変化の狂信者》は、このデッキの主力のクリーチャーとして定着しています。
このクリーチャー自体がリアニメイトスペルとして機能し、単体でも4/4絆魂と高性能です。採用される枚数はプレイヤーによって異なり、初手に来てほしいカードでもないので、多くのリストは3-2枚の採用になっています。
現環境にはフェア、コンボ問わず厄介なクリーチャーが散見されるため、《致命的な一押し》や《厚かましい借り手》といった除去は必須です。サイドボードには追加の2枚の《致命的な一押し》や《厚かましい借り手》に加えて《喉首狙い》も採用されているなど、いろいろなクリーチャーに対応できるようになっています。
サイドボードは現在のメタに合わせた調整の跡が見られます。《無のロッド》はMystic Forge Comboが幅を利かせている現在では必須になります。今後は2枚以上サイドボードに採用することが推奨されます。ほかには、《超能力蛙》デッキに対して強いデッキであるPainter対策として《引き裂かれし永劫、エムラクール》も採用されています。
総括
《超能力蛙》デッキは対策が厳しい中、上位に複数見られました。上位の青いデッキのほとんどが《超能力蛙》か《有翼の叡智、ナドゥ》を軸にしたデッキで、逆にコントロールは《一つの指輪》を採用したエルドラージや《古えの墳墓》デッキが厳しいため、環境から姿を消しているのも気になるところです。
多くが《超能力蛙》の禁止を望むなかで、《古えの墳墓》デッキにメインから採用されている《苛立たしいガラクタ》も禁止にしたほうがいいという意見も散見されています。
『モダンホライゾン3』がリリースされた直後は、非青デッキでもコンボに対抗するための手段として評価されていた《苛立たしいガラクタ》ですが、コンボデッキに青いデッキを克服するための手段として使われるという結果になってしまっているのが現状です。
USA Legacy Express vol.245は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!