はじめに
みなさん、こんにちは。
禁止改定から1か月以上が経ち、『タルキール:龍嵐録』もリリースされたモダンはどうなっているでしょうか?
今回の連載では、『第30期モダン神挑戦者決定戦』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『第30期モダン神挑戦者決定戦』 -『タルキール:龍嵐録』の新カードが大活躍-
開催日:2025年5月5日
優勝 サムワイズフード
準優勝 ライブラリーアウト
3位 エルドラージ
4位 ジェスカイコーリ鋼
5位 アミュレットタイタン
6位 エルドラージランプ
7位 ジェスカイコーリ鋼
8位 アゾリウスコントロール
『第30期モダン神挑戦者決定戦』は参加者174名で行われました。メタゲームブレイクダウンでは、イゼット果敢とボロスエネルギーが使用率トップでしたが、トップ16含め上位では見られませんでした。
優勝したのは、クリーチャーコンボデッキであるサムワイズフードで、準優勝もライブラリーアウトと比較的めずらしいデッキが勝ち残っていたのも印象的でした。
ライブラリーアウト
各種ライブラリー破壊スペルで相手を「切削」し、ライブラリーアウトによって勝つデッキです。このアーキタイプは、昔からモダンで活躍しており愛好家も多く見られます。
長い間モダンではファンデッキ的な立ち位置でしたが、ここ数年は強力なライブラリー破壊スペルを獲得したことにより、トーナメントでも見られるようになりました。
今回準優勝したリストは《獲物貫き、オボシュ》が「相棒」として採用されていました。よく入っている《湖での水難》や《不可思の一瞥》などは使えなくなりますが、もともとスペルが奇数に寄っているので、かなり大きな負担というわけではないようです。
ロングゲームになればプレイも狙うことができ、実際に準決勝では、ブロッカーとしてエルドラージの攻撃を止めながら時間を稼ぎ、最終的に《虚空の杯》を3枚置かれた状態から、先に出ていた《遺跡ガニ》1体がライブラリーを削り切って勝利していました。
☆注目ポイント
《面晶体のカニ》と《遺跡ガニ》の2種類のカニ・クリーチャーは、一見すると無害に見えますが、ライブラリーアウトを勝ち手段とするこのデッキでは強力な切削手段として機能します。
フェッチランドと組み合わせることで一気にライブラリーを削ることができ、除去されずに生き残ればそれだけでも勝てます。また、タフネス3ある《遺跡ガニ》はブロッカーとしても使えるので、アグロデッキに弱いこのデッキにとっては重要になります。
ライブラリー破壊スペルのなかでも、最も強力なのが《書庫の罠》です。モダンはフェッチランドを多用するデッキが多いため、早ければ1ターン目から0マナでプレイすることができます。序盤に複数引くことができれば、相手がフェッチランドを一度起動するだけで半分以上のライブラリーを切削可能です。
《正気破砕》は「サイクリング」でも少量ながら切削できるので使いやすく、このデッキをトーナメントレベルにまで強化することに貢献した1枚になります。
《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》は相手によって効果にばらつきがあるものの、今大会で活躍していたジェスカイコーリ鋼のように《オパールのモックス》など複数の0マナスペルを採用したデッキとのマッチアップでは高い効果が期待できます。
相手のライブラリーのカードを大量に墓地に落とすデッキなので、《外科的摘出》によってメイン戦からコンボデッキのキーカードを追放して機能不全にすることもできます。さまざまなコンボデッキが活躍するモダンでは、メインフル搭載も納得です。
エルドラージランプ
今回エルドラージは、ボロスエネルギーやイゼット果敢の次に人気があるアーキタイプでした。
『モダンホライゾン3』から《ウギンの迷宮》を獲得したことは大きく、勝ち手段兼除去でもある《運命を貪るもの》など、強力な7マナスペルが複数あるので「刻印」にも困りません。マナ加速をトロンランドに頼る必要がなくなったことで、基本土地や《衝動のタリスマン》も採用されるようになり《血染めの月》にも耐性がついています。
☆注目ポイント
《邪悪鳴らし》は墓地を肥やしつつ、必要な土地やエルドラージスペルを引き当てることができます。墓地を肥やすことで《約束された終末、エムラクール》のコストを軽くしたり、墓地から《コジレックの帰還》を全体5点で撃てるようにもなります。
環境のほとんどのデッキは、《約束された終末、エムラクール》でターンを奪われてリソースを枯渇させられたあとにリカバリーするのは困難なので、約束通りゲームを終わらせてくれるでしょう。
《まき散らす菌糸生物》は「キッカー」で相手の土地を破壊しながらマナ加速ができ、墓地を使うデッキに対しては《ボジューカの沼》、コントロールデッキには《魂の洞窟》と相手によって有効な土地をサーチ可能です。
『タルキール:龍嵐録』のカードで公開時から話題となった《嵐の目、ウギン》は、唱えたときに有色のパーマネントを追放でき、着地後も継続的な除去になります。ライフを回復しつつアドバンテージも稼いだりと非常に強力で、早くもエルドラージデッキの主力として定着しています。
