プレイヤーインタビュー: 今期のPWCを代表する4人のプレイヤー

晴れる屋

By Atsushi Ito


 今年もこの季節がやってきた。PWC Championship 2011……2010年度のPWC総決算となる、招待制の一大イベントだ。

 フォーマットはスタンダード。スイスドロー方式での予選7回戦の後、トップ8によるシングルエリミネーションでチャンピオンを決定する。

 なお今回のPWCCでは、独自のポイントランキング制を採用するPWCならではの、やはり独自のbye(不戦勝)システムを採っている。

 その内容は、シーズン中のPWC個人戦での優勝経験者にスイスラウンドの1byeが、今シーズンのPWCランキング上位8名に1~3byeが、それぞれ与えられ、各参加者は最大3byeまで獲得することができるというものだ。

 いずれにしてもかなり難しい条件だ……とはいえ、シーズン中に40回強の個人戦PWCが開催されている以上は、個人戦で優勝したことによる1byeを持っているプレイヤーは数多くいることになる。

 だが、このPWCC2011の参加者97名の中でも、ポイントランキング最上位に名を連ね、上限の3byeを持っているプレイヤーとなると。

 今期の「ミスターPWC」である和田 寛也(神奈川)を筆頭に、前(第5期)ミスターの相澤 啓司(東京)、今シーズンの個人戦優勝回数ではトップタイ(3回)の鈴木 明由(神奈川)、そしてFinals10王者の仙波 恒太郎(千葉)という、わずか4名のみなのだ。

 つまりこの4名が優勝候補筆頭ということになるわけだが、それも彼らが今シーズンPWCに数多く参加し、他の誰よりも多くのポイントを積み上げたからに他ならない。したがって彼らこそ、今期のPWCを代表するにふさわしいプレイヤーといえるだろう。

 そこで、それほどまでにPWCを愛してやまない(と思われる)彼らに、不戦勝の間を利用してインタビューをさせてもらった。



Q1.PWCに初めて参加されたのはいつですか?

和田 「僕がマジックを始めたのが確か2007年で、初めてのPWCは《腐れ蔦の外套》がスタンダードで使える最後の大会とかだったと思います。結構最近なんです」

相澤 「正確にはもう覚えてないですね・・・7~8年前だろうとは思います。そこからナベと仲良くなって、グランプリ京都07の青赤トロンが出来たりしましたね」

仙波 「おおよそ2年くらい前だと思います」

鈴木 「忘れました(笑)」







Q2.本日使用されるデッキを教えてください。また、その中で特にイチオシのカード、構成、戦略などがあればそれもお願いします。

和田 「緑単エルドラージです。メインに《絡み線の壁》《石鍛冶の神秘家》システムに強い。《草茂る胸壁》《緑の太陽の頂点》で集める戦略とも噛み合っていますし。またそろそろボロスに限界を感じてきている、というのもあります。《戦隊の鷹》《石鍛冶の神秘家》がメタられ始めているので。友人の海老江とも話し合って決めました」

相澤 「僕は《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》デッキです。ヴァラクートは《緑の太陽の頂点》型と《召喚の罠》型とに分けられると思うんですけど、マナブーストをクリーチャーに頼るのは相手に対処される弱みを増やしてしまうので、よりマクロな視点では個人的にありえないと思います。同型だけは緑頂点型の方が当たりが増えて強いんですけどね」

仙波 「タッチ黒のCaw-Bladeです。上位陣にヴァラクートが残ると睨んでの選択です。」

鈴木 「オーソドックスなCaw-Bladeなんであまり語る部分がないですね。タッチ赤やタッチ黒も試したけど結局2色に落ち着きました」




Q3.目標は当然優勝だと思いますが、立ちはだかる最大のライバルと考えているのは誰か、教えてください。

和田 「AKKA(相澤)さんですね。デッキ的にも《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》は乗り越えなければならないところですし、プレイヤーとしてもPWCで最も高いレベルで尊敬しています」

相澤 「やはり仙波さんですね。去年のPWCCトップ8で負けて、仙波さんがそのまま優勝しているので」

仙波 「知り合いの内田君と・・・前回のPWCCの予選ラウンドで唯一負けたKAKAO(中村)ですね」

鈴木 「Hanoiさん(和田)です」








Q4.4月に控えるグランプリ神戸には参加されますか?また、エクステンデッドで注目のデッキまたはカードはありますか?

