デッキテク:奥野 篤哉の「ヨーグモス医院」 ~強化されたサーチ戦略~

晴れる屋メディアチーム

解禁カード最後の1枚

今大会のデッキテクでは、2024年12月16日の禁止制限告知で解禁されたカードにスポットライトをあててきた。

信仰無き物あさりオパールのモックス欠片の双子

以下の記事では、それぞれ《信仰無き物あさり》《オパールのモックス》《欠片の双子》を使用した戦略を紹介している。

緑の太陽の頂点

残る1枚である《緑の太陽の頂点》を採用したデッキを探していると、スイスラウンド終了を前に、早くもトップ8入りを確定したプレイヤーが現れたようだった。初日全勝としてスタンダードデッキテクでも取り上げた奥野 篤哉そのひとだ。

奥野 篤哉

奥野 篤哉がモダンで選択したデッキこそクリーチャー主体のコンボデッキ、ヨーグモス医院である。このデッキを代表するサーチ呪文としては《召喚の調べ》があげられるが、奥野はさらに解禁されたばかりの《緑の太陽の頂点》を採用しているのだ。2種類目のサーチ呪文を得てデッキはどう強化されたのだろうか。

今回は《緑の太陽の頂点》を獲得した、新たなヨーグモス医院の手の内を解説していただいた。

ヨーグモス医院とは

デッキリストページ

──「ヨーグモス医院とはどんなデッキでしょうか」

スランの医師、ヨーグモス若き狼若き狼

奥野《スランの医師、ヨーグモス》《若き狼》で-1/-1カウンターをばらまき、カードアドバンテージを稼ぎながら同時にボードをコントロールしていくのがメジャーな戦略です。仮に《若き狼》が2枚いれば片方を起動型能力のコストにあて、『不死』による+1/+1カウンターと-1/-1カウンターを相殺することでこの工程を繰り返せます」

──「確かにその3枚のカードでライフの続く限りドローできますね。やはりそのコンボを狙っていくわけですね」

スランの医師、ヨーグモス召喚の調べ

奥野「いえ、あくまでもメジャーな戦略であって、ほかにもさまざまな攻め方があるデッキなんです。個人的には《スランの医師、ヨーグモス》は絶対的なフィニッシャーとして出したい。ここでいう絶対的とは勝ち確定であり、不確定な要素を極力排除した状況です。一見すると《若き狼》がいればドローが進み有利になるように思えますが、意外と土地ばかりでライフを損しただけなんてこともあるんです」

奥野「あくまでも確実にコンボが決まるタイミングでプレイするのが《スランの医師、ヨーグモス》の役割であり、手札に溜めたくないため3枚しか採用していません。何かしらの前方確認を経て、《スランの医師、ヨーグモス》は万全の状態でたたきつけたいカードなんです。相手が大きく動いたタイミングや隙の少ない《召喚の調べ》経由で戦場へ出し、そこからドローやボードコントロールします」

──「そこまで慎重にプレイしたいカードなんですね。てっきり《スランの医師、ヨーグモス》を使用したコンボを積極的に狙っていくものと思っていました」

アガサの魂の大釜

奥野《スランの医師、ヨーグモス》は表の主役なんですが、このデッキにはもう1枚の主役、裏の主役というべきカードがあります。それこそが《アガサの魂の大釜》で2マナと軽く、インスタントタイミングで起動できる墓地対策として機能する受けのカードでありながら、このデッキではフィニッシャーにもなるのです」

──「え!?《アガサの魂の大釜》がフィニッシャーに!?」

《アガサの魂の大釜》プラン1

若き狼裕福な亭主血の芸術家
アガサの魂の大釜歩行バリスタ

奥野《スランの医師、ヨーグモス》を使ったコンボが派手で印象的な分、《アガサの魂の大釜》経由のコンボについてはバレていない感があります。例えば場に《アガサの魂の大釜》《若き狼》《裕福な亭主》《血の芸術家》、墓地に《歩行バリスタ》がいる状況とします」

アガサの魂の大釜歩行バリスタ若き狼

奥野「まず《アガサの魂の大釜》《歩行バリスタ》を追放し、《若き狼》へと+1/+1カウンターを置き、その後《歩行バリスタ》の起動型能力で自身へとダメージを打ち込んでみましょう。するとあら不思議。『不死』により《若き狼》が+1/+1カウンターを置かれた状態で戻ってきます

──「つまり、先ほどと同じ状況!?」

裕福な亭主血の芸術家

奥野「この過程を無限に繰り返すことで《裕福な亭主》がいれば無限ライフ《血の芸術家》がいれば無限ドレインによる勝利手段となるわけです。戦場へ並べるクリーチャーの枚数が大い分、《アガサの魂の大釜》の起動1回、つまり設置直後に勝てるパターンです」

