最近は「家眠杯」なるものがあるらしい。
もし私、平林が出るとしたら、何を持っていくだろうか。
そう考えたとき、5つのデッキに思い至った。
18年のマジック歴の中でも、特に思い入れの深い、大好きなデッキたち。
私の好きな5つの物語を、語らせて欲しい。
第3回となる今回登場するのはアングリーグール。
聞きなれない諸兄も多いかもしれない。
これは若干個人的なデッキであり、トーナメントシーンにおいての賞味期限もまた短かかった。
ただ即死コンボ、とりわけ《縫合グール》をテーマとするコンボデッキとして見れば一時代を築いたものであり、アングリーグールもまたその系譜に名を連ねるデッキである。
つまり第2回のテーマが「サイクル型コンボデッキ」なら、第3回のテーマは「即死型コンボデッキ」だ。
端的に言うなら、成立する=ゲームに勝利するというのが誰の目にも明らかである、と定義できるデッキになる。
まずはその中でも旧スタンダード、またエクステンデッドでの系譜について語っていくことにしよう。
1.即死コンボデッキ
マジックにおける即死コンボ、それはマジックというカードゲームが始まったその時から既に存在していた。
《チャネル》《火の玉》。
かの有名なチーム、ChannelFireballのチーム名でもあるわけで、耳にしたことのあるプレイヤーも多いのではないだろうか。
ちなみにこの場合のX点火力は必ず《火の玉》である。決して《分解》ではないし、《ケアヴェクの火吹き》(*1)でもない。
それは何故か?
例えばスタックを解説する時には必ず《灰色熊》と《ショック》が使われるようなものだ。わざわざ《カヴーのタイタン》を使うこともないし、同じ2マナ2/2だからといって《栄光の探求者》というわけでもない。
《灰色熊》なのである。
つまりはそういうことだ(*2)。
さて件の《チャネル》。
もちろん許されることも無く、トーナメントレギュレーションが制定されると速やかに制限へ。そのまま禁止カードに送られてしまっている。
それもそうだ、誰だって理不尽な、安直な敗北は受け入れがたい。
そう、現実的な即死コンボというのは難しい。ゲーム性を不健全にしないため、カードデザイン、とりわけディベロップ(*3)の段階でそういう要素は取り払われてしまうからだ。
誰だってダイスロールの先手後手が明確な決着に繋がるゲームはしたくないし、土地を置く前に決まってしまうゲームではいずれ飽きられてしまう(*4)。
そして逸脱していることが確認された場合には、「禁止カード」という鉄槌が下される。
だがプレイヤーの探究心というものは、そういう締め付けをも掻い潜ろうとするものだ。自分(たち)だけが有利なセカイを求めて、アンフェアなデッキを模索する。
そういった「いたちごっこ」がトーナメントの一面であり、プレミアイベントというのはある種の実験場になり得る。
前稿含め、コンボデッキの系譜を見るということは、数多のプレイヤーの探究心を読み解くことに他ならない。
「少しでも有利な環境で戦おう」という、ある種の根源的な思いが珠玉のコンボデッキを作り上げた。
デッキとはプレイヤーの意志が具現化したものである。
デッキリストを見る際に、その作り手の意図も考えてみたならば、より楽しめるのではないかと思う。
*1 《ケアヴェクの火吹き》
カウンター耐性のあるX点火力。
名前だけでピンと来た人は相当キャリア長いはず。
もちろん《悪魔火》や《苦悩火》と置き換えることも出来る。→戻る
*2 つまりはそういうことだ。
わびさび。
マジックのファンタジー的な側面を踏まえた上で、紹介しやすい象徴的なカードということでもある。
誰だって古典的なカードは好きだし、大事にする。→戻る
*3 ディベロップ
開発。
ゲーム性、また競技性を損ねないかのテストが入念に行われている。→戻る
*4 土地を置く前に決まってしまうゲームでは~
いわゆる1ターンキル。
手札破壊すら許されず、ほとんど《Force of Will》頼み。→戻る
2.旧世界のコンボたち
初期マジックの即死コンボには原則がある。それは2枚コンボは許されないという原則だ。
かのおにぎりシュート(*5)が許容されなかったことからもそれは見てとれるだろう。
ただしあくまで「対策が難しい」コンボに限られている、というのもポイントかもしれない。
例えばトリックス―――《Illusions of Grandeur》《寄付》コンボは許された。既に設置された《浄化の印章》が致命的な存在になる上(*6)、結局のところライフ20点を削るだけのコンボだからだ(*7)。
また現代の《欠片の双子》コンボについても同じことが言えるだろう。コンボに必要なマナが多く、クリーチャーという脆弱なパーツに依存したコンボ。
《呪文滑り》《亡霊の牢獄》《静寂の守り手、リンヴァーラ》など弱点も多い《欠片の双子》に関しては、今回の例外とさせてもらいたい。
というわけで以下に記載されるものは、3枚のカードをキーパーツとするコンボデッキたちになる。
◆パンドレッド
4 《島》 3 《山》 1 《沼》 4 《硫黄泉》 3 《地底の大河》 2 《アダーカー荒原》 3 《宝石鉱山》 2 《反射池》 1 《知られざる楽園》 -土地(23)- 4 《ファイレクシアン・ドレッドノート》 -クリーチャー(4)- |
4 《吸血の教示者》 3 《再活性》 2 《先触れ》 2 《魔力消沈》 4 《衝動》 3 《マナ漏出》 1 《中断》 1 《解呪》 1 《対抗呪文》 4 《直観》 4 《伏魔殿》 4 《魔力の櫃》 -呪文(33)- |
