はじめに
みなさん、こんにちは。
今週末には『日本レガシー選手権・春』が開催されます。禁止改定後、日本国内では初の大規模なテーブルトップのイベントなので楽しみですね。
さて、今回は先週末に開催された『Legacy Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
4/22(火) 『Legacy Challenge 32』 -墓地を使った高速コンボが強い環境-
開催日:2025年4月22日
優勝 The Spy
準優勝 エスパーコントロール
3位 ディミーアリアニメイト
4位 ジェスカイコントロール
5位 グリクシステンポ
6位 グリクシステンポ
7位 《切望の宝石》コンボ
8位 赤単ストンピィ
《まき散らす菌糸生物》と《カザド=ドゥームのトロール》が禁止になったことで環境が変化し、ジェスカイコントロールやエスパーコントロールなどのコントロールや、ミッドレンジも復権してきています。
一方、相性が良かったエルドラージが弱体化したことで赤単ストンピィは減少傾向にあります。コンボデッキの中で高い勝率だったのは、今大会でも優勝していたThe Spyでした。
The Spy
決勝ラウンドを含めて9-0でThe Spyが優勝しました。
デッキの簡単な動きは以下です。
■基本的なデッキの動き
・《エルフの指導霊》や《暗黒の儀式》などのマナ加速を利用して、《欄干のスパイ》または《地底街の密告人》をプレイ。
・デッキに土地が入っていないので、《欄干のスパイ》または《地底街の密告人》の効果でライブラリーのカードがすべて墓地に置かれる。
・ライブラリーから墓地に落ちたことで《ナルコメーバ》が戦場に出る。(また、《ナルコメーバ》をコストに《陰謀団式療法》を「フラッシュバック」で唱えることで、《ポクスウォーカー》を戦場に戻せます)
墓地を使った高速コンボですが、《むかしむかし》を使えるので意外とデッキの回りは安定しています。妨害スペルも搭載されているため、無理やりコンボを通すこともできます。禁止改定の影響でリアニメイトが数を減らし、墓地への警戒が薄まっていることも、このデッキの勝因のひとつになります。
☆注目ポイント
《欄干のスパイ》や《地底街の密告人》を確実に通して安全にコンボを決めるために、《否定の契約》や《陰謀団式療法》で相手の《意志の力》や《外科的摘出》といったスペルを妨害することは重要です。コンボを決めたそのターンにゲームに勝てるので、このデッキの《否定の契約》は0マナのデメリットなしのカウンターとして使えます。
《外科的摘出》などから墓地のカードを守る手段として《記憶の旅》が採用されています。「フラッシュバック」でプレイすることで墓地の《タッサの神託者》をライブラリーに戻してライブラリーアウトを防ぎ、あとのターンで《タッサの神託者》でゲームに勝つことも可能です。
サイド後は《虚空の力線》や《墓掘りの檻》などの墓地対策が予想されます。《ゴブリンの放火砲》は墓地を使わない追加の勝ち手段であり、墓地対策をかいくぐってゲームを決めることができます。
《外科的摘出》や《フェアリーの忌み者》など限定的な墓地対策の場合は、《ロッテスの巨人》や追加の《タッサの神託者》をサイドインすることで乗り越えやすくなります。
4/25(金) 『Legacy Challenge 32』 -レガシーでも《コーリ鋼の短刀》が大活躍-
開催日:2025年4月25日
優勝 オムニテル
準優勝 デス&タックス
3位 土地単
4位 イゼットテンポ
5位 グリクシステンポ
6位 スニークショー
7位 セファリッドナドゥ
8位 ティムールデルバー
トップ8にはイゼット、ディミーア、グリクシスといったテンポデッキが中心で、コンボデッキはスニークショー、セファリッドナドゥといった青ベースのものが人気でした。
イゼットテンポ
モダンでも活躍している《コーリ鋼の短刀》はレガシーでも使われており、リーグやチャレンジでも結果を残していたため、今回はこの装備品を試すためにイゼットテンポを使用しトップ4に入賞することができました。
レガシーには軽い優秀なスペルが多く、《コーリ鋼の短刀》を強く使うことができます。1ターン目に《ドラゴンの怒りの媒介者》、2ターン目に《コーリ鋼の短刀》と《ミシュラのガラクタ》をプレイすることで、序盤から果敢持ちのトークンで圧をかけられます。
《探索するドルイド》も不採用となっており、テンポデッキの中でも最もアグレッシブな構成になっています。
ディミーア、グリクシス、イゼットなど、禁止改定後のレガシーではテンポデッキのバリエーションに多様性があり、『タルキール:龍嵐録』は間違いなく環境に影響を与えています。
☆注目ポイント
ディミーアテンポなど《オークの弓使い》を採用したデッキが多いため、最近のテンポデッキは《秘密を掘り下げる者》の採用を見送る傾向にあります。
1マナのクロックを減らした《古えの墳墓》デッキや各種コンボデッキに対しては少し遅くなりましたが、トークンを生成できる《コーリ鋼の短刀》は単体除去にも強く、テンポミラーやコントロールといったマッチアップの相性の改善に貢献しています。
《コーリ鋼の短刀》はレガシーでも非常に強力です。《ミシュラのガラクタ》や《ウルザのガラクタ》といった0マナでプレイできるスペルが多いため、《コーリ鋼の短刀》をプレイしたターンに容易に「疾風」を誘発させることができます。
ほかのテンポデッキに対しても、《ネザーゴイフ》など地上クリーチャーをモンク・トークンで止めつつ、《ドラゴンの怒りの媒介者》や《濁浪の執政》といった飛行クリーチャーで攻撃するという状況を作ることができます。
