精鋭の中の精鋭。勝者の中の勝者。
招待された強豪ばかりが集まるこのPWCCで、決勝戦という高みに立ったのは2名。
”Hanoi”和田。
メタゲームを読み、デッキを使い慣れたボロスから緑単エルドラージに乗り換えたのが効を奏したのか、3bye明けのフィーチャーマッチでの敗北をものともせずにここまで勝ちあがってきた。第6期ミスターPWCを襲名したばかりだというのにこの男、まだまだ底が知れない。
そして”Nage”斉田。
参加者の中で唯一1byeでも3byeでもない2byeを与えられたという事実だけでも、彼もまた「個人戦PWC優勝」と「PWCランキングトップ8」というbyeの条件を両方満たした強者であることは容易に窺われるというものだが、準決勝で高橋を下したときの油断なく落ち着いた立ち回りにはそれ以上の何かを感じさせる。「貴族」相澤の薫陶を受けた《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を駆り、最後の戦いに臨む。
相対した2人の流麗にして入念なシャッフルの動きを見ていると、ここまで努力し、研ぎ澄まされ、洗練されたそれはまるで2本の刃のよう。そんな両者がともに勝利者であって欲しいような、どちらも最大限に報われて欲しいような、そういった複雑な気持ちにもなってくる。
だが、王者は常に1名のみ。
両雄並び立たず・・・すなわち真剣勝負。だからこそ、光り輝く。
それを証するかのように、両者は互いに知り合いにも関わらず賞品のスプリットをしていない。斉田はスプリットを希望したが、和田が「澱むから」「真剣勝負なんで」と断っている。漢(おとこ)である。
緑単エルドラージ対《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》ということでマッチアップ的には斉田が有利だが、和田の益荒男ぶりに勝利の女神が微笑むのか、それとも蛮勇と嘲笑うのだろうか。
Game 1
ダイスロールで先手をとったのは斉田。
両者仲良くマリガンすると、斉田は《森》《山》《カルニの心臓の探検》《探検》《業火のタイタン》《業火のタイタン》をキープ。和田も《森》《エルドラージの寺院》《ジョラーガの樹語り》《絡み線の壁》《緑の太陽の頂点》《召喚の罠》をキープする。
斉田が《カルニの心臓の探検》でスタート、対して和田は2ターン目に《ジョラーガの樹語り》レベルアップから2体目の《ジョラーガの樹語り》をプレイ。
3ターン目に斉田が《探検》で土地を引き込んで2枚のセットは《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と値千金の《広漠なる変幻地》。《カルニの心臓の探検》を含め、見事に4ターン目に6マナ出る体制が整っている。
やはり先にクリティカルなアクションを起こしたのは斉田。エンドに《カルニの心臓の探検》を起動してからの《業火のタイタン》が降臨する。これにより《ジョラーガの樹語り》を1体が除去され、《野生語りのガラク》の忠誠値が3に下がる。さらに《山》を置き、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の噴火も着々と目指しにいく。
斉田がプレイしたのが《原始のタイタン》ではなくて命拾いしたものの、それでも依然喉元に刃を突きつけられた格好の和田は、7マナからの《緑の太陽の頂点》ではなく、6マナで《召喚の罠》を選択。勝つためにエルドラージによる滅殺を狙う。
しかし7枚の中にエルドラージはなく、《テラストドン》と《原始のタイタン》のみ。ここで和田は斉田の後続を断つために《テラストドン》を選択。だが対象3つの判断が難しい。斉田は森森山山山山と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》1枚という7枚の土地をコントロールしており、どこまで破壊するべきなのか。
悩んだ結果、和田は斉田の《森》2枚と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を一気に奪い去る。3体の3/3象トークンが斉田の場に出現し、和田はさらなる《ジョラーガの樹語り》を追加してターンエンド。
盤面を整理すると、斉田の場には《山》4枚、《業火のタイタン》、象トークン3枚。対して和田は《ジョラーガの樹語り》2体(1体はレベルアップ済み)と《森》《エルドラージの寺院》《惑いの迷路》《絡み線の壁》《テラストドン》そして《野生語りのガラク》の忠誠値が4。
斉田は4体で《野生語りのガラク》にフルアタック、戦闘時の誘発でまずは《ジョラーガの樹語り》2体を葬る。和田は《テラストドン》と《業火のタイタン》を相討ちさせることを選択。《野生語りのガラク》が葬られる。戦闘後に斉田は《森》をセット、足止めしたい和田の目論見が外れてしまう。
