はじめに
みなさん、こんにちは。
今週末は『第29期レガシー神挑戦者決定戦』、そして夏にはレガシーで『BMO Vol.14』が開催予定など、日本国内のレガシーイベントが充実していますね。
さて、今回の連載では『日本レガシー選手権・春』『Legacy Super Qualifier』、先週末に開催された『Legacy Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『日本レガシー選手権・春』 -禁止改定後のレガシーでも強いリアニメイト-
開催日:2025年5月3日
優勝 ディミーアリアニメイト
準優勝 ディミーアテンポ
3位 カーンフォージ
4位 セファリッドナドゥ
5位 赤単スニーク
6位 ディミーアリアニメイト
7位 グリクシステンポ
8位 ドゥームズデイ
日本で開催された『日本レガシー選手権・春』は参加者380名と大盛況でした。
禁止改定後、初の大型イベントの決勝はなんと「ディミーアリアニメイト」と「ディミーアテンポ」という2つの青黒デッキでした。
メタゲームブレイクダウンによれば《カザド=ドゥームのトロール》が禁止になったにもかかわらず、ディミーアリアニメイトは今大会で一番人気があったデッキで、その次点でセファリッドナドゥ、イゼットテンポと続いていました。
また、直前にリリースされた『タルキール:龍嵐録』の影響も予想以上に大きく、今大会でも結果を残していたセファリッドナドゥと、トップ8入賞はならなかったものの人気があるイゼットテンポは、新カードの恩恵によって強化されています。
ディミーアリアニメイト
《悲嘆》や《超能力蛙》といった主要なカードを禁止で失いながらも、常にトップメタの地位を維持していたディミーアリアニメイトですが、デッキの安定性を支えていた《カザド=ドゥームのトロール》が禁止になり、今度こそトップメタから姿を消すかと思われていました。
しかし、蓋を開けてみれば今大会で一番人気があったデッキで、優勝も含めてプレイオフに2名が進出するなど、禁止改定後の環境でもその強さは健在であることが証明されました。
《カザド=ドゥームのトロール》の代わりとして《オリファント》や《気前のよいエント》といった「基本土地・サイクリング」クリーチャーを採用した多色バージョンも見られましたが、2色の青黒バージョンのほうが安定性では優れています。
☆注目ポイント
《カザド=ドゥームのトロール》が抜けたことで必要な色マナを確保しつつ、リアニメイトを決めることが難しくなったため、《動く死体》の枚数が減り、土地の枚数は増加。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《オークの弓使い》といったアドバンテージを稼げるクリーチャーがメインから採用されるなど、テンポ~ミッドレンジに寄せられています。
これにより相手は、リアニメイトかディミーアテンポかを判断することが難しくなります。ディミーアテンポのように振る舞って《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《オークの弓使い》《濁浪の執政》といった脅威にリソースを使わせることができれば、リアニメイトも通りやすくなります。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》は、変身後に[-3]能力で墓地に落ちた《納墓》や《再活性》を回収できるため、再度仕掛けられるようになります。また、スペルを回収することで《濁浪の執政》を強化できるのも覚えておきたいところです。
《コーリ鋼の短刀》を獲得して強化されたイゼットテンポに強い《バロウゴイフ》が、サイドに3枚と多めにとられています。クリーチャーをメインから採用することで、サイド後にミッドレンジに移行できるように構築されており、相手にとっても、どれぐらい墓地対策をサイドインするのか悩ましいところです。
セファリッドナドゥ
セファリッドナドゥは《コーの遊牧民》+《セファリッドの幻術師》のコンボによってライブラリーをすべて墓地に落とし、その過程で場に出た《ナルコメーバ》をコストに《戦慄の復活》をフラッシュバックして《タッサの神託者》を釣り上げてゲームに勝つレガシーではお馴染みのデッキです。
コンボデッキですが、ドロースペルやカウンター、白の優秀な除去、《ウルザの物語》パッケージなどが使えるので順応性が高いデッキになります。相手は常に瞬殺コンボをケアする必要があり、コンボをちらつかせつつミッドレンジのように振る舞うこともできるのがこのデッキの特徴です。
☆注目ポイント