4 《紅蓮破》 3 《憂鬱》 2 《水流破》 2 《日中の光》 1 《ウークタビー・オランウータン》 1 《解呪》 1 《地に平穏》 1 《非業の死》 -サイドボード(15)- |
日本三大地雷(*8)である笹沼希予志作の瞬殺コンボデッキ。
見てそのまま、《伏魔殿》を設置した後に《ファイレクシアン・ドレッドノート》を2回プレイする、ただそれだけのデッキである。
通常《ファイレクシアン・ドレッドノート》を維持するためには多大なリソースを必要となってしまうのだが、「場に出す」ことだけを必要とするパンドレッドにとってはただの超効率的な1マナクリーチャーに過ぎない。
また《ファイレクシアン・ドレッドノート》そのものはただダメージ源として使い捨てるためにのみ存在するため、枚数カウントの水増しとして《再活性》も入っている。
それにしても、デッキリストを見ていると隔世の感がある。
コンボパーツそのものよりもそれ以外のパーツにこそその時代を感じさせる、といった感慨を受ける方もいるのではないか。
例えば《吸血の教示者》。
既にレガシーで許されないこのカードに高度依存したデッキは、当時スタンダードからエクステンデッドまで幅広く存在していた。
また、ただのカウンターではない《魔力消沈》(*9)や《先触れ》(*10)等はまさしくこの時代にのみ使われていたカードだった。
◆パンデバースト
9 《島》 4 《平地》 2 《Tundra》 2 《Volcanic Island》 1 《Tropical Island》 4 《氾濫原》 1 《古えの墳墓》 1 《裏切り者の都》 -土地(24)- -クリーチャー(0)- |
4 《渦まく知識》 1 《神秘の教示者》 1 《無効》 4 《商人の巻物》 4 《対抗呪文》 4 《大あわての捜索》 4 《直観》 4 《補充》 4 《Force of Will》 2 《軽快なリフレイン》 2 《伏魔殿》 2 《はじける子嚢》 -呪文(36)- |
4 《水流破》 3 《無効》 2 《紅蓮破》 2 《浄化の印章》 2 《火薬樽》 1 《神の怒り》 1 《誤った指図》 -サイドボード(15)- |
またもや《伏魔殿》。
スタンダード期に《オパール色の輝き》と併用した《補充》コンボデッキが存在していたが、こちらはエクステンデッドらしくもっとスマートな形になっている。
何しろFires(*11)で活躍した《はじける子嚢》を《伏魔殿》とともにプレイする、ただそれだけで21点のダメージを与えられるのだから。
・6/6を場に→6点
・5/5→5点
・4点
以下略
・5/5→5点
・4点
以下略
このデッキの強力さは、肝心のコンボパーツを《直観》のおかげで必要最小限に留めることが出来る点にある。
無論《大あわての捜索》を経由する必要は出てきてしまうのだが、それでも手札に来ると完全に死に札(*12)になってしまうパーツを減らすことの出来るメリットはあまりに大きい。
また《渦まく知識》&フェッチランド(*13)、《対抗呪文》《Force of Will》といった基本パッケージを兼ね備えたコンボデッキ、といった部分も着目すべきところだろう。
この部分については以降のグレイトフルデックスで語る予定であるが、単純なコンボデッキではなく、コントロールとしても振舞えるコンボデッキほど厄介な存在は無い。
なおキーパーツである《補充》は2001年4月より禁止カードとなっている。
◆玉虫アルター
3 《沼》 3 《森》 2 《島》 4 《地底の大河》 4 《真鍮の都》 4 《古えの墳墓》 4 《裏切り者の都》 -土地(24)- 4 《猟場番》 1 《玉虫色のドレイク》 -クリーチャー(5)- |
4 《強迫》 4 《吸血の教示者》 1 《魔力消沈》 1 《記憶の欠落》 1 《マナ漏出》 4 《直観》 1 《撤回》 4 《誘拐》 4 《モックス・ダイアモンド》 4 《狂気の祭壇》 3 《巻物棚》 -呪文(31)- |
2 《解呪》 2 《急速な衰微》 2 《ロボトミー》 2 《夜の戦慄》 2 《防御の光網》 1 《新緑の魔力》 1 《非業の死》 1 《沸騰》 1 《秘儀の研究室》 1 《日中の光》 -サイドボード(15)- |
ここまでのコンボデッキとは若干毛色の違う、無限ライブラリーアウトデッキである。
キーパーツは《誘拐》《玉虫色のドレイク》《狂気の祭壇》。
《誘拐》はそのまま使うと出来の悪い《支配魔法》(*14)に成り下がるが、自身の《玉虫色のドレイク》と併用すると奇妙な現象をもたらす。
つまり《誘拐》をエンチャントされた《玉虫色のドレイク》を《狂気の祭壇》で生け贄に捧げると、《誘拐》の能力で《玉虫色のドレイク》が戦場に戻ってくる。
そして《玉虫色のドレイク》の能力で墓地の《誘拐》をエンチャントすることが可能になり・・・・以下繰り返し。
ちなみに《繰り返す悪夢》《巨大鯨》の無限マナがエラッタによって不可能になってしまったように、この《玉虫色のドレイク》の能力も「手札からプレイされた場合」という修正を加えられたため、トーナメントシーンで使える時期はあまりに短かったということを付記しておく(なお現在ではこの修正は解除されており、この《玉虫色のドレイク》コンボは再現可能である)。
◆ペブルス
