はじめに
みなさん、こんにちは。
6月30日に禁止改定があり、ディミーアリアニメイトのパーツが禁止になるかもと一部で話題でしたが、今回はノーチェンジでした。
今回の連載では、Magic Online(以下、MO)で開催された『Legacy RC Qualifier』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Legacy RC Qualifier』 -最後に勝つのはやはりディミーアリアニメイト-
上位2名に地域チャンピオンシップへの権利が与えられるイベントで、毎週開催される『Legacy Challenge』よりもレベルが高くなる傾向にあります。
ディミーアリアニメイトが最も人気のあったデッキで、プレイオフには1名のみでしたが、優勝とトップ16に5名も入賞と高い勝率を叩きだしていました。惜しくも優勝は逃したものの、ストームコンボであるTESも準優勝と好成績を収めています。
ディミーアリアニメイト
複数回の禁止改定を乗り越えて、トップメタに君臨し続けているディミーアリアニメイト。今回の禁止改定ではまさかのお咎めなし。
《カザド=ドゥームのトロール》禁止後はリアニメイトスペルが減らされ、《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《濁浪の執政》といったクリーチャーが多めに採用されるなど、よりフェアな形に寄せられています。
☆注目ポイント
《知りたがりの学徒、タミヨウ》はこのデッキのアドバンテージ源であり、軸をずらした勝ち手段にもなります。リアニメイトプランに対応しつつ、1ターン目のタミヨウにも対処するのは容易ではなく、このデッキの対戦難易度を上げている一因になっています。
最近は《ダウスィーの虚空歩き》を採用したデッキも多く、相手の《知りたがりの学徒、タミヨウ》にも対応できるように《致命的な一押し》がメインから採用されています。
《厚かましい借り手》は《墓掘りの檻》など厄介な置物をバウンスでき、インスタントタイミングで出せるアタッカーとしても優秀なため、メインとサイド合わせて3枚以上採用したリストが主流です。
サイドには《コジレックの審問》《否定の力》といった追加の妨害が多めに積まれているなど、コンボデッキや《古えの墳墓》デッキを意識した構成になっています。
3枚の《仕組まれた爆薬》は《虚空の杯》や《ウルザの物語》を使ったマッチアップに対して有効です。相性が悪い《神秘の炉》デッキも意識していたようで、《無のロッド》も2枚採用されています。
TES
ストーム系のコンボデッキのTESも入賞していました。《ライオンの瞳のダイアモンド》や《水蓮の花びら》といった0マナのマナアーティファクトや儀式スペルでマナ加速しつつ、「ストーム」を稼ぎ最終的に《苦悶の触手》で相手のライフを削り切ります。
《ウルザの物語》と《鏡に願いを》を軸にしたバージョンで青いキャントリップはないものの、《燃え立つ願い》《冥府の教示者》《鏡に願いを》など複数のサーチスペルを採用しているため再現性が高く、マナ加速のおかげで速度もあります。
このバージョンの弱点は《ウルザの物語》をマナ基盤に加えたことにより、マナ基盤が不安定になったことと《不毛の大地》に弱くなったことが挙げられます。
☆注目ポイント
メイン戦では相手側の解答も限られるので《ウルザの物語》は脅威となります。主にⅢ章の能力で《ライオンの瞳のダイアモンド》や、サイド後は《虚空の杯》などを処理できる《機能不全ダニ》をサーチ可能です。
《鏡に願いを》から《ガイアの意志》をプレイして《苦悶の触手》まで高速で繋げられるのがこのバージョンの特徴です。《ウルザの物語》のおかげで「協約」のコストも補えます。
サイドボードは主に《燃え立つ願い》や《ウルザの物語》でサーチできるカードが中心となっています。ディミーアリアニメイトやThe Spy対策として《墓掘りの檻》や、《外科的摘出》が3枚と多めに積まれています。
《大群への給餌》は《燃え立つ願い》でサーチできる除去スペルで、黒では珍しくエンチャントにも触れるため《虚空の力線》なども対処できます。