《有翼の叡智、ナドゥ》は《コーの遊牧民》や《手甲》とコンボになるカードで、莫大なアドバンテージを稼ぐことができます。《知りたがりの学徒、タミヨウ》はコンボ以外の軽い脅威であり、《セファリッドの幻術師》や《コーの遊牧民》のために除去を残しておきたい相手にとってはプレッシャーになります。
『タルキール:龍嵐録』から登場した《勝利の楽士》が採用されていました。インスタントスピードでの妨害を封じることができるため、コンボを安全に決めることができます。
またコンボを妨害から守るだけでなく、「応召2」によって《有翼の叡智、ナドゥ》用の追加クリーチャーを生成できるなど、このデッキと相性がいいクリーチャーになります。
《記憶の旅》は最近このデッキやThe Spyといった墓地を使うコンボデッキで見られるようになったカードで、墓地対策&相手の墓地対策をかわす手段として機能します。「フラッシュバック」持ちなので《セファリッドの幻術師》でライブラリーを墓地に落とした後も墓地からプレイすることができ、《外科的摘出》などから《タッサの神託者》を守ることができます。
『Legacy Super Qualifier』 -禁止改定後の環境のトップメタ-
開催日:2025年5月9日
優勝 ディミーアテンポ
準優勝 The Spy
3位 イゼットテンポ
4位 5色豆の木コントロール
5位 ディミーアテンポ
6位 ディミーアリアニメイト
7位 逆説ストーム
8位 オムニテル
MOで開催されたレガシーの予選イベントは200名以上の参加者で行われ、スイスラウンド8回戦プラス決勝ラウンドという長丁場でした。
今大会でもディミーアテンポ、イゼットテンポといった青いデッキが複数勝ち残り、《まき散らす菌糸生物》の禁止でエルドラージが弱体化したことでコントロールデッキも復権してきています。
ディミーアテンポ
ディミーアテンポは、イゼットテンポなどと比べるとロングゲームを意識したミッドレンジ寄りの構成になっています。
効率的なクロック、カウンター、ハンデス、墓地対策と一通りそろっているため、The Spyやショーテル系など多くのコンボデッキに強く、現レガシーのトップメタの一角を担っています。
特定のマッチアップで有利を得るために色を足したグリクシス型やエスパー型も見られますが、2色で基本土地を複数採用する余裕があり、マナ基盤も安定する純正のディミーアが主流になっています。
☆注目ポイント
《バロウゴイフ》はイゼットテンポにとって対処が非常に困難な脅威で、《紅蓮破》に引っ掛からないので、最近は《濁浪の執政》よりも優先してメインから採用される傾向にあります。
《悪夢滅ぼし、魁渡》はディミーアテンポの主力として最近定着しています。「忍術」は起動型能力なので、カウンターされることなく着地させられるのが強力です。特に1マナで飛行持ちの《知りたがりの学徒、タミヨウ》は攻撃を通しやすく、《オークの弓使い》も相手のエンド時にプレイでき、かつ横並びするので「忍術」の種にもってこいです。
戦闘後は[+0]能力によってアドバンテージを稼ぐことができ、[-2]能力では《濁浪の執政》のような脅威をタップして2ターンの間無力化することができるので、テンポミラーでの切り札になります。
メインから墓地対策である《虚無の呪文爆弾》を使えるので、リアニメイトやThe Spy、セファリッドナドゥといった墓地を使うコンボデッキとのマッチアップでも有利に立ち回れます。
《攪乱のフルート》はThe Spy、スニークショー、ナドゥといったコンボデッキとのマッチアップのほかにも、《一つの指輪》対策としても使えます。特殊地形に頼ったデッキとのマッチアップでは、《海の先駆け》が活躍します。
『Legacy Challenge 32』 -コントロールの復権-
開催日:2025年5月16日
優勝 5色豆の木コントロール
準優勝 土地単
3位 ディミーアテンポ
4位 ディミーアリアニメイト
5位 ディミーアテンポ
6位 4色豆の木コントロール
7位 ティムールデルバー
8位 ディミーアリアニメイト
ディミーアテンポ、ティムールデルバー、多色コントロールなどフェアデッキが複数入賞していました。『日本レガシー選手権・春』でも結果を残していたディミーアリアニメイトも勝ち残っています。
5色豆の木コントロール
《豆の木をのぼれ》という優秀なアドバンテージエンジンを利用した多色コントロールデッキです。レガシーには《意志の力》《力線の束縛》《終末》《ラクシャーサ流取り引き》など、軽いコストでプレイできる5マナ以上のスペルがあるので《豆の木をのぼれ》を強く使うことができます。
豆の木コントロールはもともと愛好家も多かったため、《まき散らす菌糸生物》が禁止になったことで復権してきており、今大会では見事に優勝を果たしました。