4 《Badlands》 4 《Scrubland》 4 《真鍮の都》 4 《宝石鉱山》 3 《泥炭の沼地》 3 《ファイレクシアの塔》 -土地(22)- 4 《Shield Sphere》 2 《ファイレクシアの歩行機械》 4 《アカデミーの学長》 -クリーチャー(10)- |
4 《暗黒の儀式》 4 《強迫》 4 《Demonic Consultation》 4 《ゴブリンの砲撃》 4 《ネクロポーテンス》 1 《沈黙のオーラ》 3 《永劫の輪廻》 3 《モックス・ダイアモンド》 1 《魔力の櫃》 -呪文(28)- |
4 《紅蓮破》 3 《沈黙のオーラ》 2 《平和の番人》 2 《枯渇》 2 《不毛の大地》 1 《中断》 1 《中心部の防衛》 -サイドボード(15)- |
キーパーツは《永劫の輪廻》《ゴブリンの砲撃》《Shield Sphere》。
《永劫の輪廻》を設置すると戦場にいるクリーチャーが墓地に落ちても手札に戻るようになるため、実質的な無限コンボとなる。
このコンボデッキの特徴的なところは《ネクロポーテンス》を採用しているところにある。
直接的にはコンボと接点の無いカードではあるのだが、一度《ネクロポーテンス》を設置してしまえば不足しているコンボパーツをかき集めることは容易そのもの。
それはつまり実質的な1枚コンボに近い。
*5 おにぎりシュート
《Phyrexian Devourer》と《投げ飛ばし》のコンボ。
《Phyrexian Devourer》の「パワーが7以上になったとき生け贄に捧げる」能力は誘発型能力であるるため、これにスタックして能力を起動し続けることでパワーを20以上まで上げることが出来る。
笹沼希予志製作、世界選手権’99で使われる予定だったのだが、開催前日のエラッタで急遽使えなくなってしまった。
「ライブラリーの一番上を追放して、そのマナコスト分+1/+1カウンターを置く」という起動型能力に、「パワーが7以上になったとき生け贄に捧げる」の一文が追記されたため、生け贄に捧げる能力にスタックすることが出来なくなっている。→戻る
*6 既に設置された《浄化の印章》~
《Illusions of Grandeur》の「ライフを20点回復する」という能力は戦場に出た時の誘発型能力。
そのためスタックしてのエンチャント破壊や《紅蓮破》すると、「場を離れた時ライフを20点失う」の能力が先に解決されてしまう。→戻る
*7 ライフ20を削るだけのコンボ
《スパイクの飼育係》や、自身のクリーチャーに《剣を鍬に》を使うだけで即死は免れる。
ただトリックスコンボ―――《Illusions of Grandeur》《寄付》の厄介なところは、それでもトリックス側が20点のライフを回復してしまっているところにある。
与えられた猶予時間内に再びコンボを決めるか、《火/Fire》《変異種》等で残されたライフを削りきれば良いのだから。→戻る
*8 日本三大地雷
地雷デッキとは、トーナメントシーンにおいて奇抜であったり意表を突くデッキのこと。
特に新しいコンボはそう呼ばれることが多い。
初期日本マジックにおけるトーナメントシーンで、地雷デッキを使い結果を残していた人たちを評してこう呼ばれた。
前稿で紹介したピットサイクルの製作者である射場本正巳、今回紹介している笹沼希予志らが含まれる。
ただし何故か三人目が誰であるかが不明。→戻る
*9 《魔力消沈》
《卑下》《中略》等の「Xマナを支払わない限りカウンターする」系カウンターの元祖なのだが、カウンターされた場合「マナ能力を持つ土地を全てタップしてマナプールを空にする」といった奇妙な能力を併せ持つ。
つまりソーサリータイミングで動いた際に合わせられてしまうと、実質《枯渇》を使われたようにフルタップさせられてしまう。
「タップアウトを避けるために支払わない」という選択肢すら許されない。
プロスブルーム等コンボデッキが多用していた。→戻る
*10 《先触れ》
マジック史上最も使われている1マナドロー呪文といえば《渦まく知識》になるのだろうが、それ以外のドロー呪文もトーナメントシーンで見かけることは大変多い。
たとえば《定業》《思案》はモダンで禁止カードになっているし、レガシーでは《渦まく知識》だけに留まらず、《思案》の入ったデッキは多くなった。
(《秘密を掘り下げる者》の存在感たるや)
この《先触れ》は《思案》のデザイン元である。
当時はリシャッフル手段に乏しかったため良く見るカードとは言い難かったが、それでもモダンの双子に《血清の幻視》が入っているように、当時のデッキリストから《先触れ》を見つけられることは非常に感慨深い。→戻る
*11 Fires
8体のマナクリーチャーから《ヤヴィマヤの火》を設置、《ブラストダーム》《はじける子嚢》を走らせる大味なデッキ。
2000年末~2001年前半のスタンダード期を暴れ回った。
オラオラ感が半端無いデッキなため使い手を選ぶ。
ちょうど現スタンダードの赤緑モンスターに似ているかもしれない。→戻る
*12 完全な死に札
速度のために犠牲になりやすい部分で、このパーツが多いデッキほどマリガンが多くなりやすい。
たとえば、《黄泉からの橋》《ナルコメーバ》《戦慄の復活》、いずれもオープンハンドには不要である。
例に挙げたドレッジが最たるものだろう。
ただしひどい初手が多いデッキは、その分恐ろしいぶん回りをすることもある。
もしそれも無いなら構築を間違っているんじゃないかな。→戻る