土地単
今大会で少数ながら好成績を残していた土地単。ルールの変更により《血染めの月》の効果によって《ウルザの物語》が墓地に落ちなくなり、弱点が緩和されています。
The Spyのようなコンボには弱いですが、テンポデッキをはじめとしたフェアデッキに強く、メインから墓地対策にアクセスできるのでトップメタのディミーアリアニメイトとの相性も悪くありません。
☆注目ポイント
リアニメイト対策として《墓掘りの檻》がメインから採用されています。《ウルザの物語》でサーチ可能で、《ボジューカの沼》も《輪作》でサーチできるので、メインから墓地を使うデッキには対応しやすくなっています。
《攪乱のフルート》もメインからの採用で、サイドにも追加で2枚とコンボ対策に力を入れています。
《邪悪鳴らし》は必要なカードを探しつつ墓地も肥やせるので《壌土からの生命》とシナジーがあり、土地単では特に強く使えます。《暗黒の深部》と《演劇の舞台》もフル搭載されており、高速で《マリット・レイジトークン》を出すコンボプランが主流になっているようです。
サイドには《忍耐》や《フェアリーの忌み者》といった複数の墓地対策が見られるなど、リアニメイトやThe Spyを意識しているのが分かります。もともとフェアデッキに強かったところに、メインとサイドともに墓地対策を厚くすることにより、ディミーアリアニメイトのリアニメイト、フェアのどちらのプランにも対応できるように調整されているようです。
赤単プリズン
赤単プリズンは英雄譚ルールの変更の恩恵を最も大きく受けたデッキで、《ウルザの物語》が使えるようになったことでディミーアリアニメイトをはじめとした複数のマッチアップとの相性が緩和されています。
しかし、このデッキにとってやっかいなのが《バロウゴイフ》の存在です。基本的にサイズで勝り、接死と絆魂を持つクリーチャーを処理するのは赤単のこのデッキでは非常に困難を極めます。
☆注目ポイント
英雄譚ルールの変更で《ウルザの物語》を採用できるようになりました。《ウルザの物語》は《溶融》などアーティファクト除去を採用しづらいディミーアリアニメイトに強く、《魂標ランタン》をサーチできるため、メインから無理なく使える墓地対策としても機能します。
スペルランドの《引き離しの噴火》は、相手が《血染めの月》をケアしてサーチした基本土地を割ることで、行動を著しく制限することができます。
ピッチでプレイできる《激情》は、《一つの指輪》で得たアドバンテージを有効活用する手段になります。《古えの墳墓》、スペルランド、《一つの指輪》などでライフが失われるため、複数のクリーチャーを一度に処理できる《激情》は重宝します。また、どちらも《舷側砲の砲撃手》の「誇示」で大ダメージを狙えます。
サイドの《攪乱のフルート》は、主にナドゥコンボの《コーの遊牧民》をはじめとした各コンボデッキとのマッチアップで活躍します。追加の墓地対策には《虚空の力線》と《未認可霊柩車》が採用されており、特に毎ターン墓地のカードを追放できる《未認可霊柩車》は、《濁浪の執政》の「探査」の妨害をしたり、脅威となる《バロウゴイフ》のサイズダウンさせたりとディミーアリアニメイトのフェアプランに対しても有効です。
総括
今回の禁止改定については、レガシーコミュニティの間でも意見が分かれており、高い勝率を維持しているディミーアリアニメイトや、1ターン目にコンボを決めてくるThe Spyに対して何もアクションがなかったことを懸念する意見が散見されます。
次回の禁止改定は11月なので、8月の『BIG MAGIC Open Vol.14』や北米で開催される『Eternal Weekend NA 2025』では、今回取り挙げたデッキのように、引き続きディミーアリアニメイトやThe Spyの対策をメイン、サイドともに徹底していくことが推奨されます。
USA Legacy Express vol.257は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!