また、マナが余る中盤以降のゲームでは《コーリ鋼の短刀》を普通に装備品としても活用でき、《濁浪の執政》をプレイしたそのターンに装備して、速攻を付与させて攻撃するという奇襲アタックが可能です。
4/26(土) 『Legacy Challenge 32』 -禁止改定後も強いリアニメイト-
開催日:2025年4月26日
優勝 黒単リアニメイト
準優勝 ベルチャー
3位 The Spy
4位 The Spy
5位 エスパーミッドレンジ
6位 ナドゥコンボ
7位 イゼットテンポ
8位 The Spy
The Spy、ベルチャー、リアニメイトといった高速コンボが中心で、フェアデッキはエスパーミッドレンジとイゼットテンポが見られました。
黒単リアニメイト
今大会で優勝したのは、サイドに《煙霧の連鎖》+《ウィザーブルームの初学者》コンボを搭載した黒単リアニメイトでした。《カザド=ドゥームのトロール》が禁止になりましたが、《納墓》や《再活性》といったキーパーツは残っているのでリアニメイトというアーキタイプは健在です。
☆注目ポイント
黒単型は《水蓮の花びら》や《暗黒の儀式》といったマナ加速を利用し、1ターン目から大型クリーチャーをリアニメイトすることができます。ミッドレンジ寄りのディミーア型とは違って、メイン戦はリアニメイトプランにオールインする形になっています。
ピッチでプレイできる《暴露》で《意志の力》や《外科的摘出》といった妨害スペル落としつつ、無理やりコンボを通すことも可能です。
《浅すぎる墓穴》も採用されているので奇襲性もあり、特に《怒れる腹音鳴らし》を《浅すぎる墓穴》で釣り上げる動きが強く瞬殺も狙えます。《残虐の執政官》も《浅すぎる墓穴》で釣る対象として非常に強力なクリーチャーで、合計12点のライフを削りつつ手札とライフも補充することができます。
サイドには墓地に依存しない勝ち手段が複数用意されています。《要塞の計略》は《実物提示教育》のようにクリーチャーのコストを踏み倒して場に出せるカードで、事前に《暴露》などで相手の手札にあるクリーチャーを落としておけば成功率が上がります。
《煙霧の連鎖》+《ウィザーブルームの初学者》のコンボは、サイド後にクリーチャー除去を減らして《虚空の力線》や《墓掘りの檻》といった墓地対策に頼った相手に刺さります。
4/27(日) 『Legacy Challenge 32』 -勝ち続ける《コーリ鋼の短刀》–
開催日:2025年4月27日
優勝 イゼットテンポ
準優勝 ボロスエネルギー
3位 ディミーアテンポ
4位 ディミーアリアニメイト
5位 セファリッドナドゥ
6位 《切望の宝石》コンボ
7位 The Spy
8位 エスパーミッドレンジ
日曜日に開催された『Legacy Challenge』では、《コーリ鋼の短刀》を採用したイゼットテンポが優勝しました。
コンボデッキはThe Spyやリアニメイト、セファリッドナドゥといった墓地を使ったものが中心となっています。
ボロスエネルギー
モダンのトップメタであるボロスエネルギーのレガシー版。レガシーでは、モダンで禁止になった《色めき立つ猛竜》も健在なので《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》のトリオとの共演が再び実現しました。さらに、優秀な除去である《剣を鍬に》や土地を破壊できる《不毛の大地》も使えます。
今大会でも準優勝という好成績を残しており、採用されている高額な再録禁止カードも《Plateau》のみなので「すでにモダンでボロスエネルギーをプレイしていて、レガシーも遊んでみたい」という方にもおすすめできるデッキになります。
☆注目ポイント
《ゴブリンの砲撃》で猫・トークンを生け贄に《ナカティルの最下層民、アジャニ》を変身させるのはモダンでおなじみですが、レガシーでは《舷側砲の砲撃手》でもその役割を果たせます。速攻・威迫持ちで与えるダメージも大きいため、より攻撃的に動くことが可能です。
トークンを生成する手段が複数搭載されているため、《語り部の杖》がアドバンテージエンジンとして機能します。《電気放出》はモダンでは主要な除去スペルの1枚でしたが、レガシーでは《剣を鍬に》という優秀な除去が使えるため少なめの採用になっています。
『タルキール:龍嵐録』からの新カードで話題になっていた《勝利の楽士》も採用されています。トークンを生成する能力は《語り部の杖》や《オセロットの群れ》と相性が良く、《舷側砲の砲撃手》の「誇示」の種にもなります。《魂の導き手》ともシナジーがあり、トークンが生成される度にエネルギーカウンターを蓄積できます。
自ターンの間相手のスペルを封じる能力も、優秀なカウンターや除去が多いレガシーでは特に有用で、《舷側砲の砲撃手》で安心して攻撃できるようになります。
総括
《コーリ鋼の短刀》がイゼットテンポの新戦力として活躍しているなど、『タルキール:龍嵐録』が環境に与えた影響は大きいようです。《まき散らす菌糸生物》と《カザド=ドゥームのトロール》が禁止になって1か月近くが経ち、スニークショーやThe Spy、セファリッドナドゥといったさまざまなコンボデッキが活躍しています。
テンポデッキはディミーアの2色よりも、ほかのテンポデッキに対して有利を得るために《溶鉄の崩壊》や《剣を鍬に》《時を解す者、テフェリー》といった妨害用に色を足したバージョンが主流になっています。現在《血染めの月》デッキが減少傾向にあるので、多色化のハードルが下がりました。
また、禁止改定後の環境でもリアニメイトが結果を残しており、ディミーア型やタッチ赤型、高速コンボ型の黒単などいろいろなバリエーションが見られました。
USA Legacy Express vol.253は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!