メタゲームブレイクダウン
コミュニティを揺るがした9月の禁止改定から早2か月。マジック史上、もっとも多くのプレイヤーに影響したともいえる禁止改定は、当然競技志向の統率者戦にも大きな衝撃だった。
禁止改定後初となる統率者神決定戦のメタゲームブレイクダウンをお届けする。
《眷者の神童、キナン》 (使用者9名)
《魔力の墓所》と《波止場の恐喝者》を失い、マナ加速の代名詞が再び緑のものとなった。禁止改定後、プレイヤーはマナ・クリーチャーと《ガイアの揺籃の地》を強く使える統率者に目を向けたのだ。
なかでも《眷者の神童、キナン》は禁止改定以前から活躍しており、相対的に強化されたといえる。《玄武岩のモノリス》との無限マナコンボが意識されがちだが、単純にマナクリーチャーから追加でマナが出る能力だけで無法のマナ加速を実現する。
《献身のドルイド》のクリーチャーではないコピーとして出る《機械神の肖像》とのコンボや、《潮吹きの暴君》コンボもそなえ、そうしたパーツを青のアーティファクト・サーチ、緑のクリーチャー・サーチでそろえることも可能だ。
本体の2マナという軽さも大きい。最序盤に繰り出すことで《激情の後見》を構えることができ、より速いデッキを牽制することもできる。
サンプルリスト
《トリトンの英雄、トラシオス》&《織り手のティムナ》 (使用者8名)
赤抜き4色の共闘デッキの台頭を見て《波止場の恐喝者》の退場を実感する。
《織り手のティムナ》の共闘といえば《ルーデヴィックの名作、クラム》という時代が長らく続いた。第9期統率者神である髙橋 龍司の愛機でもあったが、《波止場の恐喝者》《魔力の墓所》《宝石の睡蓮》が欠け、「スピード」と「4番手からまくりうる力」が減退した。今回の『挑戦者決定戦』でのティムナ&クラムの使用者は、わずか1人だ。
白の対話拒否、青の打ち消し、黒の万能サーチ、緑のクリーチャー・サーチ、そしてマナ加速。《トリトンの英雄、トラシオス》のおかげで構え損も起こりにくく、《織り手のティムナ》の能力で手札を整えていく。
コンボのパターンも実に多彩で、ありとあらゆる手段で勝利を狙うことができる。ティムナ&クラムが没落したいま、もっとも「丸い」選択肢のひとつといえるだろう。
《浄火の戦術家、デリーヴィー》 (使用者6名)
《浄火の戦術家、デリーヴィー》もまた、禁止改定以前から存在感のある統率者だ。《有翼の叡智、ナドゥ》を失ったが、繰り返し《ガイアの揺籃の地》や《フェイ庄の古老》をアンタップして膨大なマナを生み出すだけでなく、《放浪の吟遊詩人、イーサーン》や《出産の殻》、さらには《一つの指輪》をアンタップする無法も可能。
ここまで見てきた通り、青緑は非常に強力な組合せになっているが、そこに加えて《浄火の戦術家、デリーヴィー》は《一つの指輪》をもっとも強く使える統率者といえる。
サンプルリスト
色の分布
色 | 採用デッキ数 | 採用率 |
---|---|---|
55 | 39.29% (前回38.89%) | |
88 | 62.86% (前回69.05%) | |
75 | 53.57% (前回46.83%) | |
65 | 46.43% (前回56.00%) | |
66 | 47.14% (前回42.06%) | |
2 | 1.43% (前回1.59%) |
禁止改定前に開催された前回大会と比較して、もっとも大きな変化があったのは赤の使用率。前回の56.00%から大きく下落、半分を割って46.43%となった。
《波止場の恐喝者》は「赤なら必須」なのはもちろん、赤を使う理由になっていたカードだ。《捨て身の儀式》と同じマナコストで大量の宝物・トークンを得ることができた。クリーチャーなので《破滅の終焉》などで探したり、《祝福されたエミエル》でブリンク、《幻影の像》でコピー、《再活性》も可能だった。
総括
禁止改定後、はじめての開催となった『統率者神決定戦』。多くのプレイヤーが予測していた通り、《ガイアの揺籃の地》を擁した青緑系のデッキを選択したプレイヤーが多数となった。
《ガイアの揺籃の地》を探せる《輪作》を使用したプレイヤーは34名。それに加えて《まき散らす菌糸生物》を使用するプレイヤーもいた。唱えたときの誘発で《ガイアの揺籃の地》をアンタップ状態で出すことができ、実質フリースペルとして機能する場面もあり、そのうえマナに余裕があれば逆に対戦相手の《ガイアの揺籃の地》を追放することさえ可能なのだ。
今回は青緑のデッキの隆盛が目覚ましいものとなったが、メタゲームが固まったわけではない。DAY2進出者のデッキを見てみると、《浄火の戦術家、デリーヴィー》が1位通過しているものの、ほかには《魔力の墓所》と《宝石の睡蓮》を失って滅んだはずの《秘密売り、ティヴィット》が2名、《波止場の恐喝者》をもっとも強く使っていた《フェイに呪われた王、コルヴォルド》、ログラクフ系デッキ、さらには《厚顔の無法者、マグダ》など、禁止の影響を非常に強く受けたデッキが多数入賞している。
現環境の”解答”はまだ見つかっておらず、まだ見ぬ覇者が目覚めの時を待っているかもしれない。まずは明日のゲームに注目だ。
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