*13 フェッチランド
デュアルランドに次ぐ便利過ぎるランド。
むしろ基本地形を持って来れるのだから、ベストな土地なのかもしれない。
ただし旧エクステンデッドにおいてのフェッチランドは《溢れかえる岸辺》《汚染された三角州》を指すのではない。
《氾濫原》《湿原の大河》等、ミラージュフェッチのことである。
タップインでもなお《渦まく知識》とのシナジー、3色以上の安定性と重宝されていた。→戻る
*14 《支配魔法》
《説得》《精神の制御》等リメイクを繰り返している定番呪文。
現状では《家畜化》ですら使われているほどで強力すぎるきらいがあるため、変則的なバリエーションがいくつも刷られている。
《不忠の糸》《誘惑蒔き》に苦しめられた人も多いのではないだろうか。
それにしても《不実》のスペックだけは謎である。→戻る
3.アングリーハーミット2
さてここまで古い時代のコンボデッキを紹介してきたわけだが、いよいよ本題に移ろう。
ここまで語った内容を総括するなら、即死コンボデッキというものはその達成の難しさはもちろん、そもそもトーナメントシーンに長居を許されなかったということは分かってもらえたことと思う。
もちろん《ネクロポーテンス》や《ヨーグモスの取り引き》という規格外は存在した。結果的な一枚コンボを達成してしまう、絶対的な「壊れカード」たちだ。
しかしそれらのカードたちも失われた。
そう、デュアルランドや《Force of Will》と共に、危険なデッキは駆逐されたはずだった。
だが何事にも例外はある。
1 《山》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《ラノワールの荒原》 1 《地底の大河》 4 《真鍮の都》 4 《見捨てられた都市》 1 《色あせた城塞》 2 《デアリガズのカルデラ》 2 《反射池》 -土地(23)- 4 《隠遁ドルイド》 2 《憤怒》 2 《縫合グール》 2 《新緑の魔力》 1 《悲哀の化身》 1 《クローサの巨像》 -クリーチャー(12)- |
4 《吸血の教示者》 4 《納墓》 4 《強迫》 4 《再活性》 2 《陰謀団式療法》 1 《クローサ流再利用》 2 《死体発掘》 4 《モックス・ダイアモンド》 -呪文(25)- |
4 《防御の光網》 3 《寒け》 2 《帰化》 1 《幻影のニショーバ》 1 《棺の追放》 1 《天啓の光》 1 《頭の混乱》 1 《仕組まれた疫病》 1 《沼》 -サイドボード(15)- |
まずはこちらの3本目を見ていただきたい。(プロツアーニューオーリンズ03 ラウンド10)
そう、結果的に《俗世の教示者》からサーチした《隠遁ドルイド》一枚で勝利しているのだ。
このコンボがどういうものか、カード名を見るだけでは分かりにくいだろう。
1.まず《隠遁ドルイド》を場に出す。
2.ターンが帰ってきた場合《隠遁ドルイド》の能力を起動する。
3.デッキに《山》しか基本地形が入っていないため(*15)、ライブラリーの大半か全てが墓地に送り込まれる。
4.《再活性》か《死体発掘》で《縫合グール》を釣り上げる。
5.墓地にある高コストクリーチャーたちをゲームから取り除き、巨大な《縫合グール》を《憤怒》の力で走らせて勝利☆
6.仮にライブラリーが全て墓地に行ったorリアニメイトスペルが無かった場合、《クローサ流再利用》をフラッシュバックするオプションプランも付いています。
2.ターンが帰ってきた場合《隠遁ドルイド》の能力を起動する。
3.デッキに《山》しか基本地形が入っていないため(*15)、ライブラリーの大半か全てが墓地に送り込まれる。
4.《再活性》か《死体発掘》で《縫合グール》を釣り上げる。
5.墓地にある高コストクリーチャーたちをゲームから取り除き、巨大な《縫合グール》を《憤怒》の力で走らせて勝利☆
6.仮にライブラリーが全て墓地に行ったorリアニメイトスペルが無かった場合、《クローサ流再利用》をフラッシュバックするオプションプランも付いています。
つまるところただの一枚コンボである。
そう忌まわしき《ネクロポーテンス》の力を借りずとも、一枚で自己完結して達成可能なコンボデッキが存在していたのだ。
またコンボデッキとしてのパーツがデッキを大きく圧迫することも無く、当時流行していたリアニメイトデッキとしての側面も兼ね備えていた。
他のコンボデッキ同様に《納墓》から《新緑の魔力》や《悲哀の化身》を調達することも可能だし、嗜みとしての《強迫》《陰謀団式療法》パッケージも備えている。
このアングリーハーミット2(*16)がエクステンデッドにおける墓地利用コンボの偉大な始祖である。
もちろん《隠遁ドルイド》の活躍はワイルドゾンビ(*17)からと考えることも出来るし、当時アングリーハーミット2自体が環境を支配していたわけではなかった。
だがこのアングリーハーミット2が後世に与えた影響は余りに大きい。
ここから紹介するデッキたちは、大半がいずれもその亜種となっているからだ。
4 《地底の大河》 4 《ラノワールの荒原》 1 《ヤヴィマヤの沿岸》 4 《真鍮の都》 4 《囁きの大霊堂》 4 《裏切り者の都》 2 《古えの墳墓》 -土地(23)- 4 《隠遁ドルイド》 2 《縫合グール》 3 《クローサの雲掻き獣》 -クリーチャー(9)- |
