PWCチャンピオンシップも既に第3回戦。
3byeを持つプレイヤーがフューチャーテーブルを取り囲む。そのテーブルで15枚のサイドボードを広げているのは、ご存知ミスターPWC、中村 肇。
PWCチャンピオンシップは一年間の総決算で、トップ8のあるトーナメントではあるのだが、PWCポイントレースが関わっているものではないということもあり、PWC常連陣の一部にとっては、お祭りのようなイベントなのだ。
中村 肇、渡辺 雄也、そして彼らにそそのかされてしまった何人かのプレイヤーは、毎年このPWCチャンピオンシップでデッキシャッフルを行う。
「デッキをシャッフル」しているのではない。「デッキシャッフルを」しているのだ。
説明しよう。デッキシャッフルとは、これから運命のじゃんけんを行うプレイヤーがそれぞれデッキを持ち寄り、それらのデッキを誰が使うかランダムで決める、というものだ。
運命のじゃんけんによって敗北したプレイヤーは、「PWCチャンピオンシップならでは」のデッキを使わなくてはならない。
すなわち、プレインズウォーカーとそれにまつわるカードたちをサイドボードに入れたデッキを使用するのだ。
だがそんなお祭りデッキを使用する中村の現在のスコアはなんと2-0。先ほどのラウンドも中村劇場としか言いようのない圧倒的「めくり」を見せつけ、あの伊藤 光英(日本選手権11 トップ8)を粉砕したとか。
このフューチャーマッチでも、中村は劇場を見せ付けてくれるのであろうか。そこには、ある意味予想内の、予想外の結果が待ち受けていた。
Game 1
中村劇場は、意気揚々としたキープ宣言で幕を開けた。
《踏み鳴らされる地》を舞台に、《エルフの神秘家》、《ザル=ターのドルイド》とマナクリーチャーを演者として並べる。中村の劇場には、いくつかのマナが必要不可欠なのだ。
そしてラクドスビートダウンを駆る松下が《ラクドスの哄笑者》で攻撃し、《快楽殺人の暗殺者》を追加してくると、中村は「クライマックスだ」といわんばかりに4マナを生み出した。
中村が詠うは《予想外の結果》。
中村の壇上から舞い降りたのは《世界棘のワーム》!
この空から降ってきた突然の主役に、松下は頭を抱える。一方の中村は最高潮を迎えた自らの舞台に上機嫌。
そしてこの中村劇場は、中村が放った《天才の煽り》(11点)によって幕引きとなった。
中村 1-0 松下
Game 2
僅か四ターンで終わった中村劇場の第一公演に松下はあっけに取られてしまったのか、マリガンに見舞われる。不運は重なるもので更に手札をもう1枚減らしてしまったが、5枚はとても満足のいくものらしく、《快楽殺人の暗殺者》から《生命散らしのゾンビ》と展開する。
《生命散らしのゾンビ》で《世界棘のワーム》という役者を失ってしまった中村劇場だったのだが、そんな中村劇団長を心配してか、手札にはどんどんと主役が駆けつけてくる。《獣の統率者、ガラク》に、今度は《太陽の勇者、エルズペス》だ。ちなみに戦場にある土地は2枚の《奔放の神殿》と《繁殖池》、そして《森》である。彼女が舞台に降り立つことはまずないだろう。
が、そんなことには構わず中村は強引にクライマックスを宣言する。
もちろん主役を呼び出す《予想外の結果》だ。
そしてそんな名前とはうらはらに、まるで予想していたかのように中村がライブラリーからめくりだしたのは《世界棘のワーム》。
この突然の主役の存在に松下は恐れる。が、前に進むしかない。中村の舞台の中止を望み、2体の《生命散らしのゾンビ》で攻撃を仕掛ける。
そしてここで打ち込んだ《思考囲い》が中村の手札から《天才の煽り》を抜き去ったことで、中村公演は第三公演に続く――と思われた。
だが中村はカーテンコールを行った。そして第三公演も存在しなかった。
ドローしたカードは《天才の煽り》。
中村劇団長は《天才の煽り》(11点)により、速やかにこの舞台の幕引きを行った。
中村 2-0 松下