さて、PTQシーズンの開幕だ。
プロツアーの権利を獲得するためには、グランプリトップ8(もしくはそれと同じライン)を目指すか、もしくはPTQを勝つかのどちらかが必要になる。
これからはPTQの制度が変わるため、最後のチャンスとしてスタンダードに全力を注ぐことにした。
■ 運命再編後のスタンダードはどう変わったか
各地の大会結果を見た感想。
・《精霊龍、ウギン》はプレイできたら勝ちのカード。
無色の《残酷な根本原理》という感覚。「勝利条件=8マナ」というのは破格であり、《精霊龍、ウギン》をうまく使える【緑信心】や【青黒コントロール】が台頭。特に青黒は《命運の核心》という全体除去で大幅に強化された。
・《城塞の包囲》《魂火の大導師》《僧院の導師》による白ビートダウン強化。
特に【ジェスカイ】と《城塞の包囲》は相性が良く、《魂火の大導師》がいきなり4/4「絆魂」、《カマキリの乗り手》が5/5「飛行」「警戒」になり、「龍」モードもサイド後のコントロール戦略に合う。
苦手だった《クルフィックスの狩猟者》《包囲サイ》に対しても、《勇敢な姿勢》という除去を得た。
・《炎跡のフェニックス》《大いなる狩りの巫師》《前哨地の包囲》による赤ビートダウンの強化。
特に【赤緑モンスター】が得たものが大きい。《炎跡のフェニックス》は《灰雲のフェニックス》でも戻って来るので、フェニックスコンビで除去に強い。
■ アブザンアグロの変化
PTQに向けて、前シーズンから使い慣れている【アブザンアグロ】を調整することにした。
『運命再編』からの加入は《黄金牙、タシグル》《勇敢な姿勢》。
【直近1/24のStarcityOpen3位デッキ】が好みのリストだったので、これにお試しで《勇敢な姿勢》を加えて晴れる屋トーナメントセンターの平日大会に参加。
どのクリーチャーが必要なのか試したくて、それぞれ枚数を散らした。
2 《平地》 1 《森》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《砂草原の城塞》 3 《疾病の神殿》 2 《静寂の神殿》 1 《豊潤の神殿》 3 《コイロスの洞窟》 3 《ラノワールの荒原》 2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(25)- 4 《羊毛鬣のライオン》 3 《ラクシャーサの死与え》 3 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 3 《クルフィックスの狩猟者》 4 《包囲サイ》 3 《風番いのロック》 2 《黄金牙、タシグル》 -クリーチャー(22)- |
3 《思考囲い》 3 《胆汁病》 1 《勇敢な姿勢》 4 《英雄の破滅》 2 《アブザンの魔除け》 -呪文(13)- |
結果は12回戦で8勝4敗。負けたのはアブザンアグロ同型2回と赤緑モンスター2回。
同型は《風番いのロック》、赤緑は《嵐の息吹のドラゴン》とわかりやすい負け方だった。
偶然にも両方《黄金牙、タシグル》が場にいる状況で、「これが《残忍な切断》だったら」と思ったものだ。
・土地の問題。
自分のデッキのタップイン土地(10枚)との戦いがある。潤滑な動きをするためにはアンタップ状態の土地が必要だが、アンタップ土地は1色しか出ない、もしくはダメージを食らう。白白黒黒緑緑というマナを必要とするデッキなため、タップインは10枚よりも減らせない。
いつタップインを置くかも問題だ。1ターン目タップイン、2ターン目クリーチャー、3ターン目《胆汁病》+タップインという動きにはダメランが必要だし、《豊潤の神殿》だとこの動きが出来ない。「神殿」はすべて黒絡みにするべきだ。
《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》が2枚入ったリストをよく見るが、私は1枚を推す。確かに《胆汁病》や《ラクシャーサの死与え》の役に立つが、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を2枚引いて負けたゲームが12回に1回あった。またアブザン同型では相手の手助けとなることがあり、黒相手にはあまり置きたくない土地だ。
・クリーチャーの選択。
前述のタップイン問題を含め、2マナ→2マナ→タップインと動くためにも、2マナクリーチャーは不動の8枚。ただし《ラクシャーサの死与え》はサイドアウトすることも多い(《悲哀まみれ》を入れる相手など)
アブザンアグロのベストな動きは、《羊毛鬣のライオン》→《先頭に立つもの、アナフェンザ》の動きで、実はこの2体+除去だけで5ターンキルが出来る(3点→8点→9点で「怪物化」しなくても合計20点)。
《先頭に立つもの、アナフェンザ》は伝説のクリーチャーで2枚引きたくないため減らしたが、追放能力が《炎跡のフェニックス》《灰雲のフェニックス》コンビに強く、また《エレボスの鞭》デッキにも効く。ベストな動きに絡むカードなので、4枚にすべきだ。
赤緑やアブザンアグロ同型に強く、中盤のマナフラッドを解消できる《クルフィックスの狩猟者》は入れたい。しかし《先頭に立つもの、アナフェンザ》が手札にあればそちらを優先するし、《包囲サイ》の場合もサイ優先だ。ゲーム中に1枚引けばいいカードなので、2枚が適正。