4 《強迫》 4 《吸血の教示者》 2 《神秘の教示者》 1 《再活性》 1 《陰謀団式療法》 2 《死体発掘》 1 《クローサ流再利用》 4 《死体のダンス》 4 《生き埋め》 1 《ドラゴンの息》 4 《モックス・ダイアモンド》 -呪文(28)- |
4 《プロパガンダ》 3 《防御の光網》 1 《木裂獣》 1 《棺の追放》 1 《陰謀団式療法》 1 《帰化》 1 《天啓の光》 1 《クローサ流再利用》 1 《ひどい憔悴》 1 《秘儀の研究室》 -サイドボード(15)- |
こちらがアングリーハーミット2のver2とも呼べる後期型バージョンである。
変更点は以下。
・《ドラゴンの息》の追加により《山》を入れる必要すら無くなった。
・デッキの性質上基本地形を入れることが出来ず痛々しかったのだが、アーティファクトランドにより軽減された。
・《生き埋め》《死体のダンス》という《隠遁ドルイド》に依存しないルートが追加されている。
つまるところ一枚コンボと二枚コンボの融合体、それがこの後期型アングリーハーミット2の正体である。
なお《生き埋め》ルートについては、この1シーズン前の旧バージョンでは採用できない理由があった。
その答えは至極簡単である。当時は一発の《生き埋め》で即死させることが可能なサイズの《縫合グール》を用意することが出来なかった。
デッキリストを比較してもらえば答えは分かってもらえるだろうか・・・・?
そう《クローサの雲掻き獣》という、いわばゴミレアの登場が実のところ肝要だった。
《ファイレクシアン・ドレッドノート》しかり《ドラコ》(*18)しかり。
たとえば《世界棘のワーム》(*19)。
マジック何が幸いするかは分からないものだ。
それはともかくこの後期型アングリーハーミット2、結論から言えばおそろしく強力なデッキであった。
当時が《修繕》というカードに裏打ちされた異常に高速化したアーティファクト環境だったこともあり、墓地対策も薄くなっていたこともまた追い風になっていた。
私自身はプロツアーニューオーリンズ’03にファイヤーボール勢(*20)と共に調整していたゴブバンテージ(*21)を持ち込んでいたのだが、もっと早くこのデッキの存在を知っていたらデッキ選択自体を変えていただろう。
もしチーム単位でこのデッキを持ち込んでいたら、プロツアーの結果自体も変わったものになっていたかもしれない。
いずれにせよ《隠遁ドルイド》は《ゴブリン徴募兵》と共にここで姿を消した。
1枚コンボは許されない。
*15 デッキに《山》しか基本地形が入っていない
《憤怒》を活用するため。
後に《ドラゴンの息》が登場したことにより《山》すら不要になった。→戻る
*16 アングリーハーミット2
旧スタンダード期のアンチ補充デッキだったトリニティ―――緑単コントロールが、同型用のアプローチとして赤を加えたデッキのことを「アングリーハーミット」と呼ぶのだが(《錯乱した隠遁者》から)、キーカードが同じハーミット(《隠遁ドルイド》)なところから、そのデッキ名を引用してアングリーハーミット2と呼ばれている。→戻る
*17 ワイルドゾンビ
グランプリラスベガス’01で殿堂入りしているRobert Daughertyが持ち込んだ墓地活用系デッキ。
《生き埋め》だけに留まらず、《隠遁ドルイド》も使い墓地をリソース源とした立ち回りを主とする。
キーパーツは《ゾンビの横行》《ゴブリンの太守スクイー》《Krovikan Horror》《灰燼のグール》。
とりあえず墓地を肥やしてからといったアプローチは、ドレッジの始祖と呼べるかもしれない。→戻る
*18 《ドラコ》
Kai Buddeもドラコだと思ってた 前編 後編
時にはマナコストが最大のステータスになることもある。→戻る
*19 《世界棘のワーム》
クソデッキ記事第2回より。
《ドラコ》に同じく、重さとは力なのだ(?)。→戻る
*20 ファイヤーボール勢
岡本尋を筆頭とした、当時プロツアーをサーキットしていた日本プロプレイヤーのコミュニティ。
石田格、池田剛、信下淳らが所属していた。
プロツアーヒューストン’02のアルーレン、世界選手権’03のゴブバンテージ、プロツアー神戸’04の赤緑アンチ親和などチームで使用したデッキも多い。→戻る
*21 ゴブバンテージ
From the Vault : Extended 第二回
日本発のデッキの中で最も成功したものの一つ。
何しろ名前の聞こえがいい。→戻る
4.受け継がれたもの
こうして《隠遁ドルイド》という最大のキーパーツを失ったアングリーハーミット2だが、だからと言って姿を消したわけでは無かった。
定期的に行われる禁止カード制定を経て、加速する速度に「待った」がかかるエクステンデッド環境。
今思えば、あれほどアンフェアデッキを求めてデッキを構築した時代も無かったかもしれない。
2 《沼》 1 《島》 1 《山》 3 《汚染された三角州》 3 《血染めのぬかるみ》 3 《地底の大河》 2 《硫黄泉》 1 《シヴの浅瀬》 4 《真鍮の都》 4 《裏切り者の都》 -土地(24)- 3 《縫合グール》 2 《クローサの雲掻き獣》 -クリーチャー(5)- |
4 《強迫》 4 《渦まく知識》 4 《吸血の教示者》 2 《神秘の教示者》 1 《圧服》 4 《燃え立つ願い》 1 《投げ飛ばし》 4 《死体のダンス》 3 《生き埋め》 4 《モックス・ダイアモンド》 -呪文(31)- |
