こんにちは!
突然ですが、みなさんはふたつのデッキを組み合わせて、ひとつのデッキにしてみたいと考えたことはないですか?
そのような各デッキの良いとこ取りをしたデッキは、「ハイブリッド」と呼ばれることが多いですが、ふたつのデッキをバランスよくひとつにまとめあげることは実に難しく、長いマジックの歴史をひも解いてみても、なかなか代表作と言えるものは見つかりません。
しかしながら、今回ご紹介させていただくデッキは、そんな「ハイブリッド」を非常に高い水準でクリアしたものです。
これまでの【コガモメモリーズ】で、「Trix」と、「TurboLand」をご覧いただいたわけですが、何を隠そう今回のデッキは、そのふたつのデッキを見事に融合させたこのデッキです。
14 《島》 2 《森》 4 《Tropical Island》 2 《ヤヴィマヤの沿岸》 -土地(22)- 1 《スパイクの織り手》 1 《変異種》 1 《セファリッドの皇帝アボシャン》 -クリーチャー(3)- |
1 《渦まく知識》 4 《蓄積した知識》 4 《対抗呪文》 3 《商人の巻物》 2 《ガイアの祝福》 3 《直観》 3 《寄付》 1 《転覆》 4 《Force of Will》 3 《ドルイドの誓い》 3 《Illusions of Grandeur》 4 《サファイアの大メダル》 -呪文(35)- |
4 《火薬樽》 3 《基本に帰れ》 3 《綿密な分析》 3 《ワームの咆哮》 2 《現実の修正》 -サイドボード(15)- |
このデッキが誕生した理由として、突如として現れた「ミラクルグロウ」というデッキが猛威を振るい、「Trix」を王座から引きずり下ろしたといった背景がありました。
コンボデッキはマナに大幅な制限をかける《冬の宝珠》がいかんともしがたく、《目くらまし》や《Force of Will》のバックアップ、さらには優秀な軽量クリーチャー擁する「ミラクルグロウ」は、「Trix」デッキにとってまさしく天敵と呼べる存在でした。
そんな中でチーム「Fireball」が作り上げたマスターピースは、「最強のコンボデッキ」と「最強のクリーチャー対策」の「ハイブリッド」でした。
左から岡本 尋、池田 剛、石田 格。(敬称略)
《ドルイドの誓い》がクリーチャーデッキに対して圧倒的な制圧力を発揮するのは、前回お伝えした通り。ただし、いかに《ドルイドの誓い》が強力と言えど、《冬の宝珠》が通ってしまった場合には多くのデッキが苦戦を強いられることになります。
そこで「Fireball」のみなさんが目を付けたカードは、それまで構築戦で全くお呼びのかかることのなかった《セファリッドの皇帝アボシャン》です。
当時は「アーティファクトはタップ状態になると常在型能力を失う」というルールがあったため、《セファリッドの皇帝アボシャン》のひとつめの能力は完全なる《冬の宝珠》対策として機能しました。
「Trix」と「Oath」の融合、そして《セファリッドの皇帝アボシャン》の採用。これだけでも歴史を作るに十分な意欲作と言えますが、このデッキにはまだまだたくさんの驚きのギミックが搭載されています。
《ガイアの祝福》には「ライブラリーから直接墓地に落ちるとライブラリーを修復する」という能力が付いていますが、《直観》から2枚の《ガイアの祝福》を導けば、必ずこの能力が誘発するので、ライブラリーをリフレッシュすることができます。
コントロール対決では、ライブラリーの密度、主にカウンター呪文が何枚残っているかは非常に重要だったので、《ガイアの祝福》を利用したライブラリー修復は重宝しました。もちろん《ガイアの祝福》を普通にキャストして、3枚の《蓄積した知識》をライブラリーに戻し、本来ならばあまり有効でないはずの2枚目の《直観》を有効活用することも可能でした。
そして極めつけはサイドボードです。《直観》から《蓄積した知識》を導くシステムは、当時の青いデッキでは一般的なものでしたが、《蓄積した知識》は全ての墓地を参照にするので、対戦相手のデッキにも《蓄積した知識》が入っていると、自分から動けないという欠点がありました。
それを改善すべく採用されているのが《綿密な分析》というわけです。
仮に対戦相手が《直観》と《綿密な分析》ギミックを知らないとすると、対戦相手からしてみれば、痺れを切らして《蓄積した知識》を持ってくるように見えるので、《直観》をカウンターされづらいことも《綿密な分析》の強みでした。
最後に、《直観》を利用した最大のギミックが《ワームの咆哮》です。
押し寄せる《ワームの咆哮》の群れ。これは《ドルイドの誓い》やコンボで勝つのが難しいマッチアップにおける必殺技です。
実際に尋さんはこれらのギミックを駆使し、ある時はワームの群れで対戦相手を蹂躙し、またある時は《綿密な分析》で爆発的なアドバンテージを稼ぎだして勝ち星を重ねていきました。
残念ながら優勝とはいきませんでしたが、このデッキが世界に与えたインパクトは計り知れません。
惜しむらくは、「エクステンデッド」のローテーションによりこのデッキを使用する時間がほとんどなかったことですが、いずれにせよ日本が世界に送り出した素晴らしいデッキでした。
実は、チーム「Fireball」が作り出した傑作にはもっともっと有名なものがあるのですが、それはまた次の機会に。
また、昔のデッキがお好きな方は、平林さんの記事もぜひご覧ください。
僕よりも早くトーナメントマジックに打ち込んでいる平林さんだけあって、読みごたえは抜群!
連載が終わってしまったのが残念でなりませんが、いつ読んでも面白い記事なので、お時間のある時にぜひご一読ください♪
それでは、また次回!
※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『Magic: the Gathering』
http://magic.wizards.com/en/magic-gathering
コガモ