《アガサの魂の大釜》プラン2

──「ほかにも《アガサの魂の大釜》を絡めたパターンはありますか」

アガサの魂の大釜歩行バリスタ根の壁若き狼

奥野《アガサの魂の大釜》《歩行バリスタ》《根の壁》を追放してあれば、戦場に《若き狼》単体でもコンボが成立します。はじめに《アガサの魂の大釜》《若き狼》へと+1/+1カウンターを置き、《根の壁》の起動型能力で-0/-1カウンターを置き緑マナを生成します。その後に《歩行バリスタ》の能力を対戦相手を対象に起動すれば、《若き狼》は状況起因効果で墓地へいき『不死』で戦場へと戻ってきます」

──「対戦相手に1点ダメージをあたえ緑マナを得ながら、戦場は最初と同じ状況に!?」

奥野《アガサの魂の大釜》で2種類のカードを追放する必要があるため、プレイからコンボ完成まで2ターン以上要しますが、戦場には《若き狼》単体で成立するのは利点です」

コンボの前にダメージレースを

──「どのタイミングでコンボを仕掛けるのでしょうか」

飢餓の潮流、グリスト忍耐オークの弓使い

奥野「戦場にクリーチャーを並べてライフを攻めながら隙を伺い、相手が我慢しきれず動いたところを《スランの医師、ヨーグモス》で狙います。それまでは《飢餓の潮流、グリスト》《忍耐》《オークの弓使い》で細かくライフを詰めていきます。ゆったりと攻めながら、相手が攻め返そうと動いたりフィニッシュの動きにあわせて、最終手段のコンボへと移行するわけです」

──「お話しをお伺いする限り、クリーチャーデッキでありながらかなりゲームレンジをコントロールできる器用なデッキですね」

奥野「そうなんです。時として相手の手札に何もないことを祈り、コンボへと一直線に進む速度勝負することもありますが、基本は小型のビートダウンにプラスアルファでコンボがパッケージングされていると考えてもらえるとありがたいですね。マッチアップにあわせて変幻自在にゲームレンジをコントロールしていきます」

デッキ選択の理由

──「このデッキの選択理由を教えてください」

奥野 篤哉

奥野「『モダンホライゾン3』発売前から使用していた知見があったためですね。今回の禁止改定から『THE LAST SUN 2024』まで調整時間が短く、使い込んでいたデッキをアップデートし手に取ったかたちです」

──「昔取った杵柄というわけですね」

2種類のサーチカードの用途の違い

──「《召喚の調べ》に加えて、新しくリーガルとなった《緑の太陽の頂点》の感触はいかがでしょうか」

緑の太陽の頂点召喚の調べ

奥野「悪くはない程度であり、決して《召喚の調べ》を越えるほどではありません。色指定の縛りやインスタントとソーサリーの違いなどありますし。代わりに序盤の安定性を確保できるようになったのは魅力です。

奥野《召喚の調べ》ではもったいなくてマナクリーチャーなどサーチして序盤の動きを整えることはできませんが、使いまわせる《緑の太陽の頂点》ならば気軽に使えます。《召喚の調べ》を強く使うための下準備をするカードですね」

緑の太陽の頂点喜ぶハーフリングドライアドの東屋

奥野《喜ぶハーフリング》に加えてサーチ先の《ドライアドの東屋》を含めて実質7枚のマナ加速先を確保できた計算になります。《オークの弓使い》の蔓延るモダンにおいて、タフネス1はなるべく採用したくない、しかし1マナ域が少なすぎると出足が遅れる。このジレンマを解消してくれたのが、《緑の太陽の頂点》です。おかげさまで無駄なマナクリーチャーを増やさずに1マナ域を確保でき、安定した構築になっています」

若き狼裕福な亭主

奥野「また、コンボ絡みでは最後に《若き狼》《裕福な亭主》をサーチすることになります」

召喚の調べ

奥野《召喚の調べ》はついつい《スランの医師、ヨーグモス》をサーチしたくなるかもしれませんが、冒頭でも述べた通り、絶対的なフィニッシャーとなる状況が最適です。逆にX=0で《歩行バリスタ》を墓地へ送り込んでおくことで《アガサの魂の大釜》とのコンボが成立しやすくなります。ライフを気にせず、対応を求めるわけです」

邪悪鳴らしアガサの魂の大釜

奥野「それとサーチではありませんが、ゲームメイクするうえでは《邪悪鳴らし》も重要な存在です。このカードと《緑の太陽の頂点》で4枚目をどちらにするか迷ったんですが、ここまでお伝えした通り、自分は《アガサの魂の大釜》を使った受けから攻めへと転じられるプランがスマートだと思っていまして。そこで切削次第ではコンボパーツを墓地へと送りつつ《アガサの魂の大釜》へとアクセスできる《邪悪鳴らし》を優先的に採用し4枚としました」

《緑の太陽の頂点》と共に

緑の太陽の頂点

奥野が持ち込んだヨーグモス医院は《緑の太陽の頂点》により序盤の安定性が上がり、《召喚の調べ》もこれまで以上に強く使えるように構築されていた。ダメージレースをしかけながら隙みて複数のコンボを選択する多様性あふれる構築であり、対応力の高さがうかがえた。

練り込まれ使い込まれたデッキにより、奥野はモダンのスイスラウンドを無敗で駆け抜けた。ヨーグモス医院は《緑の太陽の頂点》の最適解のひとつとして、今後もメタゲームの一角として定着することだろう。

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