PWCC2010で仙波 恒太郎、PWCC2011で斉田 逸寛、そしてPWCC2012と2013で遠藤 亮太。
日本最大級の草の根大会、PWCの頂点に立ったプレイヤーたち。
これらの歴史を見ればわかるとおり、その栄光を掴み取ったのはいずれも本物の強者ばかりだった。
そして今ここに。
その命脈を受け継がんとする男が2人。
グルールを駆る金子。今をときめくチーム「豚小屋」から、PWCの頂点に臨む者がついに現れた。
バーンの徐。メタゲームの隙間をついたデッキ選択と、正確なライフ計算で、中村 肇をはじめとした幾多の強豪を屠ってきた。
向かい合う彼らの表情に、険の色はない。
知っているのだ。目の前の対戦相手が、自分を倒してもおかしくないほどの相手だと。それだけ強いからこそ、今この場に座っているのだと。
ここまで来れば、どちらが勝っても不思議ではない。その事実を、受け入れているのだ。
だが、自分だって負けるつもりはない。全力でやる。負けても悔いはないが、それとこれとは話が別だ。
その相反した複雑な感情が、2人の面持ちを不思議と穏やかなものにしていた。
そう、ここがPWCCの決勝戦。
今日参加した100人強が座ることを夢見ては散っていった、最高のステージ。
勝者は、PWCの新たなる生ける伝説となる。その名前は、PWCの歴史に永遠に刻まれる。
ここから次世代のPWCの物語を紡ぎはじめるのは。
金子と徐、はたしてどちらのプレインズウォーカーか。
なお、閉場時間の関係で、決勝戦のみゲームスペース柏木に場所を移して行われた。
快く場所を提供してくださったゲームスペース柏木の皆様には、心より感謝を。
Game 1
先手の徐がマリガンスタート。金子の《エルフの神秘家》を《マグマの噴流》で「焼き鳥」ならぬ「焼きエルフ」にする立ち上がり。
それでも、めげずに返しで《森の女人像》を送り出す金子だが、徐は意に介さず《チャンドラのフェニックス》を戦線に投入する。
しかしここで金子がプレイしたのは「バーンの天敵」《クルフィックスの狩猟者》。ライブラリトップから土地を置き、アドバンテージとライフを獲得しにいく。
さらに金子、徐の動きが芳しくないとみるや、続けて2体目の《クルフィックスの狩猟者》!
このさながら緑の《闇の腹心》が土地をめくり続け、ライフが一向に減らない。
満を持して《世界を喰らう者、ポルクラノス》を送り出すと、続くターンには攻撃に向かわせ、《ゴーア族の暴行者》を「湧血」。
そして。
第2メインの《肉体+血流》が、徐を速やかに介錯した。
金子 1-0 徐
Game 2
金子が秒マリガンに対し、徐は7枚キープするが、決して楽ではない。
《山》
《灰の盲信者》
《ショック》
《ショック》
《マグマの噴流》
《灼熱の血》
《ミジウムの迫撃砲》
という手札を、意を決してキープしたからだ。
その目論見通り、金子の初動《エルフの神秘家》は《ショック》するが、なかなか2枚目の土地が置けない。
だが、マナが必要なのは金子も同じだった。
続けて《漁る軟泥》を送り出したものの、土地が3枚でぴたりと止まり、しかも何らのアクションをも取ることができない。
そして先に土地にたどり着いたのは、徐だった。
早速《ミジウムの迫撃砲》で《漁る軟泥》を処理すると、金子がようやく引き込んだ《エルフの神秘家》を、無情にも《灼熱の血》で屠る。
続けて3枚目の土地を引き込んだ徐、《ボロスの反攻者》を送り出すと、これは金子に痛みを覚悟で《ミジウムの迫撃砲》されるものの、《灰の盲信者》が「速攻」でダメージを刻む。
と、ここでようやく4枚目の土地を引いた金子。《歓楽者ゼナゴス》をプレイするが、時既に遅し。ライフはもはや徐の射程圏内。
エンド前の《マグマの噴流》から《チャンドラのフェニックス》を走らせると、《頭蓋割り》と《戦導者のらせん》が金子を綺麗に焼き切った。
金子 1-1 徐
Game 3
ここにきてお互いマリガン。金子は《エルフの神秘家》スタートだが、続くターンに土地を置かずに2枚目の《エルフの神秘家》を展開という苦しい立ち上がり。当然この隙を見逃すまいと徐、1体を《マグマの噴流》で処理。
返す金子の気合いを入れたドロー……だが、土地が引けない。
それならと残ったもう1体にも《灼熱の血》を撃ちこまれ、そのわずか1ターン後に《山》をトップ。わずかカード1枚の前後に歯噛みする金子だが、文句を言っても始まらない。何より、ゲームはまだ終わっていない。
その証拠に、徐の《チャンドラのフェニックス》がクロックを刻み始めた返しのターン、金子はしっかりと3枚目の土地を引き込むと、逆転の要である《クルフィックスの狩猟者》を送り出す。
対する徐、ここにきてフラッドしてしまい、《世界を喰らう者、ポルクラノス》に対して果敢に《ボロスの魔除け》でダメージレースを仕掛けようとするが、既にリソースは残り少ない。
しかも続くターンに金子がキャストしたのは、クロックを減らしつつライフを引き戻す《食餌の時間》!
それでも、落ちた不死鳥を《稲妻の一撃》を本体に撃ちこんで回収しつつ、《灰の盲信者》と合わせて金子のライフをどうにか残り4まで落とし込むのだが、もはやあとはトップ頼み。
対する金子も、徐のライフを微妙に詰め切れない。土地は4枚しかないというのに、《クルフィックスの狩猟者》がめくるトップは2枚連続で《嵐の息吹のドラゴン》。プレイできれば、勝てるのに。優勝なのに。
やむなく徐のクリーチャー2体ともを《ミジウムの迫撃砲》2枚で更地にしてターンを返す。
徐の手つきにも力が入る。引けば勝てるのだ。《ボロスの魔除け》か《戦導者のらせん》。それさえ引けば、優勝できる。
徐のドローは……
《岩への繋ぎ止め》。まだだ。《世界を喰らう者、ポルクラノス》を追放した上で、もし《クルフィックスの狩猟者》が土地をめくらなければ、もう1ターンあるかもしれない。
はたして、金子の《クルフィックスの狩猟者》は土地をめくらなかった。大きく安堵の息を漏らす徐。
だが、アタックによって徐のライフはいよいよ残り2。今度こそ、ラストターン。
今度こそ。4点火力。《ボロスの魔除け》か《戦導者のらせん》。
引け!
徐のドロー。
ラストドローは。
その、結末は。
土地だった。
金子 2-1 徐
PWCの下位テーブルから始まった「豚小屋」勢だったが。
今日、ついにPWCの頂点に立ったのだ。
もはや弱小の代名詞としての「豚小屋」に甘んじる時期は過ぎ去った。
これからはPWCが誇る最強チームとして、「豚小屋」の名が轟いていくことだろう。
なぜならば、彼らは強い。
ただマジックが強いだけでなく、仲間同士が互いをライバルとして高めあい、切磋琢磨し、それでいて仲間の活躍を素直に称えることができる、強い絆がある。
だから勝てる。きっと、これからも。
かつて渡辺 雄也を輩出し、今や関東の若き才能の登竜門となったPWC。そんなPWCから始まる、また新しい伝説。
その幕開けに、私たちは立ち会った。
PWCC2014、優勝は金子 佑!おめでとう!!