4 《防御の光網》 3 《圧服》 1 《陰謀団式療法》 1 《死体発掘》 1 《腐朽》 1 《紅蓮地獄》 1 《天啓の光》 1 《死の茂み》 1 《生き埋め》 1 《減衰のマトリックス》 -サイドボード(15)- |
アングリーハーミット2後期型から、禁止カード制定を経てブラッシュアップされたデッキ、それがアングリーグールである。
デッキの方向性としては非常に直線的で、ここまでのアングリーハーミット2と違い勝利手段がたった一つ、《生き埋め》《死体のダンス》に限定されているところが大きく異なる。
この単調さは、妨害手段が著しく増えるであろうサイドボード後に問題が生じる可能性がある。ただでさえ《燃え立つ願い》によるウィッシュボード(*22)のために大きくサイドボードの枠を割いているのだから。
だが、もちろんメリットもある。
他の勝ち手段を念頭に置かないのであれば、それだけ安定性、そして速度にデッキを大きくシフトすることが出来るからだ。
それはメタゲームに依存する問題だ。
つまりは環境速度から逸脱出来たかどうか。
言い換えればアンフェアデッキとして成立する要件を満たせるか否か。
想定されていれば相応の対策を講じられることになるし、問題があると判断されれば環境から駆逐されてしまう。
そしてアングリーグールはその部分では成功した。
当時のPTQシーズンであえてエンチャントレスを持ち込んでいたことも功を奏し(*23)、うまくアンフェアデッキとしての立ち位置を確立出来たと思う。
もし想定されていたら大半のデッキから墓地対策カードを用意され、もっと苦戦していたことだろう。
だが、明確に失敗したこともある。
それは類似のコンセプトについて想定を怠っていたことだ。
自身が考えることは他の人も考えるし、それに対する準備を忘れてはいけない。
この時の失策は《金粉のドレイク》を用意しなかったことである。
リアニメイトという戦略をシャットアウト出来るこのカードを準備しておかなかったこと、たったこれだけが私にとっての敗着だった。
デッキ構築の際に重要な要素は2つある。
絶対的なデッキの強さ。
もう1つは相対的なメタゲーム上の立ち位置だ。
無論前者が圧倒的に優れている場合、後者の必要性が下がることも有り得るが、だからと言って無視することは出来ない。
それはサイドボードの重要性ということでもある。
何故ミッドレンジというアーキタイプのアベレージが高くなりやすいのか?
サイドボードも含めた戦略を構築することが容易であるからだ。
デッキのバランスを壊さずサイドボードすることの難しさは多くの方も知るところだろう。
幾分話題が逸れてしまったが件のアングリーグール、決して最強のデッキというわけでは無かった。
メタゲーム上強力なデッキだったということだけで、環境を支配するほどのデッキパワーを持ち合わせてはいなかった。
ただこのことは当時のエクステンデッドのデッキにおいて、大半のデッキに言えることでもある(*24)。
*22 ウィッシュボード
《狡猾な願い》《燃え立つ願い》など、願いの汎用性を高めるためにはサイドボードの枠を割かなければならない。
そのスペースのことをウィッシュボードと呼ぶ。
単純にメインデッキの枠を超えたアプローチを出来る代償として、サイドボードの枠を狭める必要がある。
そのため最小限度に留めてサイドボードの枠を維持する形、かたや目いっぱいに用意するデッキ等さまざまなデッキ構築が見られた。→戻る
*23 エンチャントレスを持ち込んだことも功を奏し
アングリーグールの初期型は既に出来上がっていたのだが、PTQシーズンではあえてエンチャントレスを使っていた。
そもそもエンチャントレス自体当時のRDW、サイカトグに強くメタゲーム上優秀なデッキだったこと、またエンチャントレス慣れしているプレイヤーも少なく、デッキ勝ちが見込める等の理由があったからだ。
またアングリーグールが墓地対策に弱いという明確な理由もある。
一度目立ってしまえば対策されやすいデッキのため、可能な限り温存する必要があった。
結果的にエンチャントレスによって規定された環境速度を、いい意味でアングリーグールは逸脱出来た。
正直ラッキーでした。→戻る
*24 当時のエクステンデッドのデッキにおいて~
プロツアーロサンゼルス’05のトップ8デッキリストを見てもらえれば分かるのだが、ある程度以上のデッキ間でデッキパワーに差が付かない環境になっていた。
つまりどのデッキにもチャンスがある。
言い換えれば、目立ったデッキはきちんと対処されてしまっていた。
突き抜けたデッキの無い、健全な環境だったとも言える。→戻る
5.その後の《縫合グール》さん
さて《隠遁ドルイド》を失い、《生き埋め》コンボデッキとして生き永らえたアングリーハーミット2だが、その系譜はまだしばらく続くこととなった。
禁止となった《隠遁ドルイド》に代替品が見つかったのだ。
もちろん同等の性能というわけにはいかないが、クリーチャーによる2枚コンボで再現されている。
◆セファリッドライフ
2 《ラノワールの荒原》 1 《地底の大河》 1 《コイロスの洞窟》 1 《低木林地》 1 《ヤヴィマヤの沿岸》 1 《アダーカー荒原》 4 《真鍮の都》 4 《禁忌の果樹園》 2 《色あせた城塞》 2 《星明りの聖域》 -土地(19)- 3 《コーの遊牧民》 3 《ダールの降霊者》 3 《セファリッドの幻術師》 1 《コーのシャーマン》 1 《縫合グール》 1 《クローサの雲掻き獣》 -クリーチャー(12)- |