アドバンテージエンジンとカウンター、《剣を鍬に》《力線の束縛》など優秀な除去を複数搭載したこのデッキは、イゼットデルバーやディミーアテンポなどほかのフェアデッキに対して無類の強さを見せる一方で、クロックが遅いためコンボデッキとのマッチアップでは苦戦を強いられます。
最近では『タルキール:龍嵐録』の《ラクシャーサ流取り引き》を獲得したりと、新セットの恩恵を受けているデッキでもあります。
☆注目ポイント
《ラクシャーサ流取り引き》はマナ総量が6なので、《豆の木をのぼれ》を誘発させることができ、このデッキでは軽いコストでプレイできます。墓地も肥やせるので《自然の怒りのタイタン、ウーロ》とも相性が良く、《忍耐》や《意志の力》のピッチコストになる点も重要です。
現環境はリアニメイト、Ths Spy、セファリッドナドゥなど墓地を利用したコンボデッキが幅を利かせており、《濁浪の執政》などフェアデッキでも墓地を利用したデッキが多いので《忍耐》がメインから採用されています。
《力線の束縛》は《豆の木をのぼれ》を誘発させつつ相手の脅威をさばくことが可能で、《濁浪の執政》のようなクリーチャーだけでなく、各種プレインズウォーカーや《虚空の杯》のような置物も対処できるので便利です。
『Legacy Challenge 32』 -決勝戦は土地単とリアニメイト-
開催日:2025年5月16日
優勝 土地単
準優勝 ディミーアリアニメイト
3位 カーンフォージ
4位 グリクシステンポ
5位 5色豆の木コントロール
6位 The Spy
7位 ディミーアリアニメイト
8位 スニーク・ショー
コンボからフェアまでいろいろなデッキが勝ち残っており、決勝戦はディミーアリアニメイトと土地単となりました。
土地単
レガシーで長い間活躍し続けている土地単は、カードプールが広がるにつれて変化を見せてはいるものの基本的なところは変わっていません。
《壌土からの生命》をアドバンテージエンジンとして活用し、《踏査》のように追加の土地を置けるカードや《モックス・ダイアモンド》でマナ加速していき、《イス卿の迷路》や《The Tabernacle at Pendrell Vale》で相手のクリーチャーによる攻撃を止めつつ、毎ターン《不毛の大地》で相手のマナを縛ります。
《燃え柳の木立ち》+《罰する火》によってコントロールしていく形も見られましたが、最近は《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》がフル搭載された緑単が主流で、可能な限り早く《演劇の舞台》+《暗黒の深部》のコンボを決めることを重視しています。
☆注目ポイント
《ウルザの物語》は《暗黒の深部》以外の勝ち手段兼アドバンテージ源であり、《探検の地図》《墓掘りの檻》《溶岩拍車のブーツ》《モックス・ダイアモンド》《真髄の針》といった1マナ以下のアーティファクトを状況に応じてサーチできるため、対応力が上がっています。
《攪乱のフルート》はこのデッキが苦手とするコンボデッキに有効で、フェアデッキに対しても《マリット・レイジトークン》に触れる《厚かましい借り手》の出来事面のコストが3上がるだけでも相手は構えにくくなります。
《邪悪鳴らし》はこのデッキにとって大きな収穫です。墓地を肥やしつつ必要な土地や置物を手札に加えることができるので《壌土からの生命》と相性が良く、落とし子・トークンによって《マリット・レイジトークン》を布告系の除去から守ることもできます。
総括
The Spyは3月末の禁止改定以降、MOの『Legacy Challenge』で最も成功を収めているデッキのひとつです。禁止改定直後の『Legacy Challenge』でプレイオフの半数を占めたときもあり、最近ではメインから《虚無の呪文爆弾》や《忍耐》など墓地対策を採用したデッキが増加傾向にあります。
現在は少し落ち着いてはきているものの、このデッキが存在することによって環境が歪んでいると懸念する声もあるようです。
また、《悲嘆》《超能力蛙》に続いて《カザド=ドゥームのトロール》が禁止になったものの、ディミーアリアニメイトの人気は衰えることはなく、『日本レガシー選手権・春』で優勝、『Legacy Super Qualifier』でも結果を残しているので墓地対策は欠かせません。
ディミーア、グリクシステンポなどの《Underground Sea》デッキも活躍しており、《まき散らす菌糸生物》禁止でエルドラージが衰退したことでコントロールデッキも復権してきています。今後のメタゲームにも注目です。
USA Legacy Express vol.254でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!