《業火のタイタン》1枚でかなりリソースを消耗した和田はそれでも《エルドラージの寺院》を引き込み、さらに唯一残った手札である《緑の太陽の頂点》をX=2でプレイ。《草茂る胸壁》をサーチし、3/3トークンの群れに備えつつマナを伸ばす。一方斉田は象3体でアタック後、さらに《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を置きつつ、《耕作》。《森》《山》サーチで《テラストドン》のダメージから早くも完全に復旧する。
何か有効牌を引きたい和田だがドローは《無限に廻るもの、ウラモグ》。《エルドラージの寺院》が2枚あってもなお3マナほど足りない。《野生語りのガラク》さえ生き残っていれば・・・
それでも和田は《惑いの迷路》で象トークンを1体ずつ葬って粘ろうとするが、斉田の膨大な赤マナに裏打ちされた2枚目の《業火のタイタン》が、その儚い粘りを無に帰した。
和田 0-1 斉田
和田は役に立たない《絡み線の壁》を抜き、《成長の発作》をサイドインしてマナ面で先んじようとする。
もっともそれは斉田も同様で、対象が《ジョラーガの樹語り》に限定される《稲妻》を抜き、緑単相手で除去される心配がない《水蓮のコブラ》をサイドイン。
Game 2
今度は両者7枚でキープ。先手の和田が《ジョラーガの樹語り》からのロケットスタート。レベルアップから《草茂る胸壁》。斉田も《カルニの心臓の探検》で悪くない立ち上がりなのだが、後手ではどうにも間に合いそうもない。
3ターン目にして6マナ出る和田は早くも《召喚の罠》を構えてターンエンド。斉田が《砕土》をプレイするのにスタックしてこれをプレイする。かくして7枚から出てきたのは決定的なエルドラージではないものの、ターン数からすれば十分すぎる《原始のタイタン》。《カルニの庭》《惑いの迷路》がサーチされる。
だが斉田も《砕土》を解決した後、圧縮のために《カルニの心臓の探検》も起動した上でさらに《探検》をプレイ。追加セットで《山》を置いて土地を7枚まで伸ばした上でターンエンド。和田がサーチした土地からはエルドラージの気配は感じられないため、もう1ターン回ってくれば勝機が見えそうだ。
しかしそんな幻想を打ち砕くかのように、和田は《原始のタイタン》でアタックして《ウギンの目》《エルドラージの寺院》をサーチすると、さらに第二メインに《緑の太陽の頂点》をX=8でプレイ。《テラストドン》が斉田の《森》《森》《山》を一気に奪い去る。
1ゲーム目と違って《テラストドン》に決定的な形を作り上げられてしまった斉田は投了するしかない。
和田 1-1 斉田
Game 3
先手の斉田は《進化する未開地》《山》《山》《探検》《カルニの心臓の探検》《原始のタイタン》《原始のタイタン》という、4ターン目タイタンが見えるハンドを文句なくキープ。
対する和田は《森》《惑いの迷路》《永遠溢れの杯》《成長の発作》《緑の太陽の頂点》《野生語りのガラク》《召喚の罠》というハンドを見て、後手のこのハンドで間に合うものだろうかとかなり悩む。
が、結局これ以上良くはならないと腹をくくったか、キープを宣言する。2ターン目までは斉田の《カルニの心臓の探検》に対して和田の《永遠溢れの杯》という予定調和。
ここで斉田のドローが《耕作》だが、斉田は4ターン目タイタンという最高形を目指して《探検》をプレイ。残念ながらドローはフェッチではなく《森》。どうやら斉田のタイタンは5ターン目の登場となりそうだ。
どうにかこの隙をつきたい和田だが、《成長の発作》をプレイしてマナを伸ばしにいくものの、初手から3枚目の土地を引けておらず、セットランドがない。返す斉田の4ターン目は予定通り《耕作》で《山》2枚がサーチされ、並べられた土地は森森山山山山と準備万端。さらに盤面には《カルニの心臓の探検》に3個のカウンターが乗り、花開くときを待っている。
そしてついに斉田の《原始のタイタン》が登場し、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が集められる。和田に残されたターンは少ない。
5ターン目になってようやく《森》を引き入れ、6マナ立ててエンドを宣言する和田。斉田は勝利へと向けてアンタップ、ドロー・・・とここで「アップキープ」と和田が制止。このタイミングでおそらく和田にとって唯一にして最後のチャンスとなる《召喚の罠》をプレイする。《転倒の磁石》で場に出ている《原始のタイタン》を封じている今、《テラストドン》さえ出れば斉田の後続を断っての一発逆転も見える状況だ。
和田は祈るように7枚をめくる。
・・・その中にはしかし、ここ一番で《テラストドン》はもちろん《原始のタイタン》すらなく、《草茂る胸壁》が寂しく出現するのみに終わる。
和田は一応《転倒の磁石》で《原始のタイタン》を寝かせてはみるものの、斉田は2枚目の《原始のタイタン》をプレイしてさらなる《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》2枚をサーチ。斉田の場に4枚全てのヴァラクートが揃い、脇には《カルニの心臓の探検》、すなわち。
和田に24点。
和田 1-2 斉田
PWCC2011優勝は、斉田 逸寛!!