ただ、エルドラージ・スペルではないので《エルドラージの寺院》の恩恵を受けられず、《コジレックの帰還》も誘発しないので注意です。
サムワイズフード
今大会で見事に優勝を果たしたサムワイズフード。《サムワイズ・ギャムジー》+《大釜の使い魔》+《屍肉喰らい》のクリーチャー3体による無限コンボを搭載したクリーチャーベースのコンボデッキです。
動きとしては、まず《サムワイズ・ギャムジー》が場にある状態で《大釜の使い魔》をプレイすると、《サムワイズ・ギャムジー》の能力で食物・トークンが出て、《大釜の使い魔》でライフをドレインできます。そのあと《屍肉喰らい》で《大釜の使い魔》を生け贄にし、食物・トークンを生け贄に墓地の《大釜の使い魔》を戻すと最初の状態になるので、無限ドレインとなります。
最速で3ターン目にはコンボを決めることができ、コンボを対策されてもクリーチャーによるビートダウンで勝つことも可能です。クリーチャーをサーチできるスペルも採用されているのでコンボパーツをそろえやすく、動きも安定しています。
☆注目ポイント
『モダンホライゾン3』から登場した《出産の儀》は、あの《出産の殻》を彷彿とさせるカードとしてリリース当時は話題になっていましたが、それほど目にする機会はありませんでした。《大釜の使い魔》や《復活の声》など生け贄にしても損しないカードも多く、コンボに必要なクリーチャーをそろえるのには十分な性能があります。
また、コンボパーツがすべてマナ総量の軽いクリーチャーなので、《召喚の調べ》によってインスタントスピードで容易にそろえることができるのも強力なポイントです。
《復活の声》は今回大活躍だったコンボ以外の勝ち手段で、クリーチャーが横に並ぶので生成されるエレメンタル・トークンがフィニッシャー級のサイズになりやすいです。
《輝晶の機械巨人》はコンボパーツをサーチできるカードでもあり、クリーチャーに除去耐性を付ける《森を護る者》や、食物・トークンを生成する《金のガチョウ》、置物対策の《機能不全ダニ》など状況に応じた1マナのクリーチャーを持ってこれます。
ジェスカイコーリ鋼
複数のフォーマットで活躍している《コーリ鋼の短刀》を最も強く使えるデッキ、として注目を集めているジェスカイコーリ鋼。《オパールのモックス》《モックス・アンバー》《ミシュラのガラクタ》という3種類の0マナ・アーティファクトを搭載したこのデッキでは、モンク・トークンを早い段階から並べることができます。
同様に『タルキール:龍嵐録』から登場した《ジェスカイの道師、ナーセット》もデッキ全体と相性が良く、《ジェスカイの隆盛》コンボをベースにしていますが、《ジェスカイの隆盛》はわずか1枚の採用なことから、コンボよりも《コーリ鋼の短刀》と《ジェスカイの道師、ナーセット》を軸に戦うようです。
☆注目ポイント
0マナ・アーティファクトを11枚採用しているため、《コーリ鋼の短刀》を2ターン目にプレイした直後にモンク・トークンを生成してビートダウンを始めることができます。《コーリ鋼の短刀》はアーティファクトでもあるので、《オパールのモックス》の「金属術」や《湖に潜む者、エムリー》のコストの軽減にも貢献します。
キャントリップスペルの《撤廃》は、このデッキでは《オパールのモックス》をバウンスして再度プレイすることによって容易に《コーリ鋼の短刀》を誘発させることができ、《ジェスカイの道師、ナーセット》のためにスペルの回数を稼ぐこともできます。
脱出基地コンボと同様に、このデッキの強さを支えているのは、これらの強力なアドバンテージエンジンになります。墓地に落ちた《ミシュラのガラクタ》などをプレイできる《湖に潜む者、エムリー》は、《コーリ鋼の短刀》の能力を誘発させやすくしてくれます。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》もアドバンテージを稼ぐことができ、手掛かり・トークンは「金属術」のためのアーティファクトカウントにもなります。《ウルザの物語》はそれ単体でも十分に脅威となりますが、《オパールのモックス》をサーチしてこれるので必要な色マナの確保しやすくなり、墓地対策の《魂標ランタン》にもメインからアクセスできます。
《ジェスカイの道師、ナーセット》はかなり壊れた動きを見せるカードで、3マナ3/4クリーチャーと単体でも優秀なスペックがあり、0マナ・アーティファクトを連打して大量にカードをドローすることができます。実際に準々決勝では、終了ステップ時に5枚ドローして圧倒的なアドバンテージを稼いでいました。
総括
《コーリ鋼の短刀》《ジェスカイの道師、ナーセット》《嵐の目、ウギン》などを軸にしたデッキが活躍するなど、『タルキール:龍嵐録』の影響は予想以上に大きく、環境のシェイクアップに貢献しています。
ボロスエネルギーやイゼット果敢など人気のアーキタイプは見られますが一強状態ではなく、『第30期モダン神挑戦者決定戦』ではライブラリーアウトやサムワイズフードといった比較的珍しいデッキも活躍していました。脱出基地コンボに代わる《オパールのモックス》デッキであるジェスカイコーリ鋼はかなり怪しげな動きを見せており、今後どうなっていくのか目が離せません。
USA Modern Express vol.132は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!