デッキテク:森山 真秀の「ド直球親和」 ~1日10リーグこなした漢の答え~

晴れる屋メディアチーム

始めはただ返してほしかった

先日の禁止改定を語るうえで、さけては通れないプレイヤーがいる。プロプレイヤーである森山 真秀の発言だ。

2020年1月13日の禁止制限告知にて《オパールのモックス》が禁止され、愛機であった親和を失いながらもプロプレイヤーであるが故にモダンをプレイせざるを得ない、森山の心中を察するに余りあるツイートである。

オパールのモックス

しかし、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは、マジックは森山を見捨てていなかった。このたび《オパールのモックス》がモダンへと復帰を果たしたのだ。こうなると注目されるは先のツイートにあった10リーグやりますという発言。1リーグ5マッチであるため、10リーグで50マッチ。1マッチ1時間計算でも50時間を要することになる。

いかに森山が紳士なプレイヤーなれど、流石に10リーグは不可能。ましてや禁止改定から『THE LAST SUN 2024』までの1週間に満たない期間では夢物語だと思われた。しかし、森山は男の中の男だった。

わずか1日での怒濤の10リーグ完走。成績こそ負け越したものの、宣言に違わず10リーグをこなしてみせた。しかもひとつのデッキに拘らず、さまざまなデッキの可能性を追いかけながらだった。

名前

1日で10リーグこなした男が行きついたデッキは一体なんだろうか。ひとりのプロプレイヤーであり、中村ジャパン(本人談)の森山 真秀がたどり着いた答えをご紹介しよう。

モダンの答えとは

──「今回森山さんが選択されたデッキは……」

デッキリストページ

オパールのモックス羽ばたき飛行機械メムナイト

森山「親和ですね」

──「《オパールのモックス》が禁止にされて以来、久しく見なかったデッキでしたが、改めて親和とはどんなデッキでしょうか」

電結の荒廃者頭蓋囲いきらきらするすべて

森山「簡単に説明しますとメイン最強、サイド後頑張れデッキですね。軽量クリーチャーを一気に多面展開するアグロデッキであり、それらを《電結の荒廃者》《頭蓋囲い》《きらきらするすべて》で打点を底上げしてオールインしていく。モダンでは珍しい、ド直球のビートダウンデッキです」

デッキの強み

──「デッキの強みとしてはどんな点があげられますか」

オパールのモックス羽ばたき飛行機械信号の邪魔者

森山「やはり解禁された《オパールのモックス》を絡めた爆発力は一番の魅力です。《羽ばたき飛行機械》《信号の邪魔者》を絡めてすぐに金属術を達成しますし、これらのクリーチャー自身が飛行や疑似的な回避能力をもっているため、《頭蓋囲い》の装備先としても適しています。序盤から大量のライフを削りやすいデッキです」

──「《オパールのモックス》を得て親和は復権しましたか」

教議会の座席囁きの大霊堂大焼炉

森山「正直なところ、トップメタに復権とはいきませんでした。親和よりもほかのデッキが強く、物足りない感があります。復活の兆しこそあるものの、ほかのデッキから強く意識された今ではありませんし、《オパールのモックス》だけでは不十分ですね。《教議会の座席》などのアンタップ状態で戦場へ出てくるアーティファクト土地を返してほしいくらいです」

森山《溶融》のような強烈な対策カードがある分だけ、もう少しデッキパワーの底上げがほしいところです。せめて《オパールのモックス》に破壊不能を付与してほしいですね」

デッキリストの変化と工夫

──「では、現在の親和が得たカード、かつてなかった強みはありますか」

ウルザの物語構築物トークン影槍

森山一番は《ウルザの物語》でしょう。これ1枚で《石のような静寂》を乗り越えられるボードを作ってくれます。場持ちの良いクロックのみならず、サーチ先には《影槍》が用意してあるためダメージの貫通力も増しています」

