デッキテク:増門 健太の「ジャンド独創力」 ~《信仰無き物あさり》で得た力~

晴れる屋メディアチーム

カードとプレイヤーは惹かれ合う

信仰無き物あさり

スイスラウンドが残り2つと迫ったころ、とあるカードを採用したデッキは下位へと沈んでいた。そのカードとは《信仰無き物あさり》であり、『THE LAST SUN 2024』開始前はジャンド独創力やグリクシス眼魔、ホロウワンなど複数のデッキにわたり採用された一大勢力であった。

もちろんスタンダードとモダンの複合フォーマットであるため、一概に負け組とくくるわけではないが上位卓に姿が見えないのは事実。可能性は想像の域を出なかったのだろうか。

いや、ひとりいた。『チャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド1』の王者である増門 健太だ。トップ8をかけた3敗ラインにギリギリで踏みとどまり、慣れた手つきで《信仰無き物あさり》をプレイしていた。その先に待ち受けていたのは《不屈の独創力》。そう、第3勢力であったジャンド独創力だ。

増門 健太

禁止改定以前から存在していたが、突如として浮上してきた理由はなんだろうか。一見すると噛み合わなそうな《信仰無き物あさり》《不屈の独創力》はどんなゲームプランで採用されているのだろうか。

Onogames(※新潟勢から始まって、今は大所帯になっているチーム)2024年のエース、増門 健太に直接話を聞き、デッキの詳細について解説してもらった。

ジャンド独創力とは

デッキリストページ

──「ジャンド独創力の選択理由を教えてください」

信仰無き物あさり残虐の執政官頑強

増門「まだ《信仰無き物あさり》が使えたころのモダンで、黒赤の《御霊の復讐》シュートを好んで使用していたこともあり、思い入れがあるためこのデッキを選択しました。ジャンド独創力というデッキ名とはかけ離れてしまうんですが、《不屈の独創力》よりは《信仰無き物あさり》から《残虐の執政官》《頑強》するのがメインプランだと思っています」

──「リアニメイトから始まったデッキが、《不屈の独創力》を採用するにいたった経緯について教えてください」

増門「流石に《頑強》の一本槍ではパワー不足のため、《裂け目の突破》を採用したりと工夫を凝らしていたんですが、環境初期ということもあり墓地対策が過剰なほど採用されていまして。墓地を絡めた戦略一辺倒ではサイドボード後に苦戦するため、サブプランが必要となりました」

樹木茂る山麓ドワーフの鉱山不屈の独創力

増門「パイオニアで《不屈の独創力》を使用していたことがあり、このカードならば墓地対策の上から《残虐の執政官》を出せることに気がついて。《不屈の独創力》の対象はフェッチランドから《ドワーフの鉱山》をサーチするだけの、押し付けの強い実質1枚コンボのパッケージングに成功しました」

禁止改定の影響

──「リアニメイトが最初にあり、《不屈の独創力》がハイブリッドされたわけですね。《信仰無き物あさり》の解禁以外にも何か影響はあったのでしょうか」

一つの指輪

増門やはり《一つの指輪》の禁止が大きいですね。《不屈の独創力》自体は以前からアーキタイプとして確立していましたが、そのプロテクションにより《残虐の執政官》の誘発型能力を無効化されて、返しに除去されてコンボ不成立となる展開が多くありました」

増門《一つの指輪》が環境を去り、同時に《信仰無き物あさり》が戻ってきたことで、《頑強》《不屈の独創力》の両方を採用したジャンド独創力の完成へと至りました」

──「以前の《御霊の復讐》ではなく、《頑強》を選択した理由はなんでしょうか」

御霊の復讐

増門「リアニメイトする対象が《偉大なる統一者、アトラクサ》《残虐の執政官》かの違い程度ですが、後者を《頑強》し継続的にアドバンテージを稼ぐだけでも十分脅威となるためですね。《不屈の独創力》から踏み倒すクリーチャーとしても申し分ありません」

──「禁止改定からわずか1週間の間にかなり多くのカードを試されたように感じましたが、スタンダードの練習を同時におこなうのは大変ではなかったですか」

増門「禁止改定から『THE LAST SUN 2024』まではモダンのみに集中するために、それ以前にスタンダードは仕上げていました

デッキの強み

──「デッキの強みとしてはどんな点があげられますか」

増門 健太

増門「エネルギーなど《残虐の執政官》を対処できないデッキには着地した瞬間に勝敗が決まる点ですね」

──「《信仰無き物あさり》の採用により《オークの弓使い》が懸念されますが、その点はいかがでしょうか」

オークの弓使い

増門「確かに《信仰無き物あさり》の解禁により《オークの弓使い》があふれかえっていますが、《不屈の独創力》の対象となる《ドワーフの鉱山》が出るまで2マナ構え続けるのはしんどいはずです。おまけに《不屈の独創力》一辺倒ではなく、《頑強》と絡めて2種類の対策を強いることができるのは明確な強みですね」