4 《渦まく知識》 4 《吸血の教示者》 4 《俗世の教示者》 3 《陰謀団式療法》 1 《再活性》 1 《価値ある理由》 3 《生ける願い》 1 《死体発掘》 1 《クローサ流再利用》 1 《ドラゴンの息》 2 《金属モックス》 4 《霊気の薬瓶》 -呪文(29)- |
2 《金粉のドレイク》 2 《古の法の神》 1 《コーの遊牧民》 1 《ダールの降霊者》 1 《セファリッドの幻術師》 1 《ルートウォーターの泥棒》 1 《骨砕き》 1 《ウークタビー・オランウータン》 1 《戦場のたかり屋》 1 《ドラゴンの影》 1 《エネルギー・フィールド》 1 《見捨てられた都市》 1 《星明りの聖域》 -サイドボード(15)- |
ここでのキーパーツは《セファリッドの幻術師》。
そこに「無限に対象に取れる」という特殊な能力を持つコー一族が加わると・・・・(*25)
華麗にライブラリーが空っぽになる。
また、このデッキで面白い部分は無限ライフエンジンも同時に採用されているところだ。
元々無限ライフデッキ―――ループジャンクションもコー一族を採用していたこともあって、即死コンボと無限ライフが同居するという愉快な構造となっている(*26)。
◆セファリッドブレックファースト
4 《Tundra》 3 《Tropical Island》 2 《Underground Sea》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 -土地(17)- 4 《コーの遊牧民》 4 《セファリッドの幻術師》 4 《タルモゴイフ》 3 《ナルコメーバ》 1 《コーのシャーマン》 1 《縫合グール》 -クリーチャー(17)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《俗世の教示者》 2 《陰謀団式療法》 2 《エラダムリーの呼び声》 1 《戦慄の復活》 4 《Force of Will》 1 《ドラゴンの息》 4 《霊気の薬瓶》 -呪文(26)- |
4 《思考囲い》 4 《中断》 3 《闇の腹心》 2 《残響する真実》 1 《厳格な試験監督》 1 《ひどい憔悴》 -サイドボード(15)- |
こちらはレガシー版のものであり、かなり異なった構成となっている。
・フィニッシュ手順が《ナルコメーバ》からの《戦慄の復活》へ(*27)
・《渦まく知識》《思案》《Force of Will》のレガシーテンプレート
・無理なく投入された《タルモゴイフ》によるオプションプラン
特に《タルモゴイフ》が白眉だろう。
「戦場に居なくてもサイズが定義される」という特性を活かして、《縫合グール》の餌(*28)を特別に用意する必要が無くなっているからだ。
もちろん普通にプレイされた《タルモゴイフ》の汎用性たるや・・・あえて解説する必要はないはずだ。
ちなみに現世では《死儀礼のシャーマン》で臭いものには蓋されてしまっている。
今や生ける《ネクロポーテンス》こと《グリセルブランド》をリアニメイト出来るご時勢でもあるわけで、《縫合グール》さんの出番なんて無かった。
*25 コー一族
《コーの遊牧民》を初めとするクリーチャーたちで、起動コストが無いという摩訶不思議な能力を持つ。
そのため《セファリッドの幻術師》《ダールの降霊者》《特別工作班》など、対象に取られた場合~系能力をひたすら誘発させる頑張り屋さん。→戻る
*26 即死コンボと無限ライフが同居するという~
前述の《セファリッドの幻術師》が《コーの遊牧民》と組み合わされることにより、アングリーハーミット2と同様の挙動を示すのだが、《ダールの降霊者》とのコンボは無限ライフへの筋道となる。
それを同じパッケージとして組み込もうと考えた人は相当欲張りに違いない。→戻る
*27 《ナルコメーバ》からの《戦慄の復活》へ
ドレッジのフィニッシュブロー。
ただしこの場合はカウンターによるバックアップもあるため《黄泉からの橋》を必要としない。
《ナルコメーバ》を《Force of Will》のコストに充てられるのもポイント。→戻る
*28 《縫合グール》の餌
各種リアニメイトクリーチャー、《クローサの巨像》、《クローサの雲掻き獣》など、「手札に来て欲しくない」大型クリーチャーと併用しなければならないのが《縫合グール》の宿命だった。
その欠点をも克服したのが《タルモゴイフ》の存在。→戻る
6.即死コンボたちのこれから
さてエクステンデッドから《縫合グール》が姿を消し、またエクステンデッドの後を継ぐモダンというフォーマットでは即死コンボを見ることはあまり無くなってしまった。
それはトーナメントの健全性をうまくコントロールできていることの証左ではあるが、だからといって即死コンボそのものが姿を消したというわけではない。
即死コンボ今様ということで、昨今のコンボデッキを紹介して本稿の締めとする。
◆スケープシフト
3 《森》 3 《島》 2 《山》 4 《踏み鳴らされる地》 4 《蒸気孔》 1 《繁殖池》 2 《霧深い雨林》 1 《滝の断崖》 1 《溢れかえる果樹園》 1 《ハリマーの深み》 2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 -土地(24)- 4 《桜族の長老》 3 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(7)- |