デッキ選択の理由

──「デッキパワーで劣ると語りながらも、このデッキを選択した理由を教えてください」

電結の荒廃者オパールのモックス

森山「一言でいうなら、愛ですね愛。親和と《オパールのモックス》への愛です」

──「愛とは、意外な答えですね。」

森山「初めてモダンのデッキを組んだ時が2017年だったと思うんですが、親和だったんです。自分にとって思い出深いデッキなんですよ」

──「森山さんは実際に10リーグ完走され、その上で愛からの選択とおっしゃいましたが、親和といえば鱗親和や《河童の砲手》入りのタイプなどさまざまな構築があります。その中から《感電破》まで採用したド直球な親和を選択した理由はなんでしょうか」

硬化した鱗河童の砲手

森山「10リーグこなしてみて、鱗親和や《河童の砲手》入り親和がMOで結果を残していましたが、自分的に感触がよくなかったのが全てです。《溶融》《石のような静寂》などどれも対策カードが致命的でしたし。《硬化した鱗》《河童の砲手》を諦めるかたちで模索したところ、対策カードを引かれる前に削りきるド直球型へと原点回帰しました。親和は速さこそがすべてだと」

溶融

森山「また10リーグこなすなかで、今までいかにエネルギーに支配されていたかを感じました。そのくらいいろんなデッキやカードに触れましたね。ほかのデッキに触れればふれた分だけ、親和の脆さやデッキパワーでの見劣りがわかってしまって。正直、現段階では親和よりも周囲のデッキパワーのほうが高いです。《溶融》は禁止にしましょう。全親和使い共通の願いです。でも《オパールのモックス》自体は強く、今後親和が使わていく内に構築が最適化されるはずですし、メタゲームの隙をつければ勝てるはずです」

主要なデッキとの相性

──「今回のメタゲームブレイクダウンの上位デッキとの相性を教えてください。まずはディミーア眼魔からお願いします」

忌まわしき眼魔溶融

森山「ディミーア眼魔はタッチ赤かどうかが焦点ですね。《溶融》が採用されていれば不利ですし、純正2色ならば《ウルザの物語》などで有利……いや五分です」

──「ボロスエネルギーはいかがでしょうか」

溶融石のような静寂

森山明確に不利です。《溶融》《石のような静寂》と方向性の異なる2種類の対策カードを乗り越えるのは厳しいの一言に尽きます。正直デッキパワー不足を感じます。対策カードへの対策として《頑固な否認》とその5枚目として《白鳥の歌》を採用しています」

頑固な否認湖に潜む者、エムリー実験の狂乱

森山「また、ボードに頼らないリソース源として《湖に潜む者、エムリー》《実験の狂乱》《溶融》に対抗しています」

──「では、速度に傾倒したストームはどうでしょう」

頑固な否認

森山「メインボードは全速力、サイドボードは《頑固な否認》を引ききり、序盤からダメージを伸ばせるかにかかっています。お互いが全力で殴り合うため、《オパールのモックス》が絡まないと厳しいマッチアップです。先手で《オパールのモックス》があれば勝てるチャンスはあるかなと」

──「最後に土地コンボについてもお願いします」

全ては塵精力の護符

森山「エルドラージトロンは有利ですね。全体除去である《全ては塵》は効かないですし、妨害手段が乏しいためです。その一方で同じ土地コンボでありながら、アミュレットは速度面で厳しい勝負となります。ストームと近い相性ですね」

──「解説いただいた以外に悩んだマッチやカードはありますか」

真髄の針

森山「サイドボードで唯一悩んだカードとしては、《真髄の針》があげられます。ベルチャーを読んで入れるか迷いましたが、結局汎用性の高い打ち消し呪文に頼り採用は見送りました。ベルチャーはコンボの始動ターンが決まっているため、構えやすく、比較的やりやすいコンボになります」

親和の未来

名前

森山は親和の解説をしながら、そのデッキパワー不足も隠さずに語ってくれた。それは『モダンホライゾン』というモダンを大幅に強化したエキスパンションの登場と、過去の栄光に引きずられ過剰にメタられてしまった結果である。

10リーグの果てに彼のデッキ選択の先には愛があった。愛であるが故に、その立ち位置やデッキパワー不足についても明言してくれたわけだ。

デッキパワー不足と語りながらもインタビュー時点ではモダンラウンドを2連勝中と、絶好調の模様である。その愛の深さは『THE LAST SUN 2024』の頂点まで届くのだろうか。

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