みなさん初めまして。このたびこちらで記事を書かせていただくことになった井川良彦です。よろしくお願いします。僕は普段は東京近辺の大会や国内でのGP等に参加しているので、もしかしたら皆さんともお会いしたことがあるかもしれませんね。
さて、皆さんは「レガシー」についてどんなイメージを持っていますか?あまりレガシーをプレイされてない方の中には「しょっちゅう1キルされるんでしょ」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
実際のレガシーの環境は、「ビートダウンに強いコンボ(ANT,SneakShow,Dredge)」「コンボデッキに強い《意志の力》デッキ (Merfolk,Bant,Team America)」「《意志の力》デッキに強いビートダウン(Zoo,Goblins)」を中心に様々なデッキがバランス良く存在し、Magic: the Gatheringが好きな人なら誰でも楽しむことのできる環境だということができます。
しかしデッキによっては1キルや2キルが頻発することもまた事実です。2月に行われたEternal Party2011では新型の《壊死のウーズ》入りリアニメイトが決勝戦で1キルを決めたと聞きましたし、現状、コンボデッキは「キルターンの圧倒的速さ」と「妨害に対する妨害(=カウンター・ハンデス)」により、他のデッキより一歩勝っていると言えるかもしれません。
ここで「自分もANTやリアニを使おう!」ではなく「奴らの隆盛許すまじ!」と思ってしまうのがマジックプレイヤー。既存のデッキを調整していくのも楽しいですけど、少し変わったデッキでメタデッキと戦っていくのもとても楽しいですよね。トップメタに対する回答、いわゆるソリューションを妄想しているときはまさに至福の時。
ということで、僕の連載ではいわゆるメタデッキではなく、レガシーならではの一風変わったデッキを皆さんに紹介していきたいなと思っています。
今回は「コンボデッキの隆盛に対抗しよう!」を合言葉に、その萌芽を探すべく片っ端からデッキリストを漁ってみました。すると、非常に興味深いデッキを見つけることができました。それがこちらです。
デッキのそこかしこに見える力線の文字。力線力線力線力線力線。そう、誰も干渉ができない「0ターン目」を使うことによりコンボデッキに対抗しているのです。
「1キルデッキを0キル!」
そんな意気込みがこのデッキから伝わってきます。
ANT相手に0ターン目《神聖の力線》。0キル。どや。
発掘・リアニメイト相手に0ターン目《虚空の力線》。0キル。どや。
す、素晴らしい・・・。
え、コンボデッキ以外にはどうするのかって?力線がゴミじゃないかって?
そうではないのがこのデッキの強みですね。普通のデッキだと「初手にないと余り役に立たない」「複数枚初手にあっても嬉しくない」「一部のデッキにしか効かない」と三拍子揃っている力線シリーズですが、このデッキにおいてはその立ち位置が異なるのです。その理由はこのカード。
このデッキをただ力線を並べるだけのゴミデッキとあなどるなかれ。その真の姿は《オパール色の輝き》による高速エンチャントビートダウンなのです。
その速さは環境のコンボデッキと比肩しても遜色のないほど。初手が力線5枚に《オパール色の輝き》《セラの聖域》だと、なんと1キル!
そう、このデッキは「コンボデッキを0キルできるデッキ」であるだけでなく、自身も「1キル可能なコンボデッキ」なのです!!
コンセプトに感動し、実際に回してみること数時間。いくつの問題点が発見されました。
1.《クァーサルの群れ魔道士》を始めとするエンチャント破壊全般が厳しいこと。
2.基本は力線・オパール・聖域の3種類コンボであるため、マリガンが多いデッキであること。
3.主力の力線である《虚空の力線》《神聖の力線》が共に「Sneak Show」(騙し討ち&実物提示教育からファッティを出すコンボデッキ)に対して無力であること。
これらの問題点を頑張って改善してみたのが次のレシピです。
改善点は主に3つ。
1.《真の木立ち》の採用。エンチャント保護能力とエンチャントサーチ能力が共にデッキに噛み合います。《オパール色の輝き》をサーチして勝ちに行くだけでなく、対コンボデッキで力線を守って勝つこともできるでしょう。
2.《血清の粉末》の採用。マリガンが多く、かつ初手がゲームの鍵を握るデッキならではの選択と言えるでしょう。このデッキなら通常プレイでのマナブーストも重要です。
3.メインに《謙虚》、サイドに《罠の橋》の採用。焼け石に水かもしれませんが、どちらも場に出すことさえできれば《大祖始》《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul,the Aeon Torn》を封殺することができます。
もし《オパール色の輝き》2枚と《謙虚》を一緒に場に並べることができたら「ヘイ、ジャッジ!」とアピールしましょう!きっとジャッジが《渋面の溶岩使い》とおぼしき表情で優しく回答してくれるでしょう。
また、先ほどは説明しませんでしたが、メインから搭載されている《虚空の力線》を最大限活かせるよう、《Helm of Obedience》が1枚だけ入っています。《虚空の力線》+《Helm of Obedience》コンボは即死コンボなので、初手に《虚空の力線》と《悟りの教示者》が揃っている場合はこちらのコンボを決めることが多いです。
デッキの核となっている力線シリーズは18枚まで減らしました。初手に複数枚来て欲しいですが、ブン回り以外は初手に2~3枚あれば充分&初手以外には欲しくないのでこの枚数に。プレイできない力線達を手札に抱えてピヨピヨしている姿を想像していただけば、この減量も理解していただけるかと思います。
こんな素晴らしいデッキは世に送り出さなければ!ということで、実際にこのデッキでトーナメントに参加してみました。参加者28人の3回戦。たった3回戦でもこのデッキにとっては試金石とも言える、意味のある3回戦。
某有名人のセリフを借りて、意気込んでいきたいと思います。
俺は、このデッキで3-0まで駆け抜ける!!!
R1:対《壊死のウーズ》リアニメイト ○○
R2:対ZOO ×○○
R3:対Bant ××
ということで2-1でした。基本的にシンプルな動きをするデッキなので、ゲームの内容は想像に難くないでしょう。ゲームのポイントだけ説明するなら「0T黒力線(笑)」「ナカティルと力線でダメージレース!」「聖遺の騎士から不毛の土地をサーチ!おぉセラの聖域よ死んでしまうとは情けない」って感じですかね。
このデッキが苦手とする《意志の力》、《聖遺の騎士》+《不毛の大地》を両方擁するBantはまさに天敵でした。
もしもう一度大会に出るならば《花の絨毯》の増量をするでしょう。《呪文貫き》《目くらまし》《不毛の大地》を無視しながら手札を展開できる、素晴らしいカードです。MerfolkやTeam Americaなどにも効くので、是非一度使ってみてください。
レガシーは非常にカードプールが広く、また、そのメタゲームは日々変化しています。
その変化の合間を縫って、ローグデッキで勝ち抜くことも決して不可能なことではないと思います。皆さんもデッキの方向性を明確に決めて、メタデッキに立ち向かってみませんか?
それではまた次回お会いしましょう!