4 《血清の幻視》 2 《撤廃》 4 《差し戻し》 3 《時間の把握》 3 《イゼットの魔除け》 4 《明日への探索》 2 《電解》 4 《風景の変容》 3 《謎めいた命令》 -呪文(29)- |
2 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《強情なベイロス》 2 《白鳥の歌》 2 《古えの遺恨》 2 《神々の憤怒》 2 《大祖始の遺産》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《呪文滑り》 1 《殴打頭蓋》 -サイドボード(15)- |
エクステンデッド末期からモダンに引き継がれたコンボデッキ。
マナを伸ばし、《風景の変容》をプレイするだけという非常にシンプルな特性を持つ。
7枚の土地からなら《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》&《山》6枚により18点のダメージを与えることが出来るし、8枚用意できたのなら《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》2枚から36点と、十二分なダメージを叩き出すことが出来る。
単純な構成ゆえ、《謎めいた命令》や《イゼットの魔除け》を駆使したコントロールデッキとして振る舞えるのが魅力的なデッキではあるが、最大の欠点は若干遅いこと。
その部分がスピードのみを重視することの多い他の即死コンボと一線を画している。
この理由から常にメタゲーム上存在するデッキなものの、勝てる時と勝てない時の浮き沈みが激しい。
もしスケープシフトを選択するのなら、環境速度を理解した上で使うべきである(*29)。
◆集団意識
3 《島》 1 《Underground Sea》 1 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《霧深い雨林》 3 《古えの墳墓》 3 《裏切り者の都》 -土地(19)- 3 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(3)- |
4 《タイタンの契約》 4 《否定の契約》 1 《殺戮の契約》 1 《召喚士の契約》 4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《直観》 4 《実物提示教育》 4 《Force of Will》 1 《誤った指図》 4 《集団意識》 3 《厳かなモノリス》 -呪文(38)- |
4 《神聖の力線》 3 《フェアリーの忌み者》 3 《思考囲い》 3 《方向転換》 2 《根絶》 -サイドボード(15)- |
こちらはスケープシフトと対照的な、かなり速度偏重型なコンボデッキである。
基本コンボの《集団意識》《タイタンの契約》はモダンでも使用可能ではあるが、主にマナ加速&《実物提示教育》の存在によりレガシー版に比べると幾分劣ってしまう。
コンボの仕様としては、まず《集団意識》をプレイ。
そのまま《タイタンの契約》等の”契約”スペルのコピーを対戦相手に強いることにより、アップキープでの契約死を目指すデッキだ。
パーツそれぞれの役割に汎用性が欠けているためピーキーさ(*30)が目立つデッキになるが、コンボ特性そのものは非常に堅固である。
まず「契約」呪文に対応して《集団意識》を割ろうとしても、既に誘発した「コピーを作る能力」を止めることは出来ない。
また一度《集団意識》が通ってしまうと、「契約」呪文を打ち消そうとしても自動生成されるカウンターにより妨害出来ないのだ。
……かくのごとく、即死コンボデッキは幾度叩かれようとトーナメントシーンに姿を現す。
かつての環境と違い、確かに数を減らしながらもその系譜が途絶えることは無い。
クリーチャー戦闘を介さず、手札の枚数も無関係。
盤面も相手の事情も全てを無視して勝つことが出来る。
例え安定性という難題や、禁止カードという制限を課せられたとしても。
プレイヤーはそのロマンを追い求めることをやめないのだ。
*29 環境速度を理解した上で使うべきである
メタゲームを想定する上で重要な要素。
何が多いかということより、環境が速いか遅いかという認識の方がむしろ重要である。
特にコントロールの場合に顕著な部分で、環境速度より遅ければ成す術も無く負けてしまうし、速く設定しすぎると長期戦に弱くなってしまう。→戻る
*30 ピーキーさ
peaky。自動車などのエンジン、ハンドリング、タイヤ特性を表現する形容詞。
挙動が神経質であり、ある限定的な範囲では非常に高い性能を発揮するが、その範囲外の場合は操縦性が低いこと(出典:ウィキペディア)。
つまるところ爆発力はあっても、安定性に難があるという意味である。→戻る
7.次回予告
たかがキャントリップ、されどキャントリップ。
マジック黎明期から連綿と続く、1マナドロースペルが織り成すストーリー。
デッキの潤滑油としてだけではなく、それ自身が主役となるアプローチ。
「1マナキャントリップを4枚入れたら土地を2枚削れる」
誰が言ったかこの言葉、土地を探し、スペルを探し、その有り様は今も昔も変わることがない。
「お前はこれまでに使った《渦まく知識》の回数を覚えているのか?」
次回、グレイトフルデックス vol.4、ゼロックス。
乞うご期待!