新キャラ《黄金牙、タシグル》は消耗戦に強く、能力も《クルフィックスの狩猟者》と相性が良い(ライブラリー上の余分な土地を墓地に落とせる)
しかし問題は、このカードが実質何マナかということだ。よくあった手札が「土地4枚、除去、《黄金牙、タシグル》、《風番いのロック》」で、この《黄金牙、タシグル》が他のクリーチャーなら何でもいいのに、と思ったものだ。
《黄金牙、タシグル》は4マナ相当のカードであり、4マナはすでに溢れている。他のクリーチャーよりも優先度が低いため、残念だがデッキから外そう。
現在のスタンダードの仮想敵として「アブザンアグロ」「赤緑モンスター」を設定した。
その2つに最も強いのは《風番いのロック》だ。同型は除去とクリーチャーの応酬となるため、どこかで2回行動しなければいけない。赤緑も《世界を喰らう者、ポルクラノス》《嵐の息吹のドラゴン》と殴り合いになる。そのどちらも克服できるのが《風番いのロック》だ。
上記2つを強敵だと判断するなら、それに強い《風番いのロック》は4枚入れるべきだ。そうでないと、デッキ構築の段階でハンデを背負っていることになる。
・スペルの選択。
《勇敢な姿勢》は緑には強いが赤に弱い。前述のフェニックスコンビや《ゴブリンの熟練扇動者》《嵐の息吹のドラゴン》のどれも除去することができないからだ。
アブザンは《風番いのロック》《アブザンの魔除け》をすり抜ける《嵐の息吹のドラゴン》を苦手とする(《英雄の破滅》で対処は出来るが、それまでに使ってしまっていることが多い)。
必要なのは白除去ではなく、追加の黒除去《残忍な切断》だ。
赤いデッキや《女王スズメバチ》に負けないためにも、《胆汁病》はメイン3枚から減らすことはないだろう。《胆汁病》《悲哀まみれ》があるからこそ、アブザンはビートダウン耐性を保てている。
現在はコントロールデッキが少なくビートダウンが多いため、《思考囲い》が弱い環境だ。例えば2マナのカードを手札から落としても、同じマナ域のものを展開されるといったことが多い。
■ 実践
以上を踏まえて、PTQ『タルキール龍記伝』大阪予選に参加。
2 《平地》 2 《森》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《砂草原の城塞》 3 《疾病の神殿》 3 《静寂の神殿》 3 《コイロスの洞窟》 3 《ラノワールの荒原》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(25)- 4 《羊毛鬣のライオン》 4 《ラクシャーサの死与え》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 2 《クルフィックスの狩猟者》 4 《包囲サイ》 4 《風番いのロック》 -クリーチャー(22)- |
2 《思考囲い》 3 《胆汁病》 4 《英雄の破滅》 3 《アブザンの魔除け》 1 《真面目な訪問者、ソリン》 -呪文(13)- |
2 《思考囲い》 2 《消去》 2 《異端の輝き》 2 《悲哀まみれ》 2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 1 《胆汁病》 1 《残忍な切断》 1 《真面目な訪問者、ソリン》 -サイドボード(15)- |
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
Round 1 | 緑信心タッチ赤 | ○○ |
Round 2 | ジェスカイ | ○○ |
Round 3 | 赤白ビート | ×○× |
Round 4 | マルドゥミッドレンジ | ×○○ |
Round 5 | 赤緑モンスター | ×○○ |
Round 6 | 青黒コントロール | ○○ |
Round 7 | ティムールビート | ○×○ |
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
準々決勝 | 赤白ビート | ×○○ |
準決勝 | 赤単 | ○○ |
決勝 | アブザンアグロ | ○○ |
(【BIGMAGICさんの特設ページ】)
優勝。
スイス最終戦はIDでもトップ8 に残るラインだったが、決勝の先攻権狙いでIDせず。
もちろん負けてトップ8 から落ちる可能性もあるが、アブザンアグロが先攻を取れることはとても重要だ。PTQの目的は優勝することであり、トップ8 に入ることではない。
準々決勝の赤白ビート相手は、3本目にダブルマリガンしてしまったが初手に恵まれ、相手が土地を多く引いたことで勝つことが出来た。
殿堂プレイヤーのパトリックチャピンが記事で「マリガンして負けたかい?ダブルマリガンすべきではなかったかい?」と書いていたのを思い出す。
その後準決勝の赤単と決勝のアブザンアグロ相手はマリガンもなく、初手に恵まれて勝つことが出来た。
やった!プロツアーだ!
■ 変更箇所
これだけビート環境だと《思考囲い》が弱い。実際マルドゥと青黒相手以外は毎回サイドアウトしていた。
次に出るなら青黒はいないと割り切って、メイン《思考囲い》2枚を《残忍な切断》《真面目な訪問者、ソリン》に変更するだろう。
さて、これからはGP京都に向けて、レガシーを研究する予定だ。
また次回。
高橋優太