《信仰無き物あさり》がもたらしたもの

──「《信仰無き物あさり》を得たことでリアニメイトと独創力のハイブリッドが完成したわけですが、それ以外の恩恵はほかにもありますか」

レンと六番樹木茂る山麓

増門「デッキのカラーボード上、ハンドアドバンテージ得るカードが《レンと六番》くらいとかなり限定されていたんですよね。しかも土地限定ですし」

増門「あふれた土地カードをほかの有効牌へと変換するには《鏡割りの寓話》に頼るしかなかったんですが、《信仰無き物あさり》を得たことで交換手段が一気に増えました。コンボパーツでありながら、余剰土地を有効牌へと変え、デッキを掘り進む分だけ特定のカードへもアクセスしやすくなったのは利点です」

虚空の力線

増門「それと細かいですが《虚空の力線》を捨てられる点もいいですね。基本的には初手依存のカードであり、ゲーム中盤では不要となります。《信仰無き物あさり》があることで、サイドボードまで含めて潜在的なリスクを軽減できていることになります」

主要なデッキとの相性

──「今回のメタゲームブレイクダウンの上位デッキとの相性を教えてください。まずはディミーア眼魔からお願いします」

思考囲い致命的な一押し

増門「ディミーア眼魔は有利不利がつくほど対戦していないのでわかりませんが、やりたくはないがそこまでいやな相手ではないかなと。打ち消し呪文と手札破壊の応酬、《超能力蛙》《忌まわしき眼魔》を即座に対処できるか否かによりますね。ぐだぐだしながら長引けば勝機はあります」

──「エネルギーはいかがでしょうか」

大音声の劇場頑強残虐の執政官

増門モダンで一番対戦したいデッキですね。実際連続して踏んで勝利してきましたし。先ほども言いましたが、相手視点では《残虐の執政官》の対処が難しいためです。対してこちらには《信仰無き物あさり》と諜報土地から2ターン目に《残虐の執政官》が着地可能ですからね。即詰みもあり得ます」

──「では、純粋なコンボであるルビーストームはどうでしょう」

モンスーンの魔道士、ラルルビーの大メダル

増門対戦したくないデッキの筆頭ですね。ルビーストームに限らず、瞬間的に勝負を決めてくるコンボデッキ全般がキツイです。

思考囲い

こちらの妨害手段は《思考囲い》程度で、2ターン目に《残虐の執政官》が着地しようともライフを削りきるまでに3ターン前後かかってしまいます。相手のコンボスピードに対してあまりにも遅すぎる。コンボに対して無駄牌となる《致命的な一押し》ですが、《モンスーンの魔道士、ラル》の存在によりサイドボード後に抜ききれないのも辛いところです」

──「サイドボードの《セラの使者》はどういったマッチアップで使用するのでしょうか」

セラの使者

増門「親和と鱗親和、ハンマータイム、エルフなど小型クリーチャーを大量に展開してくるデッキに対してです。《残虐の執政官》が着地したところで《羽ばたき飛行機械》を生贄に捧げられて終わりですからね。それよりは除去の薄さを突いて《セラの使者》でクリーチャーを指定するほうがゲームを楽に運べます」

溶鉄の尖峰、ヴァラクート原始のタイタン

増門「こちらが速度で劣るためアミュレットタイタンも対戦したくないデッキですが、《セラの使者》を2枚着地させ、土地とクリーチャーの2種類を指定することで、勝機が生まれます。相手の勝ち手段である《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》《原始のタイタン》を封じ込めてしまうわけです」

虚空の力線溶融

増門「自分の予想では脱出基地コンボがもっと多い読みだったので、メタゲームブレイクダウンの結果は意外でしたね。それ用にサイドボードは《虚空の力線》《溶融》など厚めに用意していたので」

──「デッキが多岐にわたっているのは環境初期特有ですね。解説ありがとうございました」

《信仰無き物あさり》は許されたのか

増門 健太

増門は懇切丁寧にリアニメイトを主軸としたジャンド独創力について語ってくれた。天敵が環境を去り、アップデートを果たしたことでエネルギーデッキ主体のメタゲームが続く限り、選択肢に値すべきデッキであると。

一方で、メタゲームがコンボへと舵を切れば途端に立ち位置は危うくなるデッキでもある。有利不利が明確でる戦略故の悩みではあるが、その意味で《信仰無き物あさり》はデッキパワーを底上げしつつも危険域までは到達していない、モダンに適したカードであるように思えた。

ジャンド独創力は《信仰無き物あさり》を採用したデッキの筆頭として、今後もモダンで見かけるデッキのひとつになることだろう。

カバレージトップへ戻る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

晴れる屋メディアチーム 晴れる屋メディアチームの記事はこちら