和田 「参加します。今注目しているのは《死裂の剣》が入ったTrap-Bridgeですね。」

相澤 「参加できるかは微妙ですが、もし出るとしたら僕はずっと王道のデッキを使っているので、赤緑ヴァラクートかフェアリーですね」

仙波 「できれば行きたいです。エルフがメインデッキ最強かなーと思ってます」

鈴木 「たぶん行きます。僕は今のところフェアリーですね」



Q5.来期もPWCに参加されますか?

和田 「来期もできる範囲で参加していきたいです。」

相澤「今期29回欠席しても2位だったんで(笑)、来期もできるだけ出ます!」

仙波「もちろん参加します!」

鈴木「します」











Q6.今後PWCに望むことがもしあれば、教えてください。

和田 「PWCのレベルが一時期に比べて下がったという話をよく耳にするんですけど、確かにナベをはじめとして本当に一流のプレイヤーは減っている感じがするとはいえ、一生懸命やっているプレイヤーもたくさんいるんで、そんなこと言われないように僕も含めてもっとPWCに参加するプレイヤーのレベルが上がったらいいなと思います。」

相澤 「時間的・スタッフ的に厳しいかもしれないけれど、あえて言わせてもらうと、できればたまにはトップ8のシングルエリミがやりたいですね。あるかないかで士気が全然違う。月イチとかでもいいので」

仙波 「それは僕もそう思います。優勝しなくてもまあいいか、ってなるんですよね。最終戦でIDが頻発したりしているとちょっと萎える」

鈴木 「ドラフト好きだからリミテッドにも少し力を入れて欲しいかも。」



Q7.PWCの良い点はたくさんあると思いますが、その中で特に魅力的だと感じるのはどういった部分か、教えてください。

和田 「日本で最大級の草の根大会であるというのがやはり強みですね。レベルが下がったなんて話もしましたけど、それでも草の根として最高レベルであることに変わりはなく、いいトーナメントだと思います。」

相澤 「PWCに来れば知り合いがたくさんできて、会場に来れば誰かと会えるというのがいいですね。」

仙波 「強い人たちといつでも戦えるチャンスがある、という点だと思います。」

鈴木 「ほとんど毎週のように開かれていて、大会の回数が多いことですね。」

--ありがとうございました。




 インタビューの後、和田が「どうしても言っておきたいことがあって」と語り出した。

和田 「今期僕がミスターPWCを獲得できたのは僕一人の力だけではない、と考えています。今期のPWCでは6回優勝してるんですけど、そのうち3回はチーム戦で、そのチームメイトには毎回、友人である海老江さんがいたんです。」

和田 「それだけでなく、海老江さんは僕が大会に出る度に電話で的確なアドバイスをしてくれました。つまり僕の躍進は海老江さんの協力があればこそで、ミスターPWCという称号は二人で獲得したんだと考えています。そもそも僕がボロスを使いだしたのは、海老江さんがミラディンの傷跡発売当初に「ボロスいいじゃん」と言ってくれたからなんです。共に考え、戦ってくれた友人がいたから。これだけはカバレッジに載せて欲しかった」

 友人との絆を強調するのは和田だけではない。昨年のFinals10で、決勝戦を制した仙波の元に仲間たちが集ったときの写真はとても印象的だった。そして相澤や鈴木もまた、膨大なPWCポイントを稼ぐことは彼ら自身の力だけでは決してなしえなかったことだろう。友人から1年を通してPWCに積極的に参加するモチベーションを得て、この場に立っているのだ。

 仲間たちと切磋琢磨し、今高みに立っている4名。彼らが活躍する舞台PWCへ、これを読んだあなたも是非一度足を運んで見てほしい。